初依頼②~スライム…そう…スライムが悪いの~
初めての依頼を決定したエルドナス達。熊退治のために準備を始めるようです。さて、今回はどうなっていくのでしょうか?
「ちょ、エル君?なんで?」
「一番報酬が高いから」
「そんな理由で…まぁ、いいか。エリーこれでお願いね」
「わかりましたー。では、張り切っていってらっしゃーい」
依頼書にポンと受領印を押して簡単に依頼が受理されました。意外と簡単なんですね。
「では、今回のターゲットは一角熊ですね。討伐証明としては額に生えている角を持ってきていただければ完了となります。また、一角熊本体は別料金にて買い取らせていただきますので持ってこれたら持ってきてくださいねー」
別料金にて買い取り!お金のにおい!
「じゃ、行こうかエーシェ」
「行こうかってエル君…。何も準備してないでしょ?」
「準備って何が?」
「ぶっ飛ばすわよ?」
「あ、はいごめんなさい。何をすればいいんでしょうか?」
「とりあえず、回復薬だったりその他もろもろの買い物よ」
「あいあいさー!」
ちんちくりんに連れていかれて商店通りに行くことになった。
「まずは、回復薬なんだけどエル君はいくつ持ってるんだっけ?」
「0だよ」
「なんでよ」
「だって普段攻撃受けることなんてないし?」
「そうね。エル君ならそれも…ってそんなことでいいと思ってるの?」
奥さん見ました?ノリツッコミですって!こんなの初めて見ましたよ。意外とノリがいいんですねエーシェさんって。
「エル君は回復魔法を使えるのかしら?」
「使えませんけど?」
「ならなんで持ってないのよ!」
「だから敵の攻撃にあたるつもりないし当たったことないから?」
「昨日エドガーさんの蹴りくらってたのに?」
「買いましょう。ええ、買いましょうか回復薬」
昨日の蹴りは結構聞いたからな。あんなバケモンだらけの世界だったら僕は生き残ることが難しくなりそうなんですけど…そんなバカげた話はないですよね。でも、あれですよあれ、備えあれば憂いなしってやつですよね。
「ところで、回復薬ってどこに売ってるんだっけ」
「薬屋よ。ほんとに回復薬を買ったことないのね」
「はい…すいません」
ぐちぐとと苦言を投げつけられながら薬屋に入ることになった。
「おじさん。回復薬とか解毒薬とかちょうだい」
「はいよー。何個ずつだい?」
「とりあえず3つづつちょうだい」
「はいよ。ちょっと待ってな」
薬屋というところには初めて入ったけど、いろんな薬が置いてあるものだ。壁一面に棚がありそこには色とりどりのビンに入った薬が並べられていた。初めて見たものを言葉にするのって難しいけど、あれですねこういう時って語彙力さんが急にどっかに行ってしまいます。なぜでしょうか。とりあえずすっげー。
「エル君なんでそんなに目を輝かせているのよ」
「いろんな薬があるなーと思って。今まで薬なんてほとんど使ったことなかったから」
「ほんとに言ってそうだから怖いのよね…」
「おっまたせー。頼まれてた回復薬3つと解毒薬3つね」
「ありがとうおじさん。これ、お代」
「はいちょうど。ありがとね」
なんか仲いいなこの二人。エーシェって僕と同じくらいの時期にこの村に来たはずなのになんでだろうか…。
「またねーおじさん」
「またお願いしまーす」
必要なものは購入することができたので、さっそく依頼に向かうことにしましょう!
「ところでエーシェさん。なんであの薬屋のおじさんとあんなに仲いいの?」
「最初に買い物したときにちょっと話をしただけよ。あんなの普通じゃないの?」
「いやー。店員さんとは必要最低限しか話したことなかったから」
「いろいろ話してみると楽しいわよ?仲良くなっておいて損はないはずよ」
「へー。そんなもんなんかねー。ま、とりあえず準備は終ったから依頼の熊がいるはずの森に行こうぜ」
「そうね。行きましょう」
初めての依頼の対象がいるのはエリーの村の北側にあるエリーの森だ。エリーの村はナレファンス王国の東の端に位置する小さな村で周りは山や森に囲まれている自然豊かでのどかな村である。依頼の内容にある熊が生息しているのはその森だ。
「あ、森に行く前に草原があったわよね。そこで話があるんだけどいいかしら」
「え、何それ怖いんですけど…」
村の入り口を出てからすぐのところに広がる草原に出てすぐのところで止まってと命令されて立たされる。怖いんですけど僕何かしましたか?
草原に風が吹き草原に生える草が揺れる。エーシェとの距離は2メートルほど。決闘でも始まるんでしょうか…。お前の力なんか認めないみたいな?
「森に入る前に…作戦会議よ!」
「作戦会議…?」
なぜそんなことをしなくてはいけないのか…。チームってめんどくさいんじゃないかこれ…
「え、それ…必要?」
「何言ってるのエル君?きみが暴走したときに止めなきゃいけないのは私なんだけど?」
「あ、はい。ごめんなさい」
「じゃ、確認していくのは依頼中の動きの確認よ。基本的にはエル君が前衛で私が後衛でいいかしら?」
「…はい」
「そういえばエル君は弓と剣のどっちがメインなの?それによっていろいろと話が変わってくると思うんだけど」
「うーん。どっちでも大丈夫なんだけど、エーシェが後ろにいるんなら剣がメインかなー。動き方はとりあえず僕が斬りかかって隙を見てエーシェが火の玉ぶっぱなしてくれればって感じかな」
「そうね。あとは、強化魔法に関してなんだけど、エル君は何が使えるんだっけ?」
「【筋力強化】【俊敏強化】【防御力強化】かな」
【時間認識強化】はかなり珍しいと父さんに言われたことがあったから別に隠していても問題ないはずだよね。エーシェさん魔法オタクだから説明しろとか言ってきそうでめんどくさそうだからなー。
「あら、その辺は普通なのね。私も大して変わらないわ…あれ、あんた【魔法障壁】も使えてなかった?」
「あ、そういえばそうだった。エーシェのを見てまねたんだった」
「真似たってあんた全方位で展開してたでしょ?私のとは別物じゃない」
「そうともいう?」
「はぁ…呆れてなんも言う気にならないわね」
「なんかごめんなさい…」
「で、探索の時は俊敏強化を使うわよ。どんな敵が出るかわからないから念には念を入れてね」
「了解!移動も早くなって一石二鳥だね!」
「移動は通常のスピードで行くわよ。見落としたら大変じゃない」
「それもそうっすね」
ということで二人で俊敏強化を発動して森に移動することに。
森の入り口は意外と近くにあったんだけど、森って入り口があるものなんですかね?今立っている所はいかにも―って感じの入り口なんですけど、僕の知っている森とは違っているような気がしますね。
木がたくさん立っているのはなんとなく想像通りなんですけど、木が門みたいに立っているのはなんか違う気がするんですけどね…いかにもって感じの入り口は嫌いじゃないですよ?でも、なんか違う気がするというのがぬぐえなくて…。
「何考え事しているのエル君」
「いや~。なんかいかにも森の入り口ですよーって言われているのはなんか違う気がしてね」
「え?森ってこんな感じなの!?」
「え?違うの?」
この世界の森はこういうのは普通らしいのでカルチャーショック見たなものですかね。入り口と出口がわかりやすくあるのはいいけど、迷いそうで嫌だなー。
「近くに森がなかったから森に入るのも初めてなんだよね」
この世界では…ね。
「じゃあ、これから森に入るけど改めて確認するけど、必要に応じて強化魔法は各自かけること。あと、エル君は魔法弓、私は火の魔法は基本的にターゲット以外には使わないで温存しておくこと。いいわね」
「あいあいさー!」
森の入り口に入ると、高く生い茂った木々が日差しを遮って薄暗くなっていた。地面には低木の木と草やらが生えていて道のようになっていた。これイメージ通りの森のダンジョン的なあれですか?ここでテンプレですか?帰還魔法と移動魔法は覚えてないからめんどくさそうなことこの上ないんですけど…。
森を歩いているとあれなんでしょ?テレテレテレテレテレ~的な感じで敵が現れるんですね。
「なんか考え事しているみたいだけど、熊探しちゃんとやってね」
「大丈夫だよ~。ちゃんと探しているから」
たぶん探すとかそう言うのじゃなくてきっと歩いているうちに急に向こうの方から出てくるんじゃないかな~。
「だから、何を…」
ほら出てきたよ。冒険と言ったら最初に戦う相手って決まってるよね~。
「ほら出た。スライ…」
「【火弾】」
僕の顔の10㎝右側を火の玉が飛んでいく。あれ?いくつかおかしい点があるな。
「ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇ!!」
「何かしら?」
「今何をした!?」
「魔法を使ったわ」
「それはあんなに顔の近くを通っていけば嫌でもわかりますよ!」
「じゃあ、何か?」
「僕の顔の近くを狙ったことと魔法を使うなと言ってから10分もしないうちに魔法を打つなんて何をしてるんだって言ってるんだが!?」
「あれは危険なのよ。本当に危険な魔物なの。だから見つけたら即座に消すのが一番のよ」
スライムが危険な魔物…?危険な魔物だとしたら初めての依頼で一番最初に出会う敵じゃないだろ。
「ちなみに…どのあたりが危険なんでしょうか?」
「…溶かすのよ」
それはそうだ。スライムは栄養を摂取する際に対象を溶かして体内に取り込む。なのだからスライムの攻撃で溶けるのは当たり前なんだけどな…あ、溶けるとあれなのか。
「服が解けると困るってことね」
「うるさい!行動条件変更よ。スライムを見たときは私は退避エル君は対処すること。また、私は退避しながらエル君もろとも焼き殺す勢いで火弾撃つから死ぬ気でよけてね」
今、僕も焼き殺す勢いでって言ってたわね。信じられないわこの子。エーシェ恐ろしい子。
「あ、あの。即座に処理するんで焼き殺すのはやめてほしいです」
「3秒だけ待ってあげる♡」
なんかウィンクしたときにハート出てきたけど、まっ黒だったぞ?怖えよ…。
「さ、気を取り直して進むぞー。さっきの感じからすると数十歩進むと敵が出てくるみたいだから警戒しながら進むぞー」
(30分後)
おかしい…。この森にはスライムしかいないのか?何度エーシェに焼き殺されそうになったのだろうか…。というか見つけてから3秒以内に駆除するとか不可能に近いだろ…。我ながらよくよけていると思うよ。一回だけ当たりそうになって魔法障壁を使ったけど本気で僕のことを殺すつもりで打ってきてるんだよなエーシェさん。
今までに出会った敵はスライムとスライムとスライムとウサギとスライム。実に80%の確率でスライムとエンカウントしているそしてそのうちのほとんどで僕が魔法を食らいかけている。やべぇ…このままはフレンドリーファイアだけで僕が死んでしまう…頼む…頼むよ…死にたくないよぉ。しかも仲間の攻撃で死ぬとか嫌だよぉ。
「あのぉ、エーシェさん?僕一人で対処するんでほんとにそろそろやめてもらってもいいですか?」
「何よ。私のコントロールに不安があるのかしら?」
「いいえ~?コントロールに関しては素晴らしいものですよ。はい。一回だけほんとに僕をめがけてやってくれたので思わず魔法障壁使っちゃうほどでしたよ」
「ほんとになんで敵までかばうのかしら」
「違う…そうじゃない…もういいや…。僕は本当に生命の危機を感じたよ」
「出てくるのがスライムなのが悪いのよ。そして、スライムと同じ方向にいるエル君もついでに悪いの」
「前衛は僕って話だったよね!?」
「それはそれ、これはこれ。射線上にいるのが悪いわ」
「あ、はい。もうそういうことで」
「じゃ、行くわよ」
いい感じの岩を見つけたので補給を兼ねて休憩をしながら話をしていたのだが、僕が一方的にエーシェにやられているようにしか思えない…。もう早く出てきてくれないかな熊さん…。
「そういえば探索系の魔法ってないの?そしたらすぐに対象を見つけることができるのに」
「そんな都合のいいものがあればもう使っているわよ。実際にないことはないんだけど、術者本人への負担が高い魔法とされているわね。私も実際に見たことがあるわけではないからよく知らないけど」
「そっか…今度作ってみるかな…楽をするために」
「魔法を作るなんて…本気で言ってる?」
「え、だって前に使っていた弓の魔法も基本は本に書いてあったやつだけど、矢の作り方を参考にしただけだよ。だから自分でイメージして作ってるんだよ。たまにやっておかないとなまるからね」
「じゃあ、スライムを消し去る呪文も作ってもらっていいかしら」
「のちのち…ね」
「今考えてよ」
「今は気が乗らないから無理~」
「じゃ、いいわ。ほらさっさと行くわよ」
えぇ…興味がなくなるとそれですか…。ひでぇ…。
本当に早く出てこないかなぁ熊さん。
「初依頼②」最後まで読んでいただきましてありがとうございます。熊さんではなくスライムさんがたくさん出てきてエル君はエーシェさんに殺されかけてましたね…。なんか当初の予定よりエーシェが凶暴な性格になってきているような気がするのですが、その辺は何とかなるでしょう…きっとたぶんおそらく。
【次回予告】
飛び交う火弾がスライムとエル君を襲う!どうしてかはお察しいただければ!さて、ついに目標の熊は現れるのか?最後に起きる事件の予感!?次回「初依頼③」お楽しみに!!