そうだ!③〜た、ただいま〜
あまりにもエルドナスの家が遠くしびれを切らしたヒスイの提案により移動方法を徒歩から飛行に変えたエルドナスたち。
今回はヒスイの背中に乗っているところから始まります。
拝啓
父さん母さんお元気ですか。
僕は今、生まれて初めてドラゴンの背中に乗って移動をしています。
初めての体験ですが…感想としては…乗り心地はあまり良くないとだけ言っておきます…
『ひ、ヒスイ?早くない?』
『そう?じゃあもうちょっとゆっくり飛ぶねー』
普通の会話では声が届かないのでヒスイと念話をしながら移動をし始めて数分が経った。
僕の口からまだ半分以下しか移動をしていないと聞いたヒスイは急に元の姿に戻って僕に乗ってと聞かなかった。
ドラゴンに乗るなんて夢みたいじゃないか!なんて思っていた時期もありました。
ヒスイの背中は以外にも広くて乗り心地が良さそうなんて思っていたのは乗るときだけで、乗ってみたらそんなことはまったくなかった。
背中に乗って風を切るということは目の前から思いっきり風が叩きつけられるということを意味する。
今時速何キロくらいで移動をしているのか知らないけど、この風圧はすごいわ〜。
そういえば、時速60キロで移動をしているときに車の窓から手を出すとおっぱいににた感触になるとか聞いたことがあったような…
ということはこの状況は…前進でそれを感じてると言っても過言ではないですね!きっとそうに違いない!
うん。絶対にそうだ!あれだよ、ドラゴンがいる世界なんだから巨人族がいるかもしれないじゃん?それでその巨人族の女の子の胸に溺れた時の感触と思えば…
いや、これ圧殺されるわ…
『エーシェは大丈夫そう?』
『ええ、大丈夫よ?でも…』
僕の後ろに乗って僕の腰に手を回しているエーシェの腕に力が入る。
『今、エル君変なこと考えていたでしょ?』
『な、何のことかな〜?』
エーシェの腕に更に力がこもる…こ、こいつ【筋力強化】まで使って…うぐぅギブギブギブギブ!!
『く、くるしい…』
『あ、ごめんまだ速すぎた?』
ごめんね。ヒスイが悪いわけじゃないんだ。主に僕が悪いだけだからってまだ締め付ける力上がるの?ほんとに中身でちゃうからやめて。
『エーシェほんとにそろそろ中身ぶちまけちゃうから許して』
『あら、私は愛しの夫に抱きついているだけなのに…どうしてそんなことを言うの?』
それはいつの間にか2重に重ねがけされている【筋力強化】を使っての熱烈な抱擁だからですかね?
『い、いや〜それは嬉しいんだけど、ちょっと魔法が重たいなぁと思って…』
『まだ足りないってことね。もう欲しがりさんね』
ちょっと待て…お前いつの間に強化魔法3重で使えるようになったんだ…
『ぎゃ〜〜〜!!』
僕の悲痛な叫びは音ではなく魔法で響き渡ったとさ…
『エル君大丈夫?中身出てない?』
うん。かろうじて…ね。
『そんなに私から抱きついてほしくないなんて傷つくわね』
『エーシェさっきからちょっと楽しくなってきてるでしょ?絶対そうだよね?』
『あら、何のことかしら?』
そういうときだけとぼけるの良くないと思いまーす。
『エル君いちゃついてるところあれなんだけどさ』
いちゃついてるところってなんだよ。殺されかけてたわ!
『エル君のお家ってどっち?こっちで合ってる?』
お前知らないで飛んでたんかーい!
『合ってるよ。今下に見える道をずっと行ったところにあるはずだから』
『これだけ飛んでるのに見えないってすごく遠いね…』
それはうちの父親に言ってもらってもいいですか?僕だって好き好んでそこに住んでいたわけじゃないので。
そういえば、父さんは人付き合いが面倒になったからとは言っていたけど、それならそれほど人が多いわけでもないからエリーゼの村でも良かったはずなのになんでこんなに遠くに住んでいたんだろうか?
もともとはどこかに仕えていたとは聞いていたが…こんなに山奥に住んでいるとなるとその時に嫌なことでもあったのだろうか…
今日帰ったときに詳しい話を聞いてみるか…
そういえば、何も連絡しないで帰ってきちゃったけど、大丈夫かな?ま、大丈夫か!
『エル君!あそこに見えるのってもしかして!』
うーんちょっとまってね?今ね前から来る風がすごくてめちゃくちゃドライアイなんですよ。
もう涙が止まらないのなんでだろうね。
『涙を流すほどお家に帰って来れたことが嬉しかったのかしら?』
『前からの風がすごくて流れてるだけなんだけど?目汁だし!』
『目汁って何よ…』
目から溢れてくる汁をゴシゴシと擦って確認すると見覚えのある建物がそこには見えた。
『あれだよヒスイ!そろそろ下に降りようか。父さんたちびっくりしちゃうから』
『そうだね。じゃ、この辺で降りるねー』
ヒスイが下に降りようとした時ゾクッと背中を寒気が走った。
「エル君…何この感じ?すごく嫌な気配がするわ」
「あははは…なんだろうねこれ…」
間違いなく僕の家の方から飛んでくる謎の威圧感の正体にすぐに気がついた僕は笑ってごまかす。
地面に無事着陸をしたヒスイから降りてヒスイが人の姿に戻るのを確認する前にその威圧感の正体の方から僕らの方に接触をしてきたのだった。
「何をしにきたこのトカゲがぁぁぁぁ!!!!!!」
男性は叫び声を上げながら上に振り上げた剣をヒスイの首に躊躇なく振り下ろそうとした。
【筋力強化】【俊敏強化】【時間認識強化】を発動して【道具箱】から剣を取り出して男からの攻撃を受け止め…きれなかった…
「ぎゃ!うごっ!ぐぇっ!ぐは!」
地面に3回叩きつけられ終いには近くに生えていた木に叩きつけられてしまい変な声が出た。
「げほっげほ!ちょ、ちょっとまってよ父さん」
ちょうど僕がその声を上げたタイミングでボフン!っと煙をあげてヒスイは人の姿に戻ってくれた。
「なんだエルドナスか。おい坊主今この辺にドラゴンいなかったか?」
「え?そうなの!僕ドラゴン見たこと無いから知らない!」
父さん…今お前が話しかけてるやつがドラゴンだよ…そして、ヒスイ…お前ってやつは…
「そうか…それならいいんだ。それにしても戻ってくるなら連絡くらいしろよなエルドナス」
「ははは…た、ただいま…」
僕は特段実家に居たときと変わらない扱いだったから気にしなかったんだけど、他の2人は目が点になっていた。
「おう。そんじゃ家行くか」
津産に連れられて三人で歩いて家に向かう途中でヒスイから念話が飛んでくる。
『エル君大丈夫なの?』
『いつもどおりだから大丈夫だよ』
『エル君がエドガーさんに意識が無くなるまで立ち向かう理由がよくわかったわ』
意識はしていなかったけど、毎日ボコボコにされるまでやってたからそれがそこまでやるのが当たり前みたいになっていたのかもしれない。
『ところで、僕とっさに嘘をついちゃったけど大丈夫かな?後からバレて斬られたりしないかな?』
『大丈夫だと思うよ。怖かったら母さんの前でちっちゃくなればきっと許してもらえるはずだから』
確実に助かる方法はそれだろう…きっとおそらく。
『エル君のお父さんはなんか既視感が有る人が居るからなんとなく感じはわかったわね』
『あーそうそう。エドガーさんに初めて会った時はなんか初めて会った気がしなかったけどそれでか』
『エル君気がついてなかったんだ…』
それもあってエドガーさんに鍛えてもらうことに抵抗がなかったのかもしれん。普通に考えたらあれだよねわざわざ殺されるかもしれない人に鍛えてもらうなんて思わないよね。
つよう人に対して立ち向かうことへの恐怖心というものが無くなるように英才教育を受けたってことかな…
「そろそろ着くぞ。ああ、そうだ。母さんも会いたがってたからなきっと驚くぞ」
「そうなんだ嬉しいな〜」
僕と一緒に着いてくる2人を見ながら父さんは口を開く。
「そんでそちらさんは?」
「この2人は僕の仲間だよ」
「エーシェです」
「ヒスイでーす」
「そうかそうか。エーシェとヒスイな。うちのバカ息子が迷惑かけたりしてねえか?」
かっかっかと笑いながらそんなことを言ってくるお父様…きっとたぶん大丈夫だよ。自信ないけど。
「エドガーさんと訓練をしてくるって言って意識を失って帰ってくる以外は無いですね」
「思いつきですぐに行動しようとするところ以外は無いね」
「お前なぁ…おおそうだ!エドガーは元気か?」
「とっても元気ですよ…」
「それはもうとっても…」
「僕を血だらけにできるくらいには…」
三人で遠くを見てそんなことを口にする。
「かっかっか!あいつも変わらないな。昔はただひたすらに強さを追い求めていただけのやつだったんだけどな。そうかそうか。元気ならいいんだ」
そういえばエドガーさんと父さんの関係って詳しく聞いたことなかったな。
今の口ぶりからするとエドガーさんのほうが先輩ってわけではなさそうだけど。
「よし。着いたぞ!ここが愛しの我が家だ!」
半年しか変わってないから別に変わること無いよね。いつもどおりの実家だね。
「かーさん帰ったぞー。途中でエルドナス拾ってきた」
僕は猫か何かですか?
「え?エルドナスが帰ってきたの!」
バーン!と扉が勢いよく開いて目の前が急に暗くなる。
「おかえりなさいエルドナス!」
ふよんっと顔に柔らかい感触があたる。
僕が反応できないほどのスピードで母さんに抱きつかれていたようだ。
「た、ただいま母さん。ところで抱きつくためだけに【俊敏強化】を使うのと僕が逃げられないように【筋力強化】使うのやめてもらってもいいかな?」
「せっかくの再会なのにそんな事言わないでよ〜」
ぎゅう〜っと抱きつかれ続けるのはまぁいいとして、そろそろ中身が出てきそうなんですけど…
今日ってそういう日なんですか?中身が飛び出しそうになる日ってことでOK?
「あら?あらら?そちらの2人はどなた?」
「聞いてくれよ母さん。この子たちはこいつの仲間なんだってよ。こんなところまでバカ息子と一緒に着いてくるなんて物好きだよな」
実の父親がそういう事言わないでよ…
というかこんなところに家を立てたのはどこのだれでしょうね。
「ちょうど休憩にお茶でも飲もうかって思っていたところだからみんな入って」
僕はズルズルと引きずられながら家に連れて行かれる。僕って引きずりやすいんですかね?
もともとは父さんと母さんと僕で住んでいた家だから椅子は5つも無い。
「あら、立ってお茶を飲んでもらうのも申し訳ないわね。どうしたものかしら」
あーそれなら僕が立っててもいいんですけど…無いなら作ればいいか。
「ちょっと作るから待ってね」
母さんの腕から無理やり逃げて外に出る。
土人形を作るよりただの立方体を作る方が楽だろう。
前にナーシャが使っていた【土操作】を拝借させていただいて…
地面に手をついて魔力を流す。
作るのはそうだな…底面が50センチくらいの正方形でいいか。高さは80センチくらいでいいか。
【土操作】発動!
ズズズっと音を立てて土の形が変わっていく。
「ほい。出来た」
「あらあら、前よりも魔力の操作が上手になっているわね。たくさん練習したのかしら」
「えーっとそれなりには」
「我が子の成長が見れて嬉しいわ〜。ほらお茶入ったから早く入ってきなさい」
魔法で作った椅子を手にして家に入る。
「それじゃみんなでお話でもしましょう。楽しみだわエルがどんな冒険をしていたのか」
「そんなに楽しいものじゃないと思うけどなぁ…」
「そんなことないわよ。そのお話の前にそこの2人のことから聞いておきましょうか」
やっぱりそうなるよねぇ〜。
「ヒスイから行ってみようか。ほら、さっき話した方法を使えば大丈夫だから」
「えーわかったよ。僕はエルくんと一緒に旅をしているヒスイって言います」
「あらあら、そんなに小さいのにすごいのね」
「まだ子供何じゃないのかお前」
おいおいどういうことだよというふうな視線が両親から向けられる。
「僕はここに居る誰よりも年上だと思うよ?証拠にほら!」
ボフンッとわざと煙が出るように変身するヒスイ君。いつものちびドラゴンモードに変身してくれました。
「あら?あらあら?あなたがさっき見かけたドラゴンって」
「お前嘘ついてやがったな?」
『エル君これ大丈夫なの!?』
冷や汗ダラダラのヒスイから念話が飛んでくる。
『大丈夫だよ…そろそろだから』
「可愛いわ〜!」
またも目にも留まらぬ速さで移動する我が母親。
ヒスイはわけがわからないという顔をしながらこっちを見ている。いつの間にか母さんに抱きかかえられながら。
「こんなドラゴンなら何匹居ても嬉しいわ!」
「お前…そいつ自分でドラゴンって言ってるのに大丈夫なのか?」
母さんの身を案じる父さんをよそにニッコニコの笑顔を浮かべている母さん。
「いいの。可愛いものは正義なのよ!」
「そ、そうか…」
ぎゅーっと抱きしめられすべてを察したらしいヒスイがこっちを睨んでくる。
「エル君…こうなるってわかってて変身しろって言ったでしょ?」
「でも、父さんを止めるにはこれが一番だって思っただけだよ」
「え〜る〜く〜ん!」
そんな目をされたところで気にしませーん。
「それでそっちのお嬢さんは?」
「私はエーシェルドと言います。元の名前はエーシェルド=ナレファンスといいます」
「ちょ、ナレファンスって…エル?」
「あらあら?エルどういうこと?それに元の名前って?」
「私達結婚しました♡」
お前…急にいろんなことぶっこむんじゃねーよ…さて、どうしたものだろうか…
「エ〜ル〜?どういうことかしら?説明してちょうだい?」
「ちょっとまってね。今まとめてるから…ちょっと時間頂戴…」
ズズズとお茶を飲んで気持ちを落ち着かせよう。あれ、暑くないのにひどく汗が出るなぁ…不思議だ
【そうだ!③〜た、ただいま〜】最後までお読みいただきありがとうございます。
60話以上ぶりの出演のエルドナス父と母でした。
前は少ししか出てこなかったのでキャラの中身までほとんど考えていなかったんですけど、今回出すにあたり1から考えました。そして、エルドナスの魔法の常識が無いこととかの理由をこの2人から作れたらななんて思っています。
【次回予告】
エル「さて、どうやって父さんたちに結婚したことを伝えるかな」
エー「普通に伝えるのじゃだめなの?」
エル「殺されるかもしれない」
ヒスイ「え?喜ぶことなんじゃないの!?」
エル「さぁ?僕の想像が正しいなら…ガタガタブルブル…」
ヒスイ「エル君が震え始めた!」
エー「どんな家庭環境で育ったのよ…」
エル「実家にもエドガーさんが居るとしたら?」
エー「あ…」
ヒスイ「あ…」
エル「わかってくれたか…ははは…さて、そろそろカンペが…次回!【そうだ!④〜だから話を聞いてって!〜】お楽しみに!」
エー「またエル君が死にかけるのかしら?」
ヒスイ「エーシェ…回復の準備しておかないとね…」




