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初依頼①~最初の説明はちゃんと聞きましょう~

冒険者登録試験を突破したエーシェとエルドナス。エドガーさん主催の冒険者登録祝いの飲み会もそろそろお開き。次は何が起きるんでしょうか?

僕とエーシェの冒険者登録祝い兼ヴィジェの結成祝いは夜遅くまで続いた。

お酒に弱いらしいエドガーさんは水を何度か起き上がってはトイレに走っていっては戻ってきてまた眠りについてを繰り返していた。あんなに強かったのにお酒でゲロゲロになっているところに見るとなんでこの人に負けたのはちょっと悔しい…。

「じゃ、そろそろお開きにしましょうか。お父さんはもうダメそうなので」

「そうしましょうか。じゃあ、エリーさんまた明日よろしくお願いします」

「明日は朝には冒険者組合を開けるから待ってるわね」

「また明日~。エリーおやすみー」

「おやすみなさい。ほらお父さん…だめかーしょうがないわね」

ぐいっとエドガーさんを引っ張ったかと思うとエリーさんがエドガーさんをおんぶした…?え、ちょっと待って今この人片手でこの筋肉だるま持ち上げた?

「エリーちゃんさすがねー。いつ見てもほれぼれするほど強いわよねー」

え、これもこの店のいつもの光景なんですか?やべーなエリーゼの村。

宿屋に戻り、眠ることにする。明日も早いからな。おやすみなさい。

(夜が明ける…)

冒険者の朝は早い。

新人冒険者だからこそ、依頼に対して万全の準備をするのだ。

冒険者生活1日目だからどのような依頼があるのかすらわからないからまずは自分の体の調子の確認からだ。うん。昨日あんなに動いたけれど痛い部分もないし、筋肉痛もない。生きてるって素晴らしいですね。

次に武器の手入れだ。剣は父からもらった片刃の物でこの辺りでは珍しいものらしい。武器屋には同じようなものが置いていなかったから手入れも自分で行わなくてはならない。「武器の手入れをできてこそ一人前の戦士だ」と言われ続け叩き込まれたのでそれくらいは朝飯前なのである。

剣の手入れを終え、次は弓に弦をつける。弓を常に弦を張っている状態では弓が壊れてしまうので、寝ている間は弦を外しているのだ。ぐっと力を込めて弦を張る。ふと気が付いたのだが、別に本当の弓を放つわけではないのだからこんなに気にしなくてもいいんじゃないかと思うが、それは堕落への道なので考えなかったことにする。

さて、早く目覚めると優雅に朝ご飯をとることもできるから早起きは素晴らしいな。

…っていう夢を見たんだよね。

気が付いたら日は高く高く昇ってきっとあれは南中ってやつじゃないでしょうか…なんちゅう高度だ…なんつって。たしかエーシェとの待ち合わせは冒険者組合の開店時間だったはずだからもう数時間経っていることになるなぁ…冒険者1日目にして命日になるなんて思いもしなかった…。ごめんなさい父さん母さん。でも、僕は思うんだ。男にはやらなくてはいけない時があるんだって!

ダッシュで宿屋から出てそのまま冒険者組合に向かう。あ、入り口のところにエーシェさんがいますね。

「エーシェごめん待たせてしまって」

「…あ?」

ヤバいこれはかなりやばい。

走ってきた勢いをそのままヘッドスライディングの要領で頭から突っ込んで土下座の体勢に入る。スライディング土下座の完成である。

「す、すいませんでしたー」

「遺言はあるかしら?」

「寝坊しました」

「そ、【火槍ランツァ・ディ・フェーゴ】」

「ちょ、ちょっと待って、エーシェ…」

「うるさい!」

ズガガガ!と地面に向けて火の槍がたたきつけてくる。やべぇこいつマジで殺しに来てる。よけられないわけではないが…これ、エドガーさんの時より数多くないか?キリがないんだけど!

「ほんとすいません。なんでもするんで許してください!」

「ふーん。じゃあ、死んで」

「それ以外でお願いします!」

「今なんでもって言ったでしょ!火槍ランツァ・ディ・フェーゴ】!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

村には僕の断末魔の叫びと爆撃の音が響いた。

(ところ変わってエリーの村甘味処)

「本当に…本当に申し訳ございませんでした。以後同じことが無いように気を付けますので」

「もう聞き飽きたわよ。あ、店員さんこのケーキセットお願いします」

「かしこまりましたー。少々お待ちください」

「あの、ケーキセット…とは?」

「で、具体的にはどうやってその寝坊癖を直すのかしら」

「う…早く寝る…とかですかね」

「私は同じような時間に帰って寝たのにあんただけ寝坊したじゃない。どうするか具体的にはっきりと私に伝えなさい」

具体的に…寝坊する理由は寝るからだな…。

「寝るから寝坊するとしたら、寝ないというのが具体的な解決法かな?」

「ばかなの?あんた寝ないで生きているわけないでしょ?あ、ケーキセットこっちですー。ありがとうございます」

ケーキセットを目の前に初めて表情を緩めてくれたエーシェさん。怒っているエーシェにはケーキか、覚えておこう。

「じゃあ、あんたも私と同じところに泊まるって言うのはどうかな。そしたら寝坊することはなくなるでしょ。それ以外却下で」

「あの、おいくらおいくらくらいなんでしょうかそちらのお宿は…」

「一晩100Gよ」

うっわ…12.5倍じゃないっすかー。なんなんすかそのセレブ…。

「文句あるの?」

「無いです」

「じゃあ、それで決定ね。それで?今日はどうするの?」

「とりあえず、この後冒険者組合に行こうかなと思っています…」

「それもそうね。じゃ、お会計お願いね」

「…はい」

伝票を押し付けられ、会計を見ると200Gって見えるんですけど、今日から泊まる予定の宿屋の2倍!?いつもの宿屋の50倍…だと!?え、高くね?

「ありがとうございましたー」

財布が…財布が軽い…何も入っていない…ええ…。

「お金…ないんでお仕事しないと野宿になってしまいますお姉さま…」

「気持ち悪いからその呼び方するのやめてほしいんだけど…」

「すいませんでした…」

とぼとぼとエーシェの後ろについて冒険者組合に向かう。気まずいなぁ。

「いらっしゃーせー。あら、二人ともこんにちは。ずいぶんゆっくりした登場ね」

「すいません。僕のせいです」

「いろいろとあったみたいね。ま、どんな依頼がいいのかしら?」

とは言われても、何をどうすればいいかわからないんですよね。

「あ、そっかー!二人ともあれよね。依頼の種類とかそういうのわからないわよね。今から説明パートに入るけど時間は大丈夫かしら?」

説明パート?今エリーさん説明パートって言いましたよね?いいのかなそういうこと言っても、いろんな意味で大丈夫なのかな?

「「大丈夫です」」

「はーい。じゃあ、新人冒険者研修始めるから研修室についてきてちょうだい。いつぶりかわかんないからうまくできるかわかんないけど、そこは許してねー」

そう言いながら移動するエリーさんの後をついていき、一つの部屋に到着した。あれっすね黒板と机って学校の教室みたいだねー。

「ではではー。初心者冒険者講習を始めさせてもらいますねー。では、エルドナス君号令をお願いしまーす」

「きりーつ。れーい」

「「お願いしまーす」」

「はいはい。あれ、なんで知ってるのエルドナス君?」

「いや、なんとなくこんな感じかなーと思って」

「まぁ、いいや。じゃあ、始めますねー。まずは依頼の種類から説明していきますねー。依頼の種類は2種類あります。一つ目は常設依頼と言ってこの近辺の状況によって内容がたまーに変わることもあるんですが、基本的にはいつもある依頼ですねー。この依頼は依頼主が冒険者組合になります。なので依頼の達成報酬に関しては冒険者組合から支給される形となります。しかし、その方に合っていないと冒険者組合側が判断した場合は依頼を受注することができませんので、ご注意ください。あ、あと、これは失敗しても罰則とかはないんですけど、あんまり失敗しすぎると私たちからの信用がなくなるので、依頼が受注できなくなるのでご注意ください。」

「エリー先生―!基準は何ですかー?」

「先生って何ですか?ま、それはいいとして、いい質問ですねー。私かとお…組合長の独断と偏見ですね!」

独断と偏見って…。おいおいおいおい!いいのかそれで!

「はい。じゃあ、続けますねー。もう一つは直接依頼という物になります。直接依頼は冒険者組合が出している依頼とは違い個人的にお願いしたい人が冒険者組合を通して依頼を出しているものになります。常設依頼よりも報酬がいいことが多いのですが、依頼失敗の場合に罰則金が発生することがありますのでご注意ください」

ま、普通に考えるなら常設依頼をこなしていく方が無難だな。どれくらいの依頼があるかわからないけど、とりあえず今日野宿をしないでいいくらいの稼ぎは欲しいものですね。

「説明は以上ですが、ここまでで何か質問はありますか?」

「はい!エリー先生!」

「はいじゃーエルドナス君。どうぞ!」

「お金がないです!ちょうどいい依頼はありませんか?」

「正直なところはいいですね。うーん。そうですね。エルドナス君たちはとお…組合長からお墨付きももらっているので、今ある依頼であれば問題なく達成できると思いますよ」

この人プライベートと仕事の住み分け苦手なタイプなんでしょうかね。

「今ある依頼見せてもらってもいいエリー」

「はいはーい。ちょっと依頼リスト持ってくるから待っててくださいねー」

そういって部屋から出て行ってしまうエリーさん。

「ところで、エーシェは最初どんな依頼がいい?」

「汚くならないやつ」

「わかりやすくていいね。じゃあ、あれですね。採集とかかな」

「安いわよそれ」

「じゃ、討伐で」

「そうしましょ。前衛はエル君で。汚れたくないからよろしくね」

「おっまたせしましたー。こちらが今ある常設依頼の中でも報酬が高いものになります!」

と黒板らしき何かにいくつかの依頼が張られていく。

・一角熊 1体の討伐 報酬1万G 備考:対象は高価買取中

・沼ガエル 5体の討伐 報酬8千G 備考:対象は臭いので要注意

・森鹿 1体の討伐 報酬8千G 備考:対象は高価買取中

「カエルは却下で」

「でしょうね。だとしたらどうする?」

「私はカエル以外なら何でもいいわよ」

「そしたら、熊でいっか。お金欲しいし」

「いいわよ。ところでエリー。これは正直に答えてほしいのだけどいいかしら」

「な、なんでしょうか?」

「これ、普通に考えたら冒険者登録したばかりの新人がやるような依頼じゃないわよね。どういうことなのかしら」

「そ、それはー」

おーい。わかりやすく目が泳いでるよー?何かやましいことでもあるんですかねー?

「そ、それは、組合長が持って行けって言うから…」

あの人かぁ…最初からこんなハードモード押し付けて来やがって…。何考えてるんだよ。

「それだけなのかしら?」

「うぅ…」

さらに目が泳いでるねー。あれ、さっきの理由より重たい理由あるの?え?そんなことあります!?

「実は…この町に今いる冒険者はお二人しかいなくて…この村の北にある森の生態系のバランスが崩れてしまっているんです」

「そんなことだろうと思ってたわ。それもエドガーさんのせいなんでしょ?」

「うわぁ…やっぱりそんな感じなのかぁ…」

想像はしていたけど、僕とエーシェ以外の冒険者がいないってのはちょっとびっくりしたなぁ。さすがに先輩たちがいるかななんて思っていたのに…。これ、確実に僕たちに全部の依頼飛んでくる状態じゃないですか…。あれ?そういえば…

「でも、居酒屋の店長さんはエドガーさんが僕たちを連れているのを見て新しい登録者ってすぐにわかってましたよね?ということは今は居ないだけで、本当は先輩たちがいるなんてことは…?」

「それもそうね。急に頭が回るじゃないエル君」

急にとは失礼だな。僕の頭はいつだってフル回転してますよ~だ。

「えっと、みんなこの村から出ていったというか…王国のほうに引き抜かれちゃった的な?」

「引き抜かれちゃった的なではなく、引き抜かれたんですね?」

「そうよ!みんなこの村の依頼が楽々達成できるようになるころには王都に行ってしまってそのまま帰ってこないの!みんな村を出るときには口をそろえて『必ず戻ってきますから』って言うのに、いざ王都に行ったらそっちで家を買っちゃいましたとか結婚しましたとか言いやがって帰ってこないのよ!わかるわよ私も王都に住んでたことがあるから!この村よりいろんなものが最新でいいってことはわかるのに…なんで…帰ってこないのよ…」

それは…ここが田舎だからじゃないですかね…?

「でも、僕は今のところここに居ようかなと思ってますし、エーシェはどう?」

「私は王都から来たから戻る気はないわよ」

「みんな最初はそういうんですよね」

「行きませんから!ほらエリーさん!最初の依頼はこれでお願いします!」

僕が指を刺したのは熊討伐依頼だった。

「初依頼①」最後まで読んでいただきましてありがとうございました!さて、ついにエル君たちが依頼に挑戦することになりましたね。長かったですねー。まだ受ける依頼を決めただけなんですけどね。最初の依頼で熊ってどうなんですかね。この前まで戦っていたのが筋肉ゴリラなのでそれよりましなのかなと思ってます。ま、どうなるかわかんないですけど、熊さん退治どうなるんですかね。

【次回予告】

ついに依頼を受けることができた二人だったが。依頼の場所はエリー北の森。どんな相手が出るかわからないから慎重になっている二人です。さて、どこまで準備するのが正解なんでしょうか…?加減がわからないと大変なことになりますよねー。そんな話です。

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