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祭りだ!⑪〜祭りの後って少し寂しい〜

エリーゼの村毎年恒例の武術祭も無事閉幕し、残るは後夜祭のみとなっていた。

優勝者だが殿堂入りしたエドガーにぶっ飛ばされたエルドナスと一緒に宿屋に移動したエーシェ。

どうやら二人で祭りを回るそうです。

あれ?エル君寝てるの?

昼間の熱が冷めないのかエリーゼの村は夜になっても賑やかなままです。

一日に4人と喧嘩をしたエル君は荷物を置きに部屋に戻ったらそのまま寝てしまいました。鼻をつまんでみたり口を塞いでみたり脇をくすぐったりと色々ないたずらをしてみたのですが起きません。残念です。

そのちょっと前までは「一緒にお祭り回ろうか」なんて誘ってくれたのに嘘つきです。

なので私は一人で屋台を回って見ることにしました。中央の噴水広場では左右に出店が並びこの村にこんなに人って居たんだってくらいの賑わいを見せていました。

「おじさんこれ2つください」

「はいよ!」

こういうお祭りって資料で見たり家から眺めてたりしていたことはあったけど、実際に自分がその場で買い物をするのって初めてだったと気が付きました。どうやって買い物をするのか他の人を観察して学んだので礼儀作法で間違ってはいないはずです。

それにしても何でしょうこの料金設定は…。みなさんほいほいと買って行きますけど結構高いですよ?

お祭りということで皆さんの財布の紐も緩んでいるんでしょうか…。ああ、あの子の財布の紐も…いや、もともとゆるゆるでしたね。

村には屋台の人や通りを歩く人に笑顔が溢れていました。

「やっぱり…この村に来てよかった」

いつもとは違う明るい様相の村を噴水のところに腰掛けながら見ていてふとそんな言葉が口から漏れていたのでした。

さて、もうそろそろ起きてくれますかね彼は…。

宿屋に戻って部屋に行ってみたのですがまだ爆睡中。まぁ、今日のところは良しとしましょうか。

「ただいまーエル君。ご飯買ってきたわよー。って起きないか」

「ご飯!?食べる!」

起きるんかい!

「お、おはよう?急に起きるからびっくりするじゃない」

「いや、ご飯って言われたから」

彼はどんな環境で育ってきたのでしょうか?そういえばそういう話ってこれまであんまりしてこなかったわね。

「じゃ、まずはこれ食べてましょ」

祭りの屋台で買ってきた麺を二人で一つづつ食べてみる。こってりとした味付けで上に乗っている半熟の目玉焼きを割って食べると私にはちょうどよい味になった。

「そうそう!この感じがいいんだよねー。どこに行っても変わらないもんだなぁ」

麺を食べながらそんなことを言ってるエル君は急に私よりも年齢が上の人のような発言をし始めた。

「エル君ってこういうお祭り行ったことあるの?」

「えっと…あれ?無いかも?」

「なんで疑問形なのよ」

じゃあ、なんでこの感じなんて言ったんだろう?やっぱり私エル君のこと知らない部分が多いわね。

「じゃ、食べ終わったし行くよエーシェ」

「わたひはまだたへてるんですけほ(私はまだたべてるんですけど)」

食べ終わるのを待ってもらい支度をしてからもう一度外に出る。

「ほら行くよー」

「ちょっと、待って!手を引っ張らなくたっていいでしょ!」

「だって…エーシェ帽子を入れても…」

「何か言いたいことがあるのかしら?」

「なんでも無いっす。さぁ!行きましょう!」

自分が人よりちょっと身長が低いことなんて知ってるわよ。でもまだ毎年ちょっとずつだけど伸びてるんですから。まだまだ大きくなってあげるわよ。そういえばエル君って身長高いのねいつもはそんなふうに…いや、エドガーさんがいるからか。あの人はデカすぎる。

二人でさっきの噴水通りや奥の村役場の方にまで伸びる屋台を見て回ることになった。

「あ!」

急に声を上げて私の手を取って立ち止まる犬みたいな男の子がここに一人。急に引っ張られると肩が痛いんですけど?

「どうしたのよ急に」

「ここちょっと見ていってもいい?」

「いいけど、そういうの興味あったのね」

エルくんが立ち止まったのは装飾品屋だった。普段から格好とかそういうのにあまり気を使っていなくていつも同じような服装をしているエル君がまさかまさか装飾品に興味があっただなんて驚きを隠せないわ!

「え、あ、自分用じゃなくてエーシェ用だよ」

「なんで!?」

「だって、文句言いながらもずっと回復してくれたのエーシェだったから。あれがなかったら優勝できなかったんじゃないかなと思ってて、何かお礼したいなーと」

「お礼はいつものケーキでいいわよ」

なんで急にこういう事言いだすのかなこいつは。

「ケーキはケーキ。お祭りなんだからいつもは無いものがあるはずなんだよね!」

さっきお祭りに行ったこと無いって言っていたのになんでそんなこと知っているのかしら?

装飾品屋は斜めになっている板のところに様々な色の首飾りや耳飾りなどが置いてあった。上の方だけ板の上に布がしてあって少し高級そうなものに見える。

「お兄さん!なんでここだけ違うんですか?」

見てわかるでしょあんた…。わざと?わざとやってるのね?

「ああ、ここに飾ってあるのは魔石を埋め込んだものなんですよ。ちなみにお兄さん。彼女への贈り物ですか?」

か、かか、彼女!?なんで?そんな!

「あ、そ~です。ちなみにどんなのが人気なんですか?」

あなたはそれ普通に流すのね…。

「そうですね…最近の王都での流行は相手の髪や目の色と同じものを贈るってやつですかね」

「へー…」

急にこっちを向くエル君。え、何急に?じーっとこっちを見て何してるのこの人。

「これってどんな効果が付与されているんですか?」

エルくんが指を指していたのは薄い緑色をした石がはめてある耳飾りだった。そのためにこっち見たのね。

「えっとーこれはですね。魔力の回復を早める効果がある魔石ですね」

「じゃあ、ぴったりだね。これでお願いします」

「エル君!?」

「いいからいいから」

この子はこうやって散財していくのね。節約という言葉を知っているのかしら?あ、でもあれか全くお金とかが無い中で一ヶ月生活していたから…両極端しかないわね。

「これ、どーしますか?袋に入れます?それともつけていきますか?」

「つけていきますー」

ちょっと?当人を置いてきぼりにしないでほしいんですけど!?

「はい、エーシェ。うん!やっぱり似合ってるね」

耳に飾りをつけてもらい、急にそんなことを言われると照れるを通り越して若干ムカついてくるわね。

「お祭りも回ったし。いつものところ行きましょうか」

「え、いいけどどうしたの急に」

「お酒が飲みたい気分なの!」

ターシャちゃんの出迎えで店に入ったのだけど、今日は満席みたいね。

「大会の優勝者を断るわけにはいかないからね!ほらみんな開けてあげて!」

店長さんの一声でお店に居たお客さんたちが動き始める。

「席空けねーと魔法を打ち込まれちまうな!ほらみんな開けろ開けろ!」

みんなの好意で席を開けてもらえたのだけど…。

「そんなことしませんって!!!」

エルくんはみんなにかなり認知される存在になったようね。すっかりこれで村の人気ものね。

「それじゃーみんな!優勝者様に乾杯だー!」

「「カンパーイ!」」

「なんで僕のことなのに僕よりも先に騒いでるの!?」

いつもとは違う雰囲気のお店でみんながいつもより楽しそうだ。

「じゃ、私達も乾杯ってことで」

「そだね。先越されちゃったけど」

コツンとコップを当てて二人で優勝のお祝いを始めるのであった。

(20分後)

「だーかーらー。なんでエル君はあんなに無茶な戦い方しかしないわけぇ?」

今日は魔法をたくさん使ったからかしら、口がうまく回らなくなってきたわ。酔ってないわよ?

「エーシェ?今日ペース早くない?

「そんなことないわよ。らいじょぶ」

時間も遅くなったこともあってお店は少し席が空き始めてきた。

「あら?お二人で優勝祝ですか?」

「おう!お前らこっち来て飲むぞ!」

来たわね常連さんの組合職員二人が。

「お前らはもう始めてるらしいが、もう一回改めてエルドナスの優勝を祝って!カンパーイ!」

「「「カンパーイ」」」

カチンとコップを真ん中に集めて乾杯をしていつもの四人で飲み始める。どうせエドガーさんはすぐにトイレにかけこんでいくんでしょうけど。

「いや、優勝したって言われても実感が無いっすね」

「いやいや、すごく頑張ってたじゃないエルドナス君」

「まぁ、最後はかなり危なかったけどな」

「最後にエドガーさんにぶっ飛ばされたから優勝した感じが無いんです!」

「アハハ確かに!決勝よりボロボロにされてたもんねエル君」

コップを傾けながら笑ったらみんなに凝視されたわ。何?何か口の周りについているのかしら?

「エーシェさん酔ってますね」

「そうだな。俺が言うのもなんだが」

「そ~なんですよ。誰かこの人のお酒を止めてくださいお願いします」

「酔って無いって言ってるじゃない」

失礼しちゃうわねほんとに。

エリーがちょいちょいと手招きをするので近寄ってみる。

「エーシェさんその耳飾りどうしたんですか?」

「これはエル君に今日のお礼って押し付けられたのよ」

「お似合いですよ」

ニヨニヨと口元を隠していても伝わってくるニヤケ顔がイラッと来るわね。

「ところでエーシェさんの目の色と同じ色の石がついてますけど、エルドナス君が選んでくれたんですか?」

「お祭りの出店にあったのを見つけて王都での流行りって聞いたらそのままこれを選んでたのよ」

「エーシェさんそれってどういう意味があるか知ってます?」

確かお店の人は贈る相手の人の目の色だったりで選ぶのが流行としか言っていなかったわね。

「知らないけどエリーは知ってるの?」

「それって、王都だと意中の方に送るときの流行りなんですよ?」

「え…?なんて?」

顔が熱くなってるのがわかる。きっとお酒を飲みすぎたのね。

「だーかーらー。それは男性が好きな女性に贈り物をするときの最近の流行りなんですよ?エーシェさん最近まで王都に居たのに知らなかったんですか?」

知らないわよそんな文化!だいたいどんなことが流行ってるかなんてのは私のところまで届かなかったんだから仕方がないのよ。

そもそも、エル君がそんなことを知っていてこれをくれたとはこれぽっちも思えないからただ単にあの出店の店主に言いくるめられただけなんだろうけど…。

なによそれ。

「ん?何エーシェ?」

「ターシャちゃん!葡萄酒おかわり!」

「はーい!でも大丈夫エーシェお姉ちゃん顔真っ赤だよ?」

「大丈夫よ!わらしはまだ酔ってないから!」

とことこと注文を店長さんに伝えに行くターシャちゃんを見送って視線を戻すとエル君の顔が青かった。お酒飲んでるのに顔が青くなるなんてもう気持ち悪くなってきちゃったのかしら?

「エーシェ…なんで?」

「エーシェさんはーエルドナス君がー」

「エリー?何かしら?」

エリーは何を言うつもりなのかしら?絶対さっきのことを言うつもりでしょうね。

「え?え?何?エリーさんもエーシェも何か隠してる?言ってよー」

「あんたはいいからエドガーさんと話してなさい。そろそろだと思うから!」

ガタンっと急に立ち上がりトイレに駆け込んでいくエドガーさん。

「お父さんはもう始まったのね…」

「今日はいつもより早いんじゃないかしら?でも、結構顔赤かったわよ」

「エドガーさんまだこれ半分しか飲んでないのに?」

「「え…?アハハハ!」」

エリーと二人で顔を見合わせて笑う。

「お父さんも今日疲れてたみたいなのよね」

「なれない解説とかやってたから?」

「それもあるでしょうけど、きっとエルドナス君との試合が一番でしょうね。あの後話したんだけど、最後に使ったあの【属性付与アスィグネーション】ってあったでしょ?あれ使ったのドラゴン倒したとき依頼だったらしいわよ」

へー…え?ドラゴン?

「それってエドガーさんってドラゴンと戦ったことがあるってことよね」

ちなみに今のを聞いてエルくんは更に青ざめている。

「昔王都に居たときの最後のしごとが氷のドラゴンの討伐だったのよねー。それで勲章をもらったりとかいろんなパーティーに呼ばれたりでそれが嫌になって他の場所に行きたいって言い出したのよ」

「ちょっとまって…一人で?」

「他にもメンバーは居たらしいんだけど、結局みんなドラゴンにやられちゃって最後まで立ってたのがお父さんだけなんだって。ほんとドラゴン殺しとか言われてちやほやされていたのは笑っちゃうわよね」

「今エドガーさんの強さに納得がいったよ」

「エルくんはそんな人といつも訓練してたのね」

「そりゃ記憶も失いますわ」

なんか一気に酔いが冷めた気がするわ。それにしてもそれをさも当然のように話すエリーもエリーだけど…。

ちょうど話が終わったところでエドガーさんがトイレから戻ってきた。

「エルドナスちゃんと飲んでるかー?今日はお前が…うっ…主役なんだから!俺はまだまだ飲め…」

それだけ言って机とお友達になってしまった。ドラゴンを倒したと聞くと確かにと納得してしまったけど、目の前で寝始めているこの人を見ると妙な安心感があるのよね。

「おまたせしましたー!葡萄酒です!」

ターシャちゃんに運んできてもらった葡萄酒を口に運んでからふと明日からの予定がまったくないことに気がつく。

「エル君明日からはどうする?」

「んー?まだ決めてないかなー」

「そしたら二人にピッタリの依頼が来てまして…」

「「じゃ、それで」」

「即答ですか!?それにしても二人とも似てきましたねー」

エリーがニヨニヨとわざとこっちの方を見てくる…。

「なんなのよその視線はー!」

「なんでもないですよー?」

もう少しで日付が変わろうかというくらいの時間にお店からは若い男女の楽しげな笑い声が響いた。

熊を持ち運ぶ少年といつもその隣りにいる少女と冒険者組合のテキトー受付嬢。この村にいるものなら知らないものは居ないだろう三人の楽しそうな会話は閉店の時間まで続いたという。

【祭りだ!⑪〜祭りの後って少し寂しい〜】最後までお読みいただきありがとうございました。

これで第一部終了となります。僕としては一つ節目まで書ききれたことを嬉しく思っている限りです。

それにしてもエーシェもエル君に振り回されて大変ですね。

もともと予定していたこのお話は実は1.5万字くらいある内容だったんですけど、長ったらしくなってもなぁってのと次に第二部で出てくるキャラを早く出したくなったこともあり、短縮版にしてみました。でも大体大筋は同じですねー。

本来はこの後にフラグ的な話も入れようとしていましたが、後々になって気がついたんですよ…別にこの話いらなくないかって!なので大胆にカットしてみました(笑)。まぁ、使えるところで使っていく感じで。

第一部は幕間を2つ挟んでいるので全20話でした。第一話とかほとんど会話もなくエル君のモノローグばっかりだったんですけど、後半全然違いましたねー。ちょっと調整しようかな…。

何はともあれまずここまで全部読んでいただいた方は本当にありがとうございます。

第二部以降は登場人物がもっと増えてエル君たちがもっと活躍すると思いますのでぜひご期待ください!

【次回予告】

エルドナス「エドガーさん潰れちゃったね…エーシェは大丈夫?」

エーシェ「酔ってないって言ってるじゃない!あと、これ別日だから大丈夫よ」

作「エーシェさん?そういうこと言うのやめてもらってもいいっすか?」

■■■「ねーエル君僕の出番まだー?」

作「ちょ、君もまだまだ出てこないから出てくるのやめて!」

■■■「ぶー。エル君こいつ意地悪」

エルドナス「まぁ、いろいろあるんじゃない?あ、そーだ!次回!【直接依頼来る!①〜エル君家を買う〜お楽し…え、家?」

エーシェ「あんた演技上手ね」

作「わーーー!お楽しみに!!!!」

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