山が騒ぐ②〜エルドナスさんの次回作にご期待ください〜
ナーシャの捜索作戦に出かけたエドガー、エルドナス、エーシェ、ヒスイ、カミラの5人が目的地であるエリーゼの村の北にある山についたときにはすでに夜になってしまっていた。
視界の悪い中捜索をするのは難しいと考えたエルドナスは【探索】を使って山賊の居場所を特定しようと剃るが魔力が足りず、模擬戦の時に感じた自分の魔力ではない魔力に手をつけるのであった。
例えば自分の魔力をツボに入った水だったとする。
今の僕の状態はきっとこのツボに入った水をすべて使いきった状態だろう。
水を使い切ったのだけど、まだ水は必要で全然足りない。
そんな時に見つけたもう一つのツボ。
自分のツボには蓋がついていないのになぜかそのツボには蓋がついている。
そして「これに触れるべからず」という注意書きまであったとする。
使っちゃだめと言われたら使いたくなるのは人間の性であり、簡単に言えば使いたくなってしまうのは仕方がないのである。
そんなわけで手を伸ばしてみる。
《魔力の使いすぎはだめよ》
ふと、以前頭の中で響いたアティの言葉がよぎる。
「エル君もうこれ以上はだめよ!」
朦朧としてきている意識の中エーシェの声が聞こえてきた気がした。
左側を見るとエーシェの心配そうな顔が正面にはエドガーさんがいる。
2人が居るなら安心だな。
そうして僕は「触れるべからず」と書かれている張り紙を破り捨てツボの蓋に手をかけるのであった。
ナーシャとの模擬戦の時に感じたあの魔力が体の奥底から溢れ出してくるのがわかる。
蓋のついたもう1つのツボからはとめどなく水が溢れ出てくる。
止めようとも思わないがどんどんと溢れてくるそれを僕は惜しみなく使うことに剃る。
【探索】最大開放!!
自分の魔力ではせいぜい半径100メートルが限界だった僕もこの魔力があれば…
【探索】の範囲は一気に広がり200メートル…300メートルと広がり一気に情報が頭に押し寄せてくる。
今だけでも情報量が多すぎて頭が焼ききれそうになっているのがわかっているのだが、まだ目標は達成ができていない。まだ…足りない…もっと…もっとなんだ!
とめどなく溢れてくる潤沢な魔力を使い更に範囲を広げていく。
エルドナスの異常な魔力量に最初に反応したのはヒスイだった。
「エルくんの魔力量ってこんなに多いんだっけ?」
ヒスイが疑問を持つのも当然だろう。エルドナスは途中で相手から魔力を吸収しながら必要な部分を補いつつという戦法だということを知っているからである。
器用な人間だなと思いつつも種族的に魔力量に恵まれない人間にとっては合理的な戦い方であるとも感じていた。エルドナスの魔力量の正確な量は測れているかと言われればそんなことは無いのだが、今回の【探索】で使用されている魔力の量が異常だとはすぐにわかったのであった。
「確かにエル君の魔力量は多いほうだけど、たしかにこの量はおかしいわね」
ヒスイの言葉にエーシェは同意する。
それほどにエルドナスの使用している魔力量は多すぎるのであった。
「そうですわね。そろそろヒスイ様の魔力量よりも多いのでは?」
「そうだね…もうとっくに僕の最大魔力量よりも多いと思うよ」
龍種が人類種に比べ魔力量が多いのは言うまでもなく、ヒスイやカミラという長命な種族が知る歴史の中で人類種がその他の種族よりも魔力量が多かったという記録など見つからない。
だからこそ人間は神からの祝福を受ける。神からの寵愛を受ける。神からの加護をもらう。
「これってエル君がおかしいってだけじゃないはずだよ。みんな何か起きるかもしれないから準備しておいてね」
「ええ。そうね」
「わかりましたわヒスイ様」
「ま、お前らが止められなくても俺が止めてやるよ」
1人【探索】の操作に集中するエルドナスとそのエルドナスにもしものことがあった時に対応するために臨戦態勢に入る4人。
溢れ出る魔力を使い続けついに山全体を覆うほどの【探索】を発動することができたエルドナスは魔法の発動を止める。
「ここから北東の方向に真っ直ぐだいたい700メートルくらい行ったところに複数人の人が居ます。それ以外にこの山には人が居ないようなので…きっと…そ…こ…」
目の前は真っ暗でほとんど何も見えないのにグラッと視界が揺れるような感覚に襲われる。
「エル君!?」
そのまま立っていられなくなり、地面に膝をつく。
「ちょっと…休めばだい…じょうb…」
大丈夫と言い切る前に僕の意識は途切れてしまった。
途切れた意識はすーっと深いところに落ちていくような感覚に襲われる。ああ、この感覚はきっと…
「エ〜ル〜く〜ん〜?」
ああ、やっぱりそうだ。
ちょっと魔力を使いすぎちゃって僕疲れてるんで狸寝入りかましてもいいっすか?
ま、誰がなんと言おうとそうするんですけどね!というかきっとここ僕の精神世界的な場所だから寝るって感覚が合ってるのかわかんないけど一旦目を閉じていればOKですよね!
「起きてるのわかってるよ?諦めなさい」
そういえばアティって僕の中に居るから僕の考えていることがわかるんだっけ?ずるいなそれ…
諦めて目を開けると腕組みをして明らかに怒っているアティの姿がそこにあった。
さーてなんて言ったら許してもらえるかな?ま、あれだよ。久しぶりに会ったからね。
「お、お久しぶりで〜す」
「エル君そこに座って」
あれれ?おかしいなアティが指指しているの…床だよね?
つまり?
「せ!い!ざ!」
「は、はい!」
もう一度確認しよう。ここはきっと僕の精神世界の中なのである。
確かにアティとはルームシェア的なことをしているのかもしれないけれど、きっとここの主は僕のハズですよね?
なのになぜか僕はここでアティにシエ座をさせられている…何この状況…
あ、精神世界の中だからか全く足に負担がない!すごい!ここなら何時間でも正座ができそうだ!嫌だけどね!
アティがパチンと指を鳴らすと僕の目の前に一脚の椅子が現れる。
でもそれ、きっと僕が座るためのものではないですよね。知ってます。
僕の予想は的中し、当然のようにアティが椅子に腰掛け腕組みをしたまま足を組む。あ、ちょっと見えそ…なんでも無いでーす!
「あの〜?僕の椅子って出していただけたりしないんでしょうか?」
僕の言葉にキッと鋭い視線が飛んでくる。ひぃ…ごめんなさい…
「どうして私が怒ってるかわかるかしら?」
あーこれあれだ。きっと今回選ぶ言葉によってルート分岐があるやつだ。
そして、間違えたものを選んだ場合に待っているのは…BadEndだ。
つまり〜死である。精神的に殺されてしまうのか…嫌だな苦しそう。
だが、こんな状況でも僕は相手を怒らせずに僕が殺されずに済むたった1つの選択肢を僕は知っている。
「すいませんでした!せっかくアティに忠告をもらっていたのに魔力を使いすぎてこうなりました」
誠心誠意謝れば許してもらえないことなど無い!つまり!土下座である。
相手に対して人間の一番弱い部分である後頭部を差し出すような仕草であるこの土下座にまさる謝罪方法など思いつかない!ほんとすいませんした〜!!
「あら、ちゃんとわかってるじゃない。それだけじゃないんだけどね。エル君今私の下着見えそうとか思ってたでしょ」
げぇ…バレてた…
「だいたい私の下着を見ようなんてあれよ…そうあれ…何だっけ?ああ、そうそう!不敬よ!」
なんかこの人おばあちゃんみたいだな。
「それにしてもほんとにやってくれたわね〜使っちゃだめって言ったのになんで使っちゃうかな」
「いや〜だめって言われると使いたくなるというか、そこに魔力があったからと言いますか…」
我ながら言い訳にすらなっていない苦しい言い訳である。
「そんなそこに山があったから登りましたみたいな言い訳しないの」
え?この世界にもその言葉あるの?
「私もなんで使っちゃだめなのかをちゃんと説明していなかったのが悪かったのかもね。反省反省っと」
軽いな〜自分の反省…
「ちなみに使ってはだめな理由というのを聞いてもいいですかアティ様」
じとーっと冷たい目線が刺さるぅ…
「はぁー…エル君あの魔力に触れたの2回めでしょ」
あ、それもバレてたのか…
「そうっすね」
「それじゃ、あの魔力が自分の物でないこともわかってるでしょ?」
「ええ、まぁ…明らかに質が違いますから」
自分の魔力とあの魔力は明らかに性質が違うというのが僕の感想だ。
密度というか濃さというかが明らかに違うのだけはわかった。だからこそ異質に感じたのだった。
「そうと分かっててなんで使っちゃうかなぁ…使っちゃったものはしかたがないから簡単に説明するわね。あれ、私の魔力なの」
あら、それはそれは勝手に使ってしまって申し訳ないです。
「エル君って私が主神様に仕える神の1人だったことは知っているわよね」
…ん?
「えっと…え?」
「あれ?話してなかったっけ?あ、そっか!私が体を借りている時ってエル君ほとんど眠っている状態だったのか」
じゃぁ、知ってるはずないっすよね?
「私は主神様に仕える神の1人だったの。この前戦った自称勇者に取り憑いていたあいつは昔私が追っ払ったのよ」
へーこれ驚くべきなんですかね?わーびっくりー!
「エル君王都での事件から急に私とここじゃなくてもお話できるようになったわよね」
「そういえば、あれがきっかけでしたね」
「あれは体の本体であるエル君に対して私が干渉が出来るようになったということなの。つまり、エル君と私の境界が少しずつ混じり合って曖昧になり始めている証拠なのよ」
アティは神様の1人で〜あの事件以来僕とアティの境界が曖昧になってて〜…どゆこと?
「わかってない顔しているわね」
えへへ…ごめんなさい…
「ヒスイ君たちも冗談気味に半分人間をやめてるって言ってるけど、私ともそういう話をしたの覚えているかしら?」
「最近それ言われすぎてて冗談にしか聞こえないんですよね〜慣れって怖いっす」
「あれ、あながち間違ってないのよ」
「僕正真正銘ただの人間なんですけど!きっと多分おそらく!」
自分の存在を自分で疑うことになるとは思ってもみなかったぜ☆
「エル君はちょっと特殊かもしれないけど正真正銘ただの人間よ。それは間違いないわ」
よかった〜…ちょっと特殊ってのはどの部分なのか考えるのはやめておこう。
「でも、今回私の魔力を使っちゃったことでちょっと人間から片足をはみ出しちゃったかもしれないわね」
はみだしちゃったか〜こそれは困った…あれ?どの辺が困るんだろうか?
「簡単に言うとね。エル君の存在が一歩神に近づいた感じかしら」
うわーすごい全く実感ないし、簡単に言われても全くどうなのかわからない!
神様と呼ばれる方々が人間よりも上位の存在なのだとしたら進化していると考えてもいいのかもしれない。
「全く実感がわかないんですけど、なんか僕に良くないこととかあるんですかね?悪影響的なこと」
「それがねー私の場合は他のとは違って力を貸したり憑依したりとは違うから前例がないのよね。だからわかんないわ」
すっごくいい笑顔ですね!なんだろうその笑顔すっごく不安!
「使わなきゃいいんですよね使わなきゃ」
「そうよ。使わなきゃいいのよ使わなきゃ」
そそそ、そうですよね〜。
「でも、普通にエル君使っちゃいそうだから怖いのよね〜」
なぜバレたんだ!?僕そんなに信頼ないのか!
「そういえば今回私の魔力を思いっきり使ってくれちゃったせいか私の魔力の栓がゆるくなってるみたいなのよね。前よりも抵抗なく使えちゃったり意図していないのに溢れちゃったりするかもしれないわね。気をつけてね」
どうやって気をつければいいのでしょうか!?
「魔力を使いすぎなきゃいいんっすよねわかってますって」
「それもそうなんだけど、ちょっと私の魔力と混ざった感じになるみたいだから…もしかしたら私の魔法も仕えるんじゃないかしら?」
へー…え?
「私の固有魔法は自由自在に武器を創造する魔法よ」
ほほう?それは……かっこいいじゃないですか!そしたらあんなものやこんな物まで作れてしまうということでは!?
「それは無理かも。それにしてもこれは初めて見たわね。エル君て変なところで物知りよね」
はいそこ心を勝手に読まないでくださいね?
「必要があったら使って見てね。作りたいものをこーやって魔力を固めておりゃーってやれば出来るから」
まさかのミスター流ってやつですか!?とりあえず魔力を固めるイメージでいいんですねわかんないけどわかりました。
「そういえばそろそろエル君起きる時間みたいよ?」
「もういろいろと唐突で情報処理が追いついてない感じしてますけど時間なんですね。わかりました」
「あら、意外と聞き分けいいのね」
「そろそろ正座にも飽きてきたんで丁度いいかなって思って」
じとーっとまた冷たい目線を感じる。
「あ、そういえば聞きたいことあったんだった!もうちょっと時間ありますよね」
「なにかしら?」
「みんなに僕の魔法は理論から外れているって言われるんですけど、知ってますか?」
しらーっと目線を外される。
「そろそろ時間みたいね。またねエル君」
これ…絶対に何か知ってるだろ!!
「ちょ、アティ!?」
「そろそろ時間みたいね。またねエル君」
NPCじゃねーんだから同じセリフ繰り返すなよ!!
【山が騒ぐ②〜エルドナスさんの次回作にご期待ください〜】最後までお読みいただきありがとうございます。
エル君色々と人間離れしてましたけど、完全に人間から足を踏み外し始めました。もともと副題を考えついたときには死にかけていることにしててこの副題にしたんですけど、入れ忘れちゃった☆
今回のお話は本筋からは外れてしまっている感じの寄り道みたいなお話なのですが、重要なことはだいたいアティが握っているのでどうしても無いと前に勧めないんですよね。困った人(神)ですよ本当に。
実はなんだかんだとぐだぐだと勧めてまいりましたこの3章も後半に入っていることに最近気が付きました。幕間入れると70話を超えているので長くなってますがまだまだ続くんですよね〜。
4章は大まかな設定だけ決まっているので早く入れたらいいなと思ってます。4章で100は確実に超えると思いますのでその時はよろしくおねがいします…
【次回予告】
カミラ「ここはどこですの?」
ヒスイ「あー…カミラもここに来ちゃったか〜どんまい」
カミラ「ヒスイ様それはどういう…」
ざー「いらっしゃ〜い」
カミラ「どなたですの?」
ヒスイ「残念な人だからざーさんだよ。それ以上でもそれ以下でもないよ」
カミラ「わかりましたわ?」
ざー「絶対わかってないよねそれ…」
ヒスイ「今回も時間無いんで説明はまた次で!次回!【山が騒ぐ③〜ぷつんっと何かが切れる音〜】お楽しみに!」
ざー「ごめんね今回も長くなっちゃった☆」
カミラ「ほんとに何なんですの?」




