そうだ!①〜2通のお手紙〜
ナーシャとの模擬戦を終えたエルドナスはその後気がついたら宿屋に寝ていた。
記憶のなくなっていた部分を取り戻す…そんな話です?
今回は思ったより酷いことになってます…
ちょっと落ち着こう。
まだ太陽は昇ってちょうど南中したくらいだからお昼くらいのはずだ。慌てる時間じゃないはず…
目をつぶって一つ大きく深呼吸をする。
「だめだ。全く昨日の記憶が無い。あれからどうなったんだろう僕は…」
ベッドから体を起こしてみようとすると謎の倦怠感に襲われおふとんたちが離れないでと言っているように感じる。だめだ…起き上がれない…
「ぐぅ〜〜」
体はそんな状態だがお腹の虫は無視できないレベルで飯をよこせと言ってくるので重たい体をなんとか起こして服を着替える。
…あれ?なんで僕はこの服を着ているのだろうか?
着替えを始めてから気がついたが、僕が身にまとっていたのは僕がいつも寝るときに着ている寝間着だった。
昨日の僕の記憶では最後に着ていた服はいつも仕事に行くときに着ている動きやすい服と上にコートだったんだけど…なんだコレ怖いな。
カバンの中を調べると、昨日着ていたはずの服はなくなっているからこれまた不思議…?
「ほんとに昨日の僕に何があったのだろうか…なんとなくオチは見えてるんだけどさ…」
謎が謎ってほどにもならない状態だが、腹が減ってはなんとやらなので一階に降りてご飯を食べることにする。
なんかいつも以上に起きたときにお腹が減っている気がするな。いつもは起きたばかりだとあまりお腹が減っていることがなくて食べれないんだけど、今日は無限に食べれる気がする。
もうなんであの服を着ていたのかよりもなんでこんなにお腹が減っているのかがよくわからないということに首をかしげながら一階に移動するといつも通りエーシェとヒスイが食事を終えてお茶を飲んでいた。
いつもながら優雅ですね〜〜。
「おはー」
僕の声を聞いてこっちを向いた2人の顔はなぜか引きつっていた。
何だよ幽霊を見たみたいな変な顔して…
「おはようじゃないわね…もうお昼なのはいつものことだからいいのだけど、エル君体は大丈夫かしら?」
おっと真相を知っているっぽい人発見!
「んーなんか体が重たいのと異常にお腹が減っていること以外は別に問題ないかな〜。ご飯もらってくる〜」
僕が席を去るとエーシェとヒスイがヒソヒソと話を始める。そういうの気になるじゃん!!
ご飯をもらいに行くと、いつもご飯をくれるおばちゃんと受付のお兄さんたちも僕を見るとかなりびっくりした顔をしている。なんでこの人達にもそんな顔をされるのだろうか?
今までも何回かエドガーさんに担がれてここに帰ってきていると話は聞いていたから別に始めてのことではないのだが…。
「おばちゃーん。なんかお腹へってるから今日は多めで〜」
「あ、あぁ。いいけど…あんた体は大丈夫なのかい?」
みんなに同じこと聞かれるな…そんなに昨日はボロ雑巾みたいになってたのかな?
「そんなに大したことないですよ。ありがとうございまーす」
出来上がった僕の|朝食《起きて最初に食べるご飯》を受け取り席に戻ってご飯を食べながら昨日の失われた時間を探ることに。
「なんか今日みんなに心配されたりびっくりされたりしているんだけど、昨日の僕に何があったの?」
僕の言葉を聞いてエーシェとヒスイの2人は顔を見合わせてどっちが話すかを目配せで譲り合ってた。そんなに話したくないの!?
「ちょっと今回はかなりボロボロだったから…あまり聞かないほうがいいと思うわよ?」
「うん。今回はほんとにボロボロだったよ。ボロッボロのドロッドロ」
ボロッボロはわかるけど、ドロッドロってなんだよ。
「どうせあれでしょ?僕が記憶ない時はエドガーさんに担がれて帰ってきたってところまでは察してるんだけど、みんなの反応がちょと大げさな気がしてさ」
はぁ〜っと2人で同時にため息つくの傷つくからやめてよ…
「大げさもなにもないよ」
「そうね。あれは行きているのが不思議なくらいだったわ」
生きているのが不思議って…
「ちょっとそれ気になるからほんとにちゃんと教えて」
「わかったわよ。話せばいいんでしょ…さっき言っていた通り昨日のエル君はエドガーさんに担がれてきたのよ。血だらけの状態で」
へー血だらけねー…へ!?
「それで血がたれている状態で入ってくるのはさすがにってあそこに居る受付のお兄さんたちが冷や汗をかきながらそれを止めるっていう騒ぎになったのよ…でも、そのままだと危ないからってことで外で私が処置したのよ。疑うんだったら外見てくるのはどうかしら?」
さすがにそんなの信じられん…
「そんな嘘つくなって。さすがに信じらんないよ〜」
「嘘じゃないから外見てきなさいよ」
「さすがのエル君でもびっくりすると思うよ」
いやいやそんなまさか〜。
ご飯の手を止めて立ち上がり入り口の扉を開けるとそこに広がっていたのは…
「なにこれ火サス?殺人現場?え?大量出血じゃん…」
血はべっとり…ぶしゃ〜〜…え、怖いんだけど…
まさかの惨状に思った以上にショックを受けて席に戻る。
「あ…うん。ごめんね疑って」
僕の様子を見てちょっと楽しそうにしているエーシェはニヤニヤしている…
「わかればいいの。わかれば。それだけの重症だったからみんなびっくりしているのよ。わかったかしら?」
「…はい。すみません」
いや、まって?別に僕が悪いわけじゃないよね?僕をボロッボロのドロッドロにしたのってエドガーさんじゃん!悪いのはエドガーさんだよ!
「なんでエル君途中から反省するのやめたの?」
なんで僕の心が読めるのかなヒスイ君?
「だってさ…僕がなりたくてボロッボロのドロッドロになったわけじゃないし〜エドガーさんが悪いんじゃないかなって思って」
「エル君がエドガーさんにそんなにされないだけの力を手に入れたらいいんじゃないの?」
あ…すいません…
がちゃっと宿の扉を開ける音とともに1人の少女が入ってくる。
「こんちわーっす!え!?エルドナス先輩!?」
僕を見るなりこっちに近寄ってきたのは後輩のナーシャちゃんですねー。今日も元気そうで良かったよ。
「話には聞いてましたっすけど、外のあれヤバすぎっすね。なんで生きてんっすか!?」
うん。あれには僕もびっくりしたよ〜。
「なんとも無いってわけじゃないけど、エーシェがちゃんと治してくれていたからねー」
確認はしていないけどきっとそうだろうねー。
「へー!私自分以外で治癒の魔法を使える人初めて会ったかもしれないっす!聖属性って珍しいっすからね」
僕も使えないからねーやっぱり珍しいんだ。
「そうね。王都の魔導師団でもそれほど多くなかったもの今まであったことがなくてもおかしくないわよ」
「え!?エーシェ先輩って何者なんすか!?」
「ふふ。そのうちね…そのうち」
何そのミステリアスなお姉さんみたいなキャラ…見た目考えてね?似合わんよ?
「ナーシャってどんな属性が使えるの?」
純真無垢なキラキラした目でナーシャの方を見ているヒスイ君。
ドラゴンって知らなかったらその仕草も可愛いんだけどね〜。
「私は土属性と聖属性っす。水も使えなくは無いんすけど、飲水を出すのに困らないくらいっすかね」
みんな普通に魔法で出した水を飲もうとするけどさ、それって飲んでいいやつなの?
「お湯は出せるのかしら?」
水属性と聞いて真っ先に反応したのはエーシェだった。お前まだそれ探しているのか…
「それは無理っすね。理論的には無理があるとわかってるんすけど、水と火の属性が両方使える人が居たらかもうかもしれないっすね」
「そうねー。理論的にありえないものね…」
「そうだね~…普通はありえない話だよね…」
じと〜と下目でこっちを見てくるお二人さん。なんでこっち見てんだよ。
「なんで2人はエルドナス先輩を見てるんっすか?」
うんうん。それが普通の反応だよね〜。
「エル君は自分の使える属性を全部ナーシャに話してみたら?」
別に減るもんじゃないからいいんだけどさ。
「火と風と光と土かな〜風と土はそんなに得意じゃないけどね」
「確かに…使ってたっすね…眼の前に法則無視した人が居たんっすね」
法則…って何だっけ?
なんか話の方向が良くない方へ向いていきそうだから話題を変えよう。この話はまた今度!!
「そ、それはそうと、昨日の模擬戦の後ってどうなったのナーシャ」
「ひぃ…」
カタカタと震え始めてそれを抑えるように両肩を始めるが、それでもなお震えは止まりそうもない…
そんなに恐ろしいことが昨日起きたの!?
例えば僕がボロッボロのドロッドロになる感じの何かが!
「昨日は私が気軽に模擬戦をしたいなんて言って申し訳なかったっす…まさかあんなことになるなんて…」
なにその開けては行けない箱を開けてしまったみたいな感じ…
「信じられないことばっかり起きたっす…エドガーさんは魔法を使って目の前から消えるし、エルドナス先輩は全く見えていないはずの後ろからの攻撃に反応して反撃をしようとしているし…途中でついていけないって思って抜けてほんとに正解だったっす!途中から目で追うので精一杯っすよ」
「エル君のことだから使える魔法全部使って本気でエドガーさんを倒そうとしたんだろうね〜。負けちゃってるけど」
グサッ!
「ほんとにどんどん人間離れしていくわね」
グサグサッ!
ナーシャとは対象的にしらーっとした目でこっちを見てくる2人の目線は無視して話を続けることにする。
「それでナーシャは最後まで見てたの?」
「私は途中で帰ったっす。これは見ていても参考にならないって思ったんで」
ほんとにそう思ってたんだろうなーってくらい明る表情で答えてくれるナーシャちゃん。
うん。正直なことはいいことだぞ〜。
「そうすると、そのときは僕はボロボロになってなかったのかな?」
「そーっすね。直撃は入ってなかったんであの段階ではあんなに血が出ることは無いと思ったんすけど…」
そうなると、ナーシャが帰った後にエドガーさんのエンジンの回転数が一気に上がったんだろうなぁ…
木刀で血だらけになるまで殴るって単なるリンチだよね!?よくない!!
「そういえば昨日エドガーさんが言ってたわよ?久々に本気をだしちまったって」
エドガーさんの本気…記憶を失っているのは正解なのかもしれないな…
体が記憶を取り戻すことを拒否しているんだ。きっとそうだ。知らなくてもいいこともあるもんね。
「そういえば、先輩たちって今日はどうするんっすか?」
今日の予定か…全く考えていなかったけど、今日は安静にしているのが正解かもしれないな。
「今の所未定かな。ナーシャはどうするの?」
「今日こそ山賊の尻尾を掴むためにあいつらを探し回るっす!」
ぐっと両手でガッツポーズをして気合を入れているような格好をするナーシャ。うん可愛い。
「そっか。頑張ってね」
「じゃ、先輩も無事みたいなんで私はもう行くっす!」
あ、お見舞いに来てくれたのね。ありがとう。
ぴゅーっと手を振りながら走り去って行ってしまったナーシャを見送って一息つく。
「元気な子よね」
「そーだよねー」
なんで2人で長老的な立ち位置でナーシャのこと見てるの?ヒスイはいいけど、エーシェは少ししか変わらないからね?
「それにしても今日はどうすっかな〜」
「エル君は安静にしててね?」
静かな笑顔が一番怖いって知ってますかエーシェさん?
「…はい」
「あ、あの〜。お話中すみません。エルドナス様宛にお手紙が届いております」
そう声をかけてきたのは僕のことを見てびっくりしていた受付のお兄さんの1人だった。
「え?手紙?ありがとうございます~」
手紙を受け取るとほんとに僕宛だった。
1つはイザベラさんのお店のマークが書いてあるから依頼をしていたものだろう。
「これイザベラさんからだね。2人とも確認してもらっていい?」
エーシェに手紙を渡して僕はもう一通の方を確認する。
差出人を見ると母の名前が書いてあった。
エルドナスへ
お元気ですか?
あなたが家を出てからもうすぐ半年になると思うと時の流れは早いものだと感じます。
なんだかんだ言って手紙をくれてありがとうね。それなのに私はあまり手紙をかけなくてごめんなさいね。
私とお父さんは今まで通り元気にいつもどおりの生活をしていますが、やはりあなたが居なくなって少しさみしいなと感じます。もし、時間があるようなら手紙に書いてくれていた話をあなたの口から聞かせていただけないかしら。お父さんも会いたがってるから。
帰ってくる時は別に連絡はいらないからいつでも帰ってきなさい。
遠くからあなたを応援している母より
半年!?
もうそんなに経ってたんだっけ?
あーたしかにそんなくらいたったのか。
武術祭があったのってここに来て数ヶ月経った頃だったしなぁ…その後ヒスイと会って王都へ行ってと考えるとそれくらいか。
家の問題も解決してないし…そうだ!
「ねえねえ2人ともちょっといい?」
「どうしたの?」
「なにー?」
キョトンとこっちを見てくる2人。
「この後みんなで僕の実家に行かない?」
「「え??」」
【そうだ!①〜2通のお手紙〜】最後までお読みいただきありがとうございます。
久々の投稿となりました!ちょっとゲームが楽しすぎて…ははは(^▽^)
今回は修行というか拷問を受けたのではないかというエル君でした。設定上エーシェも成長しているって感じです。ま、武術祭のときにあれだけエル君の怪我を治療してたら上手くもなりますよね。
あと、王都に居る時に暇すぎて魔法の勉強をまたやっていたことになってます。なんだかんだ言ってエル君のために回復魔法を鍛錬しているエーシェが居たと思うと可愛いですね。
手紙が届いたことで急に今日の予定を決めるのがエルドナス流…何でしょうかね?
彼に計画性があったことないですからね。仕方がないです。
さてさて、次回は実家に向けて歩いていく道中でのみんなの会話回となる予定です。この世界の魔法についてちょっと深彫した感じになるのでそれはそれでお楽しみに〜。
【次回予告】
エドガー「エーシェいるか〜」
エー「急に何ですか…ってなんでそんなに血だらけなんですか?」
エドガー「ちょっと本気出しちまった。治療頼む。中に連れてくんなって宿のやつらがうるさくてよ」
エー「それは…その状態を見ればなんとなくわかりました。エル君は生きてるんですか?」
エドガー「生きてると思うぞ?たぶん」
エー「はぁー…すぐに行きます」
エドガー「ん?なんか扉に貼ってあるぞ?次回!【そうだ!②〜魔法の法則〜】なんだコレ?」
エー「無視していいですよ。今は急がなきゃですから」
エドガー「すまんないつも」
エー「そう思ってるならもうちょっと手加減をお願いします」




