ユールスニアへ!⑤〜異世界転生〜
自分たちのレベルアップが必要であることを悟ったエルドナスたちは自分自身を見つめ直すことにした。
自分とは何なのか。それを探るためにエルドナスはアティと話すことにしたのであった。
「せっかくゆっくり話すんだから立ち話ってのも良くないわねよね。それ」
アティが指を鳴らすと机と椅子が現れる。毎度のことながらなんとも便利な能力である。
二人でそれぞれ向かい合って椅子に座る。
「それで、エル君はどこから聞きたいのかしら?」
「さっきも言ったとおり、僕自身のことだよ。僕がこの世界に来る前の記憶を持った状態でこの世界に来たことは記憶を取り戻した時って言うのもなんだけどそのときにはわかってたんだ。でも、わからないことがいくつかあって、1つ目はなぜ僕が転生したのかってこと」
僕の言葉に頷きながら腕を組んで話を聞くアティ。
「どうして転生したのかってことね?」
「そう。そもそもというかこれが一番僕の中でわかってないんだ。僕の知っている異世界転生とか異世界転移ってのはその転生した先になにか目的があって世界を渡るはずなんだ。僕にはそれがない。その世界に人類の脅威となる存在、例えば魔王とかそういうやつが居るからそれをやっつけてくれだったり、人類の未来を守ってくれって戦闘マシーンにされていくはずなんだけど…僕の場合はそんなことは一切なかった」
「そうね。エル君はあの時たまたま自分の生活が嫌になった国の王女様と出会ってたまたま一緒に冒険者になって、たまたまお互いがお互いに惹かれ合っていった。そして、彼女を救うために戦った相手がたまたま邪神を宿した勇者だっただけだものね」
目を少し細めながらアティは言葉を続ける。
「全ては偶然の積み重ね。もし、あの時エル君のお父さんの家訓にあんなことがなかったら、もし、エル君の誕生日が少しでもずれていたらえーシェとは違う出会い方になっていたからあんなことにはならなかったかもしれないわね」
僕はアティの言葉に違和感を覚えた。
「随分と偶然が重なるんだね。そんなふうに言われると、その積み重なってきた偶然も必然だったんじゃないかと思うくらいには今の言葉には違和感しかないかな。そこから推測されるのは、全てはあの時僕があの勇者と敵対することがずっと前から決まっていたことみたいに思えるんだけどそういう理解でいいのかな?つまりは僕はあいつを倒すためにこの世界に呼ばれたってことになるんだけど」
ふぅーとアティは一つ大きく息をする。
「そんなふうにすべてが上手く行ってくれていればエル君の中に居た私だったり、この世界の神様も満足よね」
「それはどういうこと?」
「それはね…本当に偶然の産物だったの」
・・・は?
「いやいや、今アティここまでのことはすべて必然で誰かの思惑の中で進んでいった話みたいにはなしをしてたじゃん?今までの僕に起きたことがすべて偶然の産物ってそんなことありえるの?」
「それがね〜ありえちゃったのよー。そりゃ私もびっくりよ〜。あーもう無理耐えらんない。ちょっとおもしろそうだから雰囲気作ってみたけどもー無理。自分でやってて笑いそうになっちゃってるんだもん」
何を言ってるんだこいつは…
「あ、私が今言っていることは全部本当よ?考えても見てほしいのよ。なんで私が無理をしてまで、エル君の体に影響が出ることをわかった上で入れ替わったのかってことを。あれは完全に想定外だったの」
つまり、僕があの時邪神と戦うことは誰のシナリオの中にもなかったと…
想定外ということは、想定はあったということなのだろうか。
「そもそも、エル君の転生自体想定外中の想定外なんだからしょうがないじゃない」
僕の転生が想定外と…ほう?どういうことでしょうか。僕の予想すべて壊れたんですけど!?
「ちょっとおもしろかったから聞いてたけど、エル君も随分と面白い方向へ勘違いしているみたいだからもうおかしいのなんのって…ふふっ…ほんとによくそんなことまで想像ができるわね。じゃ、それじゃ本当のことを今から伝えていくわね」
「もうなんでもいいやよろしく…」
僕はその時考えることをやめた。
「まず、さっき話したとおりエル君の転生自体が想定外だったって言ったでしょ?実はそこから私がエル君の中に居たことにつながるんだけど、エル君は肉体と精神はどっちが先にできると思う?」
肉体と精神のどちらが先?そんなこと考えたこともなかったな…
「僕はてっきり一緒に作られているじゃないけどできるものだと思ってたんだけど、違うの?」
「それが実は違うのよ。私もこの世界の事しか知らないから他の世界のことはよくわからないけど、この世界では肉体のほうが先にできるの。その新しくできた肉体に神様がテキトーに選んだ精神…つまり魂をそれはもうよくわかんないけどテキトーに入れるのよ」
おいこら今の話だと神様結構テキトーが多い気がするんだが?
「そもそも人間も他の動物も全ての魂を選別するなんて無理ゲーってやつよ。多すぎるのよ生き物ってやつは。だからぶっちゃけ私達神と呼ばれる者たちも誰にどんな魂が入ったのなんかいちいち確認してられないしそんなことは不可能に近いのよ」
なんだか随分といい加減な管理で僕達というものは作られているらしい。さぁ、ここで言いたいのは一つだ。
「そんなお役所仕事な…」
「そうは言われてもねぇ…私は直接その仕事をしていたわけではないから別に大変だって思ったことは一度もなかったんだけど、その仕事している神様は入れ替わりが早かったわねぇ…みんなすぐにやつれてっちゃうの」
神様にもブラックなお仕事ってあるんですね〜。
「それでね、ここからがなんでエル君が想定外で私がなんでエル君の中に居たのかって話なんだけど、まず、エル君の魂というか、転生前の魂がその体にあるのかってことなんだけど…」
なんだろうこの雰囲気…勝手にゴクリとつばを飲み込みたくなってきた。…ゴクリ。
「エル君の転生前の魂ね。勝手にこの世界に来ちゃってたの!面白いでしょ!」
確かにそれは想・定・外!
面白いかどうかはよくわかんないけど、それは想定外だな…何してんだよ僕の魂…
「そして、なんで私が居たかって話なんだけど、えーっとなんだけあいつ…例の邪神が居るじゃない?アイツのせいで私は怪我という名の精神的な傷を抱えちゃったからちょっとお仕事をお休みしてこの世界をフラフラしてたのよ。自分探しの旅ってやつね」
神様が自分を探してんじゃねーよ。
「ちなみにそのちょっとってどのくらい?」
「ん〜?よく覚えてないけど、たぶん数百年ってところじゃないかしら?まぁ、私からしたらちょっとよ」
それでここ最近全然話してなかったのに数日ぶりに会ったくらいのテンションだったのか。久しぶりとは(概念)?
「それでね〜たまたま見つけたのがあなたの転生前の魂でね?見つけた時はびっくりしたのよ!だって、この世界に魂がフラフラしていることなんてほとんどありえないことなのに目の前にそれがあるんだから」
魂がフラフラってどんな状態やねん…
「しかもその魂は驚くべきことに前世の記憶を持ったままという状態だったの!新しく配られる予定だった魂かなって思ったんだけど、それはありえないことだったのと、ちょっと退屈してたからその魂に興味を持ったってわけ」
なんだそういうことか〜〜って納得するとでも思ったか!!
「前の記憶を持った魂があることがありえないってどういうこと?」
「えっとね、魂ってのは基本的に数に限りがあるの。だから簡単に言うと使いまわしているのよ」
Oh…その表現はやめてほしかったなぁ…
「でも、そしたらもともと犯罪を起こすことに抵抗が全くない人の魂だったら次も犯罪を起こすことに全く抵抗のない人だったり生き物が生まれちゃうでしょ?だから魂は配られる前に浄化って言って前の記憶だったりを一度まっさらに戻すの。だから新しい命に入るはずの魂は何も知らないし何も考えていないって感じなの。それからいろんなことを経験して魂の色が出てくるのよ」
なんとなく話はわかったけど、その魂の浄化をする神様も入れ替わり激しかったりしませんかね?僕ちょっと心配になっちゃう。
「それで話を戻すわね。そのエル君の前世の魂の後をつけていったら、エル君の生まれる前の体があったってわけ。でも、問題はそこから起きたのよ」
その言い方だと僕の魂に何かしらの問題があるみたいに聞こえるんですけど?
「もともとその体に入る予定だった魂がちょうど体に入ろうとしていたのを見てエル君の前世の魂はどうしたと思う?割り込もうとしたのよ。もーその時は誰にも聞かれててほしくないくらい大爆笑しちゃったわ」
あ、僕の魂に問題大ありでしたね。どうもすいませんでした!!
「それでどうなるんだろーって爆笑しながら見てたんだけど」
この女神もこの女神である。どうかしている…
「結局1つの肉体に2つの魂が入っちゃったの!びっくりしたわあんな話聞いたことも見たこともなかったから」
魂の段階から規格外のことばっかりやっててすいませんね…
「それでどうなるんだろーって見てたらねエル君のお母さんが急に苦しみだしちゃったのよ。このままだとエル君は生まれてくる前に死んでしまうって状態ね。そんな話聞いたことない?」
そういえば、母さんからそんなことを聞いたことがあったかもしれない。僕がお腹に居た時に一度体調が悪くなったと。ただ、その時は運良く流産にならずそのまま僕が生まれることになったと。
「そ・こ・で!活躍したのがこの私なのですよ!」
あーはいはいなんとなく話の展開が読めてきたぞ〜。
「別にこんなにおもしろいのにここで終わっちゃうのはもったいないとか思ったわけじゃないんだけど…」
思ってたんですね。わかりました。
「私これでも神様の分類に属するものだって思い出したの」
忘れてたんかい!そんなんだから僕に自称神様呼ばわりされるんだぞ?
「それで、なんとかこのおもし…新しい命を守ってあげようって思ったわけよ」
今面白いって言おうとしてやめたよね?ほんといい性格してるな!!
「でも、私の専門って戦うことだったからそういう専門外のことはちょっと難しくて、集中してなんとか2つの魂を1つの肉体の中に閉じ込めても大丈夫なように力を使ったのね?それからはあんまり良く覚えてないんだけど、気がついたらエル君の中から出られなくなってたの」
ど・ゆ・こ・と!?
「これは私の推測でしかないんだけどね、きっと無理やりそんなことをしたものだから、私の神様の力があなたの体を守って、その肉体から2つの魂が出ていかないようにしていたみたいなの」
つまりはアティが居たから僕が今の僕が居るってことなのか…感謝するか…?いや、でも動機がなぁ…
「どう?私のこともっと褒めてくれてもいいのよ?今のエル君が居るのは私がここに居るからなのよ」
「ちょっとまってね。今アティに感謝するか迷ってるところだから」
「なんでよ!」
「だって考えてみてよ。面白そうだからって理由が一番サイコなんだよ!でも、まぁ、こうやって僕が生きていられるのはアティのおかげってのはよくわかったから感謝はするよありがとう」
「そうそう!素直なエル君はいいエル君よ」
そんなどっかで聞いたことあるようなセリフを…
「ところで、エル君が前世の記憶を取り戻したのっていつ頃だったか覚えているかしら?」
「たしか5歳位だったと思うけど…」
「そう!5年かかったの!」
何にだよ
「それから私も頑張ったんだからね?肉体に入った2つの魂をどうするか考えた私は根気よくゆっくりと混ざるようにちょっとずつちょっとずつ魂と魂の境界を薄くしていったのよ。だから5歳になるまでのエル君はもともと入る予定だった魂を表にだして、エル君の前世の記憶がある魂をちょっとずつ溶かして?いや、ちがうなーそぎ取って?んーまぁいい感じにして」
おいこら僕の魂何されてたんだよ!!
「そうして全部が混ざったのが5歳のときってこと。実はその作業が終わった時に試してみたんだけど、別に外に出ることができるようになっていたのよね〜だから、たま〜に仕事をしに戻ってたんだけど気がついてなかったでしょ」
そもそもアティのことを認識できるようになったのはここ数ヶ月の出来事だからね気がつくはずもないけど、ここ最近ツッコミが入らなかったのはそういうことだったのか。出張扱いしましょう。
「外に出れるようになってたのになんで僕の中にずっと居たの?」
「それはね…」
ちょっと僕から目をそむけて悲しげな表情を見せるアティ…いや、わかってるフリだ。盛大なフリだ。ぜったいツッコミを入れさせるためのなにかだ。絶対にツッコミなんて入れてやるか!!
「せっかく自分のちからで世界に生まれた新しい命なんだから…観察したくなるのは自然なことよね!」
だと思ったぜ!!
「あら、寂しい。ちょっとは反応してくれると思ったのに」
「どうせそんなことだろうと思ってたからね」
【ユールスニアへ!⑤〜異世界転生〜】最後までお読みいただきましてありがとうございました!
そんなわけで前回いい感じに意味深にしたのにこんな感じでなんかすいませんでした!
エル君のという存在は神様からしても完全にイレギュラーな存在だったというのは実は初期設定の中からありました。アティを体の中に宿している理由を考えた時にこれが僕の中で一番しっくり来たからと言う理由です。ごめんねエルくん…
実は書きたかった内容の半分で終わっちゃったっていう大事故が発生しました。
楽しく書いてたらエルくんもアティも喋る喋る。途中ちょっと内容を削ったくらいです。思いっきり書いていたらどこまで文字数が行ってしまったことやら…
と、いうことで、次回もこの感じで進みます。
次回の副題はどうしましょうかね…
とりあえずやりたいことからするときっと〜新しい思いつき〜とかですかね。
そんなわけでよろしくおねがいしまーす。




