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旅立ち!目指せ冒険者!➃~臨機応変に人の技はパクるもの~

基礎技能試験を突破したエルドナスとエーシェ。二人は次の試験までの間のつかの間の休息が与えられたのだった。

実戦形式での試験ではどのような試練が二人を待っているのか?冒険者試験編後編開幕!

エドガーさんがちょっと疲れたという理由で休憩になったけど、ぶっちゃけこういう時の休憩っていうのは何をすればいいのかわからない…。前世で高校入試の時とか大学入試の時の休み時間ってあったけどあれも何すればいいのかよくわからなかったなぁ…。

「ねぇエル君。ちょっといいかしら」

トコトコとこちらに近づいてくるちんちくりん。な、何の用でしょうか…?

「あなたのさっきの魔法ってどうやってるの?」

ああ、魔法についての質問なのね。よかった怖い話じゃなかった。

「さっきの魔法ってあれ?矢のこと?」

「そう!あの矢よ!なんで曲がるの?どうやってやってるのよ」

どうやってと言われても困るなぁ…。感覚でやってるものだからなぁ。

「矢がそれてしまったと確認したら矢に使った魔力の一部を使って軌道を変えてるだけだよ」

「それは見ていればわかるわよ。それをどうやっているのかと聞いてるのよ!」

怒られた…。エーシェさん怖いよぉ。ここにはここには怖い人しかいないのかな…?

「魔法を使うためには構築式があるはずでしょ?私はこれまでかなりの数の魔法を構築式を見てきたからわかるけど、あんなものは見たことがないわ。どうやってやってるの?」

構築式か…。僕が魔法を学んだのは家に本があったからだ。父さんと母さんも昔旅をしていたらしく、その時に集めたコレクションだと言っていたが、初級編からいろんな種類のものが置いてあったからそのすべてを読み漁ったのだが、その構築式という物だけは本当に解せなかった。わざわざ魔法という存在難しくしているように感じたのだ。

魔法とは体内にある魔力を使うもの。例えば【筋力強化】であれば、魔力を筋肉に作用させて普段であればリミッターがかかっている筋肉に対しリミッターを外させる効果がある。そのためいつも以上の力を発揮することができるという物だ。体外で使う場合であれば、エーシェが使っていた【火弾】は魔力を火に変換し回転を加えることで球形にするという物だ。

一般的にはそれを使うために必要がなるのが、魔法の構築式だ。この構築式は魔法を使う者が思い浮かべるだけで魔法が使えるという便利な代物なのだが、これがまた難しい形をしているのだ。

魔力の循環を表すための円を基準として文字と記号を組み合わせたものが構築式だ。しかし、この形がまた難しいのなんのって。前世でも図形に関しては苦手だったから、これを見たときに魔法をあきらめてしまおうかとも思った。

だからこそ僕は初級の魔法書を何度も読み返した。それは何度も何度も。だって、目の前に魔法があるのに使えないなんてめちゃくちゃもったいないじゃないですか!ということでこの構築式を使わない方法を模索した。その結果たどり着いたのがイメージすれば何とかなるんじゃないかという感覚的なものである。

「エル君?どうしたの急に考えこんじゃって」

「ああ、ごめんね。僕はめんどくさくて構築式を覚えるのやめたんだよね」

「構築式を覚えるのを…やめた?」

「うん。だからあれは僕のオリジナルってことになるのかな?」

「何を言っているの?魔法は古代の賢者様が作った構築式で残されているもの以外で作り出すことは困難とされていて、魔導学校の研究でもそういう結論に至ったのにどうして!?」

「どうしてと言われてもなぁ…」

「もしかしてそれが無詠唱で魔法を使うことができた理由かしら。だとしたら納得がいくわ。ぜひ、これが終わったらまた教えてちょうだいね」

「う、うん。そんなことでいいならいつでも」

「そんなことって、魔法の理論の根幹から揺るぎかねない出来事なんですけど…」

「お取込み中ごめんな。そろそろ休憩もできただろうから続きやってもいいかな?」

僕らの話を聞きながらにやにやしているおっさんが近くにいた。おっさんそんな顔するんすね。ちょっときもいっす…。

「あ、ごめんなさい。大丈夫です。」

「いいねー。若いもん同士の会話ってのは俺も聞いているだけで若返りそうだぜ」

若者の話にアンチエイジング効果があるんなら世の中の教育関係者は不老不死になれますよ?

「で、お前らどっちからやるんだ?俺としてはどっちからでもいいんだけどな」

「私からやります。あいつが先だとなんか嫌なので」

なんか嫌って何ですかエーシェさん!?そんなに嫌われてしまうと中身はおじさんの心でも傷ついちゃうんだからね?今は少年だからその心はガラスみたいにそれはそれはもろいんだからもっとやちゃダメなことだよ!

「と、言っているがエルドナスはそれでいいか?」

「大丈夫っす…」

どうせ、僕が先がいいといっても何も状況は変わらなさそうなので、素直に受け入れたほうがよさそな気がする。それにエーシェのを見ていると何か得るものがあるかもしれないし!

「では、お願いします!」

「じゃ、殺す気でかかってこい!それでも死にゃーしないから本気で来い!」

殺す気でかかってこいってどんだけだよ。そんな強キャラにしか許されないセリフって使われるシーンあるんですね…。

「んじゃ、自分のタイミングでどうぞ」

エーシェはふーっと大きく深呼吸をして目を見開くと詠唱を始めた。

「【俊敏強化(アジリダ)】【物理防御強化(ディフェンサ)】完了。【火槍ランツァ・ディ・フェーゴ】展開」

強化系の魔法ってみんなできる感じなんですね。確かに父さんが基本中の基本だって教えてくれたような記憶があるような無いような…。よく覚えてないっすね。

展開という言葉の通り、エーシェの体の周りにいくつもの炎の塊ができはじめ形を変えていく。

「準備はいいようだな。こっちも行くぞ」

エドガーさんは火槍が展開されるのを確認するとエーシェとの距離を詰め始めた。エドガーさんとしては火槍が展開される前に自分の間合いにもっていこうという算段だろうが、エーシェはそれを見て距離が詰められないように後退し始めた。遠距離攻撃の魔法を展開しているのに距離を詰められたら意味ないもんね。僕はやはり普通じゃない内容しか教わってないんじゃないかな?

距離をとったのがよかったのか炎の塊は赤い槍に形を変えた。エーシェが杖を前方へ振ると火の槍が前に飛んで行った。

「ふんっ!」

あ、人間って飛んでくる魔法に対して筋力だけで対応できるんだ!知らなかったな~。化け物めー(誉め言葉です)。

飛んでくる火の槍を木刀で叩いて粉砕している人間がいるだけで今日は収穫があったんじゃないだろうか?こんな化け物じみた人間がいるんだから世界は広いですねー。ちなみに、エドガーさんはなんと今のところ強化魔法を使った様子がないのであの人は素の身体能力だけであれをやってのけているのだろう。やはり…筋肉は裏切らないのか!?いや、そんな馬鹿な…。

火の槍を打ち払いながら前進を続けてくるエドガーさんに対してエーシェは次の魔法を用意し始めていた。先ほどの試験よりも大きく作った火の球が杖の先にあった。

「【火弾(フェーゴ)】!」

今度は体の中心を狙うのではなく、相手の機動力を削ぐためか少し低い足のあたりを狙っていた。なんて奴だ!勝つためには手段を択ばないってやつですか?

「甘いぞ!」

それも簡単に打ち払っちゃうあの人は何なんですか??

エーシェはその後も何発か魔法を放っているようだったがすべてエドガーさんに叩き落とされてしまった。うっわ怖いわこの人。鬼じゃん。

「っく【魔法障壁(バリーラ)】」

どんどん距離を詰めてくるエドガーさんにこのまま魔法を打ち続けても効果がないと悟ったのかエーシェは違う魔法を発動させた。魔力でできた壁みたいなものが見えるような見えないような?ちょっと光の屈折があるからおそらくあるんでしょうね…。よくわかんないけどあれ、すごいな!俺も使ってみよう!

この後きっとあの人にボコられるからその時の備えとして使えるようにしよう。あれ、正面だけだと心もとないから球形にして体を包み込むようなイメージで作れたらいいな。今のうちに練習しとこ。

…あ、考え事してたら、エーシェがどんどん追い込まれてる。がんばれー。

幾枚にも重ねた魔法障壁をエドガーさんはサクサクと木刀で切り裂いていく。きっとエーシェは魔法障壁で時間を稼いでその間にほかの魔法を発動させようとしていたんだろうけど、あんなに攻め込まれちゃうとねー。相手が悪すぎる。

「【魔法障壁(バリーラ)】!【魔法障壁(バリーラ)】!バ…」

「ほい。ここまでっと」

最後は詠唱するよりも先にすべての魔法障壁を切り刻んだエドガーさんが首元に木刀をつけて終わった。恐ろしい人だよほんとに。この後にやるの嫌だなぁ…。

「最後のほうはよく耐えていたが、防戦一方になってしまった際に逆転する一手があったほうがいいだろうから、まだないなら今からでも覚えるんだな。ま、魔法使い一人でってことはないだろうから万が一の備えってことでな。とりあえず、合格だ」

いやー。おめでとうエーシェ!あの鬼みたいな人から攻撃され続けるなんて恐怖以外の何物でもなかっただろうによく耐えたよ本当に!いやーいい最終回だった。では、僕はこの辺で…。

「なんで立ち去ろうとしてるんですかエル君?次はあなたの番ですよ?」

私だけこんな怖い思いをしたんだからあんたも同じ思いをしなさいってオーラが言ってるよ?すごい僕新しい能力に目覚めたんじゃ…。

「うし!いい感じに体も温まってきたから、エルドナスには最初っから全開で行っても大丈夫そうだな」

それは僕が大丈夫じゃないんで遠慮させてもらってもいいですか?

後ろからはエーシェさんの強めの視線と目の前からはエドガーさんの獲物を狩ろうとしているかのような視線…。逃げ出さないだけ僕偉いと思うんですけど!?

「お、お手柔らかにお願いしますね?」

「おう!任せとけ!とどめは刺さないからよ」

これ、絶対楽しんでますよね?新人いびりしてくる先輩じゃなくて組合長って笑えないんですけど!

「準備はいいよな!行くぞ!」

え、ええ??エーシェの時と違いすぎませんか?ひでぇ!と、とりあえず落ち着け、距離をとるんだ。まだ慌てる時間じゃないはずだ!【筋力強化(ポデラーソ)】【俊敏強化(アジリダ)】【時間認識強化(エクステンション)】発動!だめだ、間合いを詰められすぎてしまった。弓じゃ無理ぽよ。ぽよぽよ。

上下左右と器用にいろんなところから斬撃が飛んでくるのを何とかしのいでいく。

「はは!よく反応したな!次はどうだ!」

それラスボスとか強キャラがいうセリフなんですけど!僕昨日家を出たばかりのペーペーなんですよ?もう十分頑張ったよね?もうゴールしてもいいよね?

エドガーさんの言っていた次というのは裏拳のようにぐるっと回って打ち込んでくる技だった。いってぇ木刀で受け止めているはずなのに手がめちゃくちゃしびれるんですけど!もう嫌だこの人と打ち合うの!

距離をとるためにはどうすればいいのだろうか…。あれだ。急に魔法使ったらビビるよね?思いついたらやってみよう!

魔力を木刀の剣先に集めて小さな火の玉を作る。それを地面に向けて突き刺す!

ボフッ!という音とともに土煙が立ち込める。その間にエドガーさんから全力で距離をとる。ほんと怖いあの人もういや!!

武器交換(インタラカンビオ)】発動!手元にあった木刀と実戦形式試験に入るときに背負っておいた弓が入れ替わり手元に弓が現れる。これは便利なんですよねー。持ち替えの時に時間がかからないから。

さて、反撃開始です!とっておきをお見舞いしましょう!

時間差弾展開準備開始

展開位置調整:前方1メートルに角度0・45・90・135・180

展開段数:各3発ずつ装填

発射時間調整:偶数度のものは発射後1・1.5・2秒後。奇数度は1.25・1.75・2.25秒後に設定

属性:火

準備完了!時間差弾散弾バージョン発射!!

ひゅっという音ともに火の塊が5つに枝分かれして自分の前方1メートルの位置でとどまる。

「ん?なんだ曲芸大会ってわけじゃあなさそうだな」

どこまで余裕なんでしょうねこの人…。

次!構築するのは三連弾!時間は0.2秒ごとに発射!とりあえず打てるだけ打ち続ける!

構築が終わったころに時間差弾がエドガーさんに向けて発射され始める。

「おお!?なんじゃこりゃ!」

この人びっくりさせられたんならもう満足かなぁ。でも、容赦なく打ち続けるよ?だって近づいてきてほしくないんだもん。

三連弾を構えては放つ。また構えて放つ。

それをなぜか木刀で防ぎきる化け物が目の前にいるんですよね…。

「なんで無傷なんですか?」

「そんなことないぞ?一発食らった」

一発しか食らってないのがおかしいんだよなぁ。ここまでで30発くらい放ってるはずなんだけど…。全部あの人のところに向かって飛んで行ってくれてるんだけど…。

弓でいくら攻撃しても意味ないからあきらめよう。

武器交換(インタラカンビオ)】発動…。思いっきり攻撃してだめなら潔くあきらめよう。

クラウチングスタートから思いっきりエドガーさんのところに走って行って手前1メートルくらいのところでジャンプして思いっきり切りかかった。はじかれた…なんで押し返せるんだよこの人。さかさまになって落ちるしかないじゃんこんなの。

「甘いぞ!とどめだ!」

さっきとどめ刺さないって言ったじゃん嘘つき!思いっきり横に薙ぐようにこちらに向けて木刀を振ってくるエドガー氏…。いやだ!死にたくない!エーシェの技パクるぞ!【魔法障壁(バリーラ)】発動!

先ほどエーシェの魔法を見てすぐに練習し球形にできるようになった魔法障壁を展開する。最後に一矢報いてやろう…【武器交換(インタラカンビオ)】!

さかさまになりながらエドガーさんに向けて弓を絞る。僕が使える最速の矢である光属性の矢で魔法障壁が破られる前に打ってやる!

エドガーさんの木刀が魔法障壁にぶつかる直前に弓を引き絞り切って勝ったと思ったら、目の前にいたエドガーさんが消えた…?人間って消えることできるの?WHY?

「最後のはヒヤッとしたぞ!」

障壁を木刀ではなく蹴りでぶっ壊してついでに僕を蹴って吹っ飛ばしてくる超人が後ろにいた。たぶんこの人とは生きている世界戦が違ったんだ…。

ズザーと地面を横滑りしていく僕。こんな経験初めてしましたよ吹っ飛ばされて地面を移動するなんて。

「ふむ。俺に強化魔法まで使わせるとは恐れ入ったぞエルドナス!文句なしで合格だ!」

そんな風に言われても意識飛びそうなんですけど…。

そんなこんなで、僕とエーシェは冒険者組合の試験を突破して晴れて冒険者になることができたのであった。



「旅立ち!目指せ冒険者!➃」最後まで読んでいただきありがとうございました!書いているとどんどんエドガーさんが化け物になっていくんですけどどうしましょうか…。エドガーさんは構想時にはこんな強(凶?)キャラになる予定はなかったんですけど、どうしてこんなことに…?何はともあれ、二人とも試験に合格できてよかったです。さて、この後二人にどのような試練が待っているのでしょうか?

【次回予告】

晴れて冒険者になることができたエルドナスとエーシェ。二人はエドガーさんに合格祝いということでどこかに連れていかれてしまったようです。そこには受付のお姉さんも一緒にいて…あれ、そしたら冒険者組合誰もいなくないですか?いいんですか組合長?長かったような短かったような旅立ちと冒険者登録編最終章!「旅立ち!目指せ冒険者!⑤」お楽しみに!

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