祭りだ!⑩〜最強の敵〜
決勝の最後の記憶を失っていたエルドナスだが、なんとか優勝をすることができた。
しかし、そこに立ちはだかるのは最強の…
ドッシュのアナウンスではっとすると決勝戦は終わっていた。
僕の後ろではアズマが倒れて唸っている…え?
何が起きた!?確かさっきまでアズマの演舞とかなんとかでボコボコにされていたと思ったんだけど、意識が遠のいたと思ったらこれだ…え、ほんとになにこれ?
うーんとうなりながら控室に戻るとエーシェがまたいた。ありがとう回復係さん。
「今回はさすがにもう駄目かなって思ったんだけどなんか優勝しちゃった」
「私ももうだめなのかなと思ったんだけど、エル君急にアズマと同じ動きを始めたのよ。しかもアズマより早くてそれにアズマは対応できずにそのままアズマが倒れて試合終了。びっくりしたわよいつの間に技を盗んだの?」
「え、あ、そうなの?」
「え?」
二人で顔を見合わせる。
僕もびっくりした顔をしているがエーシェも何いってんだこいつみたいな顔をしている。
「いや、最後の方の記憶ないんだよね」
「どういうこと?」
僕はアズマの技を受けているところからアナウンスされるまでの時間の記憶が途切れている話をしたところ急にエーシェは考え込んでしまった。
「それってエル君の記憶がないところで体が動いていたってことでしょ?何かその手前で変なことって起きなかった?」
「変なことって言われてもなぁ…」
そういえば、記憶は曖昧だが意識が途切れる手前で何かが聞こえたような聞こえなかったような。
「意識を失う前に何か聞こえたような聞こえなかったような?」
「どんな感じだったの?」
「記憶が曖昧であまり覚えていないけど、女の人の声だった気がするんだ。お母さんでもエーシェでもない優しい声だった気がするんだけど…誰?」
「私が知るわけないじゃない!ほら怪我治すからこっち来て」
結局試合中に起きたことはわからずじまいだったので考えるのをやめて治療をしてもらうことになった。
本当に何だったんだろう…?
『皆様本日は最後まで御覧いただきましてありがとうございました』
治療を受けていると会場でエドガーさんが祭りの終了を告げるアナウンスを始めているようだった。
長いようで短い武術祭だったな…。僕はまた強くなれたのかな?
『今回もすべて素晴らしい戦いで私も今高ぶっております。そこで一つ提案なのですが、殿堂入りした私エドガーと優勝者のエルドナスで特別戦という形で試合をすることはできないかと本部の方に提案をしてきました』
何をしてるんですかエドガーさん!?何?ずっと試合見てたら体がうずいてきちゃったの?戦いに飢えた血が騒ぎ始めちゃったの!?
『本部からの返答は…面白いからやっていいよということだったので、皆様からもう少しお時間をいただきましてぜひこの試合を見てから帰っていただければと思います』
「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
決勝戦が一番の盛り上がりかと思ってたんですけど、皆さんまだまだ元気なんですね…。
「エル君。勝手に決まってるみたいだけどいいの?」
「たぶん僕に拒否権はないよ」
『なお、特別戦という形になりましたので、もう一つ許可をもらってまいりました。実はエルドナスは魔法と武器を組み合わせて使うことに長けておりますので、この特別線に限り双方魔法の使用の許可がおりました!皆様に危険が及ばない範囲での使用となりますのでご安心ください。」
「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
「ってことらしいけど、エル君木刀以外持ってきてないでしょ?」
「そうだったんだけどね。いつの間にかあるんですよ」
僕指を指した方向にはいつも使っている弓と最近買った盾が置いてあった…エドガーさん何してくれてんの?宿屋の僕の部屋に不法侵入したの?犯罪ダメ絶対!
「完全に周りを囲まれているわね」
「次は…死ぬかもしれない…回復薬も用意をお願いします…逝ってきます」
「エル君…帰ってきてね」
エーシェに見送られながら死地に向けてあるき出したのだった。
『会場の皆様お待たせいたしましたぁぁ!急な決定ではありましたが、優勝者のエルドナス選手と5年連続優勝のエドガーさんの特別試合を開始したいと思います!選手紹介を始めます!まずは西側彼の前に立ちはだかるものはすべてなぎ倒されてきた。どうしてそんなに強いのか?殿堂入りした最強の冒険者組合組合長!エドガー選手ぅぅぅぅ!!』
「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
今日一番の地鳴り(歓声)が響く。最後だと思って思いっきり声上げてるんだなみんな。喉大丈夫!?そろそろしんどいでしょ?
『続きまして東側!素手・長剣・短剣とすべての試合で違う武器を使って勝ち抜いてきたこの人に使えない武器はあるのか?エドガーさんに鍛えてもらったのがすべてこの日の時間のためだったのか!?今大会最強のなんでも屋エルドナス選手ぅぅぅぅ!!』
ついに僕はなんでも屋さんになったそうです。…あ、そもそも冒険者ってなんでも屋か!
『なお、この特別試合のみ魔法の使用が許可されております。もしかすると魔法が観客席の方へ来るかもしれませんのでその時は自己責任でお願いします。と大会本部からの通達です』
大会本部投げやりかよ。
「危なかったがなんとか勝ったみたいだな」
「そうですねー。最後の方とかまじでやばかったですねー」
「最後のあれ何だったんだ?」
「僕もわかんないんですよ。ま、勝ったからいいじゃないっすか」
「まぁ…そうだな」
『それでは時間になりましたので、エリーゼの村最強の師弟対決開始ぃぃぃ!!』
ぐわ〜〜んとドラがなり試合開始の合図が響いた。
【筋力強化】【俊敏強化】【時間認識強化】発動。これでエドガーさん対策の強化魔法はかけおわ…ちょエドガーさん速い速い!!
「お前に弓を使わせるわけないだろ?」
「そう来ると思ってました!」
「何!?」
後ろに飛んだタイミングでエドガーさんも初めて見る魔法を使う。【風操作】!
エドガーさんと僕の間にあった空間から自分に向けて強風を作り出す。その風に乗って後ろに飛ぶよりも大きくエドガーさんとの距離を作ることができた。よっしゃ狙い通り!
【武器交換】で木刀から弓に持ち替えて弓の準備をする。
思いっきりやってやるぜ!2属性同時展開!
【属性:火】
展開位置:対象の3メートル上空に展開・対象を中心に半径2メートル
発射弾数:8
展開角度:0・45・90・135・180・225・270・315
装填数:各弾4
発射時間:上空で停止の2秒後・その後0.5秒ごとに次の矢を発射
弾の特性:ホーミング
【属性:光】
展開位置:対象の4メートル上空に展開・対象を中心に半径1.5メートル
発射弾数:6
展開角度:0・60・120・180・240・300
発射時間:上空で停止後2.5秒後・その後0.5秒後に次の矢を発射
弾の特性:ホーミング
行くぜ!複属性ホーミングアロー!!
構えた指には赤と白の矢が二本。それをひゅっと放つとエドガーさんの上空で白と赤の弾がそれぞれ出来上がった。
「お前また変なの作っただろ?」
「前回はうまく行かなかったんで改良版ですよ」
エドガーさんは移動をしながら矢が降ってくるのに対応をしようとしているのでその間に【武器交換】で木刀を手に戻し、【俊敏強化】を解除。
最後にとっておきの魔法【魔力吸収】を発動してすっからかんになってしまった魔力を補うことにする。これは言ったらいろいろと言われそうなので秘密にしています。
そろそろ時間かな。
ドドドドドドドッ!と音を立てて全64発の火と光の矢がエドガーさんに降り注ぐ。
『エルドナス選手の猛攻撃がエドガーさんを襲っていくぅぅぅ!!何だ何だ!?何が起こっているのかわからないぞ!素手に剣に短剣更には魔法だって?エルドナスに限界はないのかぁぁぁ?』
「これはさすがに食らってほしいんですけどねー。絶対立ってるよなあの人」
ステージに立ち上った土埃でエドガーさんの姿は確認できないが、絶対にあの人は立っているという確信があったのだった。
「かー!だからお前に弓を持たせたくはなかったんだけどな。何はつかくらっちまった」
「なんで生きてるんですか?」
「あんな程度でやられるような鍛え方はしてねーよ」
僕の全力の魔法をあんな程度だなんてひどいじゃないか!ゆるさない…怒られない程度に攻撃しよう!
『なんとなんとぉぉぉ!エドガーさんはこの攻撃の中立っている!?本当にどうなっているんだこの二人は!!』
魔力も尽きているのでエドガーさんとの間合いを詰め足を薙ぐように斬りかかったのに簡単に避けられてしまい上から人を殺せる勢いの木刀が振ってくる。両手を広げて受け止める形でなんとかエドガーさんからの攻撃を止める。
「エドガーさん!?殺る気満々じゃないっすか!」
「お前ならこの程度じゃくたばらんだろ!」
くたばるつもりなんて一切ないんですけどね!!
ステージの中央でエドガーさんに対して斬りかかり撃ち合いになった。今までの訓練はこの人僕に合わせてスピードを抑えてくれてたんですかね?今時間認識強化を使っているのにギリギリなんですけど!?筋力強化を使っていなかったら木刀も間に合ってないのにこの人純粋な筋力だけでやってんの?化け物め〜〜…。
「フハハハ!まだまだいくぞ!!」
怖い怖い!この人ほんとに怖いなぁ。そろそろ怖いから離脱しよう。うんそうしよう。
弾いてもらうためにジャンプして宙返りしながらの回転斬りをすると狙い通りに弾いてくれた。
【風操作】で再度後方へ距離を取りながら【武器交換】で弓に持ち替え回復した魔力を使っての矢の準備をする。
【属性:光】
展開位置:弓の前方20cm
発射弾数:1
装填数:10
発射時間:0.5秒ごとに次の矢を発射
弾の特性:ホーミング
こういうのってぶっちゃけリズム感覚が大事じゃないですかー。連続で同じ位置に来るのって一番やりにくいんですよねー。というわけでくらえ!!!
上空で矢を放ちエドガーさんの出方を見る。
「舐めるなよ?【俊敏強化】!」
ついに強化魔法を使い始めたエドガーさんは左に避けそのまま一気に距離を詰めてくる。
「エドガーさん後方確認をしなくても大丈夫ですか?」
そう言いながらしれっと【武器交換】で弓を盾に持ち替える。
「ぬ!?」
僕の放った矢が曲がりながらこちらに向けて移動してくるのを確認したエドガーさんは僕を横に薙いでふっとばした勢いを使って反転し、矢を叩き始めた。うっわこの人なんであれで対応できるんだよ…。
僕はエドガーさんにふっ飛ばされた勢いのままだと場外に落ちてしまうので【風操作】を使ってギリギリ場外に出ないように調整する。
すべての矢を叩き落としたエドガーさんは中心部に、僕はステージのギリギリのところで着地をした。
『本当に何が起きているんだぁぁぁぁ!!エルドナス選手は武器をコロコロ変えながら猛攻!風を使って自分のことを移動させることができるなんて効いていないぞぉぉぉ!更にその猛攻を受けながらも反撃に出てくるエドガーさんは一体何者なんだぁぁぁ!この二人本当に私達と同じ人間なのかぁ!?』
僕の攻撃も絶好調になっている頃に会場の歓声も絶好調になっていた。
さて…僕の打てるてもそろそろなくなってきましたね…。最後に一発くらいあの人くらってくれないかな…。
イメージするのは最速最強の槍。
最速の魔法である光魔法でやりの形をイメージしてその周りに威力が一番高い炎をまとわせる。
【光炎槍】!
『ここでエルドナス選手が右手を天に掲げたかと思うと光の槍が出来上がったぞぉぉ!しかもその槍には炎が付与されている!これで決めるつもりかぁ!?』
そのつもりではありますよ?でもあの人それだけじゃきっとやられないと思いますけどね。
「それも初めて見るな…お前どんだけ魔法隠してたんだよ」
「隠してたんじゃなくてあのときはまだ思いついていなかっただけですよ」
「ほぉ?じゃあ、悪い俺も隠してた。【属性付与】」
え、木刀って燃えるんですか?いや、燃えるとは思うんですよ火の中に突っ込めば…でも今のあれどちらかというと木刀が炎をまとっているってこと?考えてること同じかよ!!
「えー。ずるーい」
「残念だが話している暇はないんでな…行くぞ!」
エドガーさんが距離を詰め始めたタイミングで僕も光炎槍を投げる。それに合わせて全方位型の【魔法障壁】を展開【武器交換】で弓から盾に持ち替える。
エドガーさんに向けて飛んでいった槍には先程と同様ホーミング機能を搭載していますので僕が姿を見失わない限りは外れることはありません。
「脆いぞ!!」
そんなこと言いながらきっと僕の魔法で一番の攻撃力を誇るであろう光炎槍を炎をまとった木刀で真っ二つにしてくれてそのまま僕を魔法障壁ごとふっとばしてくれました…。
「これ…ダメなやつじゃん…」
風魔法では到底押し返せるようなスピードではなく、しかももともと居た位置がステージの端っこだったので諦めて壁にぶつかることにしますね…。
「がはっ!!」
『エルドナス選手場外!!特別試合の結果はやはり彼は強かった!殿堂入りした化け物エドガーぁぁぁぁぁ!!!』
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
「わりいな。木刀に炎を付与すると30秒しか木刀が持たないんだよ」
「普通木刀に炎を付与しようなんて考える人いないっすよ」
エドガーさんに引き上げられて二人でステージの上から観客に向け手を振り挨拶をする。
これで本当にエリーゼ村の武術祭は幕を閉じるのであった。
【祭りだ!⑩〜最強の敵〜】最後までお読みいただきありがとうございました。
いやー強かったですねエドガーさん。エル君が何やっても届く気がしないんですよね(笑)。
僕もエル君と一緒になっていろんな技を出してみたんですけど、エドガーさんに通じる攻撃が一つも出てこなかったのは残念でしかたがありません…。
さて、長かった祭り編も次で終わり。第一部最終話になる予定です。皆様お楽しみに。
【次回予告】
ドッシュ「これで私の出番も終了ですか…」
エルドナス「そ、そんなことないんじゃないですかねー?ね、エーシェ」
エーシェ「なんで私に聞くのよ!そこに適任者がいるでしょ!」
作「僕に聞かれても困るなぁ〜」
エル&エーシェ「「あんたが書いてるんだろ!!」」
作「じ、次回!【祭りだ!⑪〜祭りの後って少し寂しい〜】です!お楽しみに!」
エルドナス「逃げるな!!」




