祭りだ!⑨〜決勝です〜
エリーゼの村名物の武術祭も決勝戦になりました。
決勝にコマを進めたエルドナスを待ち受けるのはサムライアズマ。
果たして優勝するのは誰になるのでしょうか。
まぁ、たしかにこの間合だと僕は届かないし木刀も投げられないから攻撃できないのは事実なんですけどね…。
「エルドナス君…当たってしまったらつまらないからうまく避けてね。壱の型弧月!!」
居合の姿勢から抜刀した木刀は早すぎて先にしか見えなかったんだけど、そこから何やら半月型の斬撃みたいのが飛んできてるんですけどそれって人のできる技なんですか?それきっと煩悩とか言いながら飛ばすやつして練習したんでしょ?そうでしょ?というかこれってあり得るの!?ちなみにそれ許可取れてるの?大丈夫かな…?
『出ましたアズマ選手得意の弧月だぁぁぁぁ!どういう原理なのかは知りませんが斬撃が飛んでいくんですよね解説のエドガーさん』
『思いっきり振ったところでそんなことにはなりませんから何か特殊な訓練を積んできたんでしょうね。私もやってみたいですねあれ』
エドガーさんはそれ以上強くならなくて大丈夫ですよー。あなたという存在そのものが凶器みたいなものなんですからやめていただきたいですね。
広く横に広がっていく斬撃をしゃがんで躱してみたんだけどそんなことしているとアズマが一気に距離を詰めてきた。おいおい足音しないってどういう原理で動いてんだよこいつ…あ、こいつ裸足じゃん!じゃあ音しないわ。ていうか今日戦った人の中で靴履いている人居なかったわ。
「今の形の弧月は飛んで避けるかしゃがんで避けるかをしないと行けないですからね…読みどおりですよ!」
あ、うん。わかったこの人あれだ。喋りながら戦うタイプの人だ。なんでそんなに喋ってられるかわかんなけど何故かずっと喋りながら戦う人だ。後半になると相手の技とかの解説担当になってくれる便利なタイプな人になるやつだたぶん。
そんな無駄な思考をしていたら完全に距離を詰め切られてしまっていたので慌てて足を薙ぎに行く。けど読まれていたみたいで空中に避けられる。そのまま鋒を返して胴をめがけて斬りかかるがこれも止められる。
『ここでエルドナス選手の反撃だぁ!しかしそれを止めるアズマ選手!やはり決勝はすごいぞぉぉぉぉ!』
おいドッシュ…若干語彙力の低下しているように感じるのだけれど解説がそれって大丈夫か?
僕の木刀を弾かれたタイミングでそのまま上段の構えになっていたアズマが思いっきりこっちに向かって切りかかってくる。これ…弧月!とか言い始めないよね?それだるいよ…
「上段弧月!」
ちょっと違ったけどやっぱり来た〜!いつもはこういうとき右に避けるんだけどなんとなく左に避けてみよう。思いつきって大事!
「下段弧月!」
これどっちでもだめだったやつじゃない!?流石にこれは…避けきれない!
とっさに木刀を前に出し弧月を受け切ろうとするが、そもそも実態のないハズの斬撃って切れるのかな?
切れているわー。びっくりするほど切れてるわー。僕の木刀真っ二つに切れるところよく見えちゃったんだよねぇ…。
『なんとエルドナス選手の木刀が真っ二つになってしまった!?弧月は木刀から出ているのに切れ味は本物の剣と変わらないのかぁ!!』
困ったなぁ…これどうしようかしら…。
確かルールの中に武器が破損した場合は一回まで補充することができたはず…。
「審判!木刀がほしいんですけど!」
『ここで武器が破損したエルドナス選手が予備の木刀を使うようです。ですが予備の武器を使うことができるのは一つの試合で一回だけですからもう一度武器が破損してしまった場合はそのまま戦うことになりますから
使うタイミングも重要になります』
『もう一回ぶった切られればいいんじゃないんすかね』
エドガーさん今なんて言いました?なんかよく聞き取れなかったことにしておきますね。
『おや?エルドナス選手はどうやら先程2つに切れてしまった木刀の刃の部分を持ったまま戦うようですね。これについてはどうなんでしょうか解説のエドガーさん』
『また何か考えてるんでしょうが私にもわからないですね』
この人思考することを諦めたな…。まぁいいんだけど。
「おまたせしましたアズマさん。さぁ…続きをやりましょうか」
「ほう…剣を長くしたところで私の剣を防げるとは思いませんがね」
まぁ、そのとおりなんですけどね。
「さっきのやつ壱の型って言ってたけど、他にもあるのか?」
「使う必要はないと思っていたんのですが、あなたがそう望むのであれば仕方がありませんね」
やっぱりあるんですね。というか僕は別に望んでいるわけではないんですけど!?なんでここにいる人たちって僕の思っていない方向で言葉を受け取っちゃうのかな?
まぁ、そんなことさせないんですけどね!
構えようとしているアズマに対して先制を仕掛けることにしたのだった。一気に距離を詰めて、1メートルくらい手前のところで踏み切りをする。
移動したときのスピードと前転をあわせて思いっきり相手の脳天をめがけて剣を振り抜くその名も…攻撃は最大の防御!的な感じの攻撃!で…いいか。
全体重とスピードと回転力の合わせ技だったのだが、これもアズマに受け止められてしまう。もうやだこの人。
「やはり…面白いことばかり考える人ですね。負けてあげるつもりは毛頭ありませんから使うつもりありませんでしたが…仕方がありませんね。弐の型…霧雨!」
技名を唱えたかと思うと、突きの姿勢になったかと思うと剣先が消えたように見えた。消えたように見えたというのは嘘になるかもしれない。消えた剣先が無数に増え自分に向かって来るのだった。
霧雨とはよく行ったもので雨粒一つ一つではそれほどぬれることはないが、浴び続けるとずぶ濡れになってしまう。それと同じように一撃一撃はそれほど重たい攻撃ではないのだが、数が多すぎるのだ。僕のレベルではさばききれるような手数ではなかった。
「っく…」
自分の体の中心部をめがけてやってくる突きはなんとか防ぐことはできたのだが、それ以外の突きは何発か食らってしまったのだった。ごめんねエーシェ。無傷で勝利っていう約束は守れなかったよ。
「やられたまんまだとやだな…」
先程の秋雨ほどではないが自分も突きの攻撃を仕掛ける。しかし、やはりアズマに受け止められてしまう。それもそうだ。アズマ本人は僕よりも速い突きを繰り出せるのだから反応ができるのは当然だ。
それならばと突きで出した木刀をそのまま下に振り下ろし、鋒を踵返てアズマの木刀を弾こうとするがこれも避けられてしまい不発だった。上に振り上げた勢いをそのままに体を一回転させて裏拳の要領で回転斬りを仕掛ける。
「守式参の型…」
ん?今アズマがなんか言っていたようだが構うもんか。回転の力を応用した斬撃だ。受けきれるものなら受けてみろさっきよりも威力は高いはず!!
「流水」
僕の木刀に合わせるように縦に構えるアズマは僕の剣を受けるとそのまま剣の上を滑らせるように受け流していき体勢の崩れた僕に対して木刀の柄の部分でぶん殴ってきた。
『おおっと!?エルドナス選手の攻撃の力を利用した反撃が完全に入った〜!これは効いていますねぇ。このような技の場合ですとエドガーさんならどうしますか?』
『相手の攻撃の力をうまく受け流して体勢が崩れたところに攻撃を入れるのは嫌な技ですね。私は体勢を崩さないので反撃は貰わんと思いますね』
回転を使っての攻撃だったのが良くなかったな…今までのこちらからの攻撃がすべて全力でやってきているのを見ての判断だろうが完全にしてやられたな。
口の中に広がる嫌な鉄の味を感じながら思考を巡らせる。やられてしまうのは仕方がない。自分のレベルに足して相手のレベルのほうが上だったのだろう。ならばこの場で相手より上に行くだけのこと。
おそらく刀の形をしている木刀の扱いに関してアズマに叶うことはないだろう。
「アズマもう一回弧月をやってきてほしいな。もう一回あれば攻略できそうなんだよな」
「ほう…攻略ですか…そのように言われたら出すしかありませんね」
やっすい挑発だったけど簡単に乗ってくれるんですね優しい!それとも長髪は挑発に乗りやすいみたいなやつあるのかな?
「ならば、受けきってみよ…弧月!!」
そもそも打刀の形をしているこの木刀では完全に相手に対して手数が足りない。長すぎるから振り回すのが精一杯になってしまっていたんだろう。なら…短くすればいいだけのこと!
飛んでくる弧月を飛んで躱し弧月にあえて木刀に当てる。当然木刀は先程と同じようにスパッとバナナみたいに切れてしまう。だが、それでいい。
『エルドナス選手またもや弧月で木刀を切られてしまった!もう武器の補充はできませんから、これ以降は武器を捨てて戦うかそのまま戦うしか…おや?何やら切れた木刀を両手に構え始めたぞ?何をする気なんだいったい!?』
最初の弧月で切られてしまった木刀の長さが意外と丁度いいものだったのでもう一本作ってみたんだけど、意外とうまくいったみたいです。
「アズマ君おまたせ〜。ここからはこれでやってやるよ」
「確かに…攻略されたんでしょうねこれは…」
僕はさっき切られた木刀と今あえて切った木刀をダガーを構えるように両手に持った。長くてスピードが出ないのであれば短くすればいいんです。そして両手で持てばあら不思議手数が倍に増えるのです。
まぁ、そんなに単純ではないんですけどね…。
そういえば昔父親に稽古をつけてもらっているときもこれとは違ったけどそれぞれの手に剣を持つタイプの戦闘スタイルを練習していたことがあったような…でも不思議と止められたんだよなぁ…なんでだろ?
「あなたが両手を使うのであれば…」
アズマはそう言うと、左手に脇差しほどの長さの木刀を抜いた。君そんなのも用意してたの?
今までは両手で持っていた刀を右手に左手に脇差し…少し前傾姿勢になっているその姿は二天一流の構えをしている宮本武蔵の姿と重なるようだった。
『これは両者両手に武器を持った状態で構えましたぁぁぁ!見た目はかっこいい二刀流というのは実際のところどうなんでしょうかエドガーさん』
『そうですね。一つ一つの攻撃は軽くなってしまいますが手数が増える分相手を翻弄することができるようになったり攻撃と防御をそれぞれの手で担うことができますから相手の攻撃に合わせて自分の攻撃をすることもできたりといろんなことができますが、使い慣れていないと全然動けないでしょうな。エルドナスは使っているところを見たことないですけど、大丈夫なんだろうか…』
名指しでそういう事言うのやめて!!
「エルドナス君は知らないかもしれないけど、僕の国にはある技法が伝わっていてね…ぜひしのぎってもらいたいものだよ。演舞壱の舞…花吹雪」
アズマは両手に構えた木刀を持ち踊り始めるかのように右に左にと移動しながらこちらに近寄ってくる。怖い怖いなにそれ。
正面からの攻撃に備えて前傾姿勢を取りファイティングポーズのように両手に持った木刀の切れ端を上下に構える。踊りだかなんだか知らないけど来れるものなら来てみろ!
左右に揺れながら移動してくるアズマが正面に来たところで木刀でアズマからの攻撃を防いだかと思うと目の前からアズマが消えていた。
次の瞬間に来るのは左からの衝撃。木刀で殴られたのだが…いつの間に!?
左を向くともうアズマは居ない。今度は後ろから次は右からと体の周りをぐるぐると回られ続けてその度に攻撃を受けている。今まで全く攻撃の性質が違う…なんだ!?なん何だこれは!
『アズマ選手の猛攻ぅぅぅ!!くるくると踊るように移動するアズマ選手の速さにエルドナス選手が全くついていけていない!これは勝負あったかぁぁぁぁ!』
まずい…このままでは意識が…。
ごめんねエーシェこれ負けちゃうわ…。優勝賞金は貰えなかったけど、お詫びのケーキは一緒に食べに行こうか。
《何を諦めているのか…まぁ良い。それよりあの小僧…全くなっておらんのぉ》
ほら…幻聴まで聞こえてきた…終わったわ…。
『決着ぅぅぅぅぅぅ!!!優勝は大逆転勝利のエルドナス選手だァァァァ!!』
え?どゆこと!?
【祭りだ!⑨〜決勝です!〜】最後までお読みいただきありがとうございました。
さてさて、最後は何が起きてるんでしょうね〜?行間で何が起きたのかとかあれ誰やねんって話はまたいずれ
【次回予告】
エルドナス「何が起きたの?」
エーシェ「ここで話しちゃったら意味ないでしょ?」
作「うん。ネタバレ良くない」
エルドナス「でも副題でたまにネタバレあるじゃん!いいじゃん教えてよー」
エーシェ&作「「次回!【祭りだ!⑩〜最強の敵〜】お楽しみに!」」
エルドナス「無視!?」




