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王都編⑧〜謁見〜

王との謁見の日程が決まったエルドナスは結局エーシェに怒られ続けていた。

これはその後のお話。

またいつの間にか朝を迎えていた。

えっと…昨日は何をしていたんだっけ…。

確かエーシェにしこたま怒られて…その後はまた結局エーシェがお酒を飲んで…。

僕も結構飲まされて…。

あー頭が痛い気がする。

「えっと、今日の予定は…そうだ!王様に会いに行かなきゃいけないんだ!正午の一時間前って…今何時!?」

慌てて時間を確認するが、正午まではもう少し時間がありそうだった。

せ、セーフ!?良かった良かった。

王様との謁見の時間に遅れるとか不敬罪で処刑ものだからね。危なかったー。

落ち着いて辺りを見回してみると結局この前と同じ状況になっていた。

僕はいつもどおり机に突っ伏して眠ってしまっていたらしい。

どおりで体が痛いわけだ。

でも1つこの前と違うのは…エーシェも同じように机に突っ伏して眠っているということだ。

「エーシェさーん。なにもかけずに寝てたら風邪引いちゃいますよー」

まぁ、すでに数時間この状態で寝てるんだろうけど。

肩を揺らしてみても起きる気配はない。

さて、どうしたものか…。

でも、まぁ…風邪を引かれてしまっても困るんだよね。

「しょうがないね…」

寝ているエーシェの上半身を起こして椅子の背に体重がかかるようにする。

そのまま膝の裏のところと肩甲骨の辺りを持ってお姫様抱っこをするようにエーシェを持ち上げる。

だらーんと手を垂れ下げて、口も開けながら気持ちよさそうに寝ているこのちんちくりんツルペタは前も一度山まで行くときに持ち上げたことがあったけど、やっぱり軽い。

女の子って男の人と比べて軽い成分で出来てるのかな?

貴族様とは思えないくらいだらしなく眠っているエーシェを抱えたままエーシェの寝室まで運ぶ。

まだ僕は眠ったことの無いこのフッカフカのベッドにエーシェを寝かせ布団をかける。

さすがに眠っているときまで帽子をかぶらせたままなのはどうかと思い帽子を取って近くの机の上に置く。

「あ…耳飾り…つけてくれてたんだ」

祭りの時にエーシェに買った髪飾りを彼女は耳につけてくれていた。

人に贈り物をしたことなんて初めてだったけど、こうやってつけてくれているところを見ることができると嬉しく感じる。

なんの気なしに僕は耳飾りが着いているほうのエーシェの左耳を触っていた。

「んゅ」

なんと言ったのかよくわからない声を発しているエーシェの耳…あれ?ちょっと長い?エルフの耳まで行かないけど少し尖っている?

「だからいつも深々と帽子を被ってたのか…別にそんなに気にしなくても可愛いのに」

ん?

今のは誰だ?

あ、僕か。あれ?今なんて言った?

こいつが可愛い?はぁ〜何という気の迷い…。

だいたい昨日のエーシェの言葉を思い返したらそんなことを言えないだろ…。

「エル君ってほんとに何しても起きないわよね。前に私が起こしに言ったときもそうだっけど、馬車の中でヒスイと一緒になってどんないたずらしても起きなかったものね」

それから語られた寝ている間の僕に施されたいたずらの数々…殺しにかかってるんじゃないかって思えるものすらあった。

「…と、いうことは?」

やられたらやり返せ?

エーシェも今の所『肩を揺らされる』『持ち上げられる』『ベッドに寝かされる』『耳を触られる』ということをされても起きなかったわけだ…。

つまり、エーシェも眠りは深い方ということでいいだろう。

さて、何をしてやろうか…。

エーシェが眠っているベッドに腰掛けあれやこれやと思考を巡らせる。

その間もスースーとリズミカルに寝息を立てて眠っているエーシェ。

あ、そうだ!コイツらも僕の鼻をつまむなどの迷惑行為をしていたと自白していたので、やり返そう。

そっとエーシェの顔を覗き込んでみる。

薄いエメラルドグリーンの髪の毛と大きな帽子で実はまじまじと顔を見たことがなかったんじゃないかと言うことに気がついたのだが、こいつの顔整ってんなー。

貴族様ってのは整った顔立ちの人たちが多い気がするが、こいつはなかなか…。

いまは口呼吸をしているようなので、塞ぐなら口かー…。

ふと、自分の顔とエーシェの顔がかなり近いことに気がつく。

このまま少し下に下ろせば唇が…。

何でだろう…すごく自分の心臓の音が大きくなっているのを感じる。

自分自身が脈打っているということを実感している。

この…気持ちは…?

「はいはいやめやめ!どーせ後でバレてまた怒られるんだから!おやすみエーシェ」

ばっと顔を上げて部屋から立ち去る。

パタンと扉が閉まった音を確認したエーシェが目を開ける。

「意気地なし…」

そうつぶやくとエーシェは布団を頭まで被った。

彼女はいつから起きていたのだろうか?

それを知るのは彼女しかいない。

エーシェがそんな風に呟いていることなど知らない乙女心など文字しか理解していないエルドナスはヒスイの寝室の扉を叩いていた。

「ヒースーイー!そろそろ出かけないと行けない時間なんだけどー!」

ゴンゴンとドアを叩く。

「あーもーうるさいなー」

「あ、おはようヒスイ。それにしてもドラゴンも引きこもるんだね」

ヒスイの髪は長いのでそこまで寝癖などはついていないのだが、それでも若干ボサボサになっていた。

日焼けをしていない色白の肌にボサボサの長髪の男の子って完全に引きこもりですよね。

「引きこもりじゃないよ。これは緊急避難と言うんだよ」

たしかに、避難して正解だったよ。

せっかくヒスイが怒ってくれてお酒を控えるようにってなったのにその日のうちに破る酔いどれエーシェはもう手がつけられそうになかったからね。

エーシェが酒瓶を開けたくらいの頃にヒスイが静かに部屋に入っていくのが見えたけど、今回は僕が悪いのでそっと逃したのだった。

「僕のせいでごめんね~。まぁ、なんとかなったのかよくわかんないけど、エーシェは部屋で寝ているしもともと王様とは会わないって言ってたから僕らだけで行こうか」

「ちょっと待ってね準備するから」

ドラゴンにも準備とかあるんだなー。

「あと、エル君その服で行くの?」

はて?その服で…?

「僕は正直どうでもいいんだけど、人間ってこういう時に衣服を気にするだろ?それなのに何でエル君はいつもどおりの格好をしているの?」

あーそういうことか。

「僕は正装とか持ってないし、持ってきてないからね。それに、今回は冒険者として依頼の達成を報告に行くんだから冒険者としての僕の格好で行って問題ないと思うよ」

「まぁ、ダメならお城に入れてもらえないかもしれないね。じゃ、少し待ってて」

そう言うと扉を閉めて奥に入ってしまうヒスイ君。

…ドラゴンよりも容姿に興味がない人間ってどうなんだろうか?

さっき僕の言っていた持論は間違っていないと思うのでそれはいいんだけど…。

僕って正装を持ってないどころか普通の服ってほとんど持ってないんじゃないか?

今まで着てきたのは汚れてもいいような服ばかりだったし…よし、今度買おう。そうしよう。

「おまたせー」

おしゃれドラゴン君のヒスイは長い髪を整え後ろで軽く結んでいる。

服もいつも着ているようなちょっとダボッとしたような少年の服ではなくお出かけ用の服のように見える。

「そんな服持ってたんだ」

「エル君が服に興味がなさすぎるだけだと思うけどね。じゃあ、行こうか」

「そ、そうだね」

うん。絶対服買う。

宿屋を出てふと気がつく。

「ヒスイ君や」

「何?エル君」

「王城までの道は知っているかね?」

「知らないよ?僕ドラゴンだし」

こういう時にドラゴンを使うのはいかがなものかと思いますよ〜?

「でも、ここからでも見えるじゃん。あの一番大きな建物なんだから迷うはず無いよね」

「そ、そーだねー」

「エル君は何で僕がいない方を向いて返事をしているの?」

それでも迷いそうだからです。

ヒスイについていき王城に到着する。

ああ、なんと情けないのだろうか…。

【迷いロスト・パーソン】よお前は幾度となくこの宿から城までの道のりの中で違う方向へ僕を誘おうとしていたな…。お前の恐ろしさを改めて知ったよ…。

正面の入り口のところで門番さんに話しかけ王城の門の中に入れてもらう。

そこからは身なりの良い執事さんみたいな初老のイケオジに連れられて数分歩いてやっと城の中に入れた。

でけえ家は疲れるな。

城の正面の入り口から入るとこれまたでっけぇ階段。

その階段の上の壁には人物の肖像画が書かれていた。

「いろいろでかいな…」

「僕あの人知ってるかも…でも子供の時しか見たことはなかったかな?」

さすが悠久の時を生きるドラゴンさんですね。それにしても見たことあるって…。

「あちらはこのナレファンス王国の初代国王であるジェード・ナレファンス様でございます。もともとはある王国の王家にお生まれになられたジェード様とその隣にいらっしゃるエルフの国の姫であったシェナード様と一緒にこの国を建てられました。そのお姿で建国をなされた当初の精神を忘れぬようにと示してくださっているのです」

ふーん。

でも、エーシェの話だとこの姫と駆け落ち同然で逃げた先がこの国になったと聞いたんだけど…。まぁ野暮なことは言うまい。

「へー。ジェード…様はエルフの国のお姫様と結婚されたんですかー。知らなかったですねー」

空気を読んで様をつけるなんて偉いぞヒスイ!

「ヒスイはこの人実際に見たことあるの?」

ヒスイの耳元で小さく訪ねてみる。

「えっとね…たぶん会ったことあると思うんだよね。いつも勇敢な彼の後ろにいつもついていたちっちゃな子だったと思ったんだけど、そんなことしていたなんてねー」

やっぱりこのドラゴン君スケールが違うわ。

「エルドナス様、ヒスイ様。こちらが控室となっておりますので声がかかるまでこちらでお待ち下さい」

イケオジな執事さんに通された部屋はこれまた豪華な客間だった。

今の季節は使うことがないのだがどでかい暖炉が部屋の奥にあり、大きめの机とそれを囲むように椅子がいくつも並んでいた。

椅子に座るとすっごくフカフカでこれ前世で通っていた学校の校長室とかにあったものレベルで座り心地がいいよ!すごい!

「すっごいフカフカだねー。馬車の中もこれくらいふかふかならいいのに」

「そうだね~。これなら移動中もお尻が痛くならずに済むからねー」

でも…どれだけ高いソファでもやっぱりあれに叶うものは無いよなぁ…。

「柔らかくて座り心地がいいのもいいけど、やっぱ人をダメにするわけではないからなぁ…」

「人をダメにしちゃう椅子ってあるの?」

この世界には無いかな〜。

「いや、噂に聞いたことがある程度なんだけどね。人の体を優しく包んでくれるような布団みたいなふわふわのがあるとか無いとか」

「へーそんなのあるなら座ってみたいかも。僕これでも十分満足なんだけど」

まぁ、この高級ソファに文句があるわけではないんだけどね。

コンコンと扉を叩かれる音が響く。

扉を開けたのは昨日も会ったゲルダナスさんだったはず…。

「昨日ぶりだなエルドナス。それで、隣りにいるのが?」

ゲルダナスさんの視線が僕からヒスイに動く。

「そうです。彼が例の」

「そうか。わかった。では、準備が整ったから二人とも私についてきてくれ」

「はい」

ゲルダナスさんに連れられて王城の中を歩いていく。

通り過ぎるどの扉も豪華な装飾がなされており見るもの一つ一つが新鮮だった。

「ここだ。ここで待っていればそのうちに号令がかかり君たちに指示が来るだろうからその指示に従ってくれ。では、私はこれで」

そう言い残してゲルダナスさんは去っていった。

本当に僕をここに連れてくるだけの役目だったんですね。なんかびっくり。

ゲルダナスさんに案内されたのは1つの大きな扉の前だった。

これまで通り過ぎてきた扉の1.5倍から2倍はあるであろう大きさの重そうな扉。

この王城はとにかく色んなものを大きくしたいらしい。

大きさは力と考えると、この王城は入ってきたものに対して自分の国の力を示しているということになるだろうが…。趣味が悪いようにしか思えないんだよなー。

待つこと数分。ゴーンゴーンと大きな鐘の音が響く。

昨日も聞いたこの音は正午を告げるものだ。

「開門!!」

ドアの向こう側から男性の大きな声がその鐘の音を聞くなり響いた。ちょっとビビるんでそういうの事前に告知してもらってもいいっすか?

ゆっくりと目の前にあった扉が開いていく。

扉の奥にはレッドカーペットが敷かれその奥には少し高くなっている位置に大きな椅子が1つとそれと同じようなデザインの少し小さな椅子が置かれている。

レッドカーペットの両脇には身なり良い服をまとったおじさんやおじいさんたちがズラーリ。大体の人が恰幅が良いのと服装を見るにこの国の重役とかそんなところなんだろうか。

「ルーファス・エルドナス、ヒスイ!両名前へ」

わっかりやすい指示で助かりますね。

部屋の中に居た扉の警護をしていた兵士に先導されレッドカーペットの上を歩く。わぁすごくふかふか!

兵士の人が止まったので僕達も止まる。そうすると兵士さんはすっと左向け左をして移動していってしまった。

台座の近くに居たおじいさんが一歩前に出ると口を開いた。

「ナレファンス王国国王ジェラルド様の入場です。一同礼!」

わー体育会系だー。というか段取りも教えてよ。急に言われても困る。

とりあえず昔の社会人のときの知識である謝罪のときなどに使う90度の礼をしてみる。正解がわからん。

少しの間その姿勢を続けさせられ、もうそろそろ同じ姿勢を取るのはしんどくなってくるなーと思ったところで静かに声が響く。

「皆の者頭をあげよ」

その声を聞き頭を上げると、先程確認した王座に一人の男性が座っていた。

【王都編⑧〜謁見〜】最後までお読みいただきましてありがとうございました!

結局エーシェはどこから起きていたんでしょうね〜。機会があれば幕間とかで書ければと思っています。

幕間のネタはいくつか思い付いているんですけど、なかなかそれを文字に起こす時間が…ね。

途中でソファの話がでてきたんですけど、僕は基本的にいつも例のビーズソファに座りながらこのお話を書いていることが多かったので、ちょっと内容として入れてみました。そしたらちょっと長くなっちゃった☆

さて、ついに始まりますね〜。この王都編もあと2話で折り返しに差し掛かりそうです。最近更新頻度落ちてるから年内に終れるのか怪しくなってきたぞ(テヘペロ)

頑張りまーす。

【次回予告】

エル「まさか話の中でバレるとはなぁ…」

作者「ほ、ほら!こんな端っこまで読んでくれている人にしかわからない小ネタみたいなものだよ!」

エル「結構表現がぼかされてたんだけど?」

作者「ひゅ〜ひゅひゅ〜」(ならない口笛の音)

エル「お前口笛もハンドフルートもできるだろ!知ってるんだからな!」

作者「ハンドフルートとか言っても通じないから…」

エル「ところで、何で今回僕はあんなに動揺する感じになったのさ」

作者「次回!【王都編⑨〜交差する思惑〜】お楽しみに!」(クラウチングスタート!)

エル「また逃げた!!」

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