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ユールスニアへ②〜売られた喧嘩は買いますよ?〜

ついにたどり着いたユールスニア。

新しい国についてすぐにイベント発生です!

「エル君やりすぎはだめよ」

ゴロツキAに清々しい笑顔を向けている僕の背中の方でエーシェの声がする。

僕は振り向かずにそのままひらひらと手を振り答える。

「ほら、みんな汚い物見たくなかったら馬車の中でお茶でも飲んで待ってましょ。どうせすぐに終わるわ」

「ほーい」

「わかりましたわ」

エーシェの言葉にヒスイとカミラが反応し全員が馬車の中に入ったことを確認してすっと表情を戻す。

「さーて、君には聞きたいことがたくさんあるんだよね〜。素直に話してくれたらすぐに終わるから…ね?」

あらら、どうしたんでしょうか?急にゴロツキAが全身汗だくになってる。そりゃそんなに頑張ってその魔法障壁(バリーラ)から抜け出そうとしてたら汗だくにもなるわな。

「そうだ!試してみたい新しい魔法があったんだけど、聞いてくれないかな!」

僕の言葉にすっごい勢いで首を振る。そんなに首を振ったら根本からポキって行っちゃいそうだけど…

「君は知ってるかな?炎って温度によって色が変わるって」

そう言いながら僕は右手の人差し指をピンと立てて、その指先からろうそくの火ほどの大きさの火を灯す。

僕はゴロツキAに向けて話をしているのに、彼は全く聞いてくれない。独り言みたいになっちゃってるじゃないか。まぁ、いいけど。

「こんなふうに赤色になっている火はだいたい1500℃くらいって言われているんだ。そして…」

ゴゥっと音を立てて指先の火は大きくなり次第に色が黄色がかっていく。

「黄色くなった火はだいだい倍以上の3500℃くらいらしい」

僕がこれだけ話をしているのに一向にこちらを向いてくれないゴロツキA。

「じゃあ、もう少し上げるか…」

再び指先の火は火力が上がり、炎は自然とまばゆい光を放ち始める。

自然と火の色は白色の光を放ち始める。

「この色になるとだいたい6500℃なんだって。ところで、その中にもし僕が同じ炎を灯すことができたら君はどうなっちゃうんだろうね?」

僕の言葉に対して急にこちらを振り返るゴロツキA。なんだ無視していたわけではないのか〜あー良かった。

「ん?どうしたんだい?」

僕の言葉にゴロツキAはどんどんと顔面が青ざめていく。

「やめろ!やめてくれ!わかった話す!話すから!!」

「ん〜そんな安っぽい言葉だけじゃ信じられないなぁ?そうそう!その魔法障壁(バリーラ)は空気を通すのかな?あ、そーだ!火をつければわかることだよね!」

「知っていることはすべて話す!やめろ!本当にやめてくれ!!死ぬよりかはマシだ!死ぬくらいならお前の下僕にでもなんでもなってやるから!」

「その言葉信じて良いんだね?裏切ったらわかってるよね?」

それからはべらべらべらべらとよーしゃべるもんで、知らんくてもいいことまでたーくさん喋ってくれた。

「えーっと?つまり、お前はこの国の東側を縄張りにしているコニーニョスクアーダの一人で、国境を超えてきた人たちを狙って小銭稼ぎをしていたと」

「そ、そういうことです」

ゴロツキAはなぜか正座をしながら僕の質問に答える。正座って万国共通なわけじゃないよね?

「それはその何だっけゴミーノハキダーメの活動か何かなの?」

「コニーニョスクアーダです」

「ああ、それそれコニーニョなんたら。それで?さっきの質問に対する答えは?」

「まぁ、活動のうちに含まれていないと言えば嘘になりますね」

本当になんでも答えてくれるなこいつ。

「そんな事ばっかりしてたらお前らの居場所なくなるだろ?」

「そんなことはないです。あっしらは東の地域を守る自警団が始まりなんであっしらの住んでいる東のコニーミョ村では尊敬されてるんです」

ホントかよ…よそ者には厳しいけれど地元民には優しいのか?

でも、まぁ…こんなのと国に入ってすぐに出会うようじゃこの国の治安って意味では不安しかないよなぁ…

「んーと、じゃあ聞きたいこともだいたい聞けたし、もう行っていいよ」

「へ?」

僕の言葉が予想外だったのかそれはもう目が点って感じだな。

「だから、もうお前帰っていいよ。というかこいつらも邪魔だから連れて帰ってくれ」

ばっと周りを見回すゴロツキA。

僕らヴィジェは基本的に何をやってもいいし一番自分勝手にしているのは僕なんだと思う。僕がそんなんだからみんなも好きなようにやっているのだが、一つだけルールを作った。

僕らは…いや、僕は王都での一件でそうするしか無かったとはいえ、コデティアを手に掛けた。

実際はあの時止めを刺したのはアティなのだが、相手がどんなやつであれやはり後味は悪かった。

だから、もう誰も殺さない。

これが僕らの中での守るべき一つのルールとなったのだ。

だから…

「うぅ…痛ぇ…ぅぅ」

カミラとヒスイにボコられて意識を失っていた残りのゴロツキたちが体を抑えながら起き上がりはじめた。

「みんな怪我はしているだろうけど無事だよ。さ、早くどっか行ってくれ」

「わ、わかった」

ゴロツキAはそれだけ言い残すと仲間のゴロツキたちを引き連れて逃げていったのだった。

僕はそれを見送ってから馬車に戻る。

「終わったよーみんな。ちょっと予定が狂っちゃったけど、ミナのお家の人を探す旅を再開しよっか」

「遅いわよエル君。どんなひどいことをしていたのかと」

えー?なに僕ってそういう事する人だと思われてるの??

「まぁ、いいや。さてと…あれだねそろそろ人のいるところに行かないと今日は野宿になっちゃいそうだね」

「私は野宿なんて嫌よ」

えぇ、わかっていますともお姫様…

「私もできれば避けたいですわね」

お前はヒスイのストーカーしているときに毎日のように野宿だっただろ!!

「僕もやだなー」

うるさいドラゴン黙れ!お前は一番野宿に慣れているはずだ!!

「わかったから…後半の二人はなんで嫌って言っているかわかんないけどわかった。なんとか人のいるところを探そう」

馬車を出発させて長く続く道を移動し始める。

「そういえば、ミナはどのあたりに住んでいたか覚えている?」

「えっとね、お父さんは近くに見える大きなところがこの国の一番大事な街だって言ってたよ」

つまり、首都の近くに住んでいたと…でも首都ではないとなるとちょっと探すのがめんどくさそうだな。

「わかった。とりあえず、その一番大事な街ってところに行けばわかるかな」

そこまで何日かかるか知らないけどね!

ガラガラと数時間馬車を走らせ続けると、太陽はすっかり傾いてきれいな夕日になってしまった。

ギリギリ目視で確認できる範囲内にやっと集落らしきところが見えたんだけど、夜までに間に合うのだろうか?

「エルくーん僕お腹へったよー。ミナもお腹おさえてるからきっとそうだよ!早く晩御飯にしようよー」

ヒスイは腹ペコになるとやかましくなるな…僕ももう腹ペコだからなぁ…

「ヒスイ急ぐから魔法使って。エーシェも馬にもうひと踏ん張りしてもらうから回復魔法よろしく」

「回復魔法は単純な疲労にはあまり効果がないんだけど?」

「そこをなんとか…?」

はぁ〜と大きなため息をつきながらもなんだかんだやってくれるエーシェさんさすがっす。

エーシェには回復魔法を、ヒスイには馬や馬車が受ける空気抵抗を低減させる魔法を発動してもらい馬車のスピードが格段に上がる。

「お前らもうひと踏ん張りしてくれよー?ゴールは見えてるからなー!」

ぶるるっと返事なのかよくわからんけど、馬も答えてくれた。

それから数十分でやっと街に到着することができた。日はもう沈んでしまっていて、空には月がのぼり始めていた。

「よーし。じゃあ、早速宿を探すか…ん?」

大きさとしてはエリーゼの村よりも少し小さいくらいの集落なのだが、エリーゼの村とはだいぶ印象が違うな。

エリーゼの村は国の端っこにあるにも関わらず、色んなものが充実していた。

確かに位置的には国の南東の端にあるから南の方からくる人の玄関口になっているとはいえ、謎に栄えているんだよなぁ…

それに対してここは一般的な村って感じだな。宿屋にも期待はできなそうだな…

加えてここにいる人たちの顔だ…だいぶ疲れているな…

「エル君ここなんだか…」

「そうだね。なにかあるかもしれないけど、僕らができることはないかもね」

「そう…ね。まずは宿に行きましょう」

やっぱりこういうのに一番反応が早いのはエーシェだよな。

ガラガラと馬車を進ませて奥の方にあった宿にすることにした。

今日は一日ずっと働いてくれていた馬たちもしっかり休める場所があったので、明日からの旅でも問題はないだろう。

「それではお部屋へご案内を…おや?」

宿屋の店主が僕ではなく奥を見るので振り返ると、お腹を抑えて下を向くヒスイとミナの姿があった。

「どうやらお連れ様がお腹をすかせてしまっているようなので先に夕食の用意をしましょうか。ただ…」

店主の顔が曇り始める。

「ここ最近この村ヤニーカス村はあまり状況が良くないのです。その影響であまり物が…」

すげー名前の村だなというツッコミは置いておいて空気を読んで対応をする。

「そうだったんですか。大丈夫ですよ。あ、もしよければなんですけど…ヒスイまだなにか余ってるでしょ?」

「んーっとねーあ!お肉余ってる!」

「ということなんで、もしよかったら使ってください。というか、余ってるの全部村で使ってくれていいですよ」

「本当ですか!ありがとうございます!ではぜひこちらの厨房の方にお肉を…」

「エル君きっとこれ厨房埋め尽くすくらいあるんだけど」

お前またそんなに溜め込んでたのかよ…厨房を埋め尽くすくらいって余ってるって量じゃないだろ。

そんなわけで僕らは村の真ん中まで行きヒスイの収納から大量の肉を取り出す。

「ご自由にどーぞ」

村人たちは急に現れた大量の肉という異様な光景にぞろぞろと集まってきた。

「こ、こんなに大量に…よろしいのですか?」

なんか知らんおじさんが話しかけてきた。

「あぁ、申し遅れました。私このヤニーカス村の村長をしておりますヤニゾンと申します。これほどの食料を…」

「別にいいですよ。こいつの趣味なんで。肉集め」

「こういうときに使えるんだから別にいいじゃん」

まぁ、たしかに今回はヒスイの謎の趣味のおかげでみんなの食糧事情が改善したと考えればいい趣味だったと言えるのか…?

「そんなわけで、この肉はこの村にあげますので皆さんで食べてください」

「本当によろしいのですか!?ありがとうございます。本日はもう遅いですから、明日またお礼をさせてください。私の家はあの赤い色の屋根の家ですので」

そのままその日は解散となり、その後ヒスイは宿屋の店主が作ってくれた肉盛りを嬉しそうに食べて居た。

そして、次の日になった。

「昨日は本当にありがとうございました。もうなんとお礼を申し上げれば良いのやら」

べたーっと地面に土下座をするヤニゾン氏。

「たまたま僕の趣味が役立って良かったよ」

ほんとにこの後役に立つことなんてないだろうな…あるのか?

「何かお礼をしたいのですが、この村は今そのようなお礼をすることも難しいような状況でして」

そう言ってヤニゾンも顔を曇らせる。

「えっと、僕らが何かをできるかわかりませんが、お話だけでも聞かせてもらえませんか?」

「それでは、今この村の状況を簡単にお話させていただきます。この村はとある植物を育てて、それを加工して村の外に売り出すことで収入を得ていたのですが、国の規制で売れ行きが悪くなってしまったのです」

ああ、この聞いたことあるような状況だな…アフリカかよ。

「ちなみにその農作物ってなんですか?」

「タバコというものなのですが…」

た、タバコだと!?

「エルくんタバコってなに?」

「タバコっていうのは乾燥させた植物に火をつけてそれを燃やしたときの煙を吸うっていう嗜好品だよ」

「エル君やたら詳しいわね」

いや、だってさ…前世で割と吸ってたほうだったからまさかこの世界でもタバコがあるなんて思っても見なかったんだよ!というか今まで吸ってた人見たことないんだけど!!

「こ、この国にあるタバコってどうやって吸うんですか?」

僕が思ったよりも食い気味で聞いたので、ヤニゾン氏も若干引き気味である。

「タバコを吸われたことがあるのですか!私どもの村で作っているのはこういった器具を使うものでして」

そう言ってヤニゾン氏が取り出したのは…キセルだった。

「この種類を気に入っていただける方は少なく…どうかされましたか?」

初めて実物を見たけどいいねいいね!

「これ、この村で道具一式を購入することってできますか?」

「え、ええ。できますが…まさか購入していただけるのですか!」

「もちろ」

「エル君?」

ぎぎぎっと効果音がでそうな感じで後ろを振り向くとエーシェさんの笑顔がそこにあった。


【ユールスニアへ②〜売られた喧嘩は買いますよ?〜】最後までお読みいただきありがとうございました。

いや〜喫煙者には厳しい世の中ですよね〜。

どんな話にしようかなと思っていたところに聞こえてきた値上げ。そしたらこんな話を思いつきました。

次回は喫煙者の逆風に煽られます!

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