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山が騒ぐ③〜ぷつんっと何かが切れる音〜

【探索】で手を出してはいけなかったアティの魔力まで使い意識を失ったエルドナス。

アティに怒られながらもその魔力について知ることとなった。

ナーシャ捜索編も後半戦に突入!

僕自信の基本的な物の考え方は楽観的なのだと思う。

正直な話し今までのことが上手く行きすぎていたのは否めない。

実家からある日突然追い出されて1人で生活することになったが仕事は見つけることができた。

勝手に申し込まれた武術祭にもなんだかんだあって優勝することができた。

エーシェと2人でドラゴンと対峙したときも最終的にはドラゴンに気に入られてなんとかなった。

エーシェが居なくなったときも見つけることができた。

邪神の力を使う勇者と対峙したときもなんとかなった。

そう、僕のこれまでの行動はすべて最終的に()()()()()()()()()だけだったのだ。

人生そんなにトントン拍子で進んできていたらどんな人間だって調子に乗る。

僕はその調子に乗っている人間の1人に過ぎなかった。

今回だって僕が行けばなんとかなるとか勝手に思っていた。僕自信の実力なんてとうの昔に見つめることをやめていたんだと思う。

このメンバーさえいればなんて綺麗事を言っているが最終的には自分の力だけでなんとかなるんだと勝手に思い込んでいる人間の末路なんてしれている。

このときの僕には気付け薬が必要だったのだと思う。

お前は物語のヒーローなんかにはなりえない。

お前は無双の力を持った英雄にはなりえない。

お前は物語の主人公にはなりえない。

そうやって謙虚な心を持って行きていくべきだったんだと思う。


ふと目が覚めると揺れていることに気がついた。

体は腹部に硬いものが当たっていてそれ以外は投げ出されている状態に近いことがすぐに分かった。

一定のリズムを刻んでいる揺れの正体はすぐに分かった。

この揺れは僕が知っているものだ。

おそらく意識を取り戻した状態でこれを経験するのは始めてなのだろうが、体が覚えているというのはこのことだろう。

「エドガーさん。僕もう起きたんで大丈夫っす」

これは、エドガーさんに抱えられているときの揺れだ。

「お?起きたか。急にぶっ倒れるから驚いたぞ」

そう言いながら僕をおろしてくれるエドガーさん。

「ははは、僕もまさかぶっ倒れるとは思ってなかったですよ。もう魔力もすっからかんです。ところで、僕は何分くらい意識を失っていたんですか?」

「だいたい10分くらいかしら。それよりエル君体は大丈夫なの?」

10分か…思っていたよりも意識を失っていた時間は短いようだ。

アティとは30分くらい話していた印象だったから向こうで感じる時間とこっちの実際の時間にはズレが生じるのだろう。

便利だな精神世界って!

ああ、そうじゃなかった。心配そうにこっちを見つめてくれているエーシェにちゃんと返事しないと。

「体が怠い感じも無いし、大丈夫だよ」

「そう。それなら良かったわ」

「それにしてもエルくんさっきの魔力すごい量だったけどどこに隠してたの?」

ひょこっと僕とエーシェの間に割って入ってくるヒスイ。

「隠してたって…どういうこと?」

「だって、エルくんっていつも途中で魔力が切れたら戦っている相手から魔力を吸収しながら戦ってるよね。あれだけの魔力があったら相手から吸収しなくても自分の魔力だけで足りるじゃん」

確かにそうだな…さてどうやって乗り切ろうかしら?

ホントと嘘をいい感じに織り交ぜればいいか。

「全部が全部僕の魔力じゃないみたいなんだよね。なんかよくわかんないけど、自分の魔力が切れた時に体の奥からこうブワーって魔力が急に溢れてきたんだよ。ヒスイたちにはそういう経験は無い?」

いっちょ前に腕組みをして考えるポーズをしているヒスイ。

何だそのあざとかわいい行動は…僕とエーシェの時間に割って入ってきた件は不問に処す!

「うーん。そもそも僕魔力が空になるまでなんて魔法を使ったこと無いからなーわかんないや。カミラはそんな経験ある?」

「私も魔力が空になるまでなんて無謀な魔法の使い方はしたことがありませんわ」

うん?カミラ今ボクのことちょっとディスってなかった?

「なのでそういった経験はありませんわね。そもそも私とヒスイ様は人とは違う種ですからそもそもの魔力量が違いますの。同じ経験している可能性があるのはそちらの2人の方では?」

たしかに!この人達基本的に体の構造から化け物だったの忘れてた。

「今失礼なことを考えていませんでした?」

「いや?何のこと?」

勘が良すぎるのですわ!!

「それじゃ、エドガーさんやエーシェはそういう経験ある?」

「ないな」

「ないわね」

あ、はい。やっぱりそうですよね…

「やっぱりエルくんは不思議だよね。あの魔力量は僕らよりも多いよねってカミラと話してたんだよ」

へーそうなんっすか〜…え?

「そんなことってありえるの?」

さっとエドガーさんとエーシェの方を見る。

ふるふると首を横に振る2人…

「ありえないですわ。普通どころか今までの歴史上そういったことは起きていなかったんですの。ですが、実際に私達は目の当たりにしましたから認め座るえないのですが」

そうしたら僕は歴史の新たな1ページを作ることができたんだね!やったぜ!

「でも、エルくんあの魔力なんか変な感じというか…エルくんの魔力じゃないみたいだったからあまり使わない方がいいんじゃないかな?」

おっとこっちのドラゴンも勘が良かった。

「そうだね。気をつけるよ。心配してくれてありがとうヒスイ。ところで、魔力がすっからかんになっているのは変わらないから、誰か魔力を分けてくれないかなーっておもってるんだけど…」

おい全員こっち向け!

なんで目をそらすんだ?

学校の先生が「じゃあ、この問題は〜」って特段誰に回答してもらうか考えていないときの生徒みたいな勢いで目をそらすんじゃないよ!

あれってすごく寂しい気持ちになるんだからね!目の前に何人も人が居るはずなのに誰とも目が合わないのってすごく寂しいんだよ!

「俺のでよかったら使ってくれ」

ありがとうエドガーさん。その不器用な感じがまたいいよね!でも、今はその優しさが一番つらいぜ!!

エドガーさんに差し出してもらった手から魔力を吸収し、再びみんなで歩き始める。

「お前ら、もうすぐエルドナスの言っていた目的地になる。そこで移動しながらこの後の作戦を考えようじゃないか。全員で入っていってもいいんだが、奴らの根城の広さがわからん。突入部隊と待機部隊に分けようと思う」

さっき調べた感じだとたしかにそこまで広い場所じゃなかったからそれが正解だろう。

「突入した場合はほぼ確実に奴らとは戦闘になるだろうからできるだけ近接戦の得意なやつを突入部隊として選ぼうと思うのだが、えっと…カミラだったか?お前はどっちの方が得意なんだ?」

どっちでも行けそうだけど、あの影の魔法使ってもらえたら相手をすぐに拘束できて楽かもしれないな。

「カミラあの影の魔法って暗闇でも使える?」

「光がないところに影ができるわけ無いですわ。無理です。そんなわけなので私は待機部隊を志望しますわ」

すっげー普通のツッコミを入れられてしまった。

それもそうだよな…でも、あれ魔法だからワンちゃんあるかと思ったんだけどなぁ…

「それじゃ、突入部隊は俺とエルドナス。待機部隊はエーシェとヒスイとカミラで行く。突入部隊の俺たちは迅速なナーシャの救助と場合によっては戦闘が中心になる。待機部隊は万が一奴らの残党が外に居た場合は戦闘になる可能性があるから気を抜くなよ。それと中から逃げ出してきた奴らの対処を任せる。いいか?」

「はい」

「わかりました」

「はーい」

「わかりましたわ」

それぞれが自分勝手な返事をする。

みんなの揃わない返事をしてから歩くこと数分。おそらく目的地であろう洞窟を発見した。

洞窟の中からは光が漏れており、かすかにだが人の話す声が聞こえてくる。

洞窟内を反響しているからか内容まではよく聞き取れないが、複数の男性の声がする。

「待機部隊は外の警戒も頼んだぞ」

「わかりました」

3人と別れてエドガーさんと2人静かに洞窟の中に入ろうとした時に思い出した。

「エドガーさん。ちょっと待ってもらっていいですか?」

「どうしたこんな時に」

ふわっとカバンから二枚の布を取り出して光属性の魔法を付与する。

「これをかぶると…わかりますか?」

「お前…また変な魔法作りやがったな。だが、これがあれば相手の懐まですぐに潜り込めるな」

エドガーさんにも姿が見えなくなる布を渡して2人で洞窟の奥に進んでいく。

洞窟はそれほど入り組んだ様子はなく、すぐに光が強い場所に出ることができた。

洞窟の壁から奥の部屋の様子を確認すると、中には【探索(ブスカー)】で調べたときと同じ5人ほどの男性が見えるが、ここからではナーシャの姿は見えなかった。

マントを被っているから相手からは姿が見えないはずなのでゆっくりと音を立てないように奥に進もうとすると、男たちの会話が始まった。

「それにしても親方よくこいつ捕まえられましたね。俺なんて逃げるので精一杯だったのに」

「なーにお前とは鍛え方が違うんだ鍛え方が」

真ん中に立っている一番背の高いハゲ頭がこの会話からするにこの山賊団の親玉らしい。

「それにしてもこんな上玉なかなか出会えねえよな。どうせ後で始末するんだからちょっとくらい遊んだところで変わんねーだろ」

「ははは!ちげーねー!さすが親方面白いことを思いつきやすね」

「後から俺らにもお願いしますよ?」

お前たちの敵は後ろに居るってのに何をのんきに笑ってるんだろうなこいつら。

「じゃ、ちょっと準備すっか」

山賊の親玉が動くと奥にナーシャの姿が見えた。やはりこいつらに捕まっていたらしい。

可愛そうなことにナーシャはギリギリ足が着くくらいの高さで両手を縄で縛られてしまっている。

そして口には布を巻かれていて喋れないようにされている。目は覚めているようだが、抵抗もできないので諦めて黙っているようだ。それにしても典型的な捕まり方してますな…

さて、どうしたものか…どうやってこの状況を打開するのが正解だろうか?

相手は僕達がここに潜入している事に気がついていないし、視線は全員がナーシャに向いているためここでマントを脱いでもすぐには気が付かれることは無いだろう。

だが、このまま声をかけたところでナーシャを人質にされて面倒なことになるだけだろう。

そんなふうに思考を巡らせていると眼の前では僕の想像していなかった出来事が起きたのだった。

ナーシャの服に手をかけた山賊の親玉はその手を思いっきり引きナーシャの服を破り捨てた。

「んんーーー!!」

唸り声を出すことしかできないため必死に声を出して抵抗をしようとしているナーシャだが、この状況では全く意味がない。むしろその状況に山賊たちは喜んでいるようだった。

どうしてさっきの奴らの会話からこの状況が想像できなかったのか自分の使えない脳みそに苛立つ。

誰だってこの状況ならば想像が着くはずの簡単な内容を見落としながらここに居る自分に腹が立つ。

ここに居るのは複数の男で1人ナーシャは縛られているのであればこうなることなんてわかっていたはずだ。お前は前世で何本そういった内容の同人誌を見てきたと思っている。そりゃ数えたことは無いけどさ。

「へへへ、結構いいもん持ってんじゃねーか」

そう言いながら山賊の親玉の手がナーシャの胸に伸びる。

「んんーー!んー!!」

ナーシャの必死の叫びを聞いた時僕の中で何かがプツンと切れたのがわかった。

それがよく言う堪忍袋の緒なのかそれともこれまで保ってきた理性なのかよくわからなかった。

意図をしていないのに体から魔力が溢れてくるのがわかった。

ブワッと室内に広がった魔力を感じ取り山賊たちが辺りを見渡し始める。

こんな奴らと正々堂々なんてやってやらなくていいか。

「エドガーさん…こいつらやっていいっすよね」

「おい、待て!」

エドガーさんの静止が入る前に僕の体は動いていた。

「なんか声がしたぞ!?」

「敵襲か?どこだどこに居る!?」

「お前ら武器を持て、確実に何かが居るぞ」

慌てふためく山賊の様子を見ながら僕は自然と笑っていた。

こんな奴らを楽に殺してやろうなんて思考には至らない。ただただ、弄んでやる。

道具箱(エスクスカー)】から短剣を取り出し両手で構えた僕の姿はただの暗殺者だった。

【山が騒ぐ③〜ぷつんっと何かが切れる音〜】最後までお読みいただきありがとうございます。

ちょこっとエロ展開でしたね。いままでそんなの無かったのに…

構想段階では実はもうちょっとナーシャがひどいことになっていたんですけど、さすがにそれは18禁タグ付けないとまずいんじゃないかってくらいただのエロ同人展開の事後の状態だったので表現を控えました。

残念ながら、ナーシャは登場したときからこうなることが決まってしまっていた大変可愛そうなキャラクターでしたので、後で可愛がってあげることにします(やらしい意味ではありません。普通に優しくしてあげます)。

さて、前半の内容は暗い感じとなっていましたが、あれはエル君が最後にエドガーさんに声をかけるまでに頭の中で繰り広げていた内容をイメージして書かせてもらったものです。

この物語での主人公ではあるけれども、世間一般的な主人公の枠からしたらエル君は強くもないし、ただラッキーだっただけというのが僕の中での結論になっています。それに彼は気が付き山賊に対してもそうですが自分に対しても嫌気が指してプッチン行った感じですかね。ちょっと上手くかけないですけどそんな感じです。

次回から山賊との対決編に入りますね。長さは予定してませんけど、エル君がどういうふうに戦うのかは見ものですね。

【次回予告】

ヒスイ「今思ったんだけどさ。これ、暇じゃない?」

エー「そうね。暇ね」

カミラ「ですが、エドガーは気を抜くなと言ってましたわよ」

ヒスイ「気は抜かないけど、遊んでてもいいのかな?」

カミラ「ヒスイ様?なぜそうなるのですか?」

ヒスイ「暇なんだもん」

エー「そう言われても気を抜かずに出来ることなんてあるのかしら?」

ヒスイ「次回予告以外だったら何でも楽しい気がする」

カミラ「それは…そうですわね」

エー「ええ、それは同感ね」

それ以降3人は口を開くことは無かった。

そんなわけで読んでもらえませんでした…次回!【山が騒ぐ④〜こんばんは…死神です〜】お楽しみに!!

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