王都編⑰〜遊技盤〜
エーシェを巡る勇者コディティアとの戦いが始まった。
エルドナスとヒスイの合わせ技でなんとかコディティアの魔法障壁を破ることはできたのだが…。
「何で僕の鎌蹴ったの!?」
うわ…ごめんて…。
「ちょっと力が足りないのかなぁと思って」
コディティアから二人で距離をとる。
まじまじと自分の大鎌を見ているヒスイ。
いや、だからごめんね?もしもの場合は新しいの買うから!
「壊れてないからいいけど!次やったら許さないよ!」
おっと、ヒスイ君のそれはさすがに怖すぎるな。
うん。善処します。
「やっと一枚割れたけど、こんなに時間かかって一枚だもんね…」
「そうなんだよなぁ〜。何あれ固すぎん?」
「たぶんあれだよ主神ヤーヴァナの加護ってやつだよ」
やっかいだなぁ…。
なんなんだよ加護って…。
転生して勇者で主神の加護を持ってるなんてチートもすぎると面白くないんだけど。
「さて、どうしたものか…」
「エル君まだ技隠し持ってるんじゃないの?」
えーっとそんなのあったか?
「無いことも無いと思うんだけど…あったかな?ところでヒスイは他になにか無いの?」
「僕はエル君じゃないからそんなにぽんぽん技を作れるわけじゃないんだよ〜」
「ヒスイは僕のことをそんなふうに思ってたってよくわかったよ」
僕は安打製造機ならぬ技製造機ってことですね。
ところでまだ使ってない技なんてあったかなぁ?
う〜ん。
ああ…あれか。
あったわ使ってないやつ。
「ヒスイ。あるにはあるんだけど、めっちゃ時間使うしそれ使ってる間僕全く動けない状態になるんだけどそれでもいいなら」
「ええ…それは困るけど、上手く行きそう?」
「きっと行けるはず…試したこと無いけど」
「試したこと無いの?」
「今日使った技の中にもそういうのあったよ?」
さっき使った【銃弾の雨】もぶっつけ本番というかあれだよその場で思い付いたやつだからそれよりはましたど思うけどね。
「エル君ほんとにそういうところだと思うよ」
「まぁ、効いてはいたんだからいいんじゃないかな?」
僕らがこれだけ話していても最初に居たところから一歩も動く様子を見せないコディティアはじっとこちらを見ている。
「というかあいつ…まだ一歩も動いてないんじゃないか?」
「あ!ホントだ!なんかムカつく!」
「動く必要が無いのになぜ動かなければならんのだ?」
うっわームカつくわぁ〜。
「なんか意地でもあいつに膝をつかせてやりたくなってきたんだけどヒスイどう?」
「そうだね。なんか目的が変わってる気もするけどやっちゃおう」
「じゃあ、ちょっとの間よろしく頼むわ」
「ちょっとってどれくらい?」
「うーん…10分くらい?」
「きっついなぁ〜頑張るよ【神速】」
ヒュンっと風のごとくヒスイが目の前から消え、コディティアのところから金属音が聞こえてくる。
さて…準備を始めようか。
せっかくヒスイに時間を作ってもらうんだから思いっきり殺っちゃいましょうか!
【遊技盤】
展開範囲:コディティアを中心に2メートル
投数:8
発動条件:8投終わった時点で発動
条件設定は完了だな。
【遊技盤】発動!
僕の左右に3本ずつの矢が4セットずつ現れる。
目の前には前世の時によく見た光景が目の前に現れる。
地面から173センチの位置に中心があり僕から273センチのところに自信の魔力で作ったダーツ版が出来上がった。
「今度は何を始めようというのだ?ああ、鬱陶しいな」
「エル君できるだけ早くね!!」
さぁ、ゲームの始まりだn…
《ゲームスタート!》
んん!?なんだ今の声?
聞いたことあるような…アティだな…何してんだろうあの人…。
暇だったからって僕の記憶覗き見したよねぇ…。
まぁいいや、やることは変わんないんだから。
まずは一投目か…。
シュッ!
《17シングル!》
シュッ!
《14シングル!》
シュッ!
《3シングル!合計34!》
うわぁ楽しそうだなぁ…。
アティの楽しそうな声に反応している場合じゃないな。ヒスイがしんどそうだし。
2投目!
《16シングル!シングルブル!16シングル!》
3投目!
《6シングル!ダブルブル!シングルブル!ロートン!》
4投目!
《14シングル!13シングル!19シングル》
5投目!
《1シングル!17シングル!13シングル!》
6投目!
《シングルブル!シングルブル!シングルブル!ハットトリック☆》
うお!出るもんだな久しぶりでも!
7投目!
《ダブルブル!7シングル!13シングル!》
8投目!
《シングルブル!シングルブル!シングルブル!ハットトリック☆トータル669!》
結構いい感じだな!
というか…ブルに入ったときのズキューンって音アティが口で言うんだね。
不覚にもちょっとかわいいなと思っちゃったよ。
「行くよヒスイ!離れて!」
「わかった!」
ばっとヒスイがコディティアと距離を取ったのを確認してコディティアを中心に魔法を展開する。
《さぁ!やっちゃいなさいエル君!》
え、普通に喋れるんアティさん?
「なんだこれは!?」
剣を抜いて僕が展開した魔法に攻撃をするが、壊れないように作ってるから壊れないけどねー。
さぁ…喰らいやがれ!
「【遊技盤】!」
半球状に展開された魔法の壁から火と光の魔法で作られた無数の槍がコディティアをめがけて伸びていく。
バギィィン!!
魔法障壁が割れた音とともに金属の鎧に当たった音がする。
ビシビシ…パリーン!と役目を終えた魔法は割れて霧散する。
「ぐぅ…あぁぁ…」
唸り声を上げながらその場に剣と膝を付いてうずくまるコディティアがそこに居た。
僕が作った魔法だからさ、この魔法でコディティアに対しては669本の槍が彼に向かって飛んでいったと思ったんだけど、何であいつ原型残ってんだろう。
今回は割と点数が高かったから結構な攻撃になったかと思ったんだけど…。
「何であいつまだ生きてるんだよ」
「あれ僕に使われてたらさすがに死んじゃうかも」
ドラゴンもそう言ってるんだけど…あいつ何なの?
「いくら加護があるからと言ってもあれはさすがにおかしいと思うんだよねー」
ふむ、そういうもんなのか。
「ヒスイ今まで加護持ちの敵と戦ったことあるの?」
「無いけど、戦ったことがある仲間から聞いたことがあるんだけどこんなに強いのはちょっと異常なんじゃじゃないかな?」
「勇者だからってことはある?」
「いや、さっきのおじいさんは言ってなかったけど勇者って絶対に魔に勝てるわけじゃないからね。殺されちゃった勇者も知ってるし」
「やっぱりあれが異常なだけか」
よくよく見てみるとあれ怪我すらしてなくないか?
あれか?めっちゃ性能の良い防弾チョッキでも着てるのか?
防ぎきれたけど衝撃だけは伝わって今しんどそうってやつってことにしようか。
「この世界に来てから…初めてかも知れないな…膝をつかされたのは」
「ふーん。随分と頑丈な体してるんだね?何で?」
剣に両手で力を込めてヨロヨロと立ち上がるコディティア。
「俺は加護の中でも特別なものをもらっているからな」
うっわーなにそれずるーい。
こいつ存在そのものがチートなんじゃないの?
そういうの良くないよー!
いっぽうそれに対して僕は加護なし神様からのサポートゼロだよ!何なのこの扱いの差は!
格差!格差なのか!
こういうところでも格差があるのは良くないと思うんだけど!
だってさ…おんなじ転生者じゃん!
確かに寝て起きたら転生してましたけど!?
他の人たちみたいにトラックに引かれてじゃないけど!
「お前ズルすぎだよ…生まれながらにしてチートとか言うやつじゃん」
「なんだ?何を言っているのかわからん」
「でた…たまにエル君が呪文を言い始める時間だ…」
だって言うなら今しかないと思ってさぁ…。
「で、お前は自分の物を手に入れるためとか言っていたけど、お前とこの前会った時はそんな雰囲気じゃなかったよな?何なのお前」
「いずれ私はこの国を手に入れるつもりだ」
「何いってんのお前」
「勇者になっても俺はただ勇者って称号があるだけの一人の冒険者に過ぎない」
ふむ…そういう考え方もあるのか。
「はじめは俺だって平穏に暮らしていこうと思っていたさ…だが、勇者に選ばれてからずっと戦いを続けてきた。戦って戦って戦って…そのうちに気がついたんだ。俺は俺の意思で戦っていないことに」
へーそーっすかー。
「日に日に強くなっていく勇者たるものこうあるべきだという気持ちに反して俺はすべてを失っていくような気がしたんだ…」
あーこの話長いやつかな?
もしかして君こうやって話しながらダメージの回復しようとか考えてる?
だとしたら聞く意味ないんだけど?
「そんなことを考え始めていた時に俺に婚姻の話が来た。どうせ政治のために結婚させられるだけだと思っていたのだが、せめてこれくらいは俺の好きなようにさせてもらおうとも思ったんだよ。すべてを手に入れるための足がかりとしてこの状況をうまく使ってやろうとな」
はいはい。
僕に対して話すの好きだねとか言ってた割にお前もぺらぺらよーく喋るじゃん。
「それからは俺は時間をかけてすべてを手に入れるための準備をしてきた。やっとすべてを手に入れるための準備を終えて後は婚姻を迎えるだけと言う時にこいつは逃げやがった。すべてが台無しになった!こいつのせいで俺の計画がすべてだ!だから俺はああやって国のお偉方たちの機嫌取りみたいなことをやらなくちゃならなくなってんだよ!何もかもすべてこいつのせいで!」
「あーこんだけながーく喋ってくれたところ悪いんだけど1ついいかな?」
「なんだ?言ってみろ」
「その程度で崩れる計画しか立てられない脳みそしか持っていなくて更にその計画が崩れたことを人のせいにしている時点でお前すべてを手に入れるの無理だったんじゃないかな?」
「なん…だと?」
あー理解できない?
割とど真ん中の直球ストレートで伝えてあげたと思ったんだけど説明が必要なのか〜…。
「すべてを手に入れたいんだったらそれ相応の準備が必要なのはわかるんだけどさ、ひとつが崩れたからって全部が崩れるような計画は計画とは言わないだろ普通。その辺にいる山賊とか盗賊のほうがもう少し頭使えるよ」
「うるさい!お前に何がわかると言うのだ!」
「わかるわけ無いよ。お前はこの世界に来てから勇者様って言われてもてはやされてきたんだろ?何が何でも一番の存在になるために生きてきたつもりかも知れないが、お前だけの力でここまでこれたと思ってるの?本気でそう思ってるならもう人生やめたほうがいいよ。詰んでるから」
僕の言葉に対して何も言い返してこないコディティアはただただ少し震えながらこちらを睨みつけてくる。
「お前が頑張ったから今の勇者の地位があるんじゃなくて、お前をそういう風に担ぎ上げた誰かが居たんだよ。それが誰かはわかんないけど民衆の意思ってやつなんじゃないか?勇者なんだからそれに答えているだけで株は上がってくる。イイ話だよなー。だってみんなが望む通りに生きていれば何でも与えてもらえるんだから。だから僕はお前がこれまでどう感じてきたかなんてわかるはずが無いんだよ」
ふーっと大きく呼吸を整えて続ける。
「僕は生まれてこの方何かを勝ち取れたことが無いんだよ。父にもエドガーさんにもヒスイにも一度だって勝てたことは無い。勝てないから必死になって生きようとした。お前とは全く違う行き方をしてきた僕がお前のことを理解しようなんてのはまったくもって不可能なんだよ。ただ、1つわかるのはそんなことしか考えられない人間がすべてを手に入れてしまったら残念な結果しか生まなそうだなってことかな」
「エル君言い過ぎだよ…ほらあれ震えてるよ」
うん。さっきからずっと怒りを堪えてるのか何なのか知らないけど震えてるよね。
人間って寒くもないのにあんなにプルプル震えることができるなんて知らなかったよ。
ねーねー大丈夫?血管切れない?血圧上がっちゃうよ〜?
「何があっても私はすべてを手に入れるのだ。そのための第一歩がこれを手に入れることなんだ。誰がなんと言おうと私は手に入れてやるんだ!」
「あーそうそう!あとねもう一つ。人を物扱いするやつはたいてい上手く行かないよ。だってバカのすることだもん」
あーこれ地雷踏み抜いたっぽいな。
完全にブチギレてるわ。
まぁ煽ったの僕なんですけどねー。
「お前らごときに何ができる。この俺を跪かせた程度で」
「でも初めてだったんでしょ?敵に膝をつかされたのは」
「…」
あー切れてる切れてるこれ面白い!
「【神域展開】…奥義【神憑り】」
コディティアを中心に強力な魔力が部屋中に広がり月明かりに照らされていた薄暗かった謁見の間は更に暗くなる。
魔力をオーラのように纏いこれまでと違う雰囲気を醸し出すコディティア。
うへぇ何かこの魔力の感じ気持ち悪いな…思っ苦しいと言うかなんというか…気持ち悪い。
「神域展開!?まずいエル君にげt…」
さっきまでそこで喋ってたヒスイが消えた?
ドゴォ!パラパラ…。
音のする方を向くとヒスイが柱に埋まっていた。
え?にんげ…んじゃ無いんだけど吹っ飛んで壁に埋まるってあり得るの!?
ヒスイはそのまま意識を失ってしまったようでうつむいてしまってる。
やっべーよこれ…煽りすぎちゃったかな?
【王都編⑰〜遊技盤〜】最後までお読みいただきましてありがとうございました!
前回言っていた取材っていうのは今回使うダーツのことでした!ちょっとネットカフェに行ってきて約一ヶ月半ぶりに投げてきたんですけど、なまってましたね…。
今回の特典は一人で10数ゲームをしてきた中で一番点数が高かったものを使ってみました!
後半のハットトリック2つは自分でもびっくりでしたね〜じゃあ、前半もっと頑張れよって話。
きっと今後遊技盤の魔法を使う度にダーツに行ってくるんだと思います。
今回は初出しだったので長めに書いてましたけど、たぶん今後はもっと短くなると思います。
さて、そろそろクライマックスも近づいてきたのではないでしょうか?
勇者の意見に真正面から否定で入るエル君はなんとメンタルが強いのでしょうかと思いながら書いていました。まぁ、相容れない考え方ってあるよね。
【次回予告】
エル「ヒスイが!柱に埋まってる!?」
作者「ほんとに埋まってるね。どうやって抜け出すんだろ?」
エル「いや、これって本当にありえるの!?」
作者「僕は物理と物質に関しての勉強してないから知らないよ。やべー威力だってのはわかったでしょ?」
エル「このエセ理系め!」
作者「全方位段とかはちゃんと計算してるから許してよ。だいたい計算でわかるのかなこれ?」
エル「詳しい人よろしくおねがいしまーす!」
作者「柱は石造りの想定です。さて、一人になったエル君には次回頑張ってもらわないとね。ということでよろしく!
エル「次回!【王都編⑱〜神の意思〜】お楽しみに!」
作者「エル君死なないでね☆」
エル「え!?」




