山が騒ぐ⑤〜だめ!〜
山賊の頭との一騎打ちになったエルドナス。
ナーシャ捜索編最終話ですです!
僕はただ今まで加害者だった人間が急に被害者側に回ったときの感想を聞きたかっただけなのに、なぜだかとっても悪役な気分になってしまいました。
どうしてくれるんですかこのモヤモヤした気分…
受け止められたせいでちょっと手が痛いのも相まってモヤモヤはイライラに変わってくる。
こうなったらとことん悪役をやって憂さ晴らしをしていこうじゃないか!
「黙っていたってわからないよ?ねぇねぇ今どんな気分なのか教えてよ〜」
僕の先程の攻撃を受け止めてから膠着状態の続いているところに【筋力強化】を発動させ、さらにできるかぎりの体重をかけて押し込んでいく。
ギギッと金属同士の擦れ合う音は響くがさすがはマッチョなだけはある全く山賊の頭が扱う斧は全く動きそうに無かった。ちょっとショック。
「なんかな〜違うんだよなぁ〜」
なんだか今日は思ったことがポロポロと口からこぼれ落ちていってしまう。
全くそんなつもりはないのについつい独り言のように口からこぼれ落ちていくのだ。
これはストレスだろう。きっとそうだろう。
ストレスを感じているのならばここに居るサンドバ…違った山賊の頭だった。人のことを物みたいに扱ってしまうのは良くないね。反省反省。
さて、このままじゃ僕が完全に力負けをするだけの展開になってしまうのは僕の望むところではないのである。
単純な力の勝負では僕に勝機は無いので、技術(主に魔法)でなんとかするしかない。
さてさて、どうしたものか…
そういえば僕の今持っている武器って僕の魔力でできているんだったよな?
つまり…僕自信の意思で、僕自信のイメージで形を作っているわけで…
別に形が決まっていないって可能性もあるのでは?
「あは☆いいこと思いついた!」
ブワッと再び僕を中心に魔力が溢れ出す。
魔力を固めるために使っていたイメージを今度は固めるのではなく動かす方向で働かせ始める。
二人で武器を突き合わせ続け続いていた膠着状態は唐突に終わりを告げた。
僕の持っていた鎌の先の部分が曲がり始め、そのまま山賊の頭に襲いかかる。
急に襲いかかってきた鎌…だったものを避け僕から距離を取る山賊の頭。
「ああ!?さっきからなんなんだよおまえは!」
「さっきも言いましたよね?死神で〜すよ〜」
鬼気迫る表情の山賊の頭と終始ふざけている僕の噛み合わなすぎる空気感…
一方は命を取られまいと必死に抵抗をしているのに対して、もう一方は完全に遊んでいるようにも見える。
僕自身としては至って真面目にふざけて…いや、至って真面目に…ふざけていると認めることにしましょう。
「なんか力比べしても勝てなそうだから手数で攻めるわ〜」
自ら自分の手の内を明かしていくスタイルであれば正々堂々戦っていると言えるでしょう。
こっちが明らかにおかしな魔法を使っていたところで誰も止めないよ!きっとそうだ!
わざわざ構えてやる義理もないんだけど、なんとなくかっこよさそうだから両の手を前に出して鎌を突き出して構えてみたりなんかしてみる。
先程とは違い刃の部分の形はそのままに柄の部分がぐにゃりと曲がって伸びて山賊の頭に向けて襲いかかる。
ギャン!ギャギャン!と山賊の頭は襲いかかってくる鎌状の何かを必死になって斧で弾き返し続ける。
「あはは!一本じゃまだ手数が足りないかな?もう一本いっとこうか!」
両手で持っていた鎌を右手で持ち、同じものをもう一本左手に造り出す。
「さてさて、手数が倍になったらどうなるかな?」
「ああぁぁぁぁぁ!!!」
奇声を上げながら左右から倍になって襲い来る僕の攻撃に対してなんとか対応をしようしていました。
おじさんが頑張って運動をしているだけでも大変なのに、運動中に大声を上げるものだから段々と山賊の頭のおじさんは肩が上下するほど生きが荒くなりはじめました。
それと、そろそろおじさんの腕は限界のようで少しずつ少しずつ乳酸がたまり始めて動きにキレが無くなって来ているようです。
「おじさんなんだから無理しちゃだめだよ〜?」
ま、一発で終わらすようなそんな面白くもないことはするつもりは一切ないので、できるだけ致命傷にならなような小さな傷をたくさんつけていくようにちゃんとコントロールしないと…
「間違って殺しちゃうかも…ちゃんと手加減しないと…」
あぁ、まただ。
またいつの間にか考えていたことが口からこぼれ落ちていってしまう。
「あーだめだ。いったんやめやめ」
一度魔力の操作をやめて、攻撃を止める。
きっとこのままやり続けていたら手元が来るって間違いが起きてしまうかもしれない…そんなことを考え始めてしまったので攻撃を止める。
山賊の頭hガランっと音を立てて持っていた斧を手から離し、両手をダランと下げ肩で呼吸をしている。
「そういえば、僕のさっきの質問に対してまだ答えてくれて無いですよね?」
「はー…はー…ふざけんじゃねぇ…」
あれー?この人まだ状況わかってないの?
とっても自信満々にこの武器を使って俺は負けたことが無いとか言っていたのに、こんなにボロッボロのフラッフラになって居るのに状況わかっていないとか…
あれですか?残念な頭の構造をされていらっしゃる方ってことなんでしょうかね?そういうことなんでしょう。
「そんなボロボロなのにまだ戦えるとでも思ってるの?」
「うるせぇ!!」
とってもやる気満々じゃないですか〜もう腕も上がらないみたいですけどね〜。
なんかこんなに敵意を向けられちゃうと、やられたらやりかえせの精神が溢れ出てきてしまうな〜。
というかなんで僕はこいつにこんな手加減しながら戦っているんだけっけ?
「なんかもう…どうでも良くなってきちゃった」
もう…どうでもいいか。
どうせこいつはこれまでいろんな犯罪を犯してきた犯罪者で、今回の件で反省をして更生する可能性って無いんじゃないかな?
だったら、これ以上被害を出さないためにもこいつはここで…いや、人間の可能性は無限大だって隣の家のおじいさんの友達の親戚の…えっとあれだよ誰かが言っていた気がする。
最後にこいつの意見を聞いてみようじゃないか!もしかしたらいいやつなのかもしれない…し?
「じゃあ、これが最後ね?おまえがここでこれまでの罪を悔い改め、反省して生きていくと言うならばこの後のことは考えてやらんことはないとも僕は思っているんだけど〜?」
その言葉に対して山賊の頭は僕を睨みつけながら口を開く。
「そんなつもりはないな。クソくらえだ」
ふーん?そうなの?
反省するつもりは一切ないと?
へぇ〜?
「じゃ、いいや。これが君の見る最後の景色だ。出来る限りの苦しみを与えて痛みにのたうち回りながら死んでいけ」
両手に構えていた鎌を振り上げ振り下ろそうとしたその時に、ふと背中に衝撃を感じる。
「エル君…だめ!」
「エーシェ?」
後ろを向くとエーシェがそこに居た。
「あれ?さっきエドガーさんが持ち帰った山賊の子分たちの治療をしてたんじゃないの?」
「あらかた終わったわよ。それにしても…ナーシャも震えていたし、エドガーさんも引いていたわよ」
あらら、ナーシャには悪いことをしちゃったかな。
「エル君。これ以上はもうやめて!」
「なんで?こいつは反省するつもりなんて毛頭ないよ?だったらこいつはここで殺っておいた方がこの世界のためになると思うだけど?」
「そうかもしれないけど…でも、それは…エル君がやることじゃないわ」
それはそうだけれども…
「それはこの国の司法がすることよ。こんなやつのためにエル君が手を汚す必要はないわ」
国の第三王女様がそういうこと言うと説得力が違うなぁ〜。
「でも、誰が手を汚さなきゃいけないなら僕がやるよ。エーシェは目を閉じてて?すぐ終わらせるから」
「嫌よ!」
貴族様というのは聞き分けが悪くて困りますね。僕はせっかく覚悟を決めたっていうのに…
「私がこれだけ言ってもやるのなら…私はエル君のことを嫌いになるわ」
ぐふぁっ!?
「え…エーシェさん?急に何を?」
「私のお願いを聞いてくれないエル君なんて知らないわ」
そんなことを言われてしまうと…これからの新婚生活?に支障が…というか、完全に僕のソロパーティー生活が始まってしまう…
「わかったよ」
指をぱちんと鳴らすと、きれいに鎌が霧のように消えていく。
こいつを連れて戻るとしたら意識あるとめんどくさいなぁ〜。
「エーシェさん?少しだけ目を閉じていただいても?」
「エル君?私の話聞いてたわよね?」
「あーはいはい。じゃあ、目を開けたままでいいや」
くるっと回って山賊の頭の方を向く。
「そんなわけで、命拾いしたね?この優しい子に感謝するんだよ〜?あ、そうだ。僕らの顔と名前がわかるからって復讐とか考えないでね?その時は今回味わった恐怖を煮詰めて濃縮した恐怖を与えてやるからそのつもりでかかってこいよ」
こくこくと無言でうなずく山賊の頭。
「そんなわけで〜チェストォォォォ!!!」
すこし膝を曲げて重心を下げて体の回転を意識して〜相手の鳩尾をめがけて思いっきり正拳突きをぶちかます。
山賊の頭はぐるっと目を回して白目を向いてその場に倒れる。
「エル君…?」
「いや、だって…後ろから斬りかかられても困るから…」
「それをする気ならさっき私達が話している間にできたと思うわよ」
たしかに…僕こいつの前でずっと背を向けながら話していたわけだから、殺ろうと思えば殺れたよね。
「そんじゃ、一旦戻ろうか」
ぐいっと山賊(頭)を持って山賊のアジトから外に出ると、外では見慣れたメンバーが待っていた。
「おまえ…まさか…」
エドガーさんは僕が山賊(頭)を抱えているのを見て顔をしかめる。
「あ、殺ってないですよ〜。こいつの腹にきつ〜い一発を入れて強制的に眠ってもらいました☆」
「そ、そうか」
ふとエドガーさんの隣に布を被せられているナーシャが居ることに気がついた。
「ナーシャ…ごめんね。怖い思いをさせてしまったね」
「一番怖かったのはエルドナス先輩っすけどね」
「ははは…あれは演技だよ演技!」
僕が必死に誤魔化そうとしているのをよそに僕らの反対側で人外たちがヒソヒソと話し始める。
「エルくんなにしたんだろ?」
「きっとひどいことをしたんですわヒスイ様」
はいそこ!うるさいですよ〜!
「とりあえず、こんなふうにこれ連れてきたんですけど、どうすればいいんですか?」
「まずは村に連れて行って…その後のことは俺に任せておいてくれ。ところで…」
くるっとヒスイの方を向くエドガーさん。
「ヒスイちょっといいか?」
「なにー?」
てとてととエドガーさんさんの近くまで歩いてくるヒスイ君の行動を見ているとなんか癒やされるのは僕の心が疲れているからなのだろうか…
「こいつらを全員連れて変えるのはちょっとしんどいからな…ヒスイ乗せてってもらえるか?」
エドガーさんついにヒスイタクシーを使おうとしている!?
「いいけど…エドガーさん僕お肉食べたーい」
「おう!いいぞ!じゃ、頼んだ」
そんなわけで僕らはみんなでヒスイに乗って村に帰ったのであった。
ちなみに、ヒスイ(ドラゴン)の2度目の襲来でエリーゼの村は再び慌ただしくなったのだがそれはまた別のお話である。
【山が騒ぐ⑤〜だめ!〜】最後までお読みいただきありがとうございました。
前回から2周間くらい経ってしまっていました…大変おまたせしたのに…なんか練りきれてない感じ…
不完全燃焼ですが、一旦ナーシャ捜索編はここまでです。
次回からは3章の最後のお話になります。3章が始まってはや3ヶ月半…今月中には…終わらしたいなぁ…あれ?終わるのかな?おわ…る??
今回のお話のラストの方は…ほんとに大変でした…主にドライアイとの戦いが…コンタクトには辛い時間だぜ!
そんなわけで次のお話もよろしくね!
【次回予告】
エル「ざーさん大丈夫?」
ざー「んー?大丈夫だったらもう少し更新頻度は早かったかな」
エル「すごくリアルな話をするのやめてよ…」
ざー「なんか気がついたら3章も残り数話なんだけどさ、びっくりだよね」
エル「なんかこの章の後半って僕変にハイになってなかった?キャラ崩壊?」
ざー「そういうこと言うのやめて?自分で全部打ってるのになんかしらんけど動揺してここのタイプミスハンパなかった」
エル「まーまー落ち着いて。最近”日常”の方もやってるんだから無理すんなよ。そしてそろそろ時間だよ」
ざー「そーねー。あ、もうそんな時間?オッケー!次回!【あとかたづけ①〜お・ね・が・い〜】お楽しみに〜」
エル「嫌な予感しかしない…」
ざー「今回はエル君じゃないと思うよ〜?」




