祭りだ!⑦~甦れ…記憶!~
ついに始まった武術祭一回戦!
もともとそんな予定はなかったのにブドーのキャラがおかしな方向へ?
みんな…ついてきてね…。
試合開始の銅鑼の音とともに僕は武術の達人であるブドーと距離をとる。だいたい素手で戦えと言われてもエドガーさんとの格闘技の練習なんてほとんどやってない。
エドガーさんから教えられた(というか押し付けられた)のは相手の動きの見方だけだった。
もはや懐かしいなぁ……。
★ ★ ★
「ひとえに人をぶん殴ると言ってもな腕だけでやってるわけじゃないってのは知ってるよな?」
「知ってます」
「例えば正面にいるやつを思いっきりぶっ飛ばしてぇって思ったとする」
さっきから言葉の端々がなかなか物騒なので今すぐ帰りたい。
「そうしたらまずは足を相手の方に出すだろ?そしてその後は体を捻りながら右肩を出す。最後に腕を伸ばしていくって感じでひとつの動作にも体の色んな部分を使ってるわけだ」
「知ってます」
「そんでもって、生き物である限り何か体を動かそうとすると、その手前にある動作があるんだが」
「それも知ってます」
「なんだぁ、おめぇ教えがいがないなぁ」
「そんな事言われても実際にどんな動きがあるかまでは知らないですよ?予備動作があるからそれを見て動けとか言われても出来ないっす」
「できるか出来ないかじゃねぇ……やるんだよ」
「ひぇ……」
結局その日は一日中エドガーさんに攻められ続ける状態での訓練となった。
常に相手の体の軸を見ながら次にくる攻撃を予測して動くこと。それがその日の課題だったのだが……。
(2時間後……)
「エドガーさん!ちょ、ちょっとまって!」
「ん?どうした?」
「どうしたもこうしたもないですって!もう腕が上がらないというか立ってるのが限界なんですけど!」
「む?またやりすぎたか?」
腕はエドガーさんからの攻撃を受け続けたことによりアザだらけ、体の色んな部分も攻撃を受けてしまったことにより熱を持ってるのがわかる。
「ということで、エーシェ回復を頼む」
「わかりましたー」
「いつの間に居たのエーシェ!?」
今日は依頼を受けると言っていたのに何故かうちの相方がそこにいるのであった。
エーシェは回復魔法をかけながら小さな声で話しかけてるくのであった。
「依頼を受けようと冒険者組合に来たら裏からすごい音がするから見に来たのよ。そしたらあんたがまたエドガーさんにボコボコにされてるもんだから依頼をこなす前に回復させて欲しいってエリーに頼んだの」
そういうことでしたか。ありがたいっすねぇ。
「いつも思うけどなんでエル君生きてるのかよくわかんないわよねぇ」
「別に僕不死身とかそういうのじゃないからね?今も回復かけてもらわなかったら動けなかったと思うよ!?」
「そう。じゃあ、また依頼が終わった頃に顔出すからそれまで生きててね。はい。おーわり」
そう言うとえーシェは居なくなってしまった。
え?なんの依頼受けるか知らないけど今と同じくらいの時間で来てくれないと僕さすがにやばいと思うんだよなー。
「よし!じゃあ続きいくぞ」
「なんでエドガーさんは全然疲れてないんですか?ずっと動いてたじゃないですか!」
「お前とは鍛え方がちがう」
「バケモノめぇー!!!」
その日僕はまたエドガーさんに担がれて宿屋に戻ったのだった。
★ ★ ★
そんなこともあったなぁ……。全然楽しい記憶じゃないけど。
というか、エドガーさん(バケモノ)と武術の達人って比較対象にしても大丈夫なのだろうか?
確かにエドガーさんはバケモノじみたただのバケモノなのだが(褒め言葉)、達人の動きはまた違うはず……警戒せねばやられるなんて考えてみたりしてみる。そんな物騒な世界線で生きているわけではないのでよく分からないんですけどねー。
僕は別にどれくらいが間合いなのかとかよくわかんないからいい感じの対応ができるであろう距離を取り続けているだけなのだが、ブドーがじわりじわりと近づいてきているように感じた。
「ふむ、間合いの取り方もまた絶妙な」
いや、絶妙ってなんすか?僕は単純にこっちから攻めるのムズいなぁって思って距離を取ってるだけなのですが!?
『試合開始後両者全く動く気配がありません!どうなっているのでしょうか解説のエドガーさん』
『人にはそれぞれ間合いという物がありますからねぇ…それをはかっているのでしょう。エルドナスは戦闘の素人ですからなんとなくで取っているのでしょうが、それがまたこの微妙な時間を作っているのでしょう。難しいことなんて考えずに攻めればいいんですけどね』
うわぁ脳筋だぁ…。
「いざ……参る!」
エドガーさんの言葉に突き動かされるかのようにブドーが間合いをさらに詰め始める。
ちなみに…マイルとは距離の単位のことで約1.6kmのことを言います。ヤード・ポンド法の単位のひとつですね!
はい……現実逃避の時間終了です。ブドーがどんどん近づいてきてます。時間がゆっくり進んでいるように見えるのはたぶん僕が集中してるからなんでしょうね。
肩が動かない……?何してくるんだろうこの人。達人だからなぁ……僕の想像を超えた攻撃とかされたら困るなぁ。
「くらえ!我が渾身の【爆裂回転脚】を!」
ちょっと待てぇーい!爆裂攻撃って魔法なんじゃないの?魔法禁止でしょ?しかもお前武術の達人なんでしょ?なにが爆裂攻撃じゃい!
ブドーは叫ぶだけ叫ぶと自分の身長くらい飛び上がってそのままこちらに向かってきた。すっげーバネ。
こちらに体をを捻り回転させながら飛んでくる。
こ、これは……回転ドロップキック!?
『で、出たぁぁぁぁ!ブドー選手の得意技【爆裂回転脚】だぁぁぁぁ!!強烈な回転と全体重を乗せたその攻撃を喰らって起き上がれたものはいない…らしい!』
『去年私が受けましたね。強力な技でしたね。少し後ろに動いてしまったと記憶していますね。私とは体格差があるにも関わらずそれを成し遂げたのですから強力な技です』
受けきって倒れてすらいない人がそこにいますよー実況者ノリとテンションだけでやってるだろ。
だが、確かにこれはすごい。僕の敏感な三半規管では耐えきれずにすぐに限界を迎えてしまうだろう。
まぁ、まっすぐ飛んでくるだけなんで避けるんですけどね。さすがに空中でそのまま追ってくるなんてことは無いでしょ?それやってきたら魔法じゃん。フラグにならないことを祈る…。
さっと右に避けてブドーの回転脚を回避する。
『おおっと!!エルドナス選手ブドー選手の必殺技をすんなりと躱した!!』
『あの程度なら毎日のように喰らってましたからね』
さらっと怖いこと言ってくるけどほんとのことなんだよなこれ。
「なんと我が必殺技を簡単に躱されてしまうとは…さすがというべきなのか…」
いやいや、あんた回転しながら攻撃してきただけだからね?ところで爆裂ってどこのあたりが爆裂なのか誰か解説をお願いしたいのですけど!?
「ならば、我が最終奥義を持って葬り去るしかない…初戦で使うとは思ってもいなかったのだがな」
さっき解説のドッシュが必殺技とか言ってたけど、まだあるんですか?
『ま、まさか出てしまうのか?ブドー選手の最終奥義が出てしまうのかぁぁ?」
『エルドナスはなぜさっきの隙の間に攻撃をしなかったんでしょうかね?鍛え方が足りなかったか…』
はいそこ!怖いこと言わない!ブドーより解説の人のほうが怖いっすよ!
「行くぞ!我が最終奥義!【爆裂拳】!」
だから何なんだよ爆裂って!あんたそれを言いたいだけなんじゃないの!?
名前からパンチなのはわかっているけど、それ以上のことはわからないからひとまず防御の姿勢をとることにする。両手を盾のように前に出し体を丸めて攻撃を待ち構える。
ブドーから飛んでくるのは、左・右とリズムよくパンチが飛んでくる。これ…ボクシングのワンツーじゃね?
一発はそれほど重たくないが連続で攻撃をされ続けるのはさすがにこたえる…ところで武道の達人って…達人って何なんだろうか?
『つ、ついに出てしまったブドー選手の【爆裂拳】!この連続攻撃が止まるのは相手が倒れた時だけだと言われているこの最終奥義がついに出てしまったぁ!!』
『前年度はブドーが倒れて止まりましたね』
だからさっきからエドガーさんの解説が解説じゃないですね…。
とはいえ、実況解説が行われている間も続くこの連続攻撃は休む暇なく飛んでくる。そろそろ腕が痛いってのと…うざいんだよねぇ。
「ほら!ほらほらほらほらほらほらほら!早く降参をしてしまいな!」
「いーやーでーす!」
攻撃をしのぎながら口ごたえはしてみるが、ぶっちゃけ今のところ突破口を見つけることができていないというのが事実である。
さてさて、どうしたものか…こんな時は何かびっくりするようなことを思いつかないと難しそうだなぁ…。あと、ほんとに腕が痛い。
「あ、あのー。ブドーさん?そんなにずっとパンチしていて疲れないんですか?」
「ふん!いつまでも続けられるように修行をしてきたのだ。何時間でも続けられるわい!」
ホント僕の周り脳筋しかいない!もーやだやだ!
『ブドー選手の攻撃が続く続くぅぅぅぅ!エルドナス選手防戦一方だぁぁぁ!』
『だからさっき止めを刺しておけばよかったのに…この攻防を制したものが一回戦の勝者になるでしょうな』
そうなんだよねー。とどめ…とどめねぇ…。そうか…。
そろそろガードをしている腕もしんどくなってきたなぁ…。
「甘いぞ!エルドナス!」
ガードが甘くなったところを強打で突かれガードが完全に崩れてしまった。
「とどめだ!エルドナスぅぅぅ!!」
『おおっと!!ついにエルドナス選手の守りの姿勢が崩れてしまったぁぁぁぁ!エルドナス絶体絶命!!』
『あっけなかったですねぇ』
エドガーさんが一番怖いのは変わらないけど…狙い通りですよ。
人間に隙ができるのは勝利を確信したときと虚を突かれた時だ。
左で殴ってガードが崩れたならば、次に来るのは右のストレートを顎に向けて振りぬいてくる。勝利に酔いしれている人間のやることなんてわかりやすいものですよ。だって僕もおんなじことやるもん。
「もらったぁぁ!」
僕の予想通り右のストレートが飛んできた。予測できている攻撃ならかわすことなど容易だ。だが、ただ躱すのではない…躱すために狙っているではない。決めるためにわざわざ右ストレートをさせているのだからな。
「ここだぁぁ!!」
ブドーの飛んできた右ストレートを右に首を傾けよける。その右手首を左手でつかみ体をブドーの下に潜り込ませて右手は胸元をつかむ。
甦れ…高校時代の…体育のことを…一回だけ成功することができた一本背負いを!!
『こ、これは!エルドナス選手がブドー選手の攻撃をかわしたかと思うとブドー選手をつかんだ!?いったい何をする気なんだぁぁぁぁ!?』
『ふむ。私も見たことが無い技かもしれませんね。楽しみです』
自分の腰で相手の体を押し上げて両の手で思いっきり引っ張る。柔道なんて高校の授業でしかやったことないからやり方なんてよくわかんないけど、これでできる…はずだぁぁ!
「うおおおおおおおおおおお!」
『大きな雄たけびとともにエルドナス選手がブドー選手をぶん投げたぁぁぁ!いったい何が起きているんだー?いったい何なんだあの技ぁぁぁぁ!!」
『面白い技ですね。今度あいつに聞いてみることにしましょう』
本来ならば下に叩きつけるのが正解なんだろうけど、今回のこの戦いは戦闘不能にさせるか場外に出すのが勝利条件だ。つまりブドーを外に向かってぶん投げるのが正解ってことだ!!
『ブドー選手!場外に落ちてしまったぁぁぁ!決着ぅぅぅぅぅ!!第一回戦の勝者はエルドナス選手ぅぅぅぅ!!!』
「「うおぉぉぉぉぉぉーー!!」」
雄たけびが上がり一回戦の終了の合図となったのだった。
ステージから降りて控室に戻るとエーシェが待っていてくれた。
「お疲れ様。ほら、腕出して。結構やられちゃってたでしょ?」
「ありがとうエーシェ」
「ほんとに無茶な戦い方して…ところで最後にブドーを投げた技初めて見る技だったんだけど、何あれ?というかエル君って武術もできたの?」
「質問が多いよエーシェ。昔父さんと訓練をしたときにやられたことがあったんだよねぇ…やったことなかったけど、うまくできてよかったよ」
「え…?初めてやったの?」
「うん。そうだけど?」
「なんで!あんたは!そういう!無茶ばかり!する!のよ!!」
言葉に合わせて頭を叩かれる…ひどいよぉ…。
「ま、次も勝ってくるからさ。許してよ」
「当たり前じゃない。ここ最近のあんたの生活費を工面してあげたのはそのためなんだから」
ははは…さいですか…。
「祭りだ!⑧~甦れ…記憶~」最後までお読みいただきましてありがとうございました。
ブドー…もともとはくそ真面目キャラだったんですけど、なんか話の流れでこうなったんですよね。これはこれで…(笑)。
【次回予告】
ドッシュ『一回戦を突破したエルドナス選手を待ち受けるのはどなたなんでしょうか?』
エドガー『私の予想では…おっとこれ以上は』
エーシェ「え、何この思わせぶりな感じ」
エルドナス「予定は未定なんじゃない?どうなの?」
「いや、別にもう相手決まってるんだけどね?いいじゃん隠してても」
エーシェ「エル君とこの人似てるわね…」
エルドナス「え…?」
「じ、次回!祭りだ!⑧~達人達人また達人~お楽しみに!」




