王都編⑥〜格差だ!〜
王都で買い物を終えたエルドナスとヒスイ。
今回も二人の日常編?です。
「そういえばエル君。さっきのエー…この手紙には続きがあったんだよねー」
「え?聞いてないんだけど?」
なに?おつかい?
「王都の冒険者組合に行って書類を出してこいだって」
おう…完全におつかいじゃねーか。あいつ抜け目が無いな…。
「ちなみに、もう一つ。帰りに酒を買ってこいだって」
あの野郎…ほんとに抜け目がないな…。
「宿にもあるだろ?ヒスイその手紙貸して」
ヒスイから半ば奪い取るようにエーシェの手紙を取る。
《最初に、きっとエル君が探している物があるような店は王都にも私が知る限り1つしか無いからこの店に行けばきっと探しものが見つかるはずよ。ただしびっくりするくらい高いかもしれないから、エルくんがお金を使いすぎないようにヒスイは見張りをお願いね》
ヒスイ君この内容守れてませんね。残念君は怒られる運命から逃れられないね!どんまい!
《あと、せっかく外に出るんだからついでに1つお願い。エドガーさんからもらった王都の冒険者組合への報告書を届けてきてちょうだい。地図はついていてもエル君はどうせ迷っちゃうからヒスイお願いね。ちなみに近くに無駄にでっかい協会本部もあるからそれを目印にしてくれればいいと思うわ。よろしくねヒスイ。あと、私はお昼から呑んでるだろうからきっと部屋においてあるお酒は飲み干してるだろうから帰りに何本か買ってきてね》
なんとひどい内容の手紙なのだろうか…。
それにエーシェはどれだけ飲むつもりなのだろうか?エーシェさん最近呑んべぇキャラになってる気がするけど…ほんとに大丈夫なんですかね?主に肝臓が…。
それにしてもなんて悪意のある手紙なのだろう。
地図がついていても僕のユニークスキルである【迷い人】は発動しやがるのでどうせ迷いますよ!僕だって迷いたくて迷ってるわけでは無いんだよ!プンスカ!!
だからって…ひどいじゃないか…人のことをお荷物みたいに…。
「エル君怒ったりしゅんとしたり忙しいね」
うるさいわい!!
「じゃ、怒っててもしょうがないから行こうか」
何か最近ヒスイ君が僕に対しての扱いがひどいように感じるんは僕だけですか?
二人で王都を歩いてみるとやっぱり王都というところは本当に発展している所だと感じる。
右を見ても左を見てもエリーゼの村よりも高い建物が立ち並んでいる。
人は限られた場所を有効的に使おうと空へ空へと高く建物を伸ばしていくと聞く。
面積の割に人口が多いことがこのことからもわかる。本当に発展している場所なんだろう。
人は多いからその分店も多くなる。だけど、なんだろう違和感を感じる。
「エル君どうしたの?」
「んー?何か違和感があってね」
「エル君もそう思った?」
「ヒスイも?何かうまく言葉にできないんだけど何か不思議な感じって言えばいいのかな?」
「人はたくさん居るし、建物も立派な物が多いけど不思議な感じだよね」
そう。この違和感は前世の頃にも感じたことがある…関東に引っ越して来たときの…。
「あ、わかった。ここに来てから人と目が合わないんだ」
「確かにそうだねー。エリーゼの村だとみんな優しく話しかけてくれるもんね」
王都の人は関東みたいに人のあれだ…人に関心が無いやつだ。
「何かこれはこれで僕には新鮮かなー」
「何で?」
「僕は今でこそこの姿だからちょっと頭になにかくっついてる子供くらいにしか見えないはずだけど」
あ、そのへんは気がついていたんですね。
お兄さんその辺気がついていないんじゃないかってヒヤヒヤしてたんですよね。
でもあれか、武器屋では自分から触らせてたっけ?ってことはいちおうあれか…頭にはわざとつけてるってことになるのか…?深入りはしないでおこう。
「前に人と交流を持った時は元の姿だったからみんなが僕を見ているのが当たり前だったからね。この状態はなかなか新鮮なんだよね」
そりゃ、襲ってこないドラゴンが近くに居たら見るよね。
僕もそれなら観光名所かアトラクション感覚で見に行くもん。
「それで、初めての経験をしてみてどう?」
「んー。何か寂しいかな〜。気分的にはやっぱり仲良くしてくれるエリーゼの村のほうが楽しいかな。数日しか居たことないけどね」
「そうだねー。僕も一番近くにあったからって理由であの村に居るけど居心地は良いよねー。筋肉ダルマは居るけど」
「あの人はもう人じゃないよ…。きっと僕が本気でやっても勝てるかどうかわからないもん」
エドガーさん。おめでとう!ついに人外から人外認定されましたよ!
「ちなみにエル君も片足突っ込んでるけどね」
「え”!?」
「あはは!すっごい声出た!」
「ちょっとまって!僕が人外に片足突っ込んでるって何?」
「あんな魔法の使い方ができる人間を人間と呼んでいいのか迷っているところはあるかなー」
えー。そんなカミングアウトされるとは思いもしなかったから結構衝撃を受けてますよ…?
「でも、まだ片足だから」
「そっかー片足かー。よかった」
これ、喜んでいい内容なのか?
「さて、そろそろ協会が見えて…ってずっと見えてたあれが協会なんだね」
「やっぱり?そんな気は薄々してたよ」
僕のイメージする協会はどうしてもキリスト教の教会であって屋根のところに十字架があったりするものなのだが、ここの協会はちょっと雰囲気が違うな。
建物の感じはおっきなカトリック教会みたいな感じかな。
切り取られた白い石で組み立てられたこの建物は…この…建物は…。
「すっげーゴテゴテでなんか気色悪い」
「ひどい言い草だね」
「だってさ…なんか…うーん。あんまり僕の好みじゃないかなーって話かな」
白い石造りの建物なのは神聖な雰囲気があって良かったんだけどね。
なんか知らんけど、贅沢の限りを尽くしましたどやぁって感じがすっごく気に入らない。
別に僕には関係が無いならいいんだけど、なんかここの中枢の人は仲良くなれそうにないかな。
「ふーん?エル君にも好みとかってあるんだ」
「人をなんだと思ってるんだい?」
「じゃあ、話は変わるけどエーシェのことはどう思ってるの?」
「ちんちくりんツルペタ」
「それは見た目の話でしょ?でも前にちっちゃくなってるときに抱きつかれたけど…」
「その話はやめといたほうがいいんじゃない?きっと知られると僕らあれだよ数時間説教コースだよ思うよ」
「そ、そうだね。で、見た目じゃなくてさどーなの?」
どう思うか…か。そんな風に考えたことすらなかったな。
うーん。別にこれといって…無いな!
「僕は他の人とパーティー組んだことが無いからよくわかんないけど、一緒にいてあんまり気を使わない友達みたいな感じかなー」
「ふーん。そっかー」
何でこいつこんなにニヤニヤしてるんだろうか?
こういう感じのニヤケ顔見たことあるな…。
あれだ!エドガーさんだ!いや、エドガー親子だ!ほんとにもうなんなんだよ。
「さて、ここが見えたら冒険者組合の本部は近くってあるけど…あ、ここだ!」
ん?
んん?
「でっか!?なにこれ格差だ!!」
「急にどうしたの?」
「だってさ、思い出してよ!エリーゼの村にあった冒険者組合を!!」
そう、エリーゼの村にあった冒険者組合はあれだよ?
ボロいしちっちゃいし僕ら以外の冒険者はいないしだし!
本部だからってこの大きさは何なんだ!
格差だ!格差が目の前にある!
この協会本部は近くにある協会とはちょっと違って茶色のレンガで作られた建物だ。
思った以上に大きくて取り乱してしまったが、これは格差以外の何物でもないだろう。
何よりなんだよこのでっかいすっごく丁寧に仕上げられただろう重厚な作りの扉は!
2.5メートルはあるであろうその大きさに完全に呆気に取られる。
「確かに、エリーゼの村にあったのとはぜんぜん違うよねー」
反応薄いなー。これが企画外か…色んな意味で。
扉は以外にも軽くて力をそんなに入れなくても簡単に開いてくれた。
中にはどこぞの冒険者組合とは違って何人もの冒険者であろう人たちが中に居た。
「冒険者組合ってこれが普通だよね」
「エル君思っていても口に出しちゃいけないよ?」
だってさ…ねぇ?
さっさと仕事終わらせよう。何か長居するの嫌だし。
「紙を提出しちゃえばすぐに終わるでしょ」
「はいはーい」
「こんにちはー!本日はどのようなご要件でしょうか?」
「あ、これを出しに来ただけです〜。よろしくおねがいしまーす」
「はいはい。終了書ですね。…あ、ハイ大丈夫でーす」
この用事…一瞬で終わったな。
「じゃ、後はお酒かって帰るだけだね」
「そうだね。どんなのがいいとか書いてなかったけど何買っていくの?」
「いつも葡萄酒飲んでるからいい感じの葡萄酒でいいんじゃない?」
「いい感じの葡萄酒って実はすごく難しいんじゃない?」
たしかにそうかも…。でもどうせ酔っ払ってるからなんでもいいだろ。
あ、そうだ。大人に聞こう。
「受付のおねーさん。この辺りに美味しい葡萄酒が売っているお店ってありますか?」
「それでしたらここを出てまっすぐ行ったところにあるお店がいいですよー。店長さんがその時の気分に合わせたお酒をおすすめしてくれるんで」
「ありがとうございました」
お姉さん親切だったなー。あの人も飲むのかな?
と、言うことで僕達は冒険者組合を後にしておすすめされた酒店に到着したのだった。
お店に入ると小太りの優しそうなおじさんが笑顔で対応してくれた。いい人そう。
「今日はどのような物をお探しで?」
「酔いどれに飲ませる葡萄酒を」
「エル君?そんな注文してもさすがに難しいんじゃ…」
「そうですね…その人はどのような方ですか?」
「たぶんお金持ちの家の出身ですね」
「エル君?」
「では、この辺りはいかがでしょうか?」
「出てくるんだ!おじさんすごい!」
ついにヒスイがツッコミに回り始めたな。これで僕も安心してボケに回れる。
「じゃ、それで」
「話聞かなくていいんだ!」
「だって、おじさんがおすすめしてくれたんだからきっと正解だよ」
「初めてあったおじさんを何でそこまで信頼ができるの!?」
いいね!テンポが上がってきたよ!
「お買い上げありがとうございました〜」
と、言うことでいい感じの葡萄酒をもって宿に帰ることにした。
いや、ほんとにここの宿って入るのに勇気が居るよな…。
部屋に戻ってみるとあれだ…なんていうんだっけ…ああ、そうだ!ダメ人間?いや違うな…酔っぱらいがいた。
「おか〜えり〜」
もうすでに瓶が机の上に転がっている。
「ちょっと!エーシェほんとに全部飲んじゃったの?」
「だってあんたたち遅いんだもの。暇なら飲むしかないじゃない」
「うわぁ…いつからこんなになったんだっけ?」
気がついたらこうなっていた気がするけど。
「私はそんなに飲んだくれじゃないわよ?」
はいはい。本人はそう言いますよね。
「でも、あんまり飲みすぎるのは良くないと思うよ?エーシェだってまだ若いんだから」
確かにドラゴンに比べたら若いでしょうねー。このドラゴンは特に年を取ってるみたいだし?
「葡萄酒は体にいいんだからいくら飲んでも問題ないわよ」
「エーシェ…それはさすがに暴論だよ。はい頼まれてたもの」
「何でいいこと言ったのに追加のお酒を渡すのかな!」
「いや、きっともうだめだよこれ。もともとは来たくもなかった王都に来てくれたんだから飲みたくもなったんだよ。たぶん」
飲みたいやつは飲ませとけばいいんだよ。後は勝手に潰れてくれるから。
ということで、おじさんにおすすめされた酒をエーシェさんに注いであげることにする。
「あら、気が利くじゃない。いつもそうだったらいいのに」
「あ、そーだ。エル君が今日エーシェのことをちんちk…」
ふむ口は慎みたまえドラゴンくんよ。
「ははは!ほら、どんどん飲んで!」
「どうしたの今日は優しいわね?」
「あれだよ。今日は僕の欲しい武器が売ってるお店紹介してくれたでしょ?」
「ああ、それくらいお安いご用よ。この街にあるお店で知らないお店はほとんど無い私に聞いたんだから間違えるはずがないじゃない」
どこから来るんだその自信は…。
「エーシェってなんでそんなに王都に詳しいの?」
いいねー僕の聞きたいことをズカズカと聞いてくれる眼の前に居るドラゴン。
「何年も住んでいたら詳しくなるわよ」
いや、まて、理由普通すぎん?
ここ結構広いよ?エリーゼの村の倍以上はあるよ?何年も住んでいたからって街中にあるお店を知ってることにはならんだろ…。
ああ、しまった。いつの間にか僕がツッコミ役になってしまっている…。
「よし。飲もう」
「エル君までどうしたの!?」
「いや、ちょっとやってられなくて」
「もー二人共どうしちゃったんだよー!!」
【王都編⑥〜格差だ!〜】最後までお読みいただきありがとうございました!
正直に言って今回は格差だ!ってやりたかっただけの話だったのかもしれません。
まぁ、もしかしたら伏線ガあったりなかったり?知らんけど。
元の話ではもっと3人で食べているご飯の描写が長かったんですけど、ヒスイにツッコミをさせるのが途中から楽しくなっちゃったんですよね。しかたがないことだったのです。
さて、次回は…そろそろ王都に来た理由が動き始めるのではないでしょうか。
【次回予告】
エル「ふふふ」
エー「うふふ」
ヒスイ「ダメだこれ…なんでこんな事になっちゃたのさ」
作者「いや、いつの間にかこうなってたんだよ…」
ヒスイ「ところで何で僕がツッコミしなきゃいけなかったのさ」
作者「最近思ったんだよ。君が唯一の常識人(?)だと思って」
ヒスイ「それ…本気で言ってるの?まずいよこの作品まともなやつが居ない!」
作者「知ってた!さ!行くぜ!次回【王都編⑦〜回りだす歯車〜】お楽しみに!」
ヒスイ「あ、珍しく副題がセリフじゃない」




