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王都編⑳〜涙と笑顔〜

アヴェンの攻撃をものともしないアティは新たな技を使った。

彼女が言う「与えられた力」で作り出された像。

勇者戦クライマックスです!!

アティの後ろに現れた白色の像は目を閉じて安堵の表情なのか呆れた表情なのか曖昧な表情のまま立っている。

ヒスイにとってはその像がどのようなものなのか知る由もなかった。

ただ自分たちの前に現れた白色の像の後ろ側を見ることしかできなかったがそれに対して、どこの宗教のどのような像なのか、はたまた全く関係の無い像なのかすらわからなかったが畏怖の念などは抱かなかった。

エルドナスが協会を見た時に言っていた違和感という言葉を今になって思い返す。

この像がどのようなものか全くわからないのになぜだか安心をしている自分が居ることに気がついた。

そういった部分で彼は違和感という表現を使ったのかもしれない。

この像が僕達を守ってくれているんだとわかっているからかもしれないが安心をしている。

「がんばれ…」

そんな言葉を自然と呟いていたことにヒスイは気がついた。

その白色の像の向こう側ではまだアティとアヴェンのにらみ合いは続いていた。

新たに現れた像を見て顔色を変えたアヴェンであったがそれも一瞬のことですぐさま視線をアティに向け直していた。

「【神器(クレアラ・デ・)創造(コモリサクレ)】はあの方より授けられた私の力を最大限に活かすことのできる技…あのときもあなたはこれを前に敗走して行ったと記憶していますが」

「アノ時トハ違ウ!」

再び体に魔力を纏い高速移動を始めるアヴェンだったが、アティと向き合ったときほどの濃さで魔力を扱えていなかった。

この戦いの決着は近いように思えた。

再び剣を握る手に力を入れアティに向けて力のこもった剣撃を飛ばす。

それを今までと同じように薙刀でさも呼吸をするかのように簡単に弾き返し続けるアティ。

終わらない攻防がまた始まり始めたかと思ったその時目を閉じていたはずの像の目がゆっくりと開き始めた。

「この像の目が見開いた時があなたの最後…この戦いの終結を意味しています」

アヴェンの攻撃を弾きながらゆっくりと語り始めるアティ。

「あなたの持つその剣が勇者の聖剣であるのであれば折れることはおろかかけることすら無いでしょう。それがただの武器なのであれば…ですが、もし同等以上のものとぶつかりあった時にその剣は耐えられるのでしょうか?」

今日だけでもかなりの数の攻撃を繰り出し続けエルドナスからの猛攻すらも耐えきっているアヴェンの握る剣に刃こぼれなどは一切ない。

それに対してアティが握っている薙刀にはこれまでの攻撃を耐え続けた疲労が徐々に蓄積されているように思えた。

「聖剣は勇者が神より賜る神器。剣を扱えるものには聖剣を弓を扱えるものには聖なる弓を、槌を扱うものには聖なる槌を…あなたはそれがどのようにしてできたかご存知かしら?」

アティからの問に対して黙り続けるアヴェン。

それは知っているからこそ答えないのか、それとも知らないからこその沈黙なのかはわからないがただアヴェンは沈黙を続けるのだった。

「その聖剣もこれまで勇者と呼ばれた者たちが使っていた武器も全ては…()()()()()()()

アティの言葉が終わった時に像の目は完全に開いていた。

「さぁ、終わりましょう。あの時から続いた長く不毛な戦いを」

アティはばっと薙刀から右手を離し両手を広げる。

その動きに合わせるかのように像の後側から様々な武器が現れ始める。

槍に剣、鉾、薙刀、大鎌、大槌と数多くの武器が千手観音の手が伸びるかのように像の後ろから現れ始める。

「はじめはこれかしら?」

今まで持っていた薙刀を扇に戻し帯に刺して手を前に出すと像から武器が1本手元に移動する。

アティが手に持つのは日本刀。

一般的な日本刀の背の部分は光沢のある灰色か黒のような色のことが多いが今握られている物は白かった。それどころか鍔の部分や柄の部分までもが白い。

真っ白の日本刀を構えたアティはこの戦いが始まって初めて自分から前に出た。

先程まで使っていた薙刀に比べれば間合いが大きく違う武器を使っているはずのアティだが、そのことを全く感じさせない動きでアヴェンを追い込んでいく。

少しずつ少しずつアヴェンが後退りをし始めている。

それほどまでにアティの攻撃が激しいのである。

「ウグアアアア!」

攻め続けられる状況を打破しようと声をあげ魔力を放出するコディティア。

その魔力にあてられアティの握っていた日本刀は後ろに飛んでいってしまう。

「まだよ…」

再び手を前に出すと今度は槍が握られていた。

日本刀で戦っていた間合いからほとんど変わらない距離での武器交換に焦るアヴェンをよそに恐ろしい速さの突きを繰り返し始めるアティ。

これまで刃こぼれなどしていなかったコアヴェンが握る聖剣が少しずつ傷つき始める。

輝きを失い、刃を失い、持っている聖剣は徐々に聖剣と呼べるような代物ではなくなり始めていた。

「それはもう終わりね」

槍を持っていたかと思った手には大槌が握られ横から思いっきりぶっ叩かれた衝撃で聖剣は折れ、コディティアも吹き飛ばされた。

折れた聖剣を支えにして必死に立ち上がろうとするアヴェンだが、足は震え今にも転びそうになっている。

「マタ…負ケルノカ?マタ…手ニ入レラレナイノカ?」

その言葉にこれまでのような覇気はなく、ただただ弱々しい声が響いた。

「あなたが抗い続ける限り私達は立ちはだかり続けるつもりよ。だけど、もうこれであなたは負けることもなくなるのだから安心しなさい。これが最後の負けになるわ」

そう言うとアティの手には大鎌が握られていた。

ヒスイの持っている物よりも一回りほど大きいサイズの大鎌を構える。

「奥義【一閃】」

その場に居たはずのアティは消え、いつの間にかコディティアの背後に移動していた。

立ち上がることだけでやっとであったアヴェンは目の前から敵が消えた状況を飲み込むのに時間がかかったがようやく理解をした。

「コレデ…終ワルノダナ…」

「ええ、さようなら」

そう告げられたアヴェンは静かに涙を流していた。

ズバッ!

遅れて斬撃の音が鳴り響く。

その音を最後にアヴェンは前から倒れていった。

その上をもう一度凪ぐように鎌を走らせるアティはその後パチンと指を鳴らした。

「ヒスイく〜ん終わったわよ〜?」

指の音に合わせて空間を包んでいた魔力がなくなり元の部屋に戻っていった。

「彼はどうなったの?」

倒れているアヴェンもといコディティアを見ながらヒスイは尋ねる。

「ん〜。実は私が出てきた時点でもうコディティアという人格はすべて飲まれちゃってたのよ。だからもう救いようがなかったからさくっと」

それ以上は語らなかった。

ヒスイもそれで十分に理解をすることができたからだ。

「エーシェちゃんは大丈夫そう?」

自分が抱いているエーシェは先程からスースーと寝息を立てて眠っている。

「きっと大丈夫だと思うよ」

「それにしてもすごいわよね自力で魔法を解いちゃうなんて」

「あれ、エル君が最後の魔力をぶつけてたんだよ。さすがにエーシェだけじゃ…ところでエル君は!?」

話しているところでエルドナスのことを思い出したヒスイ。

「大丈夫よー?私はそろそろ帰るからそしたらエル君が戻ってくるわ」

「無事…なんだね」

ヒスイはほっと胸をなでおろす。

「そのことであなたには伝えておきたいことがあるのだけどーーー」

それまでのおどけたような話し方から一変したアティの話をヒスイはただ聞いてうなずくのだった。

「じゃあねヒスイ君。また会える時があるといいわね」

「助けてくれてありがとうアティ。この話はどうすればいいのかな?」

「んー?エル君には少しずつ話していくつもりだからあなたから話す必要は無いわよ。じゃばいばい!」

アティは現れたときと同じように光に包まれ消えていった。


「ーーー君!ール君!」

声がする?

なんで僕にはまだ感覚が残っているんだろうか?

さっきまでアティと話をしていたはずだ。

その時にはもう僕は胸を貫かれ手にも力が入らなかったはず…。

そうか、これは夢のようなものなんだろう。

きっとそうだ。

あの声は確実にエーシェの声だけど、これはきっと罠だ。

知り合いの声で呼びかければ起きると思うなよ?

あれだろ?これ起きたら死後の裁判がスタートなんて展開なんだろ?

知ってるよーだからこそ僕は狸寝入りをかましてやりますよ。

へっへーんどんなもんだい!まさかこんな状況で狸寝入りを選択するようなやつは居なかっただr…

「さっさと起きなさいよ!」

バチンッ!と大きな音と頬への衝撃で飛び起きる。

「いってぇぇ!」

「何よ起きてるじゃない」

「エーシェ何してんの!?」

エーシェを見ながらオロオロするヒスイと何故か僕の上に乗って腕組みをしているエーシェが居た。

痛いってことは夢じゃない?

「もう少し優しい起こし方はなかったのかな?」

「何度か名前を呼んでから思い出したのよ。エル君って寝ている時に簡単に起きないって」

それはそうなんだけどさぁ…。

ほらもう少し感動の何かしらがあってもいいじゃないか…。

「でも…本当に…」

僕の顔を見て急にうつむくエーシェ。

「生きててくれて良かったぁ…」

顔をあげると笑顔なのに涙を流していたエーシェに抱きつかれた。

「ごめんね心配かけたね」

「首輪をしていたときもずっと意識はあったの。二人に言いたくもないのに酷いことも言っちゃったし、ヒスイは柱に刺さってるし、エル君は刺されるしで本当に本当に二人共心配していたんだから!」

「本当にごめんね」

「許さない!謝ってもこれだけは許さないから!約束して!」

抱きつかれていたところから急に肩を掴まれエーシェと向き合うことに。

ああ、せっかくキレイに化粧をしていたんだろうけど涙でボロボロになっちゃってるね。

「もう二度とこんな危ないことはしないで。もし、同じようなことがあるんだった私も連れていきなさい」

まっすぐと見つめられてこれはさすがにふざけられないと悟る。

目を閉じゆっくりと約束に対しての答えを言う。

「わかったよ。これからはエーしぇと一緒にうむぅ!?」

あまりに突然のことで反応ができなかった。

目を開けるとおかしいさっきでも十分に近かったエーシェの顔が近いなんてもんじゃないというかくっついてるねこれ。

僕のファーストキス奪われたんですけどぉ〜〜?

「エ、エーシェ!?」

「何よ」

「いや、なんというかびっくりしたと言うかなんというか」

恥ずかしくて目が見れないんですけど…。

「何よそれ。エル君もしかして初めてだったの?」

まぁ、エルドナスの体ではね

静かにうなずく。

「そ、じゃあ私はエル君の初めてになれたのね」

すっごいドヤ顔をされたんですけどなんででしょうかね?

まぁそのドヤ顔も可愛かったのでいいんですけど。

「それにしてもエーシェがまさか王女様とは驚いたよ」

「上手く一般人に馴染めていたでしょ?」

ヒスイと顔を見合わせる。

「「いや、まったく?」」

「え?そうなの!?どの辺りが?庶民の言葉も学んだし、いつか一人で旅に出た時に気が付かれないように昔から準備をしていたのに!」

今思い返してもちょこちょこと出てくるブルジョワ発言や異常なまでの王都の知識は完全に常軌を逸する状態でしたからねー。王族ってのはちょっとびっくりしたけど。

「きっとそういうところだよエーシェ」

「ええ?難しいなぁ〜」

頭を抱えるエーシェを見てヒスイと笑う。

ああ、やっと帰ってきてくれた。

僕の願いは通じたんだな…。ありがとうアティ。

「それでこれからどうしよっか?ところでエーシェさんそろそろ降りていただけませんか?おm」

「何?」

「いえ、そろそろ姿勢を変えたいなぁ〜と思いまして」

「そう?」

いかがわしいものを見るような表情で僕のことを見つめながら渋々と僕の上からどいてくれるエーシェ。

やっと立ち上がることができて体を見てみるとふくには穴が空いていてそこには血のシミができていた。

本当に僕は刺されてたんだなと実感する。

でも、どうして僕は無事なのだろうか…?

「どうするもこうするもあれに関しての報告があるわね」

指をさす方向にはコディティアが居る。

「僕も刺されてから起きるまでの記憶が無いから説明も何もできなんだよ」

「私もよ。エル君が刺されたのを見て駆け寄った後にコディティアに蹴られて意識を失ってたもの。ヒスイは?」

「僕はほとんど全部見ていたと思うよ」

そこから聞かされた話は衝撃でしかなかった。

僕が手も足も出せずにやられた相手をボコボコにしているという話はもう夢なんじゃないかと思った。

「そのアティって女の人はエル君の知り合いなの?私とヒスイのことも知ってたみたいだけど」

「知り合いと言うか…夢で話したことがあっただけだよ」

「「へ??」」

まぁそういう反応になりますよね。

僕も同じ反応すると思うもん。

「まぁ、この話はまた今度にしましょう?それと私1つ思い出したことがあるの」

おっと何でしょうか?僕は急に悪寒がするんですけどなんででしょうね?

「さっき言ったとおり私はあの首輪をしている間ずっと意識があったのよ」

隣ではっとなにかに気がついたような表情をしているヒスイが怯え始めた!

どうしたヒスイ!!

「それで、エル君?この部屋に入ってきてエル君が私に向けて言っていたこと覚えているかしら?」

「そのドレスはとってもお似合いですね。普段の格好もいいですがそういった衣装もとてもいいと思いますだったかな?」

「嘘はいけないわ。私のことをちんちくりんツルペタって言っていたわよね?」

ば・れ・て・る!?

「い、いや〜?聞き間違いじゃないかな!」

「それに、容姿が幼いですって?」

「いや〜いつまでもお若いですよね〜」

「そういえば初めて会ったときも「お嬢ちゃん」って言ってたわよね?つまりエル君は今までずっと私のことをそういう風に見ていたってことなのよね?」

ぼ、僕はちょっと用事を思い出したので帰ってもいいですか!?

「逃さないわよ?」

何その素晴らしい目だけが笑っていない笑顔!

すごい自由に動く表情筋ですね!僕にはできません!

「ちょ、ヒスイ助け…逃げんな!」

衛兵サーン!!助けて下さーい!!

【王都編⑳〜涙と笑顔〜】最後までお読みいただきましてありがとうございました!

ついに勇者戦決着!長い間ありがとうございました!

最初の構想段階では物語はここで終わる予定でしたが、欲が出ているのでまだまだ続きます。というかここまで連れ添ってきた仲間でもあるこの子達と別れたくない!のでまだ書きます!

さて、ここからは王都編の締めに入ります。

エル君は次にどんなことに巻き込まれちゃうんでしょうかね〜?

【次回予告】

作者「出席確認するぞ〜エーシェ」

エー「はーい」

作者「ヒスイー」

ヒスイ「はーい」

作者「エルドナスー」

・・・

エー「彼だったものならここに落ちてますが?」

作者「お前せっかく奇跡の復活を果たした主人公をもう一度死に追いやろうとするなよ」

エー「次回予告は世界線が違うので問題ないと思ってたんですけど違うんですか?」

作者「俺もよくわからん」

ヒスイ「それでいいの?」

作者「さて、まぁ、大きな戦いも終わったし、王都編もそろそろ…終わんねぇんだよなぁ」

エー「まだ書くことあるの?」

作者「あるんだなぁこれが…」

ヒスイ「えっと?これ読めばいいの?次回【王都編㉑〜ええ?うそん〜】お楽しみに!…なにこのサブタイトル」

エー「エル君っぽいわね」

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