国と歴史①〜再会と新事実〜
目的をやっと思い出してちゃんとやることをやり始めたエル君たち。
やっと目的を果たすことができるのでしょうか?
今回僕らがミナを両親のもとに送り届けたのは誰かにそういった依頼を頼まれたからではない。
ぶっちゃけた話僕の…というか、僕のもともと生きていた日本という狭い世界の中で育まれた価値観を満足させるためだけに行ったエゴだとも言えよう。
だから、というわけではないのかもしれないがミナが父親と母親と一緒にいることができたその光景を見れただけで僕は一人満足をしていた。
僕の価値観を押し付けただけの今回の行動に感謝などは必要なんかない。
その時は別にそんなことを考えたわけではなかったのだが、自然とその光景に満足をして帰路につこうと足を上げたところで少女の声が響いた。
「お兄ちゃん待って!行かないで!」
その言葉に上げた足をそのまま地につける。
おそらくはこれからミナとその両親に感謝の言葉を積み重ねてもらうことができるはずだ。
冒険者を始めてからどのくらいの期間が経ったかなどもう覚えてなどいない。だが、依頼を達成して報酬をもらうことよりもその感謝の言葉をもらうことが僕の中の原動力の1つになっていることを確かに感じていたのだ。
それをもらうことを自ら行わない程度には今回のことは自分の価値観を押し付けていると自分自身の中で思っていた。今行けば自己肯定感という人間の欲求の中でも高い地位にある物を得ることができるとわかっていた。それでも今回は違う。ただ自分自身の自己満足のためにやったことだとも理解をしていた。
だから、再びその場を去ろうと一度地につけた足を再びもと来た道なき道へ戻そうとした時背中に軽い衝撃を感じた。
「だめ!行っちゃだめ!おとーさんもおかーさんも行っちゃだめって思ってる!」
背中には僕の体に巻き付くように取り付いているミナの姿がある。
知ってる。
そんなことはわかってる。
でも、これを許してしまったら僕は僕自身の承認欲求を求めるためだけに仕事をするようになってしまう。そんなことは良いと思っていないんだ。
「エル君」
僕がただひたすらにそんなことを考えていると、エーシェの声がした。
「馬車でも言ったけど、私はエル君が何を考えているかなんてわからないわ。でも、今はなんとなくわかっているつもりよ。そのうえで言わせてもらうけど、ミナをここに連れてきたのはエル君がそう言ったからじゃないわ。みんながそうしたかったからここに皆で来たの」
その言葉を聞いた時に僕の狭かった視界は一気に開けたように思えた。
「そうそう!いっつも変な事ばっかり言ってるエルくんだけど、エルくんがやりたいって言ってることは僕もやりたいことだから付いてくるんだよ?嫌だったらちゃんと嫌って言ってるって」
エーシェに続けてヒスイがそんなことを言ってくれるが、ヒスイは自分の言っていることに少し恥ずかしさを感じているときは全く目が合わない。今もそうだ。手を後ろに組みながらそっぽを向いてそんなセリフを吐いている。ほんとにお前はわかりやすいな。
「私はヒスイ様のご意思が私の意思なのですが、あなたのミナを送り届けたいという意思は嫌いじゃなかったから私も付いてきたのですわ。あなた1人で抱えるのは違いますわよ」
こっちもこっちで臭いセリフを言った後にふいっとそっぽを向いてしまう。カミラも…ん?これって人外さんたちの共通要件とかじゃないよね?恥ずかしいときは目を合わせない的なすり合わせでもしてるんですか?
「2人が私の言いたいことを言ってくれたけど、私もミナを両親のところに返してあげたかったのは一緒だから、エル君が1人でそんなふうに悩む必要なんて無いのよ。だから、ね?」
そう言ってエーシェは手を差し伸べてくれる。
背中にいるミナも僕の顔を心配そうに見上げているので僕の意思は折れた。
「わかったよ。馬車の中じゃあんだけ僕をいじってたのに急にそうやってさー。ほんとにずるいと思うよ皆のそういうところ」
僕はエーシェの手を取ってミナの両親のいる家の方に歩みを進め始める。
「おとーさん!おかーさん!この人達が私をここまで連れてきてくれたの!」
ミナのその言葉を聞いてミナの両親は僕達に深々と頭を下げる。
「あー…えっと…そういうのは大丈夫ですから。今回に関しては単純に僕がミナを親の元に返してあげたいと思ったからやったことでそれをそんなに感謝される」
僕の言葉を途中でミナの父親の言葉が遮る。
「それは違います!これはあなた方が受け取るべきものなんです。私達に何ができるかなんてまだわかりませんが、私達が最初にできることはあなた方に娘を無事にここまで送り届けていただいたことを感謝することだけなんです。だから、感謝すら受け取らないなんてことは言わないでください」
そういった考え方もあるのかと僕は1人また考えた。
これはいつもの依頼のように報酬がもともと提示してあるような依頼ではない。
いつもの依頼であれば今2人の行っている感謝を報酬として提示しているのだが、これにはそれがない。だから、彼らは僕らに対して最大限の感謝をしているということになる。
そうか…それすらも受け取らないのは失礼に当たるのかもしれないな。
「すみません。僕のこの行動に関しては全ては自己満足だと思っていたものですから。このように感謝されるのは僕自身の中で違うんじゃないかって思っていた節があったんです。でも、今の言葉で僕の認識が変わりました」
「そうですか…それでは改めて、本当に娘を私達のもとに連れ戻してきてくれてありがとうございました。この感謝は言葉では言い表せないほどに大きなものです。本当に…ありがとうございます」
そういって再び頭を深々と下げたミナの父親の目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。
「ここまでの旅でさぞお疲れでしょうから、ぜひ我が家で少しでもお休みいただければと思いますので…」
そう言ってミナの父親が家の扉を開けたタイミングで母親も顔を上げると表情が一変した。
「まさか…そんな!?」
そう言葉を発すると片膝をついて頭を垂れた。
その行動に周りに居た全員が困惑する。
「まさか、こんなところで再びお会いできるとは思っても降りませんでしたシェナード様」
ミナの母親が呼んだその名前には聞き覚えがあるような無いような…そんな気がした。
『どうせエルくん覚えていないだろうから言うけどシェナードっていう名前は前に王都で見た初代国王の肖像画に描かれていた女王様の名前だからね。エルフの国のお姫様だったっていう』
あーはいはい。ちゃんと覚えてましたよ?
「なぜその名前をご存知なのですか?」
エーシェが先祖の名前を聞いたことで急にお姫様スイッチが入った。喋り方変わり過ぎだぞ?
「それは…」
ミナの母親は長かった髪の毛を上げると、人よりも長い少し尖った形の耳を見せてくれた。
「私もエルフの里の出身でありますゆえ」
そう言って再び膝を付いて頭を垂れる。
「シェナードは私の先祖に当たる者です。私はその血を濃く受け継いだとは聞いていますが…」
僕はそんな話聞いていなかった気もしますが!?
「言われてみればエーシェもちょっと耳が長かったような気もするね」
「いつ見たのよ!?」
さっきまでの貴族モードは終わり僕の方に真っ赤な顔を向けてくる…やっぱあのときは寝てたのか。
「まーまーそういうことなんでこれはあなたのいうエルフのところのお姫様じゃないですよ?だから頭を上げてください」
「これって何よ」
うん。ごめん。モノ扱いしちゃったのは謝るからその…魔法の展開は解いてくれないかな?いつの間に無詠唱魔法なんて習得してたの?そっちのほうが初耳なんだけど?
「そ、そうだったのですか…とんだ勘違いをしてしまいました。申しし訳ありません。ささ、どうぞ中へ」
中に案内されながら僕は1つの疑問に取り憑かれていた。
ミナは父親を見る限りは猫系統の獣人とエルフの母親の間に生まれた娘となるわけだが…
エルフ要素どこ!?
たしかに見た目は結構整っていて幼い割に整った顔立ちをしているなって思ったよ?でもさでもさ?
エルフって言ったらちょっと長めなお耳をしていることで有名じゃん?そうだよね?そうと言って?
そんなわけで改めて僕の前をトコトコと歩くミナをよくよく観察してみる。
歩くたびに揺れる髪とは違い意思を持って動いている頭の上にあるモフ耳…
そも、縦陣の方々の耳ってそこにしか無いんでしょうか?実は上のは飾りで僕達と一緒の位置に耳が会ったりなんてことは…こういうときは博識ドラゴン博士!!
『ヒスイ!獣人の耳って上のが正解?それとも僕らと同じ位置に生えてる?どっち!?』
ヒスイは僕の念話を聞き取ってすごく驚いた表情をしている。
『エルくんなんか真面目な顔してるなって思ったけど、まさかそんなこと考えてたの?はぁ…しょーもな。上のが正解だと思うよ。そんな耳なんて4つあったところで意味ないでしょ?』
『いやいや、上のは飾りという可能性が!』
『いや、無いでしょ飾る意味』
そう言われてみればそうか…
ヒスイに笑顔でグッジョブのサインを出してみたけど、予想通り呆れられた顔をされてしまった。
では、本題のミナのエルフ要素について考察を続けていこうじゃないか!
実際の耳が頭の上に生えているものなのであれば、そこにエルフの要素が含まれている可能性が…
ふと、ミナの父親の耳を見る…
これか!ミナの父親の耳は丸形、それに対してミナの耳は二等辺三角形のように長く先が尖ったような形をしている。つまりつまりつまり!猫系統の獣人とエルフのハーフは三角の耳をしているということになる!
ということは、僕の前世で見ていたモフ耳獣人の方々はあれか遠い先祖などにエルフの血が混じっているとかそういうことになるんじゃないだろうか!!
…いや、種類の問題やろ。
垂れ耳とか三角耳とか丸耳とかそういうのは種類の問題やな。なにを真面目に考えてるんだろうか僕は…。
「あの…立ち話もなんですからみなさんどうぞこちらへ、何もおもてなし出来ないと思いますが」
1人だけクソ真面目な顔で何かを考えながら表情をコロコロ変えているのを呆れた顔で見ているという僕達には伝わる謎のノリと沈黙に耐えかねたミナの母親が提案をしてくる。
「いや、僕らはそういったつもりは全く無くて…」
ほんとにそういうつもりじゃなかったんで!!
「ミナに聞きましたよ。皆さん昨日からずっと馬車に揺られていたらしいじゃないですか。少しは休めるでしょうから」
あーそういえば首都の周りをずっとぐるぐるしてたらいつの間にか朝になってたんだった。そういうの気がつくと急に来るよね眠気…ふわぁ。
こういうのなんて言えばいいの?猫とネズミのアニメーション的な?気がついたら痛い的な?空中に投げ出されていることに気がついたら落ちる的な?そういうのなんて言えばいいのこういうのあーモヤモヤするななんでかわかんないけどモヤモヤするわ。
「やはりお疲れのようですね。さ、どうぞ」
まぁ、僕が寝ちゃったら馬車動かないし、休憩も必要だよね!
そういうことにしておいて僕らはミナの両親の良心に甘えることにしたのであった。
【国と歴史①〜再会と新事実〜】最後までありがとうございました〜。
更新頻度が残念なことになってますね…すいません。ちょっとまたリアルが割と大変なことになってまして…。僕もエル君を見習って生き抜かないと…
今回の内容の中にはきっと一部とか二部とかからずっと決まっていた設定をやっと書くことが出来ました。
設定としては一番最初の最初キャラメイクのタイミングから決まってたんですよね〜やっと書けた。スッキリ。
そんなわけでここからは初期設定の中で決まっていたけど今までかけていなかったことをどんどん放出していけるようにしていきたいなーなんて思ってます。
次回からはユールスニアについてちょっとずつ深堀していきますねー。




