祭りだ!⑤~エリーゼの村新名物絶叫移動~
実践訓練を初めてまた時間が経ちました。
ある日エドガーさんから言われた言葉を聞いて急遽依頼に行くことに。
今回は何が起きるんでしょうね?
実践訓練に入ってから数週間経った。
やっと木刀(特注)を握っての訓練に入ったんだけど、ここ何日間はいつ終わったのかを覚えていない。
朝目が覚めると体中が痛いってのは最近当たり前になり始めているのでもう慣れてしまった。昨日もどうやってここに帰ってきたかの記憶はないので、きっと真実を知るであろうエーシェが起こしに来てくれるのを待ってみる。
「エル君朝よーって起きてるじゃない」
「おはようエーシェ。体が痛くて起きたんだよねなんでだろう」
「え、あぁ…まぁ想像通りよ」
お願いだから目を合わせてほしいんだよね…。
「昨日も回復魔法をかけてくれたんだよね。ありがとエーシェ」
「いや、だって…回復魔法かけなかったらエル君ほんとに何回か死んでると思うわよ」
え、僕そんなにボコボコにされてるの?しかも毎日?
「エドガーさんにボコボコにされるのなれちゃいけないんだろうけど、慣れてきちゃったからもうどうでもいいかなって思い始めているんだよね。とりあえず朝ご飯行こっか」
僕のその言葉に対してエーシェからかなり冷たい目線が注がれていたような気がするが、僕はいろんな意味で精神的に強くなれたのかもしれない。今までは心にダメージを受けていたけれど、今日は何とも思わない!すごい!…あれ、なんかむなしくなってきた…。
下の階に降りて食堂で朝ご飯を食べながら今日の予定についての話になる。
「昨日エドガーさんに最近お前依頼に行ってないだろって言われてさー。依頼を受けずに3か月経つと無条件で冒険者の資格はく奪されるんだって。知らなかったわー。そんでもって一か月も人を島に閉じ込めといて何を言ってるんだこの人はとも思ったけど」
「エル君…それ、冒険者の常識なんだけど」
「え…?マジで?」
「はぁ…そういう話も聞いてないのねあなたは…。で、そろそろ行かないとまずいってことよね?」
「そういうこと。話が早くて助かります~」
「わかったわよ。何しに行く予定なの?」
そう…それが問題なんだよねー。森の奴らでもいいんだけど、森の奴だともうあんまり歯ごたえがないというかなんというか…。
「とりあえず、冒険者組合に行って決めようかなーと」
「わかったわ。エル君が何も考えていないってことが」
そんなこと言われてもしょうがないじゃないですかー。
「じゃ、朝ご飯食べたらすぐに行くわよ」
「お、いつにもなくやる気だね」
「あなたのこの一か月の生活費は誰が稼いでいると思っているのかしら?」
「ほんとにお世話になってます。今月もよろしくお願いします!」
僕がエドガーさんとの訓練をしているのは特にお金が発生するようなものではないが、僕たちは宿屋に寝泊まりしているしご飯を自分たちで作って食べるわけでもないからそのすべてにお金がかかっている。で、僕はこの約1カ月間は依頼に行っていないいわばプー太郎なのだ。その生活費は最後に行った依頼の報酬で賄われていると言いたかったところなんだけど、その報酬は実はもうなくなっていたりする。ということで僕はこの期間だけエーシェさんの脛をかじらせてもらっているのだ。
もとはと言えばエーシェも優勝賞金に目がくらんで出ますって言っちゃったからということで快く僕を養ってくれている。ああ、僕もうこのままでもいいんだけどなぁなんて思っているとエーシェから部屋を出るときよりもさらに冷たい視線が刺さってくるのであった。
「と、いうことで、僕がだめにならないような依頼はありませんかエリーさん」
「もうだめだと思うけど、本人は認めてないのかー」
「そうなのよ。もっと言ってあげてエリー」
女子ーズから冷たい目線と言葉を浴びせられても僕心に傷を負っていない!エドガーさん!僕強くなれたのかもしれません!
「えっと…そうですね。もう森の奥の山の依頼でいいですかね」
何その投げやりな感じ。
「何があるんですか?」
「えっとーこれなんてどう?」
そういわれて出てきた依頼書は飛竜(小)の討伐依頼だった。
「飛竜(小)ってことは飛ぶんですよね?」
「何を当たり前のことを…。あ、そうだお父さんから依頼の時の条件を出されていますから伝えますねー」
ついにこの人仕事中にエドガーさんのことお父さんって言ったぞ…今まで何とか訂正し続けてきたのに諦めたな。
「エルドナス君は敵との交戦中に弓及び魔法の使用禁止とのことです。ちなみに攻撃魔法と強化魔法のどちらも禁止と言われています」
ええ…。だって飛竜って飛ぶ竜って書くんだよ?飛んでるんだよ?飛んでる敵を倒すためには自分が飛ぶか何かを飛ばすかしかなくない?
「え、じゃあ飛竜以外ので…」
「ダメです~あ~手が勝手に~」
エリーさんがすっごくくさい芝居を演じながら受領印を押しやがりました。
「ちなみに、この依頼を魔法なしで達成したら訓練を少しお休みにするって言ってましたよ」
「よしやろう。さあやろうエーシェ!明日はお休みだ~!」
「もともとはエル君がお願いした訓練でしょうが…まぁ私も回復魔法をかけなくても済むと考えると楽ね」
お休みよりも回復魔法をかけることの方がめんどくさいんですね…今までごめんなさい。
「じゃ、二人ともがんばってー!」
そういってハンカチをひらひらさせながら見送ってくれるエリーさんだが、最近キャラにぶれを感じるのは僕だけだろうか?
「エリーってあんな感じだったかしら?」
あ、僕だけじゃないですね。
二人で村を出て森の入り口までてくてくと歩いて行く。僕の歩くペースに比べてエーシェはちょっと遅い。これは歩幅から来るものだと思うが、久しぶり過ぎて忘れていた。
「エーシェ…一つ提案があるんだけどいいかな?」
「何よ?歩くときに俊敏強化の魔法を使えって言うのならお断りよ?」
あ、違うけど、内容は察していたのね。賢い子だねーエーシェはいいこいいこって頭をなでようとしたら手をはじかれた…そんなひどい。
「エル君って私が年上ってこと忘れてるわよね」
「そ、そそそ、そんなことないよ~?」
忘れてましたすみませんでした。
「忘れてたみたいだけど、まぁいいわ。で、提案って何かしら?」
「この森ってスライムとかスライムとかスライムが出てくるじゃん?」
「そうね。たくさん出てくるわね」
「で、今回の僕らの目的の場所は森を抜けた先の山で、そこから索敵をしてってなると結構時間がかかると思うんだよね」
「今日の夕方くらいには戻れたらとは思ってるけど、それがどうしたの?」
「スライムにもそんなに出会わずにすぐに山にたどり着く方法があるとしたらどうする?」
「そんなのがあるなら使ってみたいわね」
「わかった。じゃあ、エーシェはそこに立ってて?」
エーシェは言われるがままに僕の前に移動した。頭にははてなを浮かべているかのような表情をしながら僕を見ている。
「では、失礼しまーす」
僕はエーシェにそのまま近づいてエーシェをお姫様抱っこした。
「え、ちょっと、エル君?急に何すんのよ!」
「ほらほら暴れなーい。いくよ~?」
【筋力強化】【俊敏強化】発動!
「帽子飛ばされないように押さえておいてね」
「エル君…ちょっと待って。わかった…わかったから降ろしいぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁあああああああああ!」
森の中をこだまするエーシェの叫び声。森の中にいる敵は僕のスピードについて来れないから出会うこともないね!
(10分後)
「ということで、森を抜けましたー!やったー!」
走ったから汗が出ている僕と走っていないのに汗が出ているエーシェさん。顔が真っ青です。
「エル君…ちょっと…」
「なーにエーシェ?」
「そこに座って」
「え…?」
あ、これ、お説教モードだ…。
「私降ろしてって言ったのになんで降ろしてくれなかったの?」
「たぶんエーシェが言ってたのは降ろしてじゃなくて降ろしいーやーだったと思うよ」
「確かに…ってそうじゃなくてなんで説明もしないであんなことしたのよ!怖かったのよ!」
「いや、まさかエーシェが絶叫系が苦手だなんて思わなくて…」
「絶叫系って何よ」
「あんな感じのすっごく早いやつ」
「苦手とかそうじゃなくても普通に説明もなく、あんなことされたら誰でも絶叫すると思うけど?」
「そういうもんかー」
「エル君はその辺がかなりずれてるからやる前にお願いだから私に許可を取って…」
そっかー。だめなのか―。いい案だと思ったんだけどなぁ…。
「ところで、エル君。超速移動の件よりも、重要なことがあるのだけど」
え、僕が怒られてるのってこの移動方法のことじゃないの!?
「あなた…私を抱えたときに筋力強化を使ったわよね?」
えーっと…それはですねぇ…。
≪よくわかる強化魔法のコーナー!≫
今回エーシェさんがなんで僕の身体強化魔法を見破れたかについて!
魔法を使う時には体内にある生命エネルギーである魔力を使います。魔力の量は個人差があり、質にも個人差があります。僕は光と火と風の魔法を使うことができますが、闇と水に関しては全くできません。土魔法はちょっとだけ。エーシェは火と水と聖魔法が使えるような感じです。
そんな中で強化魔法は無属性と呼ばれている魔法で、魔法を使える人が最初に使えるようになる魔法の一種でもあります。この無属性魔法を使ったときに種類によって魔力の性質が若干ですが変質します。魔法を使える人のほとんどがこの変質を色で識別しています。魔力が通っている人のほとんどは魔力を目で見ることができるということです。
例えば、筋力強化を使うと体を包んでいる魔力は赤っぽく、俊敏強化を使うと青っぽくなります。なので、先ほど僕を包んでいた魔力はそれがまじりあった紫っぽい色になっていたということです。
この色の濃さ≒精度になっており、エドガーさんの俊敏強化は真っ青なオーラが体を包み込んでる感じでした。あの人マジやべぇ。
と、いうことで、エーシェは僕が使った魔法について色で判別できたから使ったことが分かったってことですね!
「エーシェを落としたら危ないなぁ~と思ってですね…」
「ふーん?そうなの?ほんとに?」
途中で腕が疲れて落としたら危ないなって思ったのは確かなんですけどね…。
「私そんなに重たくないと思うんですけど?」
「うん。軽かったよ?」
「そういうことを言ってるんじゃないの!!」
あ、だめだこれ…何言っても怒られる。
「エル君なら強化魔法を使わなくても抱えられると思うのだけど」
「だから、それは途中で腕が疲れてエーシェを落としたらと考えると保険をかけておいた方がいいかなと思って」
「だから、そんなに重たくないって言ってるでしょ!」
「はい!ごめんなさい!」
この後…エーシェのお説教の時間はまだまだ続いた。
「さて、スッキリしたしそろそろ行きましょうか」
「はい…ごめんなさい…」
エーシェとの約束の中に急に女の子を抱きかかえないが追加された。
山を登ってちょっとたったところで山の上の方を何匹かの飛竜が飛んでいるのが見えた。
「問題は僕の弓がないことだよねー」
「私の魔法でも当たらなかったら意味がないわけだもの。どうしましょうか?」
「さっきの強化魔法は敵と対峙しているわけではないから問題ないとして、魔法を使っておびき寄せたら失敗扱いにされちゃうからエーシェの魔法を当ててもらうしかないね」
「どうするのよ」
「頑張って狙う?」
「もっとましな案はないわけ?」
「曲げる?」
「どうやって?そういえばエル君の弓は曲がって飛んでたわよね?」
「そうだねー。あれはもともと曲がるように作ってあるけど、エーシェのはそういうわけでもないからなー。前にも話した通り魔法はイメージが大事だって話は覚えてる?」
「覚えてるけど、私の魔法は構築式を覚えたものを基本にしているからそれ以外のことはできないわよ?」
「構築式ねー僕が嫌いなやつだ…あれって火弾だったら何が書かれてるの?」
「魔力を火に変換することと回転を加えることね」
だから作った後は杖を振り回していたわけか…ということは飛ばすという動作に関しては本人の任意で行えるということかもしれない。
「エーシェ飛ばすときにどんなイメージでやってるの?」
「え、そんなこと言われても…こう…えーいって」
この人急に語彙力失ったな…。
「そしたら飛んでった後の火弾に曲がる方向を強く念じるんだ!そうしたら曲がるかもしれない!」
「えーほんとに?やってみるけど」
意外とすんなりやってくれるみたい。素直でいい子だなぁエーシェちゃんは…おっといかんいかん。
「【火弾】」
まっすぐ飛竜が飛んでいくだろう位置に向けて火弾は放たれたが、飛んできた火弾に気が付いた飛竜は急旋回し火弾を躱す。
「いまだ!」
エーシェの魔力が再び強くなる。すると少しずつ火弾の軌道が龍に向けて曲がり始めた。飛竜も予想外だったらしくそのまま飛竜は翼に火弾を受け落ちてきた。
「できたね!後は仕上げ!」
もがきながら落ちてくる飛竜だが、翼に穴があいているので思うように姿勢を変えることができないようだ。
「バイバイ」
落ちてきたところに僕が待ち構えて剣で首に一太刀入れる。これで依頼達成だ。
「よし!帰ろう!うん。すぐ帰ろう!角は取ったからもう用はない!」
「どんだけ早く帰りたいのよ。まぁ…いいけど」
「じゃ、お運びさせていただきます」
「え、いらない」
「でも、そうしたらあのスライムだらけの森を歩いて抜けることになるんだよ?いいの?」
しばしの沈黙…。
「わかったわ。その代わり、終わったらまたいつものお店行くわよ」
「極みでなければおごらせてもらいます」
そうしてまたエーシェを抱えて僕は走り出した。やまびこのようにエーシェの声が響いていた気がするけどこれもまた新しい名物ってことで。
「祭りだ!⑤」最後までお読みいただきましてありがとうございました。
エル君の修行篇も今回までとなります。前回の話を書いてからエル君とエドガーさんが二人で修行してるだけの話ってどうなんだと悩んだ結果こうなりました。使いどころがなくなってしまっていたお姫様抱っこ(超速)ネタを使うことを選んだらこうなったんですよ。不思議ですね。もともと飛竜なんて出てくる予定なかったのに。
さて、お祭り篇も長くなってきたのと①とかだけだとわかんなくなり始めたのでお話の名前を付けることにしてみました。今後ともよろしくお願いします!
【次回予告】
ついに始まるエリーゼの村名物武道祭!血沸き肉躍る戦いがここにあるかもしれないしないかもしれない。実況は今年も私!何者かって?それは次回のお楽しみ!
エル「これ次回予告あのハイテンション司会者に乗っ取られたと考えていいの?」
エーシェ「乗っ取りも何ももともと誰がってのもなかったからいいんじゃない?」
次回!「祭りだ!⑥~開会です~」お楽しみに!




