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王都編②〜風魔法の贅沢な使い方〜

ドラゴンの依頼を終え王都に行くことになったエルドナスたち

今回は王都への移動中の一幕です。

次の日僕らは王都への出発の日になった。

「エル君!準備終わったの?」

大きな荷物を引きずるように持っているエーシェが声をかけてくる。引きずるくらいならヒスイに持たせればいいんじゃね?

「準備は終わったよー。ヒスイは?」

「僕は荷物とか無いからねー」

ドラゴンの人化の魔法では人間とは違い新陳代謝というものが無いらしく、服を着替えなくても汚れることが無いらしい。便利な体ですねー。

ちなみにヒスイくんをずっと僕の寝間着で居させるわけでもないので、昨日みんなで買いに行くことになった。

10歳くらいの見た目の男の子なのでどんなものがいいのかわからず、中央の噴水広場近くにあるお店で適当な物を買ってこようとなったのだが…。

エーシェさんが暴走をはじめてすっごく時間がかかったのであった。

「私が払うからコレも着て!お願い!あ〜もうずるいわ!なんでも似合うんだから!」

主犯はこのように供述しており全く反省はしていないようでした。

結局何袋も僕が持って帰ることになりましたが…まぁいいでしょう。

「ヒスイは昨日色々買ったんだから服持っていきなさいよ〜」

「えーめんどくさーい」

「王様に会う時はその格好じゃまずいでしょ」

今のヒスイ君は麻を使ったアイボリー色のハーフパンツと綿でできた薄緑色のパーカーのようなものをまとっている。うん。少年風の見た目によくあってるよね。角が異様だけど。

「えーどうせ王様が用意してくれるってー」

「それもそうか。僕も正装持ってないからね」

「ほら二人共馬車来たわよ」

三人で家の戸締まりをしてふと家を外から見る。

「「「行ってきます」」」

打ち合わせをしたわけでもないのに三人の声は揃った。

今回の僕らの旅の供をしてくれる馬車は屋根のついている貴族が乗るような大きな車がついたものだった。

「馬車ってコレが普通なの?」

普通がわからない…。

「僕乗ったこと無いからわかんないやー。飛んだほうが早いし」

ですよねー。便利ですよねー空を飛ぶのって。いろんな街から街へって違うか…。

「エーシェは乗ったことあるよね?」

「馬車ってコレが普通なんじゃないの?」

あ、たまに出るエーシェのブルジョワ発言だ!

リアカーみたいな屋根なしなのが普通と仮定するとコレはかなりのブルジョワ仕様のハズなんです…。

「さて、じゃあ!王都に向けて出発だ!」

ワクワクするような王都への旅の出発だ!楽しい旅になると思っていたのはこの時まででした…。

僕の隠れスキルが発言するまでは…。

もともと僕に備わっている不名誉な隠れスキルは【迷い人(ロスト・パーソン)】という一人でいる時に目的地にうまく到着することができないというものだ。

別に単純に僕が道を覚えるのが苦手とか地図を読むのが苦手だとかそういうことじゃないと思うんだよね。うん。絶対そうだよ。

僕が生まれてからコレまでスキルを持った人が居るというのを聞いたことも無いのだが、僕のは確実にそういうスキルだと思うんだよね。

うん。スキル以外の何者でも無い。絶対にそうだ。

今回僕が新しいスキルに目覚めたのは馬車に乗って数十分経った頃だった。

進行方向に向けて正面を向いているのがエーシェとヒスイ。それに対して向き合うように座っているのが僕だ。

「エル君。顔色悪いけどどーしたのー?」

うん。そうだ。ヒスイのこの言葉で気が付かなければよかったのではないかと思ってるんですよ。

「うーん。ちょっと調子が悪い気がするんだよね」

「どうしたの?」

「具体的には酒を飲みすぎたときみたいな感覚?」

それが一番近いっすね。

「あ、酔ったのね…」

「酔うって何?」

「乗り物に乗った時に気持ち悪くなってしまうことよ」

おいこらそこ!懇切丁寧に説明するんじゃない!自覚してしまったじゃないか!

いやね、たしかに前世でも乗った乗り物で酔わなかったのは自転車くらいでしたよ!車もバスも船も果ては電車ですら酔ったことがあるこの僕が馬車で酔うなんて新たな出会いをするなんてある意味当然のことでしたよ。

「うう…きもちわるぃ〜」

どうでもいいことを考えてなんとか耐えきることはできないだろうか?

そうだ…この隠れスキルに名前でもつけて遊んでいよう…さて何がいいかな…平衡感覚を司るのは確か…。

「考え事してると悪化しちゃうわよー」

ええい!うるさい!そんな事言われたって…。

よし!決めた!【酔う人(三半規管ちょザコ丸)】とかしよう。

さて、悪化はしていないけど、しんどくはなってるな…。

車によった時はどうしていたっけか…窓を開けて風を…。

「ヒスイ…そよ風を僕に向けて吹かせることは…できるかい?」

うっぷ…そろそろほんとに気持ち悪い…。

「できるよー」

「た、頼む。僕は横になってるからそっとしておいてくれ…」

ヒュオ〜っと扇風機の弱風くらいの風がいい感じに顔に当たる。これぞ風魔法の贅沢な使い方ってね☆

馬車ってどれくらいの速さで走っているか知らないけど車だと風が強すぎて困っちゃうからねコレくらいが丁度いいのだよ。

「吐いたら許さないからね?」

「弱っている人に対して追い打ちを掛けるのはやめようかエーシェ」

エーシェの光が消えたジト目から逃れるために目をつぶったらそのまま意識が自然と落ちていった。

僕は睡眠が深い方らしく、眠ったという感覚があるのは目が覚めたら時間が経っていたと確認してから気がつくのだ。

しかしながら、たまに夢を見ているとわかる時がある。

そして今がきっとそうだ。

「コレは…夢だな…」

自分自身が夢を見ているとわかっていながら見ている夢を明晰夢と言うらしいのだが、ここまではっきりしているのは初めてなのかもしれない。

いつもの夢なら自分自身を客観的に見ていることがあったり、いつもどおりの自分の目線でその夢の状況を確認をしていることが多いんだが、僕自身に主導権は無いようで没入型の何かに入り込んで映像を見ているような感覚に近いと言えるだろう。

今回はちょっといつもと違うみたいで手の感覚があり足の感覚もある。なんだろうコレ全身の感覚はあるようなのだが、どこかに立っているような感覚は無い。水に浮かんでいるような感覚も無い。感覚があるようで無いのだ。

「浮いているわけでも沈んでいるわけでも無い…なんだコレ?」

とりあえず足を組んで腕を頭の後ろに回してみる。うん。体勢が変わったのはわかってるけど、それ以外の情報が無い。

そもそもこのだだっ広い白い空間は何なんだろうね?

なんとかとなんとかの部屋でもこんな感じで描写されていたけど、出入り口がある建物があったはずだ…。

あたりを見回してみても何も無い。

「ほんと何なんだ?」

叫んでみても何も反響はない。夢…?これもう精神魔法の類なのか?

夢の中で寝たら夢から覚めるかもしれない(完全に思いつき)。

「あら、もう諦めちゃうの?もうちょっと色々やるかと思ってたんだけど、ざーんねーん」

なんか嫌な予感するから早く眠りに落ちてくれないかなー…。

「いくら眠ろうとしても今は無理よー。そもそも夢の中じゃない」

ダメだったかぁ…。諦めて目を開けることにするか…。

「おはよー?でも今も眠ってるからおはようはちょっと違うかしら?」

「…どなたでしょうか?」

僕の目の前に居るのは一人の女性。白く長い髪に白い肌、白い着物を来たこの世の人とは思えない人らしき何かがそこに居たのだった。

「初めてってわけでも無いのだけど…忘れられちゃうとなんだか悲しいわね」

いやいや、はじめましてなはずなんですけど?

「…新手のナンパですか!?夢の仲間で追ってくるとはなかなかの執念ですね!」

「あなたそれ本気で言ってるの?」

「いいえ?さすがに冗談です。そして僕は何をしたらいいんですか?」

もうなるようになってくれ…夢の中で殺されないならそれでいいよ…。

「ここはあなたの夢の中…あなたがの眠りが覚めるまでまだまだ時間があるようだから…お茶にしましょうか」

「はぁ?」

女性がパチンっと指を鳴らすと目の前に机と椅子が現れる。

もうなんでもありなんだな。さすが夢の中ですね。でも僕に主導権が無いのはなぜなのでしょうか?

「さ、座って座って」

促されるままに椅子に座ることに。

「僕の夢なのに自由ですね」

「確かにあなたの夢なのだけど、うーん。そうねなんて言ったらいいかしら…どこから説明したらいいのかしら」

えーなになにその感じ気になるなぁー。

「まず最初に、私はあなたの夢の中で自由にしていられるのは私の夢でもあるからよ」

はい先生!わかんないっす!ん?僕の夢でもありあなたの夢でもあるんですか?えーなにそれむずかしー。

「まぁ、詳しい話は今じゃないわねー。さっきのあなたの質問に答えるわね。私はアティと呼ばれているわ。よろしくねエルドナス君」

アティさんですねー覚えておきますねー。で、謎しか無いんですけど説明はしてくれないってことでいいんですね。

「さて、ただお話しているだけじゃあれね…」

また指をパチンと鳴らすと机の上に紅茶とケーキが出てくる。

このケーキ見たことあるな…あれかいつものお店のやつだな。一階前に食べたことがあったようななかったような…。

「前にエーシェちゃんと一緒に食べてたでしょ?美味しそうだなーと思いながら見てたのよね」

「あ、さっきはナンパとか言ってすみませんでした。ストーカーの方だったんですね」

「ちーがーいーまーすー!何で私のことを見てそんな風に思えるのよ」

「いやー着物を着ているからといってストーカーじゃないと判断するのは流石に難しいかと」

「そんな無理難題じゃないわよね?私ストーカーでも何でも無いんだけど?」

「だってなんにも教えてくれないじゃないですか!」

「まだ教えられないだけよ。あら、このケーキ本当に美味しいのね」

パクパクとケーキを食べ始めるアティを見ているとなんだか今悩んでいたことがどうでも良くなってきた。

「そういえば、この世界はどうなのエルドナス君?」

「はて、それは…どういう意味合いで?」

僕が前世の記憶を持って生きていることは僕以外の誰も知らないはずの事実なのだが。

「私はあなたが前世の記憶を持った魂であることを知っているのよ。その頃からの仲なのに私のことは知らないなんてひどいじゃない」

ひどいじゃないって言われても知らないものは知らないんだよなー。

この人僕がこの世界に生まれたときから知っているような口ぶりなんだけど、ほんとに何者なんだろうか…。

「それでどうなの?この世界は」

「知ってるならもういいか。不便な事だらけだよ。正直今乗ってる馬車だって時速で言えば出てて時速10キロ無いくらいでしょ?道もアスファルトで舗装されているわけじゃないからガタガタだしこんな状態で数日間移動しろって言われているこんな状況を不満以外のなんて言えばいいか僕は知らないね」

「あら、そんな風に考えていたのね。いつもそんなこと考えてなかったのに」

「言われたら気がついたんだよ。大体数日移動にかかるって距離が前に居た世界なら半日で移動できる距離だからね」

「そうねー。あなたの前に居た世界はどう考えても便利すぎたのよ。代わりに世界は死にかけていたけどね」

「世界が死にかけていた?どうして?」

「向こうの世界とこっちの世界の一番の違いは何?」

「文化?」

「それは、そうなんだけど…あなたわかっててあえて外してない?」

「そんなこと無いんだけど…」

「魔法ってあるでしょ?向こうの世界にはなかったはずよね」

「確かに」

「世界に魔法が無いのはなぜだと思う?」

知らんわ!あったらいいなとは思っていたけど無いものはしかたがないだろ…としか思ってないよ。

「それが世界が死にかけていることに関係があるってことだよね」

「そうね。この世界で魔法が使えているのはこの世界…つまりこの星に魔力という形で活力が溢れているのよ。でもあなたの前の世界はその活力を失っていたの」

「だから死にかけているってことですか」

「そうねー。私にとってはどーでもいいことなんですけどねー」

どうでもいいことなら話題に挙げなくてもいいじゃん。

そんなに暇だったんですか…。

「さて、そろそろ僕起きなくていいんですかね?」

「あら、私とのお話はそんなにつまらなかったのかしら?」

「あ、いえ、そういうわけではなくて、この時間にこんなに寝ちゃうと夜寝れなくなりそうで」

「可愛いこと言うじゃない。じゃあ、せっかくこんな風にお話ができたんだから次会う時は覚えておいてね」

「あ、ハイ…」

前に会ったいつですか?頑張って覚えておきますね…はい…。

「あと、最後に。あなたはまだ弱いわ。死にそうになったときには私のことを呼びなさい。心のなかで「アティ様助けて〜!」って念じてくれれば大丈夫だから」

「もうちょっと呼び方なんとかならなかったんですかね?」

「ま、そんなこと来ないことを祈ってるわよ。ほら、そろそろ行きなさい」

え、なんかすっごい厄介払いされたみたいな感じなんだけど何なの?

でも、夢って寝て起きると…忘れることが多いんだよなー。

ま、また会える時があればお話しましょうねアティさん。

【王都編②〜風魔法の贅沢な使い方〜】最後までお読みいただきありがとうございました!

エル君が乗り物に弱いのは僕が乗り物に弱いからです。ごめんねエル君。

今回の話の中にもありましたが、僕は二輪車以外はすべて乗った時に酔ったことがあります。乗り物酔いの天才と呼んでください(嫌ですけど…)。

さて、また新しい人が出てきましたけど、アティさんはまた不思議な感じでしたねー。

最後までふざけ倒してましたけど、今後たまーに出てくるかもです。出てきた時は温かい目で見守ってあげてくださいねー。

【次回予告】

エル「あ、まだこれ目が覚めてないってことでいいんですか?」

アティ「そーそー次回の更新までエル君は寝たままね」

エル「そういえば僕いつアティと会ってましたっけ?」

アティ「教えませーん」(つーん)

エル「えー…じゃあ、そろそろ時間なのでお願いします」

アティ「えー?もう時間?私次いつ出れるかわからないのに…次回【王都編③〜これ、自分じゃわかんないじゃん!〜】ってあるけど、エル君何する予定なの?」

エル「ええ、未来のことなのに聞かないでくださいよ…」

アティ「次回もお楽しみに〜!あと、私が次に出る時にみんな忘れないでね!バイバーイ」

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