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国と歴史③〜5人の男たち〜

ミナを無事両親のもとまで送り届けたエルドナス達。

ミナの両親と話しているうちにはじまったユールスニア建国の歴史。

ユールスニア王国の危機に立ち上がった5人とは…

中央都市の近くに小さな村があった。

ユールスニア王国全土を巻き込んでいた混乱の影響はあったものの、村民は協力をしあいながら苦しいながらも生活を続けていた。

その村には5人の青年が居た。幼い頃から共に過ごした彼らが成長した頃国内が荒れ始めた。

その国内の状況を見て村を守るため彼らは自警団を作り上げたのだった。

自警団を作る際にそれぞれのことを名前で呼ぶことにした。

彼らはそれぞれの特徴から名を取った。

皆の耳となり、外敵からの攻撃にいち早く気がついたコニーニョ。

皆の目となり、村の警備に目を光らせていたウッチェロ。

皆の足となり、仲間にいち早く情報を伝えまわったカヴァッロ。

皆の為に、コツコツと準備をし仲間を守るため罠を張り巡らせていたトーポ。

皆のまとめ役で、いつも穏やかに皆の意見を聞いていたレオン。

5人は自分たちのことを五匹の獣(ティンクェベスティア)と名乗っていた。

彼らの望みは大きなものではなかった。ただ、彼らは手の届く範囲を守りたかった。ただ、目の前の人達が悲しまない為に、ただ、目の前の人達が笑顔を失わないために。

このような荒れた時代に勇気を持って立ち上がった青年たちの行動は村の人々を勇気づけ、村は自然と活気が再び戻ってきた。

そうして彼らが五匹の獣としての活動を初めて1年が経った頃、彼らの村はこの頃のユールスニア王国では考えられないほど平和な日常があった。

彼らの活動は村の人々の後押しもあり順調に成果を成果を上げ続け、村の人々からの期待も次第に大きくなっていくのであった。

村には彼らの望んでいた悲しみはなく、笑顔が溢れていた。

そんな現状に彼らは目標を達成したことに満足した部分が出てき始めていた。


そして、ある日の5人での定例の話し合いで5人の運命は少しずつ変わり始めていったのであった。

その日はいつもと同じく定例の報告をそれぞれが行った後にトーポが口を開いた。

「ねぇ、僕らこのままでいいのかな?」

毎回話し合いの最後にそれぞれの意見を言い合う場があるのだが、このような問いかけをトーポがするのは珍しかった。

「こんな時代なのにさ、僕らが頑張ったらこの村をこんなに笑顔にできるんだよ?だったら、僕らならもっとできることがたくさんあると思うんだ」

皆トーポの言葉に驚きを隠せないというように互いの顔を見合わせていた。

トーポはもともと内気な性格であり、体を動かすのもそれほど得意な者ではなかった。

それ故に彼は彼自身に自信がなく、目立つことを嫌い、好んで裏方の仕事を行っていた。

そのおかげで他の4人は行動しやすいことは多かった。それは間違いなかった。

そして、これまでも幾度となく行われてきたこの話し合いでトーポが自らの意思で口を開き、あまつさえ自分の意見を発信したことなど一度もなかったのである。

いつも周りの意見にたいして「僕もそれでいいと思うよ」と肯定するだけだった彼が意見を言ったことに3人は驚き固まっていた。

「もっとたくさんの事ができるというのは具体的にどういうことかなトーポ」

固まっていた3人とは対象的にトーポに問を投げかけたのはレオンだった。

皆のまとめ役でもあった彼はいつも皆の意見を聞くことを大切にしていた。それはいつもと同じであった。

いつもと違ったのは、発案者がトーポだっただけである。

「僕ら五匹の獣(ティンクェベスティア)が活動を始めたのはこの村の笑顔を取り戻すためだったよね。で、今僕はそれを達成したと思ってる。だからこそ、新たな目標が必要だと思うんだ」

「新たな目標?それはどんなものなんだい?」

両手をモジモジさせながら一瞬自分の意見を言うか迷っていた様子のトーポだったが、レオンが優しくほほえみかけてくれたこともあり覚悟を決めたような表情になる。

「僕はもっと多くの人の笑顔を取り戻せるように活動していきたいと思うんだ!」

「もっと多くの人のっていうのは?」

「例えば、この国全域が笑顔になれるようになってほしい」

その意見に3人はどよめいた。

「確かに、この国自体から争いがなくなってくれれば、僕らはもっと楽になるね。ただ、それは…」

レオンはその先を言いよどんでしまった。

確かに、レオン自身もこの1年の自分たちの活動の結果というものが上々であったということは重々承知している。だが、それ故に違和感があった。

ここまでうまくいくのは何か別の要素があるのではないか?

これは自分たちの実力云々ではなく、ただ、同じようなことをしようとした者が居なかったからたまたま自分たちがやったらうまく行っただけではないか?

そういった疑念が常に彼の中にはつきまとってきていた。

彼の目的はずっと変わらない。目の前の人達が笑顔で居てくれるそれだけで良かった。

自分にできることなど多くはない。自分自身の力を過大評価することなく、常に現実を見て行動をしてきていたレオンにとってはトーポの意見は夢物語にしか聞こえなかったのである。

「俺はいいと思うぜ。せっかく珍しくトーポが言った意見にしちゃまともな意見だったな」

レオンが思考をしているタイミングで意見を被せてきたのはコニーニョだった。

「始めた時は俺らも5人しか居なかったけどよ、今じゃあこの村に移り住んできた奴らも合わせて俺らは数十人規模で動けるようになってきてんだ。活動の幅を広げていけばもっともっと俺らは大きくなってそのまま国1つ飲み込めるくらいにはなれるんじゃねーの?」

コニーニョの意見ももっともであるとレオンは感じた。

5人で始めたこの活動には彼らの思いについてきてくれる仲間が増えていた。

その結果予想よりも早くこの村を守るだけの力を手に入れることが出来たのだから。

「この国を変えるだけの力があるとは思いませんが、活動の幅を広げるというのには賛成ですね」

同じく一部賛成をしてきたのはウッチェロである。

「我々はまだ巨大な組織ではありません。ただ、目の前の笑顔を取り戻すために行動をしているに過ぎません。ですが、今の状態では村の規模に対して人数が多すぎるような気もしていたのです」

それも、確かなことであった。

もともとは数十人規模が住む小さな村の1つだったが、周りの村から逃げてきた人などが増え今現在は100人以上の人が住む村に成長をしていた。

ただ、それに対して1/3程度が自警団に所属しており、非番の日も増えてきてしまっているのが現状であった。それ故に、一部賛成というのはレオンもよくわかったのだ。

「我としては時期尚早であると思う。皆の意見もよく分かるが、我らはこの生まれ育ったよく知った場所を守っていたからこそこれまでの活動がうまく行っていたと思っている。外に出れば外の環境でも同様にうまくいくとは限らん」

初めて否定的な意見を出したのはカヴァッロだった。

彼とレオンの意見は昔からよく合う。同じようなことを考えているレオンの一番の理解者でもある。

「まず、我らはこれまで防戦一方で、攻めることは一度も無かった。これが何を意味するかわかるかトーポ」

「えっと、守るのは得意だけど、攻めるのはどうかわからないってこと?」

「そうだ。ただ、今のは攻めるのを前提とした話だ。だが、これまで我らに向かってきた者たちは皆他の土地を求めて攻めてきたものばかりだ。他の土地も守るためにはまず奪わねばならんと我は思う」

カヴァッロの意見にトーポは口をつぐむ。

彼の中では今の活動の延長線上で国を救うことも可能ではないかと思っていたからであろう。

「可能性って話だったらまだやったこともねえ段階で足踏みすんのはどーなんだよ。大体俺らが活動を始めるってときだってやったことねぇのに始めたじゃねーか」

トーポの意見から始まったこの話し合いはここまで意見の割れることの少なかった五匹の獣達の中で意見を大きく2分するものとなってしまった。

話し合いの熱があがってきたところでそれまで意見を聞く側に回っていたレオンが大きく手を叩いた。

唐突な出来事にそれまで話し合いに熱中していた4人は驚き話し合いが止まる。

「皆の意見はよくわかった。だが、熱が入りすぎているね。一度頭を冷やそう。また明日この話題について話し合おうじゃないか。皆それまでに自分の意見をまとめてきてね」

その言葉でその日の話し合いは終わり、解散したのだった。

4人がそれぞれ扉から出ていったのを確認したレオンは1人長いため息をついた。

村が豊かになった結果できた特産の果実酒を取り出し1人コップに入れ流し込む。

「どうしたの?」

後ろから声がしたので振り返るとそこには妻のレーナの姿があった。

「珍しく意見がまとまらなかったみたいね」

「聞こえていたのか…まぁ、そういうことだ」

カタンとレーナはレオンの隣の席に座る。

「皆だって時間が経てば考え方は変わるわ。いつまでもあのときの皆じゃないわよ」

「そうだな…お前もずっと見てたからな」

レーナもこの村の出身で、レオン達とは同世代であった。

レオン達5人がやんちゃをしていたのを昔から見ていたからこそ彼女にも今回の件は珍しく思えたのであろう。

「トーポやコニーニョの言うことはわかる。わかっているんだが、俺にはまだその決断は出来ないと思ってな。確かに大きくなった。この村も、俺たち五匹の獣も…だが、大きくしたかったわけじゃないんだ」

レオンは自然とコップを握る力が強くなっていることに気がついた。

「確かに組織が大きければ良いこともあるとは実感している。だが、それ以上に難しさも感じている。5人であれば簡単に意思疎通が出来ていた頃に比べれば明らかに遅く、それを補うための労力も必要になってくる。今の規模ならまだなんとかなる。だが、今のままではいつか間に合わなくなってくる日がいつか来るのではないかと毎晩思うのだ」

「そうね…」

レーナはそう言いながらレオンの手をそっと握る。

「あなたが苦しんでいることは私がよく知ってるわ。それに、忘れてほしくないのはあなた達はこの村の英雄なのよ?この国の誰も出来なかったことをあなた達はやってくれたの。私はそんなあなたたちが誇らしいわ」

「お前にそう言ってもらえるだけでも心が楽になったように思えるよ。確かに俺達は村を救うことが出来たとは思っている。だが、こんな小心者が国を救うことなどできるはずがない…」

「あら?それこそコニーニョが言ってたけど、やってもないことなんだからわかんないでしょ?」

握っていたレオンの手をパンと軽く叩き明るい表情でレーナは話す。

「たまにはこういうこともあるわよ。何十人居ても意見がまとまることもあるし、5人でもまとまらないことだってね」

「それもそうだな」

「でも…」

レーナはそれまでの表情からは一変させ少し暗い表情に変わる。

「私はそんなことは無いと思ってる。思っているけど…」

「どうしたんだいレーナ」

今度はレーナの手をレオンが握り問いかける。

「昔から知っているからこそ、無いと思って入るんだけど…今は揃っている他の4人と進む方向が変わってしまったらと思うと私は少し怖いわ」

レーナの疑念はレオンが考えないようにしていたことだ。

「それは無い…と俺も信じているよ。俺らはいつも5人で一緒だったからな」

「そうね。ちょっと珍しいことがあって必要の無いことまで考えちゃったみたい」

可能性は無いとは言い切れない物だが、その可能性を捨て去り彼らを信用するだけには一緒に過ごしてきた絆があるとレオンはその疑念を心の奥にしまったのであった。

そして、次の日の話し合いで五匹の獣としての方向性が決まったのであった。

【国と歴史③〜5人の男たち〜】最後までありがとうございました。

今回はユールスニアの歴史中編ということで、エルドナスたちがまーったく出てきませんでしたね。

途中から進まなくて進まなくてびっくりしました。あいつら自由だけど書くの楽だな…と思いました。

まだ盛り上がりに欠けるなぁとは思ってるんですけど、中編なんで。

次回はユールスニアの歴史後編ということで、ユールスニアが民主政になった経緯になりますね。ちゃんとまとまるのかしら…今から不安です。

【なんちゃって次回予告】

エル「まさかの主要メンバー全員出番なしの過去回想編!?あれでしょこれ。漫画だとコマの外側黒いやつ!」

ざー「あーそれそれ。そんなイメージで書いてた。それにしてもあれだね。無くなってからわかる大事なものってあるんだね」

エル「どうした急に気持ち悪い」

ざー「君たちがいかに自由に喋ってくれていたかよくわかったよ。セリフでこんなに困ったことあんまりないのに…」

エル「いや、僕ら誰かさんに喋らされてるんですけど…?」

ざー「会話でさ…どうしよって悩んでたら時間だけが過ぎてったよ…次回エル君喋れるか怪しいから次回予告やっときな?」

エル「振りが雑すぎるんだよなぁ…えーっと?次回【国と歴史④〜名声と裏切り〜】次回も…うっわ、お楽しみに出来ねぇ…」

ざー「エル君がそういう事言うのやめてくれないかな!?」

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