直接依頼来る!③〜準備の時間がなんだかんだ言って一番楽しい〜
ドラゴンの依頼に向け新しい技の開発をし始めたエルドナスとエーシェの二人。
今回は意外な人の意外な面が見られるかも。
「じゃあ、次は私の番ね」
粉々になった的があったところを悲しそうに見つめているエドガーさんをよそにエーシェがそんなことを言い始めた。
「エドガーさん。何狙えばいいですか?」
そんなに追い打ちをかけるなって…おじさん(の心が)死んじゃうぞ…。
「ほら、もう、これとか狙えばいいんじゃないか?」
エドガーさんは何故かここに置いてあった酒樽を指さした。何であるの?そして、エドガーさん自棄になってます?
「エル君。さっきのあれってどれくらいの高さでやればいいの?」
あー自分で提案したものの、そのへんは全く考えていなかったな。ドラゴンの体調が4メートルくらいと言っていたから…よくわかんないけど5メートルくらいなんじゃない?知らんけど。
「そうだなーだいたい僕の身長の3倍くらいの高さでいいんじゃない?」
「で…どうやればいいのかしら?」
これも考えてなかった…。なんとなくのイメージで伝わるのだろうか?ま、いいか。
「エーシェがいつも火弾を使っているときって、杖の上に作ってるから杖を斜め上に構えてー。そしたら樽の上くらいのところに弾を作ってー。さぁ!難しいことは考えずにやってみようか!」
我ながら下手くそな説明だな。
「自分は考えてできたって言ってたのに…」
「それはそれこれはこれ?」
「なんで疑問形なのかしら…まぁいいわやって見るから」
人間諦めが肝心のときもあるよねー。うんうん。
「【火弾】!」
ちょっと位置はずれているような気がするけど構えた杖の延長線上に火弾ができる。
「うん。いい感じなんじゃない?落とす位置とかは頑張って調整してみよう!じゃ、どの状態からどんどん魔力を込めていってみよう!」
「わかったわ!」
魔力を込め始めたのか少しずつ火弾は大きくなっているような気もするが…それ以上に回転が速くなってきてない?どちらかと言うと回転のほうがすごいことになっているような…というかそれのせいであれよりも大きくなれてないんじゃないか?
「ちょっと止めて!」
「え?ちょっと何よ?途中で止めるなんてできないんだけど!」
「えーっとじゃあ、テキトーに落として」
「へ、変なところに落とすなよ?」
ビクビクしているエドガーさんの方など一度も見ずに下に落としたエーシェさん。ひどいやつや…。
「今、何考えながら魔力を込めた?」
「そりゃあれよ…いつもどおり構築式を…」
いまのはそれが原因かもな。
「さっき家でも話したけど、構築式ってのはいくつかの部分に別れているんじゃないかってのは覚えてる?」
「それは覚えてるけど、それがどうしたの?」
「それで多分なんだけど、火弾の構築式は中心の属性を表すものとそれ以外の情報が2つあるんじゃないかって話だったよね…あ、これだめだ。きっと話が長くなるから座りながら話そう」
エドガーさんと一緒に組合の建物の中に入る。
「あれ?もう終わったんですか?お茶いります?」
中に入ると暇そうにしていたエリーさんがお茶を淹れてくれた。
あ、そういえばエリーさんも魔法の勉強をしていたって言ってたな。
「エリーさん質問いいですかー?」」
「珍しいですね?なんですか?」
キョトンとしながらも笑顔で受け答えしてくれるエリーさん。あ、まだちゃんと仕事モードだ。
「たしか前に魔法の勉強をしていたって言ってたので、構築式についての質問なんですけど」
「ああ、たしかにしてましたねー。私ほとんど魔力無いんで使えませんけど」
そういえばそんなことも言っていたような。そんなブルーな感じにならないでくださいよ。ごめんなさいね思い出させちゃって!
「それで、今使える魔法の強化に取り組んでるんですけど構築式にいつもより多めの魔力を込めてみてもうまくいかないことがわかってどうしよっかなって思ってたんですよ」
「わかります〜。その想定していたものがうまくいかないもどかしい感じ。こうなんというかもやもやしますよねー」
そうなの!いまそんな感じなんだよ!なんかこうもやもやするの!なんでこううまくいかないのか情報が少なすぎてもどかしいんだよね!
「ちなみに構築式の研究とかってしてたことあります?」
「ありますよ?」
そうだよねーないよね…んん?
「え?あるんですか?」
「ああ、お前そういえばそんな事ばっかりやってたよな?俺にはさっぱりわからなかったけどな」
「お父さんは使えるからいいけど、私は使えなかったから使えるようになるために研究したのよ。だめだったけどね」
「そう拗ねるな。お前がやったことは10年は研究を進めたとか言われてたじゃないか」
「「え?」」
ちょっと待って?エリーさんてもしかしなくても天才ってやつですか?えーちょっとーそういう設定聞いてないよー?
「あれ?もしかしてエリーって王宮魔術団の研究所にいたことあった?」
「エーシェさんなんでそれを?いた事はありますけど」
「私も王都に居たときに聞いたことがあったのよね魔法研究の天才がいるって。そういえば聞いたことなかったけどエリーの本名ってエリー=カナフィリムだったりする?」
え、何?地元トーク急に始めるのやめてよ〜。僕入れないじゃんその話。
「そうですけど?」
うん。今始めて知ったよねエリーさんとエドガーさんのフルネーム。
「王都でも噂になってたのよね。王宮魔術団の研究所に居た才女がある日突然王都から居なくなったって」
「そうなんですよ~。それお父さんが王都が嫌だって言ってこの村に異動する手続き一気に進めちゃったから周りの人との挨拶も不十分なままこっちに来ちゃったんですよねー」
うん。それはエドガーさんが悪いね。あ、自分の方に話が飛んでくると思ってエドガーさん上に逃げたぞ!
「え、えーっとエリーさんはその研究所でなんの研究をしていたんですか?」
「研究は今も趣味程度ではありますけどしていますよー?」
あ、そうなんですねー。
「もう興味のあったことは何でも手をつけていたのとここ最近もいろんなこと調べてたりするので、何やってたかなんてもう覚えてないですよねー」
あ、まじで天才なんだなこの人。ってかあれかいつも暇そーに見ていた本手あれか研究用の資料だったのか!
「エリーの論文って言えばあれよね。『魔法属性と種別による必要魔力量および魔力性質によるそれの変化について』はすごく評価が高かったわよね。あれもしかして自分が使いたいから書いただけとか言わないわよね?」
すっげー論文ぽい題名だな。というかそれがスラスラと出てくるエーシェもすごい。何なのこの二人…オタクなの?
「あ、バレちゃいました?それ自分が使いたくて研究したんですけど、私が魔法を使えないことが証明されちゃって…後半はもうヤケクソになって書いていたんですよね〜」
天才ってこういう人が多いのかもな…。
「ちなみに今はなんの研究しているんですか?」
「構築式の解読ですよ」
「先生!教えて下さい!」
「構築式ってたくさんあるじゃないですかー。それを比較してるだけなんですけどね」
「それ、さっきエルくんがやってたやつよね?」
「そうだね。僕はよくわかんないから共通の部分はないかなって比較しただけだけど」
やっぱりおんなじこと考える人はいるんですね。
「どれくらい研究は進んでるんですか?」
「えっと中級って言われるものまでは終わりましたかねー。上級は形状が似ているものが無いので困ってるんですよー。そこまではうまくいってたんですけどね」
「もしかしなくても…火弾の構築式はどの部分が何を表しているかわかったりしますか?」
「わかりますよ。この部分が…あ、前に使った部屋で説明したほうが伝わりやすいので、そっちでみんなでやりませんか?」
と、いうことで一同研修部屋に移動する(エドガーさんは仕事を残していたらしく、部屋にこもりっぱなし)
「えっと、これが火弾の構築式なんですけど」
さらさらーってみんなめっちゃきれいな構築式書くんだけどそれって必須スキルなの?そんなきれいな円かける気しないんだけど!
「この構築式は大きく3つの部分にわかりますか?」
「それはなんとなく。さっき火槍と比較したときに同じ部分だったので中心が魔力を火に変換するもの何じゃないかと思ったんですけど合ってますか?」
「そうですそうです!ああ、良かった…やっとこの考え方についてきてくれる人がいるなんて。みんないっしょに王都の研究所に行きません?一緒に研究しましょうよ」
え、嫌…ではないかもしれないけどまだいいかなぁ。
「私は嫌よ。王都に戻るなんて」
「だそうです」
「ええー…そんなー。みんなで研究しましょうね?約束ですよ!」
そんな高校出てもみんな友達だから一緒に集まろうねみたいなのりで研究する約束取り付けようとしてるの?
「王都でやらないなら一緒にやってもいいわよ」
そんなに故郷のこと嫌いなの?ねぇ王都が君に何したの?
「あのー話を戻してほしいんですけどー」
「ああ、そうですね!そうでした!」
「その中心から二番目と三番目のところが何を表しているのかがわかんないんですよねー」
比較対象が無いからね。というか僕…構築式火弾と火槍しか知らないじゃん。構築式に関してはほんとにド素人ですね僕…。
「えーっと、この二番目の部分は回転と形を表す部分となっていて、三番目の部分は扱い方に関してですね」
これは推測通りだな。
「エル君が言ってたとおりね。ほんとに何なのよエルくんって」
「そう言われてもねー僕は僕だからなー」
「…もうなんでもいいわよ」
「それでエリー先生!この構築式を応用して大きな火弾や火槍を作ろうかなって思ったんだけどそれってできるんですか?」
「その呼ばれかた久しぶりにしましたね…いいですね」
「エリーって教師もしてたんだっけ?」
「してましたよ。研究していたほうが好きだったんですけどねー。みんなわかってくれないし」
天才ゆえの悩みなんですかね…。
「だいたいみんな魔法を使えるからって考えることをやめちゃってるんですよそのせいで魔法が何なのかを考えずに構築式さえ覚えてしまえばいいみたいな考え方ばっかり…」
「エリーさん?帰ってきて?」
「はっ!すみません。私っていつもそうなんですよ。すぐに話しが脱線しちゃって。すみません。で、なんの話でしたっけ?」
さっき話していたことなんですけど…忘れないでよぉ…。
「あれです。火弾と火槍の強化をすることができるかって話ですね」
「ああ、そうでしたね。そうですね使い方次第なんですけど、エーシェさんはいつもどのように魔法を使ってるんですか?」
「そうね…覚えている構築式を呪文を発声することで頭に思い描いて魔力を使ってって感じかしら」
へー。そんなめんどくさいことしてるんですね。大変っすね。
「それだと、火弾はちょっと難しいかもしれないですね。魔力を込めれば込めるほど火の大きさも大きくなるんですけど、それと同時に形と回転の部分にも魔力が割かれます。その結果威力が上がるというよりも回転が高速化して貫通力が上がる方向に作用すると思うんです。実際にやってみましたか?」
「貫通力はわからなかったけど、回転が速くなっていたのは確認したよ。やっぱりそうなんですね」
「でも、火槍は行けると思いますよ。火槍は中心から属性・形・操り方ですから魔力を込めれば込めるほど大きくなるので威力が上がる方向に性質が向上すると考えられます」
「へー。やっぱりパンはパン屋ね」
あ、それ餅は餅屋のこの世界バージョンね。オッケーオッケー。
「じゃあ、この件は解決だね。ありがとうエリーさん」
「ええ、もう終わりですか?そんなー…またやりましょうよこれ。楽しかったのに〜」
本業よりいきいきしてますね。そういえば前にここで説明していたときも割とノリノリだった気が…。好きなんですねこういうの。
「それはまた今度で…。エーシェあと何かやらなきゃいけないことってあったっけ?」
「今回の調査は長期になりそうだから野営用の準備をしないと行けないわね」
「それなら組合から支給しますよ?」
太っ腹っすね。僕らしかこの村にいる冒険者がいないからなんでしょうか?
「あと、回復役とか諸々ね」
「というのは…組合から…?」
「支給品が出ます」
「やったね!」
ってことは準備終了なんじゃない!?
「もしかしなくても準備終了かな?ご飯食べて帰ろっか」
「そうね。エリーはそろそろ仕事終わるの?」
「お二人が今日はおしまいって言うのなら今日はおしまいなので」
確かにー!僕ら以外依頼を発注する人居ないもんね。
「じゃ、みんなで今日も行きますかー。エドガーさんはどうする?」
「放っておいていいんじゃないかしら?」
「お父さんはどうせ酔いつぶれるだけですからね。仕事ためてましたし置いていきましょうか。せっかくの同世代ですしたまにはお父さんは置いていきましょう」
君たち?おじさんの心って意外と脆いのよ?そのへんで許してあげてね。
おじさんを置いて僕らはいつものお店に移動を始めるのであった。
【直接依頼来る!③〜準備の時間がなんだかんだ言って一番楽しい〜】最後までお読みいただきありがとうございました。
もともとはエーシェの魔法の部分はサラッと成功して終わる予定だったんですけど、僕自身の中でもう一度魔法の構築式の理論を練り直しまして、この形になりました。もともとの設定としてエリーが魔法は使えないけど魔法についての勉強をしていたところを使ってとなかなかもともと考えていた話とは脱線しているような気がしますけど、これはこれで楽しい感じになったんじゃないかなと思います。
完全に思いつきの設定だったので、もし一部の最初から書き直すようなことができるので得あれば卵と鶏の部分とかはもっと複雑な話にしたりとかこの話のフラグを立てられればなんて思います。
さてさて、次回からはついに依頼が開始します!楽しみです!!
【次回予告】
エルドナス「巨大火弾…できなかったね」
エーシェ「誰かさんが思いつきで書いているからじゃないかしら?」
作「うっ…(おじさんの心は…)」
エル・作「「メラ○ーマ…見たかったなぁ」」
エーシェ「なんて?」
作「これ以上は怒られそうなので、次回【直接依頼来る!④〜思いつきだけでやっちゃだめですね〜】お楽しみに!」
■■■「ねー誰に怒られるの?」
エル・作「「しー!!」」




