王都編⑨〜交差する思惑〜
ついに王都で王との謁見が始まった。
そんな時にふとエル君は1つのことに気がついてしまったのだった。
王様を目の前にして思い出したことがひとつ。
僕…この謁見で何をすればいいか全く知らない!!
こういうのって手前で打ち合わせとかがあるんじゃないの!?
「まずはわたしの召喚に応じてくれたことを感謝する。わたしはこのナレファンス王国の国王ジェラルド=ナレファンスだ」
やっぱりこの人が王様なのね。
王様が身にまとっているのは赤を基調とした服に白色のファーみたいなのが付いている服を着ている。
王様っていうのは基本的に赤い色の何かを着なくてはいけないというルールでもあるのだろうか?
あと、王冠って赤と金色でどぎつい印象しか受けないんだけど、それ重くないんですか?
「此度の依頼の達成見事であった。今一度そなたの口から今回の依頼について説明をしてもらっていいか」
僕が王様に対して失礼なことを考えていたらその王様から話すように言われてしまった。
うーん。普通にしていればいいのか?
「今回の依頼に関しましては、私が所属しているエリーゼの村の冒険者組合の組合長であるエドガーより直接依頼として参加させていただきました。依頼の内容に従い、私達はエリーゼの村の北にある山を越えたところにある森へ移動し野営をしていたところでドラゴンと遭遇しました。遭遇したドラゴンとはその場で交戦し、その後意気投合し仲間になる運びとなりました」
僕の報告をうんうんと頷きながら聞く王様とざわざわする大人たち。
何をざわつく必要があるのだろうか?
この説明って必要あるのか?だって、こういうのって手前で情報が共有されているはずなんだからざわつく必要無いでしょ。
「では、隣りにいる者がそのドラゴンか?」
「はい。ドラゴンのヒスイです。彼には一緒に行動してもらうので人と同じ姿をしてもらっています。ほら、ヒスイも挨拶して」
すっとヒスイの方を見ると明らかにふてくされている…おいおい頼むから喧嘩は売らないでくれよ…。
「はいはい。ドラゴンのエメラルドドラゴンのヒスイだよ。今はエル君たちと一緒に冒険をしているよ」
またざわついてるねー。もうそろそろめんどくさいんだけど…。
「ヒスイ殿と言ったな。それで、これは事実確認であるのだが、そなたは本当にあのドラゴンなのであるか」
「それって疑っているということでいいのかな?そんなに疑うのならここで元の姿に戻ってもいいけど、どうする?」
ヒスイ君?平穏にだよ平穏に…。
「そ、それは大丈夫だ。そなたは我々に対して敵対するつもりがあるのか無いのかということなのだが」
一瞬だが王様の素が見えたような気がしますね。
「我々に対して敵対をするつもりは無い?つまり君たちは僕が今さっき言ったエル君たちと一緒に冒険をするって言葉を聞いても信じてくれないってことだよね?」
ほらほら平穏に…平穏に…。
「ふむ。今の聞き方に不満があったのなら謝罪をしよう。だが、これは必要なことなのだ。君の口から我々に対して敵対する意思が無いと言ってくれればそれだけでいいのだ。私達のような一般的な能力しか有しない人間は君に勝つことができない。それだけで安心ができるのだ。1つそのように言ってもらえないだろうか」
すっげー王様下手に出るんだねー。
まぁ、この国にドラゴンに勝てる人間が数人しか居ないとすれば、怯えるのは当然か。
「ふーん。そういうこと?僕の言葉だけで信じてくれるなんて一国の王様がそれでいいんだ」
ほらすぐにそうやって…。
「じゃあ、これを言えばいいんだよね。僕は君たち人間とは敵対するつもりはありません。ただし1つ条件があるよ」
「ふむ。条件とは何かな?」
「僕が人間と退治しない条件としては1つ。君たちがエル君を含めた僕の仲間に手を出さないこと。これを守ってくれている限りは僕から何かをすることは無いよ。これでいいかな?」
「あいわかった。それでは、君たちに対して私達から危害を加えないようにすると誓おう」
よしよし。なんとか平穏に済みそうですね…良かった良かった。
「では、今回のこの国難とも言える依頼を達成してくれたエルドナスたちに対しての褒美をとらせよう」
待ってましたー!これが貰えないと僕この前の買物のお金が払えないんですよ〜。
「はて、ドラゴンの依頼を達成した際の報酬は以下ほどであったかのぉ…財務大臣はおるか?」
おいおい王様テキトーかよ。
王様の声に反応して一歩前にでてきたのはそれはそれは恰幅のいいおっさんだった。
「財務大臣のキース=イダネカと申します」
難しい名前だな…イダネカ…あれ?後ろから読むと…まさにぴったりですね。
「通例であれば3000万となるのですが、今回は少し条件が違いますので」
条件が違う?それは話が違うんだけど?
「ふむ。これまでと違うこととは何かの?」
「まず、今回の依頼に関しましては本来エドガー氏に対してお願いをしていたものでしたがエドガー氏の独断でこのエルドナス殿に依頼が流れた形となります」
うん。それは僕が預かり知らぬものですな。巻き込まれてしかいないんですよ僕は!!
「発言をよろしいでしょうか?」
おうおう!今度はなんだ!?
今度は鎧を着たおっさんが急に一歩前にでてきた。
「よい。ゆるそう」
王様優しい!
「私はこの国の法務大臣をしておりますソクモール=ヤクマと申します」
法務大臣よ。なぜ鎧を着ているのだ?
「今回の依頼に関してはもともとの依頼書にエドガー氏もしくは依頼達成の可能な者という内容が含まれていました。そのため、エドガー氏が依頼の達成が可能そうだと判断をしていたエルドナス様たちが依頼を達成したからといって報奨金が通例通りにならないというのはおかしいかと」
そうだそうだ!何で貰えるお金が減らなきゃいけないんだ!!もっと言ってやれえっと…大臣さん!!
「ですが、これまでドラゴンの無力化に成功した例が無いのです。これまでの報奨金に関しては討伐されていたため、その…ドラゴンの素材を売ることで一部この国としての利益も得ていましたが今回はそれがない分財政的にも抑えたいのです」
デブが急に何かぶっちゃけ始めたぞ!!
話している途中で一瞬何かをためらってたみたいだけど普通に最後まで言っちゃったよね。
「それもそうだな。だが、依頼の時に報奨金に関しての記述を入れてしまっていたのではないか?」
王にそんな風に聞かれて厳しい表情に変わるお金大好き財務大臣。
「そ、それに!先程王とヒスイ殿の交わしていた言葉だけで本当に無力化に成功しているのかという判断は難しいかと」
あーあ…この人色んな人の地雷踏み抜いちゃったんじゃないか?
「ふーん?ねえ王様。この人さっきの僕の言葉を信じてくれていないみたいだけど、これって僕が疑われているってことでいいんだよね?」
ほーらヒスイ君。あとで美味しいもの奢ってあげるからここは穏便に済ませましょうねー。そうじゃないと僕が貰えるお金が減っちゃうかもしれないからねー。
「私としては先程の言葉だけでも十分に信じられるのだがな。何よりそなたの目に迷いが無かったからな。私達に対して出してきた条件を言うときの目は本当のことを言っている目であったからな」
「僕は別に信じてもらえなくてもいいんだよ。でも、このやり取りって本当に無駄じゃない?」
「ふむ。無駄とな?」
「だってさ、僕は実際ここにいて君たちの話を素直に聞いて応答までしてあげてるんだよ?」
「確かにそうだな」
「じゃあ、僕がもしここで力を使って君たちを攻撃したとしたら、僕が入ってきてから今までの時間まで立っていられるのは何人かな?」
ヒスイ君。僕も立ってるのがギリギリだと思うからその質問は結構厳しいよ…。
「それにさ、今大事なのってエル君がここに居ることなんじゃないのかな。実際に君たちがわざわざ本人に対して敵意があるかどうかを聞いてくるくらいには恐ろしい存在である僕に立ち向かってきて生き残って依頼を達成した彼に対しての失礼に当たることをずっと目の前で話し合っていることに気がついていない人間が居るみたいなんだけど、その辺どーなの?」
ヒスイが僕のことで怒ってくれているのは嬉しいんだけど、怖いよー。これ暴れたら止めなきゃいけないの僕だよね…。
しかも、結局暴れちゃったら国の中心まで危険な生き物を連れてきたってことで僕裁かれちゃいません?
ほぼ確実に死刑か無期懲役ですよね…?
やめて~!ヒスイ!僕のために怒らないで!!
「そうだな。すまなかったエルドナス殿ヒスイ殿。報酬はこれまでの通例に従って3000万を支払うこととする。君の言葉で私も我に返ったよ。ありがとう」
「人間は常に迷い悩むもの。だから誰かの意見を聞きたくなるんだ。これは昔の僕の友人が言っていた言葉だよ」
「たしかにそうだな。人は何か問題がある時に悩み立ち止まり、一人では解決できない時に意見を求める。だが、私はここの王である。最後は私が決めればよかったのだ」
さ、さすがは昔話の王様たちと一緒に過ごしてきたこの世界でも古参のドラゴンさんだ〜。
「大丈夫だよ。そうやってすぐに自分のやるべきことを見つけられる王が居る国はこれからも安泰だから」
いや〜。見ている視点が違いますよねー。僕はそこの域まで達することができないと思いますよ〜。
「それにしても、ヒスイ殿は物知りなのであるな。まさか私が初代様の言葉を聞かされることになるとは思ってもいなかった」
「あー。これ、ジェードの言葉じゃないよ?ジェードの兄の言葉できっと僕と話している時に聞いたんじゃないかな?」
「そうであったか。それで…かなわないわけだ。さぁ、この話は終わりだ!」
王はヒスイの話を聞いてすべてを理解したのか立ち上がり場を戻そうと声を発した。
「1つよろしいでしょうか?」
今度はなんだ!やっと終わりそうだったのに!!!
「話は終わりだと言ったはずだが?何用かな勇者殿」
勇者なんて居るんすね。
「今回の件で財務大臣殿が気にしている部分を私ならフォローすることができると思いまして」
「フォローとは何かな?」
「ああ、すみません。手助けをすることができると思いまして。私はこの国の依頼を受けることも多くありますから、その時に得られた素材を今までよりも多く国にお納めさせていただければと思いまして」
「そうか。それはありがたい。では、話もまとまった。以上で本日の報告会を終了とする」
ふーん。あれが勇者ねー。気になるねー。
王様が退出していって僕らは謁見の間に取り残された。
ねぇ、貰えること確定したから帰っていいの?誰か教えてよ。
「では、エルドナス様達はこちらへ」
おお、救いの手が!これで帰れる!
「この後は会食となりますのでそれまで先程の控室にて少々お待ちいただきます」
帰れないんかーい!!
抵抗はしてみたけど、主役がいないんじゃ意味がないと押し切られてしまい。結局僕達はまた控室にいます。
「ねーヒスイ。勇者って何だっけ?」
「たしか、協会に認定された人のはずだよ。どういう基準があるかわかんないけど」
「そっかー。ちなみにさ、勇者がさっき言ってたフォローって言葉ヒスイはわかった?」
「んー?そう言えばそんなこと言ってたね。確かに聞かれるとわからないかも」
「ふーん。そっかー」
コンコンと部屋の扉を叩くノックの音が聞こえる。
「エルドナス様、ヒスイ様。会食の準備ができましたので移動をお願いします」
貴族しかいない会食とか食欲ゼロなんですけど…行くしかないんだよねぇ。
扉を開けるとメイドさんみたいな格好をした女性の人が立っていて、僕達を連れて行ってくれた。
僕が会食と聞いて最初に思い浮かんだのは無駄に長い机に何人もの人が座ってフルコースが運ばれてくるものだったんだけど、いい方向で予想が外れてくれた。
「エル君。これって何食べてもいいやつなのかな?」
「たぶんそーだと思うよ。いろいろ食べてきなさい」
「やった〜」
ヒスイは初めて見るビュッフェ形式に目をキラキラさせながら料理の方へ移動していった。
立食パーティー形式なのはまだ気が休まるかもしれないな…。
ふーっと一息ついた時に窓際に居る一人の青年に目が止まった。
その青年の方に移動していき声をかける。
「先程は助かりました勇者殿」
「いえいえ、そんなことは。私はコディティアと言います。こちらこそよろしくお願いします」
「コディティアさんですね。勇者様はお一人のようですけどパーティーとかは組んでいないんですか?」
「そうですね。常に一緒に居るパーティーメンバーはいませんね。必要があるときには臨時で頼んだりもしますが」
「そうなんですね。勇者パーティーに選ばれるなんてその人は光栄でしょうね」
「皆実力のある人たちばかりなので、私のほうがついていくのでやっとですから」
「ははは、ご謙遜を」
「おっと、すみません。時間が来てしまったようです。またどこかで」
「そうですね。See you next timeってやつですね」
「では、さようならエルドナスさん」
そういうと勇者コディティアは会場を後にした。
「エル君あれ勇者だよね?何話してたの?」
「んー?別に?それより料理はどう?」
「おいしいよー。エル君は食べないの?」
「今はいいかなー」
「ふーん。そっか。エル君何か考え事してるときの顔しているよ」
「あれれ、バレてたか」
ヒスイと話していると何人かの大人たちに囲まれて挨拶をしなくてはいけなくなってしまった。
まぁ、こうなるから食べ物持ってなかったんだけどね。
後々になって考えてみれば、この時にすぐに開放されていればあんなことは起きなかったのかもしれない。
そうして、時間だけが…過ぎていくのだった。
【王都編⑨〜交差する思惑〜】最後までお読みいただきましてありがとうございました。
今回も色んな人がでてきましたねー。大臣たちの名前は完全に遊んでます。
財務大臣は後ろから読むと…。法務大臣はアナグラムになっていて…。なんて気がついたらおかしな方向へ…。
さてさて、最後の方で何かが起きるフラグだけ立てて終わってしまった今回。ここからが王都編の本番ですかねー。どうなってしまうんでしょうか?
次回もお楽しみに☆
【次回予告】
ヒスイ「エル君何してるの?」
エル「いや、今回は逃げられないようにね」
作者「痛い痛い痛い!ギブギブギブ!!」
ヒスイ「何かめっちゃ叫んでるよ?」
エル「もっとやれって意味だよ」
作者「違うよ!?いつからエル君そんなにバイオレンスなキャラにっていてて!!」
エル「そんなこと無いと思うんだけどなー」
ヒスイ「エル君目だけ笑ってないよ?」
エル「ほら、次回予告しちゃいなよ。更新が遅れている作者さん」
作者「じ、次回!【王都編⑩〜異変〜】お楽しみに!」
ヒスイ「楽しみにできる副題じゃないよね…」
エル「ゲームばっかりやってるのはこの腕かな?えい!」
作者「あ〜!!kポア:もいbh簿jsp:パb:おj@jbv」




