王都編⑭〜協会へ〜
エーシェ奪還のためについに動き始めたエルドナスとヒスイの二人。
今回はシリアスな場面が多いんだからおふざけもほどほどにしてね〜?
ヒスイと二人で歩いて協会へ向かう。
協会に出る道の一本手前の路地に入り二人でマントをかぶる。
【属性付与】発動。
すぅっとヒスイの姿が見えなくなるのを確認して僕も自分のマントに同じものをかける。
『じゃあ、次は僕だね。一時的に外の音も聞こえなくなるから視覚に頼ることになるから注意してねエル君』
わかってるよ。
『【消音】』
これまで周りから聞こえていた人々の生活音や風の音というありとあらゆる音が消えて無音に包まれる。
よし。これで成功かな。
『行くよエル君。そう言えばオクラはどうやってお互いを認知すればいいのかな?』
盲点だった〜〜!!
どうする?触って確認し合うってわけにもいかないしな…。
ああ、そうだ!あれだ!僕らは見えないだけで居ることには変わりがないんだから探索使えばいいんじゃないか?
『確かに!でもエル君常時発動するのは無理でしょ?』
ちゃんとヒスイに教えてもらった頭痛耐性があるから大丈夫なんだなーこれが。
というか半径10メートルくらいまでなら別に痛くなることないし。
『じゃあそれで行こうか。魔力の消費に気をつけてね』
そうなんだよねー。この作戦完全に魔力だよりなんだよねー。
まぁ、ここでグズグズしていてもしょうがないから行こうか。
二人で教会の正面に移動する。
『それで?ここからどうやって入るのさ』
そうだね~。正面入口からこんにちは〜ってわけにはいかないもんねぇ。
あーあれじゃね?右上の方にあるところ。
協会の正面から右側に明かりを取るためなのかバルコニーのような形の出っ張りがあってそこから中に入ることができそうだった。
『それはいいけど、どうやって登るの?』
ヒスイさん何かいい考えないっすか?
『僕だよりなんだ。まぁ無いことは無いけど。魔力を使って壁を登る方法があるよ』
あるんだ!どうやるの教えて!!
『靴の裏に魔力を集めてその魔力でくっつく感じだよ』
ふむふむ。右足をくっつけてみる。
ピタ!
おお!くっついた!
そして左足をくっつけ…くっつけたらどうなるんだ?
おいおいヒスイさんお前それは無いだろ!?
普通に壁を歩いて登ってるじゃねーか!!!
『普通に歩く感じでできるよー』
そっか。右足を出して左足を出すと…歩け…ある…歩けるかぁ!!
ヒスイさん!人間の筋力は90度の壁を歩いて登ることはできません!!
『じゃあ、両手両足でこれやればいいんじゃない?」
た・し・か・に・☆
両手両足に魔力を集中させ壁をよじよじと登っていく。
壁を歩いている虫ってこんな感じなんだろうなぁ…。
つるつるの壁でもロッククライミングができたので僕らに移動できない場所は無いですね!
『エル君早くしてよ』
ごめんなさい。
なんとか壁をよじ登ってバルコニーみたいな場所に到着する。
そこは協会の内部に光を取り込む役割も果たしていたようで月明かりで薄暗いが中の様子を見ることができた。
中に居るのは一人の老人。
確かこの前の謁見の時に居た人だな。
つまりこの協会でもトップクラスで偉い人間のはずだ。
さて、どうしてやろうかしらん。
とりあえず…ヒスイ!
『ほいさ!』
下に降りるよ!
『はいはい』
再び両手両足に魔力を集中させて壁を伝って下の大聖堂らしき場所に降りる。
周りには誰も居ないことを確認する。
何人も居られると困っちゃうからなぁ。
さて、一人しか居ないのなら話は早い。
丁寧にご挨拶をしてお話を聞くしか無いよね。
『丁寧に言ってるけど…本当に丁寧に話を聞くきある?』
そんなそんな手荒な真似はしませんよぉ?
さて、顔を見られてるし、声も知られているだろうからな。
声は前に作ったあれで変えられるだろうから…先にやっとくか。
【変声】
「あー…あー…」
よし。低めにして怖い感じを演出してみよう。
後は顔なんだけど…テキトーに仮面でも作ればいいか。
前に作った【光の衣】の応用で仮面を作ればいいか。
イメージはそうだなぁ…別に顔さえ見えなきゃいいから真っ白でいいか。
【光の仮面】
白いただただ目の部分だけが空いている仮面が出来上がる。
まぁ、これでいいだろ。
『うわぁ…エル君ってこんなテキトーな感じでいつも魔法使ってるんだ。それであんなのが出来上がっちゃうんだから僕にはできないよ』
うわ!覗かれてた!
そ~ですよーいつもこんな感じですよーだ。
それじゃ、ヒスイ解除お願いね。
『ほいさー!』
老人の背後に物音を立てずに移動する。
神の像に向けて祈りを捧げ続ける老人は僕が後ろに居ることには気が付いていないようだ。
僕は【道具箱】から短剣を一本取り出し。マントのフードになっていた部分だけ脱ぐ。
『優しくだよ〜?』
わかってるよ。
背後から老人の首元に短剣を構えて声をかける。
「立て。話がある。大声は立てるな大声を出したらこの首を掻き切る」
老人はビクリと体を反応させいつの間にか喉元にある短剣に気がつく。
「わ、わかった。指示に従おう」
老人は静かに両手を上げ立ち上がる。
こういうときの降伏のポーズってどの世界でも共通なんですかね?まぁいいや。
「ここに居るのはお前だけか?」
「そうだ。今は私しか居ない。それにしてもどうやってここに」
「質問をしているのはこちらだ。質問以外には答えなくていい」
ちょっと短剣の角度を変えて月明かりを反射させる。
ゴクリと喉を鳴らして域を飲む老人。
「お前は何者だ?」
「私はこの協会の大司教をしているものだ」
「では、大司教殿。勇者は今どこへ?」
「知らん。今日は用事があると言ってどこかへ言ってしまったんだ」
「彼の行動は協会が制限しているわけではないのか?」
勇者ほどの大物の行動は協会が常に関しをしているのかと思ったのだが、思惑が外れてしまったな。
「あやつは人と一緒に行動することができないんだ。だから監視役の仲間をつけようとしたのだが何度も失敗して諦めたんだ」
それはお疲れさまです。
「勇者なのに随分と自由にさせておくんだな。彼は依頼などをこなしに行ったのではないのか?」
「依頼ならば我々協会も関与をするからわかる。だが、今が来ていないからあやつは自由にしておるのだ」
勇者は典型的な一匹狼タイプってことか。
誰にも縛られたくないというのが根底にあるのかもしれないな。
だとすると2つ気になることがあるな。
1つ目は、王に対しての彼の提案だ。あれは確実に自分を縛っていくことになる条件だった。縛られたくない人間がするような提案とは思えない。
2つ目は、あいつは会食で僕と話していた最後に時間が来たと言って出ていったのだ。時間とはなんだ?
これもてっきり依頼を受けるために出ていったのだと思いこんでいたが、悪い方向に話は進んでしまっているのかもしれないな。
「それで、そんな自由な勇者に依頼をするには彼に依頼内容を伝えなくてはならないのにどうやっていつも彼を捕まえているんだ?」
「あやつには住居を与えていない。代わりに寝泊まりするのは協会だ。だからいつでも依頼できるのだ」
そういうからくりなのね。
まぁ、そうでもしないと勇者に逃げられてしまうからな。
「こんな夜更けにも関わらず勇者は居ないということはどこかに行っていると考えればいいのか?」
「たまにあるのだ。あやつは居なくなってしまった婚約者を探し続けているからな。一度しか会ったことは無いと言っていたが、彼女のことが忘れられないらしい」
ふーん。そういうことね。
「勇者が居ないことはよくわかった。では、次の質問だ」
「ま、まだあるのか」
不満でしょうけど耐えてくださいねー。
「勇者とは何者なんだ?」
「何を聞くかと思えばそんなことか。勇者とは我らが主神であるヤーヴァナ様がお認めになられた人間のことだ。数百年に一人選ばれ大切な使命を果たすために存在しているのだ」
「大切な使命?」
「魔の王が復活した時勇者は選ばれる。勇者は魔の王を殲滅せし者なのだ」
ふーん。ヒスイは魔王に関しての話知ってる?
『うーん。確かに数百年前に一度人間と魔王軍との戦いはあったのは知ってるけど、今は魔王を名乗るほどの強者はしらないなぁ。それよりも最近だと神様同士の争いがあったからそっちのほうが印象が強いや』
神様同士の争いって…。
ほんとにファンタジーの世界だよなこの世界って。
「勇者が選ばれたということは魔の王が復活したと?」
「まだ、そういった情報は入ってきていないがいずれそうなるのだろう」
って言ってるけど実際どうなのヒスイ?
『詳しいことは知らないけどありえなくもない話なのかもって程度かなぁ。そんなに強いやつが現れたら何かしらで噂にはなっているだろうから本当にまだ現れていないだけの可能性はあるかもね』
ふむふむ。そしたら地の果てまでとんずらしよう。
絶対に関わりたくないわそんなの。
どうせやつら攻撃を喰らい続けているうちに体の形状が変わって強くなったりするんだからやってられん。
『エル君が想像している魔王って何なんだよ…』
ちょっとこっちの話だよ。
「ちなみに魔王が居るとどうなるんだ?」
「世界に災いがもたらされるのだ」
それはありきたりな感じなのね。
「魔の王の話はわかった。では、神同士の争いについて聞きたい」
「あれは今から百年ほど前に起きたのだ」
結構最近の話じゃね?まじかよ。
「主神であるヤーヴァナ様の弟であるアヴェンという神が主神の座を争い戦いを仕掛けたと伝わっている。アヴェンは単身でヤーヴァナ様が居ると言われている神殿に乗り込み戦いを挑もうとした」
単身で乗り込んじゃうんだ。
結構パンチの効いた神様だなぁ…。
「ヤーヴァナ様を守ろうと多くの側近の神たちが犠牲になりながらアヴェンの暴走は止められたと伝えられている。そこで多くの側近たちは傷つき引退したとも」
神様のお付きで引退とかあるんだね。というか今更だけど主神ってことはこの国の宗教は多神教なんだね。
「それで、その喧嘩を売ったアヴェンはどうなったんだ?」
「アヴェンも深く傷つきどこか地の果てに行ってしまったと伝わっております。以降アヴェンは邪神として我が協会では教えられております。一部の地域では今でも邪神であるアヴェンを祀っているところがあるかないとか」
そこははっきりしないんだ。
ちょっと楽しくなって聞き始めちゃったけど結局のところは神話であって僕らに関わりは…無いと信じたいなぁ…。
ちらっとヒスイの方を見る。
でも、ドラゴンが実在する世界だからなぁ…。
普通に神様の方から人間に干渉してくるとかありそうだなぁ…。
『それはないと思うよ。この世界の神様って基本的に人間に興味がなさすぎるからね』
それって神様としてどうなの?
まぁ知らんけど…。
さて、そろそろこの人を捕まえておく必要性はなくなったな。
「最後にエーシェルドという名前に聞き覚えはあるか?」
「…その名前をどこで?」
「最初に言っただろう?質問をしているのはこちらだ。お前は質問にだけ答えろ」
「その名前はーーーー」
やはりそうだったか…。
『エル君この話が本当なら…エーシェは』
そうだね…そして僕が想定していた最悪の可能性というのは見事に当たってしまっているかもしれない。
『今すぐ助けに行かないと!』
まぁ、そうなんだけどこの話が本当だとするならば彼女の安全という部分で心配する必要は無いだろう。
ここを出た後にもう一度準備をしてから次の目的地に向かうだけだ。
当初の目的から何も変わっていない。
『そうだね。行こうか』
その前にこの可愛そうなおじいさんを開放してあげなくちゃね。
「手荒な真似をしてすまなかったな。もとよりお前に危害を加えるつもりは無い。だが…」
これだけは釘を刺しておいてもいいだろう。
「もし、お前が協会の力を使ってなどとふざけたことを抜かして俺に復讐しようなどと考えていることがわかった段階でまたお前に会いに来てやる。その時がお前の最後だと思え」
コクコクと黙ってうなずく老人。
「今日のことはただ夢見が悪かっただけだ。悪夢だと思ってくれていい。ではさらばだ」
僕はそう告げると再びフードをかぶり姿を消す。
老人は膝から崩れ落ち呆然と辺りを見回す。
しかし目の前に居るはずの僕とヒスイの姿を捉えることはできない。
大きなため息をついて汗だくの老人は大聖堂を後にした。
『エル君やりすぎだったよ〜』
そうかもしれないねー。恨みがあったわけでもないからあそこまでする必要はなかったんだけど、ああいう人はきっと正面から話を聞きたいって言ったところで話してくれないから素直に話を聞くためにはこれが一番だと思ったんだよ。
『エル君ってほんとに突拍子もない事思いつくよね』
まぁおかげで情報は手に入れられてたんだからいいでしょ。
じゃあ、奪還作戦の本番に行くよ。
『わかった。行こうか王城へ』
誰からも見えていない二人は静かに教会を後にした。
【王都編⑭〜協会へ〜】最後までお読みいただきましてありがとうございました!
準備万端かと思いきや早速作戦に穴がありすぎるあたりがエル君らしいですよね。
まぁ、そこまで詳細な作戦を立ててないからこういうことになるんですけど、エル君はそういうの苦手なのでしょうがないです。いろんな魔法のオンパレードになってきましたけど、全部で何種類くらいあるんでしょうね?僕ももうルビのカタカナ忘れまくるので前の話を見返しながらやってます。
次回はついに奪還作戦の本番になりそうですね。
ここからは設定段階でも一番力を入れた部分ですのでぜひお楽しみに!
【次回予告】
エル「1つ気がついたことがあるんだけどさ」
ヒスイ「なにさ?」
エル「今回使った僕らの魔法をすべてフル活用すればさどんな相手でも暗殺できちゃうよね?」
作者「あーそれ書きながら思ってたやつだ。こいつら探索使われない限り最強すぎ無いかって思ってた」
エル「だよね」
ヒスイ「でもきっとこの人がそんな使い方させてくれないんだろうけどね」
作者「…」
エル「きっとこの後の話でもずっとこれを使い続けていればすぐに解決できちゃうんじゃない?」
作者「いや!そんなことはない!話の流れ上今の技術だけでは確実に解決はできないかな!」
エル「まじかよ〜…じゃ、次回以降の僕に期待だね。次回【王都編⑮〜王城へ〜】お楽しみに!」
ヒスイ「待っててねエーシェ」
作者「…(こいつ露骨にいいキャラ演じてんなぁ…)」
ヒスイ「なにさ!!」




