表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/97

祭りだ!②~修業とは無茶ぶり~

エドガーさんに呼び出されて祭りへの参加を勧められたエルドナス。祭りとはどんな内容なのか?そして、エル君の選択とは!祭り篇第2話です!

「祭り…ですか?初めて聞きましたけど、どんな祭りなんですか?」

「エリーゼの村名物武術祭だ!」

うっわー絶対にめんどくさいやつだな。

「え、嫌です」

「まぁそう言うなって。実はもう出場の手続きは済んでるんだけどな」

「うそん。じゃあ、なんでさっき出るかどうか聞いてきたんですか?」

「いや、ほらこういうのがあったほうが気分が出るかなと思ってな。お前が断ったところで出るって言うまで交渉し続けるだけだしな」

この人結果を出すためだったらなんだってしそうだ…。会うたびに「出場しろ」とか言ってきそうだし、最終手段だとか言って俺に勝てたら出場を取り消してやろうとか言ってきそうだからほぼ何を言っても無駄なんでしょうね…。

「ちなみに優勝賞金は300万Gになんだがそれでも嫌なのか?」

「出ます」

ちょっと待てそこのちんちくりんツルペタ。

「ちょ、エーシェさん?なんであなたが答えるの」

「300万Gよ!300万!あなた金欠なんだから出場しなさいよ!そして優勝したらまたあのお店連れて行きなさい。ケーキセットの極みを食べてみたい!」

「なんという…わかったよ…出ますよ」

「ほい来た。じゃあ、決定ってことで」

僕らのやり取りを見ながらニヨニヨしているエドガーさん。やはり親子その顔すっごく似ているんだけど、おっさんのにやけ顔って…。

「エドガーさんのその顔…キモいですね」

「え”…」

娘と同年代の女の子から直接的な言葉を投げかけられて心が完全に逝ってしまっているおじさんが一人。僕は悪くはないと思いますよ…悪くは…。あの顔の時のエリーさんはかわいいのでエリーさんにその顔を伝えてくれたことだけは感謝しよう。

「エドガーさん。帰ってきてください。そして僕にこの大会の詳細を教えてください」

「お、おお。そうだったな。まず、禁止事項としては飛び道具の武器と魔法の使用だ。使える武器は木製の物のみ。基本的にはこの前の試験の時に使った木刀みたいなのが支給される。それが嫌とかそこにないものを使いたいということであれば、自前の物を持っていってもいい。とりあえず強いやつが勝つってことだな」

「説明ありがとうございます。ちなみに魔法の制限なんですけど、強化魔法系もだめなんですか?」

「もちろん禁止だ」

「魔法を人に気づかせない魔法の開発を急ぐしかありませんね」

「エル君それは理論上難しいと言われているやつだったと記憶しているわ」

「いや、お前らはなんでそう違う方向の努力を始めようとしてるんだ?」

「あ、そういえばその祭っていつあるんですか?」

「今からだいたい3か月後だな」

3カ月か…。時間はまだあるな。となれば…。

「エドガーさん。祭りに勝手に出場することになっていたのは目をつぶることにするので、一つお願いしてもいいですか?」

「なんだ急にかしこまって。とげがあるけどな」

「僕基本的に強化魔法を使っている状態での戦闘訓練しかしたことが無いんですよね。なので使わないで戦う方法を学ぶ必要があると思うんですよねー。なので、それまでの期間稽古をお願いしたいです」

エーシェが本気でこっちを見ながら引いている。それはきっと前回の事例があるからだとは思うけど、適任者がこの人しかいないんだからしょうがない…。

「いいぞ。じゃ、準備もあるからまた明日来い」

「わかりました。エーシェ今日の帰りに武器屋によってもいい?あの時使った木刀だと強化魔法なしで使うの厳しいから専用の木刀を作ってもらいたくて」

「また…散財するの…?」

「いや、これは投資だよ。優勝するための」

「そ。使いすぎないでね」

「はいはい。じゃあ、エドガーさんまた明日~」

冒険者組合を後にして、武器屋に寄ってから宿屋に帰る。

「そういえばエドガーさんとの稽古の期間がどのくらいになるかわからないんだけど、この3か月間はあんまり僕は依頼に出られないかもしれないから、その間はエーシェ一人で依頼とかに行くことになるかもしれないけど大丈夫そう?」

「あなたみたいに一人で熊を狩って持って帰ってくるのは難しいかもしれないけど、できるやつをこなしていくわよ」

「さて、明日から稽古となるとこれが今生の別れにならないことを祈ってはいるんだよね」

「そうね。そしたらこれ持っておいて」

エーシェから手渡されたのはノートだった。

「ナニコレ?」

「つらい訓練を続けていると精神がやられてしまうこともあると聞いたことがあるわ」

「何その怖い話」

「それで、その逃げ道という意味で日記を書くのが効果的らしいわ」

「へー」

「あと、どんな稽古なのか楽しみだから日記に書いておいてね。私が見たいだけ」

「えー」

「だって、エル君前の時の記憶ないんでしょ?日記にその日のことを書いておかないと忘れてしまうかもしれないじゃない。だからよ」

確かに前回は気が付いたら部屋のベッドの上に居たのだからそれでは稽古をつけてもらう意味がない。確かにこれは大切なことなのかもしれないな。強豪の野球部ではその日のことをノートのまとめる野球ノートがあるとか聞いたことがあるからあながち間違っていないのかもしれないな。

「ありがとうエーシェ。今日は早めに寝て明日に備えるよ」

「そうね。どんな稽古が待ってるかわからないものね」

「ああ、うん。そうだね。おやすみ」

エーシェの言葉にブルーになりながらも自分の部屋に向かう。

(次の日)

いい朝だなぁ。これが見納めにならないといいなぁ…。

エーシェは今日もそんなに調子がよくないということなので、一人で冒険者組合に向かうことにした。

持っていくものは剣と盾とウエストポーチに入るだけの物を持っていく。あと、昨日エーシェからもらった日記用のノートだ。弓は祭りの時に使えないということなのでちょっとの間封印です。ごめんね。

「おはようございま…なんすかそのでかい鞄」

「おお、来たな。とりあえず、稽古の内容を伝えるぞー。やっぱり修行って言ったらサバイバルだよな」

「はぁ…」

「ということで、これが寝泊まり用の道具だ」

鞄の中身を見てみると、簡易テントと水と鍋が入っていた。

「え、マジ…?」

「お前に足りないのはまず体力だ。体力をつけたいならぎりぎりの状況を経験し続けなくてはならないと俺の師匠が言っていたからな。俺が昔やったやつだ。とりあえず1カ月生き抜け」

「ははは。面白い冗談ですね」

「ははは。それがな。本気だ」

うぇ~目が本気だよこの人。お願いエリーさん目を合わせてほしいんだけど!

「わかりましたそしたら僕はどこに行けばいいんですか?」

「この村の北は森やら山やらでそこでもよかったんだけど、森だとお前の敵がいないからな。南に行くと海があるのは知ってるな」

「え、そうなんですか?海あるんだ!」

「知らなかったのか…まあ、いい。その海からちょっと行ったところに島があるからそこで一か月だ」

「えっと、つまり、その島だと僕がぎりぎり勝てるような敵しかいないと?」

「そういうことだ。死にはしないだろうから頑張れよー。もしなんかあったら泳いで来い」

「わかりました…」

「じゃ、そういうことだ。今から行ってこい。エーシェには挨拶してから行けよー。あと…」

エドガーさんが手を出してくる。なに?握手?

「武器は置いていけ。調理用にはナイフが入っているから大丈夫だろ?」

あなたは基準がおかしいのではないだろうか?

「それも修行の一環なら…」

武器を手渡すとエリーさんが青い顔してこっちをドン引きしながら見ている。わかるよーその反応。普通はそういう反応するよねー。

「じゃ、行ってきますね」

「おう。船着き場にはヤラスってやつがいるからそいつに連れて行ってもらえ。あと、島に着いたらやってほしいことが鞄の中に入っている紙に書いてあるから」

「わかりましたー」

憂鬱になりながら冒険者組合を出て一度宿屋に戻ることにする。

「と、いうことになりましたエーシェさん」

「うわぁ…」

「そういうわけなので、荷物お願いしてもいいっすか?泊まらないのに1カ月間も宿代払うの嫌なので」

「わかったわ。無茶だけはしないでね」

「はいよー。憂鬱だけど行ってくるねー」

「あ、エル君」

「何?」

「日記楽しみにしているわね」

「そこかー」

宿屋の主人に経緯を説明して今日までの宿代を納めて宿を出る。

「行ってきます…」

エリーの村に来てからほかのところに泊まるのが初めてな気がする。

鞄を担ぎながら南へ軽く走っていくと数時間で船着き場に到着した。意外と近かったのになんで海があること知らなかったんだろう?

船着き場についてからヤラスという人を探すためいろいろな人に声をかけてみる。コミュ障にはしんどいぜ。エドガーさんにどんな人なのか聞いてくるべきだったんだろうけど、そんなことすっかり忘れてしまっていた。何人かに話しかけてやっとヤラスという人を見つけることができた。

「えっと、ヤラスさんですか?」

「ん?ヤラスは俺だが何か用かい?」

「エドガーさんから島に流される人間です」

「ああ、お前が…話は聞いているが、大丈夫か?」

「拒否権はないので…」

「そうか。こっちは準備できてるけどお前は大丈夫か」

「はい。もう煮るなり焼くなり何なりと」

「ははは、諦めはついてるんだな。なら、いくぞ~」

船は小型の物でエンジンが付いているものではなく、ヨットに近いようなものだった。やっぱりこの世界の船はエンジンなんてついていないのね。

「船ってだいたいが帆を張っているやつなんですか?」

「そうだなー。この国のはほとんどがこういうやつだな。あとは大きさが違ったりとかだけだ。ただ、西にある魔法大国サミュールって国だと魔法の力で動く船もあるって聞いたことはあるが、魔法使いが何人もいてやっと動くような代物らしいからな。効率が悪いとも聞いたことはあるなー」

エンジンじゃなくて魔法で動く船か…。それ空飛ぶやつもあるんじゃない!?それはいつか行かないといけないんじゃない!見てみたい!乗ってみたい!そのために生き抜かなくちゃいけないな。

船が沖に出て数十分。僕は一つ忘れていたことがあったんだった。

「おい坊主大丈夫か?さっきから顔が青いけど」

「大丈夫…ではないですね。乗り物に弱いだけなので心配しな…うっ…くても大丈夫です。慣れ…てますから…」

「そ、そうか。まだ時間はかかるから頑張れよー」

前世でも船には何度か乗ったことがあったが十中八九酔っていた。特に揺れがひどいときはいつもそうだった。大きな船なら揺れは少なくて済むことも多いのだが、この船はとても小型…つまり揺れがダイレクトに来るのだ。困った…。

「人の話を聞いていると少しは…うっ…気がまぎれるので、島のことについて教えてもらってもいいですか?」

「そうか。これからお前を置いていく島はサンバ島と言ってな」

楽しそうな名前の島ですね。酔ってるとしょうもないことしか思いつかない…。

「島はそこそこ大きくてな。中央にある火山…といってももう噴火とかはしてないものがって、それを中心に周りに森があるところだ。島にはいろんな生き物が住んでいるから飢えて死ぬことはないだろう」

「えっと…エドガーさんが…うっ…いる生き物は結構強いって言っていたんですけど、どんなのが…うっ…いるのか知ってますか?」

「たしか、蛇とか猪とかあと熊がいるって聞いたことはあるな。山には怪鳥が住んでるっていう噂も聞いたことがあるけど、そんなのは見たこともないからなぁ」

そういうフラグみたいの立てるのやめてもらってもいいですか?

船に酔い続けること1時間くらい(体感としては数時間)経ったところで、サンバの島に到着した。やった陸だ…。揺れないってうれしい。

「んじゃ、1カ月後にまた迎えに来るから。その時まで元気でな。頼むから生きててくれよな」

「そうですね…。生きて戻りたいと思います」

ヤラスさんを見送って。ついにこの島に一人になってしまった。はぁ…憂鬱だぁ。

「腐っててもしょうがないから頑張って生き抜くぞー!」

そういえば、鞄の中に島に行ってからやってほしいことがメモとして入っているってエドガーさんが言っていたな。あら、複数あるのね。番号が①から④まである。とりあえず①から開けてみる。

『無事に島に着いたみたいだな。最初にやることは拠点の設営だ。中に入っているやつを使って組み立ててみろ。形状を見ればだいたいの奴が組み立てられるから大丈夫だろう。終わったら②へ』

とのことなので拠点の設営をすることに。とはいっても場所選びは大切だろう。どこにしようかな…。よくわかんないから砂浜からちょっと行ったところにある森の手前に作ることにした。ポールを立てて布をかぶせて一部を気に括り付けて完成。え、簡単じゃん。よし②を読もう。

『無事に設営が終わったみたいだな。拠点はお前の行動拠点になる場所だから場所は重要だぞ』

それって①に書くべきことじゃない?

『で、次にやってほしいことは、海に向けて魔力を最大限込めた魔法を放つことだ』

よくわかんないけど、言われた通りやることにする。

最大限の魔力を込めるとなると何の魔法がいいかな…とりあえず火でいいか。何発も打つのめんどくさいから一発で済まそう。

両手を前に出して魔力を放出し始める。魔力を火に変換して回転を加えてそれをどんどん大きくしていく。これまで作っていた火の玉だと野球ボールくらいの大きさだったけど、サッカーボールくらいの大きさにしてもまだ魔力量的には問題はなさそうだ。次に狙うはバランスボールくらい…。

魔力を込め続けると狙い通りの大きさにすることができた。これ上から降ってきたらゲームの最上級火の玉魔法レベルの大きさがあるんじゃないだろうか…。大きさはこれ以上にすると形を保つのが難しくなってきているので火力をあげて回転力をあげてってしていたら魔力をごっそり持っていかれた感覚に襲われた。よし、これでいいか!発射!!

海に向けて発射すると海が熱でえぐれていくような感じで飛んでいった。えぐいなこれ。あ、魚浮いてるから捕まえておこう。

魚を捕まえてから拠点に戻って③を読む。

『魔法を打ったら魔力が空になるだろうからそれを毎日やること。また、魔力が溜まるたびにやること。強化魔法を使わないようにするためにはそれが一番だからな』

そういうことか…。言われなくても使わないようにするんだけど…。というかそしたら④に何書いてあるんだよ。

『1カ月の間に達成してほしこと。この島のマップを作ること。この島の生き物のデータを集めること。山に住んでいると言われる怪鳥を倒すこと。目標があったほうがいいと思うからこれを依頼とする。じゃ、頑張れ』

④は依頼書か…。じゃ、頑張っていきますかな…。

「1カ月何が何でも生き抜いてやるぞ~!』

そうして僕の1カ月ほぼ遭難生活が始まった。

「祭りだ!②」最後まで読んでいただきありがとうございます。祭りだって言ってたのに最後は無人島にいるエル君。なんでこんなことになったのか…。本来の予定では島ではなかったんですけど、島に放り込んだほうが彼強くなりそうなので…つい出来心で…(笑)。

【次回予告】

エル君がエドガーさんの修行ということで島に行ってから1カ月が経ちました。私は一人ひっそりと依頼をやりながら過ごしていたらエル君が帰ってきました。よかった生きてて。

帰ってくるなり「ベッドがある幸せ」と言って深い眠りに落ちた彼の鞄に私のあげた日記がありました。起きる様子がないので暇になった私は勝手に日記をのぞくことにしたのでした。

次回「祭りだ!③」エル君のサバイバル生活日記!お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ