王都編⑪〜点と点〜
姿を消したエーシェを探すため、エルドナスとヒスイは情報を集めることに。
王都辺後半エーシェ奪還作戦開始です。
「じゃあ、宿から出る前にさっき確認し忘れたことがあったから受付の人に確認してから出るね」
「え?あんなに聞いたのにまだ聞き足りなかったの?」
実はすっげー重要なことを聞き忘れていたことにヒスイと話している途中で気がついちゃったのです。
「まぁ…割と重要なことだったりする」
「えー?何で忘れてたの?」
そんなん僕自身だってわからないよ。
二人で念の為ということで武器を道具箱に入れて部屋を出ることにする。
再び一階に降りて受付のところへ移動し受付のお兄さんに何度も申し訳ないが声をかける。
「あの、さっき聞き忘れちゃったことが1つあったんですけど」
「はい。何でしょうか?」
割とめんどくさい客なのに笑顔で対応してくれるお兄さん神!
「ラーシェルが出ていったのは僕達が戻ってくるどのくらい前だったのかを聞き忘れていて」
彼女がいつここを出たかによって行動範囲は変わってくる。
それを完全に忘れてしまっていたところを見ると僕も落ち着いてなかったんだろうな。
「そうですね…お二人は夕方ごろに帰ってこられたかと思いますので、だいたい2時間くらい前だったと思います」
2時間位前と考えると…だいたい会食が始まって少しという頃合いか。
あの時僕は…そうだ勇者とか呼ばれていたコディティアと話していたな。
彼ははなしの最後の方で時間が来てしまったと言って出ていったな。次の依頼でもあったのだろうか?
まぁ、あいつのことを考えても関係ないだろうから問題ないだろう。
「わかりました。ありがとうございました。行くぞヒスイ」
「うん」
「お気をつけていってらっしゃいませ」
深々と僕達に対してお辞儀をしてくれるお兄さん…この人本当にいい人だな。もしくはこの宿の教育が素晴らしい。
「それで?最初はどこに行くんだっけ?」
「何でもう忘れてるんだよ…。正門に行くんだろ」
「あ、そーだった」
このドラゴンくんって賢者に対して魔法という知識を授けたすごく賢いドラゴンのハズだよね?
自分の興味のあることと無いことだとこれほど記憶に定着しないのか…いや、飛んで確認したいだけかも。
二人でとことことこの王都に入ってきたときの道を歩いていく。
「それにしてもエル君エーシェの髪色が特殊だってよく気がついたね」
白髪に少し緑がかった長髪をくるくると指で弄びながら話してくるドラゴン君。
ちなみに気がついていないかもしれないけど、君の髪色も十分珍しいんだからね?
今の所おじいさん以外で白髪の人に会ったことが無い。
エリーゼの村もこの王都も色々な髪の色をした人は多い。赤やオレンジ、青だったり茶色だったりとそれはまぁもはやコミックマーケットのコスプレ広場ですかというくらいの色鮮やかさだ。
でも、白髪と緑の髪をした人はいなかった。
いつもあたりまえに飛び込んできていた髪の色が特殊だったから今まで気が付かなかったけどね。
「ふと、今まで見てきた風景を思い出したら緑系の色の人は君とエーシェしか見かけた気がしなかったんだよ」
「そういうエル君の髪の色も珍しいよね。真っ黒の人ってこの辺にはそんなにいないはずだよ」
僕の髪の毛の色は黒くて艶が出るくらいの黒だ。これもこの辺りだと珍しい。
「前に会った西の国の人も同じような髪色だったはずだからもしかしたらそっちの系統が混じっているのかもしれないね」
「そうなんだ!僕世界中を飛び回ってたわけじゃないから初めて見たんだよねー」
もしかしたら転生したことが関係あるのかもしれないけど、それは関係ないと信じたいんだよねー。
よくよく考えたら父さんも母さんも黒髪だったわ…。
「さて、そろそろ着くね」
目的地に到着してみたはいいんだけど、誰に話しかけるのが正解なのかよくわかんないな…。
とりあえず、暇そうにしている人でいいか。
「あの、すみません。ちょっと人探しをしているんですけど」
「ん?人探し?何でここに来たんだ?」
ああ、言葉が足りなかった。コミ症恐るべし…。
「ちょっと知り合いを探していて、目的地も告げずにどこかに行っちゃったんで探しているんですよ。外に出てたら探すのが大変になるなと思って」
「ああ、そういうことか。どういうやつなんだ?」
「きっと外に出るときの格好は大きめのこういう帽子を被ってて」
頑張ってジェスチャーで帽子の形状を伝える。アレの名前なんていうんですかね?とんがり帽子?
「濃い紺色のローブ見たいのを羽織ってる女の子で、髪と目が薄い緑色なんですよ。左耳に同じ色の耳飾りをしているはずです」
うーん。と腕組みをしながら思い返そうとしてくれる暇そうな門番さん。
「その見た目だったら誰かしら絶対に覚えてるだろうからちょっと聞いてくるよ。待っててくれ」
そう言うと近くにある扉から中に入っていってしまった門番さん。おいお前仕事は大丈夫なのか?
「エル君の言っていたとおりだね。エーシェの見た目ってわかりやすいんだね」
「予想が当たってよかったよ。そんなんいくらでも居るとか言われたら困っちゃうところだったから」
数分待ってみてもなかなか門番さんは帰ってこなかったのでちょっと申し訳なくなって門番さんと同じように街の方を向いて佇んで見る。
この場所は意外とよく街の様子が見えるようで、街の様子を見るにはいい場所だと感心した。ところでそろそろ戻ってきてくれませんかね?夜遅くとはいえもしかしたら外に出たい人もいるかもしれませんよ?
「待たせたな。ざっと仲間に聞いてみたんだがそんな見た目のを見たってのは聞いたことなかったな」
となればエーシェがここから出ていったという線は薄くなったと考えていいだろう。
「ありがとうございます。門番の仕事もあるのに」
「ん?俺は門番じゃないぞ?」
え…?じゃあ、何でここにいたんだよ。
「俺は門近くでこのまちを見守っている衛兵だよ。門の近くってことで門のところで働いている奴らに知り合いが多かったんだけどな。すまん」
「いえいえ、ちなみに衛兵って何をしているんですか?」
ちょっと関係ないことなんだけど、興味が勝ってしまった…。
「そりゃ、この街の平和のために見守ってるんだよ」
それでそんなに暇そうにしてたんですね。
「ということは、街を見守りながらだったらちょっと僕達とのお話できちゃったりするわけですね」
「まぁ、そうなるな。それにしても急に出てっちまったのかそいつは」
なんだか普通にいい人そうだから色々話しても問題なさそうかな。
「そうなんですよ。もともと僕らで一緒になって冒険者やってたんですけどね。こうなってみるまで意外とその子のこと知らなかったんだなって思ったんですよね」
「確かに僕もあんまり知らないかも」
酒癖が悪い事以外…。
「兄ちゃんたち。意外とななんでも知っている仲ってのはうまくいかないことだってあるんだぜ。仕事仲間ってことは知ってる部分だけでも上手く行ってたならいいんじゃねーか?」
「ははは。それもそうですね」
確かにすべてを知っていてもいいことなんて無いもんな。
たまに出るエーシェの闇属性な部分にはあえて踏み込まないようにもしていたし。
まぁ、今回の件はきっとそれが原因なんだろうけどね。
「そんで?その相手は兄ちゃんの彼女かい?」
ん?なぁーんでそうなるのかな?
「え?何でですか?」
「そりゃお前…耳飾りあげたのはお前なんだろ?」
「ええ、まぁそうですけど」
「え?そーだったの!知らなかった!僕と合う前の話?」
確か祭りの夜にあったアクセサリーショップで買ったんだっけか。
そうするとヒスイと会ったのは祭りの後だからそうなるのか…とりあえず頷いておこう。
「兄ちゃん名前は?」
「エルドナスです。こっちのちっこいのはヒスイって言います。衛兵さんは?」
「俺はナデランだ。よろしくなエルドナスとヒスイ。で、エルドナスはさっきの贈り物の意味もわからず贈った田舎者ってことでいいかな?」
僕は一番近くの村に行くのも何時間も移動してやっと到着するような辺境の地に生まれた田舎者ですけどなんですか?文句でもありますか?
「ナデランさん!僕もそれの意味は知らないんだけどどういう意味があるの?」
ナデランはちょっと生えている無精髭をさすりながらニヤニヤして僕の方を見ている。
「そりゃお前…王都ではそれを告白する時に男から女に贈るってのが文化になってんだよ」
んなぁ!?いや、待て!売店のあいつそんなこと言ってなかったぞ!!
「そうなのエル君!というか今まで違ったの!?」
おいおい急に食い気味に来るじゃねーかヒスイ君や…。
いやいや…マジで知らんかったんだけど…。
そう言えばあの時あの店員彼女さんとか呼んでいたような呼んでなかったような…。
「はぁ〜そういうことかよ…」
いろんなことが繋がって頭を抱えながらしゃがみ込む。
「エルドナス…お前本当に知らなかったのかよ…」
「ほんとに知らなかったですよ。それでかあの店員といいエリーさんと話したエーシェが大声上げたのって」
うわぁ…単純にお礼のつもりであげたものがそういう意味合いだってエーシェ知ってたのかな…。
もともとは知らなかったけどきっとエリーさんに聞いて知ったんだろうなあの時の反応は…。
「エル君大丈夫急に顔が赤くなってるけど…」
ええ、そうです。照れてますよ。
「そりゃ…その子も逃げちまうんじゃねーか?」
「ナデランさんきっとこれは違うから大丈夫」
「お、おう。そうなのか。別に喧嘩したとかじゃないんだな?」
「そうなの。こっちの知り合いに会ってそのまま外に出ていっちゃったらしいんだよね。ちなみに貴族とかの家で働いている人ってこの辺に来たりする?」
お、いいぞヒスイ。僕はちょっと再起動まで時間がかかりそうなので頼んだ。
「そうだな…貴族様達は自分で行動する時ってのは他の貴族に呼ばれたり仕事をするときだけだからな。それ以外の雑務は全部屋敷で働いてるやつ任せだろうな。だからしょっちゅう見かけるな」
そうするとその辺りから探すのは難しいってことだな…。
よし、そろそろ表情を整えられそうだ。
「あ、復活した」
そういうこといちいち言わなくてもいいからねヒスイ君?
「じゃあ、エルドナス。お前次にそいつに会えた時はどうするんだ?」
「そうですね…まぁ状況と場合を考えますけど…そういうことだったらしょうがないですよね」
「かぁ〜〜これだから…そういうのは男がはっきりしねぇとダメだろ!」
何か…会って数十分も経っていないのに怒られた…。
「本人を目の前にしてみて考えが変わらなければ伝えますよちゃんとね」
「逃げたー」
はいそこうるさいぞ!!
「で、お前らはこれからどうするんだ?ずっとここで俺と話しているわけにもいかないだろ?」
ちょっと楽しくなってきちゃったので残念ではあるがそれもそうだ。
「ちょっと酒場で情報を集めようかと思っています。酒場で情報屋の情報を集める予定なんですよ」
「あ、それってそういうことだったんだ」
ごめんねその辺言ってなかったもんね。
「それならここから真っすぐ行ってこの町でもいちばん有名な宿屋があるからその裏にある店に行きな。この街の情報屋がよくそこで飲んでるから」
おっとこれはいい情報をありがとうございます!
「ありがとうございます。何かお礼を…」
「いいや、いらねぇよ。俺だって暇な時間を新しい知り合いと楽しく話せたんだからそれでいい。どうしてもお礼がしたいってんだったら。その子を射止めて三人で俺のところにまた話に来てくれよ」
おっと、それはハードルが上がってませんかね?
「ははは…それは振られた場合は来ないってことでよろしくおねがいします」
「大丈夫だろ。その子ずっとその耳飾りつけてくれてたんだろ?」
確かに…最後に会ったときもつけてくれていたな。
「そうですね。じゃあ、大丈夫ってことにしておきましょう」
「じゃあなエルドナスとヒスイ。また何か困ったら俺のところに来いよ」
「あ、そうだ。最後にここ半年くらいで王都で何か貴族絡みの事件とかは起きていませんでしたか?」
貴族絡みで何かが起きていたらもしかしたらもしかするかもしれない。
それがきっかけとなってエーシェがここを出ていった可能性も考えられるからな。
「んー…ああ、あれだ。半年くらい前に本来だったらやるはずだった勇者様の婚姻の儀が急に延期になったってのがあったな」
うわぁ…ほんとにあったよ。でも何で勇者の話が貴族絡みなんだろうか?
「勇者と一緒になるはずだったのは公表されていないがどこかのお嬢様だったんだよ。王都では婚姻の義が成立してから公表されるのが習わしになってるから相手が誰だったかまでは俺らは知らないんだよ」
「何から何までありがとうございました。が、頑張ってまたここでお話できたらと思います」
「ナデランさんありがとー!ばいばーい!」
僕らを笑顔で見送ってくれヒスイにつられて手を振ってくれるデランさん。ほんとにいい人すぎやしません?
僕らは教えてもらった宿屋の裏にあるという酒屋に急ぐことにした。
【王都編⑪〜点と点〜】最後までお読みいただきましてありがとうございました。
ついにエーシェと再び合うために行動を始めたエルドナスとヒスイ。二人で話しているといつもこんなテンションになってしまうのは気のせいでしょうか?
今回は新キャラのナデランが出てきてくれましたが…思いつきなんすよねぇ…。
もともとこの正門に行って情報を聞くところの話って3行で終わる予定だったんですけど書いた理由とか書いちゃうと後半の内容がバレちゃうんで書かないんですけどね。
いいキャラしてましたねナデラン。イメージは近所に居るすごく気前のいいお兄ちゃんです。何かお願いした時には「おうよ」って言って対応してくれてちょっとおせっかいな感じが出せたらと思っています。
まだまだ続く王都編張り切って行きましょ〜!
【次回予告】
エル「知らんかったわぁ〜ゆ〜といて〜やそういうこと」
ヒスイ「エル君が壊れた!?」
作者「もともと壊れているものはこれ以上壊れないって」
ヒスイ「ほんとこの人テキトーだな…」
エル「今回と次回はちょっと僕もうしゃべらんから二人でやってて…」
ヒスイ「ええ?主人公喋らないの!?大丈夫なの?」
作者「こんなところまで毎回読んでくれている人居るのかと思って盛大にふざけてるしいいんじゃない?」
ヒスイ「そういう事言うのは良くないと思うんだけどなー」
作者「次は酒場ですね」
ヒスイ「もうね。嫌な予感しかしないよ」
作者「エーシェいないじゃん。エル君だけではそんなことにはならんでしょ」
ヒスイ「お前が書いた続きを読んだからだよ!ほんとどの口が言ってるの!?ああ、もう時間だね。次回【王都編⑫〜点と点は線に〜】お楽しみに!」
作者「投げやりは良くないよ〜」
ヒスイ「…」




