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幕間②~エーシェの休日~

幕間第2弾です!ほとんどは「祭りだ①」のエーシェ視点のお話になります。

文字数の都合上エル君の方では割愛した部分とかをこっちでは書けるだけ書いちゃいました。分量はいつもの2倍くらいありますよ!それでは張り切ってどうぞ~!

空が明るくなり始めたころ私は目を覚ます。いつもこのタイミングで起きているので休日と思っている日でもこの時間に目を覚ましてしまうのだ。習慣というのはなかなか変わらないらしい。

私がこのエリーゼの村に来てから半月くらいが経った。この村に来てから出会ったエル君とは何だかんだありながらもうまくやっていると思う。彼と出会ってからというもの楽しい…うん。きっと楽しい日々を送れているのだと思う。確かに楽しい時間はあった。特に彼は考えていることがわかりやすい。顔に書いてあるとはあの事を言うんだろう。普通にしているときは思っていることがすべて表情に出ているから何度か口から出てしまったが、そのたびに彼は「なんでわかったの?」とびっくりしている。その顔を見るのが私の楽しみの一つでもある。こんなにいじりがいのある子はなかなかいないだろう。ああ、ずっと欲しかった弟みたいなんだろうなたぶん。だから変なところで意地悪しちゃうんだと思ってしまったする。

さて、朝起きてなんでこんなに長々といろいろと考えているかというと今日の体調があまりにもよくないからである。まぁ…予定されていたものでもあるんですけど…今日は動きたくないから依頼はなしね。

どれだけ体の調子が悪くてもお腹というのは減ってしまうのはしょうがないらしい。このまま部屋で寝ているのでもいいのだけど、お腹が減っているのは好ましくない。エル君捕まえてご飯でも食べに行きましょうか。

最近の朝の日課は隣の部屋に居る寝坊助を起こして朝ご飯を食べさせることだ。事情は宿屋の人に話しているから持っている合鍵を使ってエル君の部屋に入る。やっぱりまだ寝てるわね。

「エルくーん。朝ですよー?」

ダメだ。まったく起きる気配がない。しょうがないからベッドに座って観察してみる。よく見るとまつ毛が長いのねこの子。実は女装させるとにあったりするとか…いいわね今度やってみようかしら。いつかエル君に女装させることを決意して再度観察をしてみる。ふとんを半分くらいしかかけていないしお腹出して寝てる。風邪ひいちゃうんじゃないかな?あら、意外。腹筋割れてるのね。かっこいいところもあったのね。

「ほらエル君。朝ご飯食べに行くよー」

「うあぁ」となさけない声を出しながら目を開ける少年。目をこすりながら起き上がろうとしているけど全然目が開いていない。何このカワイイ生き物?いつもこんな感じだったらいいのに。

どうせ完全に起きるまで時間がかかるので勝手に引っ張って食堂まで連れていく。無理やり座らせて朝ご飯を目の前に置けば勝手に食べ始める。なんで朝ご飯があるとわかると食べ始めるんだろう?この状態のエル君って完全に本能のみで動いてるわよね。面白いわね。

朝食を食べ終えてお茶を飲んでいるとご飯を食べ終えたエル君がやっとちゃんと起きたみたいだった。

「あ、おはようエーシェ」

「おはよう。なんで朝ご飯を完食してから目が覚めたみたいなことになっているのかしら」

「さぁ?ところで、今日は依頼受ける?」

今日かぁ…。今日はないなぁ…。

「うーん。今日はまったりしたいひなの。ごめんねエル君また数日後でお願い」

「そっか。わかった」

話が終わるとエル君はじゃ、外に出てくると言って席を立ってしまった。そういえばエル君と行動をし始めて半月経ってわかったことは非常に間が悪いのだ。おまけに私の地雷を踏み抜いていくのもうまい。広場の一か所だけに埋めてある地雷をあえて踏んでいくくらいの勢いで私の地雷を踏んでいくのだ。ある意味天才である。

ああ、そうだ間が悪いのは一つ理由があると最近分かった。彼は不調なことが無いのだ。半月も行動していれば気分が乗らない日や体調が悪い日などがあってもいいと思うのだが、エル君にはそれがない。それが彼の中の当たり前だったからなのか毎日のように依頼を受けようとするので数日に一回にしてほしいと私からお願いしたのだった。

そういえばこの前の依頼から数日が経っているから誘ってくれたのだろうが、本当に間が悪い。

でも、今までよりも感覚が短い気がする…。あ…あれかな。この前衝動買いしちゃったと言いながら見せてきた防具があったような…。もしかして金欠ってことなのかしらね。困ったら言ってくれたらいいのに。

お茶を飲み終わってもやはり外に出る気は起きなかったのでひとまず部屋に戻ることにした。

この半月で私とエル君は森をほぼすべて探索し終えた。戦ってきた敵の情報はすべてこの本の中に書き込んでいる。ただ、カエルに関しては本当に出会いたくなかったのでエル君にすべてお願いした。帰ってきたエル君がカエルのにおいでなかなか耐え難いにおいをしていなので思わず口から「エル君臭い」と出てしまった。はっと思ったときにはもう言葉が口から出てしまっていたので、申し訳なさからすぐに部屋に入ってしまった。なんであんなこと言っちゃったのかな私。エル君餌を待たされている子犬みたいな顔してプルプルしていたのは悪くないと思ったけどさすがに申し訳なかったかなぁと思ったりしてみる。

魔物の情報も多くなってきたなぁとペラペラと本をめくっていく。最初は強化魔法を使いながら探索していたけど、二人でいれば森の中で強化魔法は必要がないこともわかった。この村の近辺の依頼であれば今後も問題はなさそうなのはいいことね。

ふと、今までこなしてきた依頼を思い返してみる。思い返されるのは依頼の内容よりもエル君の行動だった。いい思い出というのはちょっと無理があるエル君の不用な言葉である。ほんとに地雷を簡単に踏み抜いてくれてありがとうなんて思わないんだけどね。そう、エル君はあれよあれ。そういう方面に対して経験がなさすぎるだけよ。お母さん以外の女性と行動したことないって言っていたし…大人になるのよ私。彼はまだそういった部分が未熟なだけなんだから。そういうことにしないといつか本当に会話の途中で【火弾フェーゴ】を放つときが来てしまいそうだから。

そういえば、初めての依頼の時は今思ってもエル君がエル君じゃないみたいだったわね。その手前までとその後の彼がコロコロと表情が変わる人だから、そういう人だと思っていたのにあれには驚いたわね。弓を向けられるなんて思ってもいなかったから完全に体が動かなくなってしまった。信用してもよさそうだと心を許した相手のその行動に理解が追い付かなかった。人を簡単に信用してしまった私が悪かったのだとまで考えた。もう一度だけ人を信じようとしてこんなに人は簡単に裏切るんだと絶望した。

正直その後に後ろに熊が居たからと言われても気持ちの整理がつかなかった。距離をとったほうがいいのかもしれないとまで考えてしまった。それなのに急に彼は「今後もしエーシェが危ない時はそれがどんな相手だろうと僕はエーシェのことを守るからね」だなんて物語の主人公にしか許されないような言葉を言うんですもの許しちゃったわよね。ずるいとも思ったけど。

そういえば、エル君って時々耳が悪いんじゃないかなって思ってしまうくらい言葉を聞き取ってくれないのよね。しかも聞き返されると恥ずかしい言葉だけを狙っているんじゃないかなってくらい聞き取ってくれないの。それでさらにその言葉を聞き返してくるからたちが悪い。

ああ、なんでエル君のこと考えてるんだろ。もともとはこのあたりの敵の情報を再度目を通して今後に備える予定だったのに…。いろいろと考えるとイライラしてきてしまったからもうやめにしましょう。こういう時は寝ましょう。

☆  ☆  ☆

ふて寝というかお昼寝から目が覚めるとまたお腹が減っていました。というか空腹で目が覚めてしまったのです。こんなこと久々ですね。さて、どうしましょうか…部屋には特に食べ物なんて置いておく習慣なんてないので小腹を満たす物なんてない。寝て起きたらちょっとは体調がよくなっているみたいだからお昼を買いに行くことにしましょうかね。

買い物に行くのはいいとして、何を食べましょうかね?そういえばこの前エリーが冒険者組合の近くにパン屋ができたと言っていたわね。結構人気と聞いたから行ってみることにしましょうか。

宿屋から出て冒険者組合に抜けたところに人だかりができていた。加えてパンを焼いたいい香りがする。あそこが例のパン屋でしょうね。人気なのは総菜パンだとエリーが言っていたので中の様子を外から見てみることに。客層はほかのパン屋と違い若い女性が多いように感じる。甘いものが多く取り扱われているようだ。女性客が多いのもうなずける。

店に入ってぐるっと一周みてまわってみる。明日も体調が回復するとはは言い切れないから保存用も買っていくことにしましょう。一番人気と書いてある総菜パンと蒸して作ったケーキのようなパン、保存用の丸いパンをいくつか購入して帰るkとにする。お腹が減っているときに買い物をするとよくない。想定よりも多くの物を買ってしまうことになる。

紙の袋にパンを詰めてもらったのでそれを抱えて帰路に就く。袋からパンのいい香りがする。減っているおなかがさらに刺激されお腹が鳴ってしまった。恥ずかしい誰にも聞かれてないでしょうね…。あーお腹減った。

宿屋に帰る途中でもう一度冒険者組合の前を通った時にエドガーさんが声をかけてきた。

「おぅ。エーシェじゃねーか。今日は一人なんだな」

「いつもエル君と一緒にいるわけじゃないですよ?何かありましたか?」

「ああ、そうだ後でエルと一緒に俺のところに来てくれ。…ところでそれは例のパン屋か?」

「わかりました。そうです!エリーに教えてもらったんですよ」

「あいついつも昼になると外に出ていくんだがそれが目的だったんだな。ただ、ここ最近買いに行ってないんだが何かあったのかもしれないな…エーシェ何があったか聞いてもらってもいいか?」

「あ、はい。時間があるときでいいなら」

「よろしく頼んだ。あと、あいつ連れてくるのもよろしくな」

そんなわけでこの後エル君を連れて行かなくてはいけなくなったのだが、肝心のエル君はどこに行ったのでしょうか…?村の中を探し回る気にもならないし宿屋で待っていればそのうち帰ってくるでしょう。せっかく頑張ってパン屋まで行ったんだから早く帰らないとせっかくのパンがもったいないわ。

そんなふうに上機嫌だったのをぶち壊すように遠くから茶色い何かが迫ってくる。私あの色知ってるわ…。

「やっぱりエル君ね…。というか、今この村でそれを抱えてこれるのはエル君とエドガーさんくらいでしょうから。で、その熊どうしたのかしら」

「あ、エーシェただいまー。ちょっと森で狩ってきた」

それくらい見ればわかるんだけどなー。どうしてこうすれ違うかな…。

「その熊の解体が終わったら私の部屋に来なさい」

「え、あ、はい…。すぐに」

そう言うと熊(とエル君)は冒険者組合に向けて歩き出すのでした。それにしても完全に計算外だったわ。確かに依頼に行くことは断ったのは私だが、一人で熊を討伐してくるなんて思いもしなかったわ。それに持ってくるなんてさらに思ってもみなかった。はぁ…呆れたというかもうイライラしかしない。なぜエル君はああなのかしら。私の方がお姉さんだからたまに自分の意見を言うのを遠慮していることは知っていたけど、だからと言ってリーダーの私に何も言わずに依頼を受けに行くなんてどうかしていると思うわ。

イライラしながら歩いているといつの間にか部屋についていた。無心で歩いていたわね私。イライラしていてもお腹が減っているという事実は変わらないので、買ってきたパンを食べることにする。総菜パンを食べてみるといろいろな香辛料や具材を煮詰めた香りのいいあんかけのようなものがパンの中に入っていた。きっと普通に食べていればおいしいんだろうけど、今はあんまり味がわからないわね。楽しみにしていた蒸しパンだけど明日の軽食に回しましょうか。

ふうっと一息ついてパンを机の上に置いた時に気が付いてしまったことがあった。さっきのパンの中身が服についてしまっていた。ああ、最悪。結構においがするやつだったからちゃんと洗わないといけなそうね。まずは着替えをどれにしましょうかね。

着替える服を選んで汚れてしまった服を脱いで着替えに手をかけたところで扉が開く音がした…?後ろを振り向くとエル君が居た。え?

「エーシェもどったy・・・ごめんなさい!」

「=~)$u9($#'~☆@!!!!!!!!!!で…出てけぇぇぇええええええええええええ!」

最初の方声にならない声が出てしまった気がするけど、なんとかしゃべることができた。それにしても、着替えている所を見られてしまった…。それもこういう日に限って見られてしまったというのは本当に間が悪いわね…。

すぐに着替えを済ませてドアを思いっきり開けてエル君を引っ張り部屋に引きずり込む。案外軽いのねエル君。

「わ、ちょ、引っ張らないでよエーシェ悪かったって!」

「うるさい!そこにな座りなさい!!!」

「は、はい!」

「あなたに聞きたいことがいくつかあるわ。正直に答えなさい」

「どうしてあなたは一人で依頼を受けたのかしら?」

「えっと、ちょっと手持ちが心もとなくなってきてしまったのでクエストを受けたいなーと思ったけど、エーシェが今日はいいって言うから、じゃあ、一人で行ってみようかな~と思いまして」

やっぱり…予想通り過ぎて少し笑えてくるわね。

「そう…。そのお金が無くなった理由は今あなたが装備しているものが原因なのではなくて?」

「そうです…。調子に乗って買い物をしすぎました」

落ち着きなさい…落ち着くのよ私。元はと言えば今日の誘いを断ってしまった私にも原因と一旦はあるわ。そうよ。すべて彼が悪いわけじゃないのよ。

そしたら私に言えばいいじゃない…。どうせ依頼とかをこなしてるうちにまた貯まるんだからその時に返してくれればよかったのに」

「いや~、なんかその~。一度はそういう案も思いついたんだけどね?やっぱり悪いなーと思ったのとかっこ悪いなーとも思いまして。自分で稼いで来れるんだったら稼いじゃおうと思ったわけですよ…」

ぷちんっ!何かが切れる音がした気がした。

何よそれ!年下がかっこつけようとしてんじゃないわよ!!

「ああ、そう。そうなのね。わかったわエル君。私はあなたのことを誤解していたみたいだわ。いい機会だから教えてあげましょう。まず、私はあなた程度にお金をちょっと貸した程度では、なんとも思わないから。かっこ悪い?そんなの知らないわよ寝起きのあなたのほうが十分残念だと思いますけど?だいたい、私のほうが年上なんだから困ったときは私に頼ればいいじゃないの。何かっこつけようとしてるの?意味が分からないわ。そもそも、お金が無くなる原因を作ったのはあなた自身じゃない!それなのに依頼を受けようと私を誘うのは違うと思うのだけどどうかしら?」

「は、はい。その通りでございます」

「そうよね違うわよね?でもだからと言って私たちはまだ新人の駆け出し冒険者よ?それなのにこの近辺では凶暴な一角熊を単騎で討伐しに行ったの?もしかしなくても調子に乗ってるんじゃないの?少しの油断が命取りになるこの仕事をしているという自覚はあるのかしら?体を休めること、調子を整えることも私たちの仕事の一部なのよ。それがお金がないからといって危険な任務に挑戦するのは完全に調子に乗ってるわ。ええ、絶対に調子に乗ってるわね。ちょっとは自重しなさい自重を!エル君は確かに強いかもしれないけど、それは今この村の中だけ!この国の冒険者からしたらまだまだヒヨッコも同然よ。もし今回の依頼でケガをしてしまったらここまで自力で戻ってくるための準備はしっかりしていたのかしら?今はまだ敵から一回も攻撃を受けずに任務をこなすことはできているかもしれない。でも、この先もずっとそれが続けられる保証はどこにもないのよ。もし、これから一人で依頼を受けようと思うなら必ず私に依頼内容から相談をすること。エル君はその辺に関しての判断が楽観的すぎるかいつか痛い目をみるわよ。いいかしら?必ず私に了解を得てから依頼を受けること。それができないのであれば、私は一緒に仕事をすることから降りるからそのつもりでいてね」

「えっと…それは困ります…。すみませんでした」

「そして、あなたは女性の部屋に入るのにノックも何の確認もせずに入ってくるような人だったのね。前に話を聞いたことはあったわ。確かにこれまで同世代の女の子と行動をしたことが無いから知らなかったのかもしれないけど、私はあなたではないの。女の子の部屋にノックもせずに入ってくるなんて非常識すぎるわ。こんなこと人に言うなんて思ってもいなかったけど、女の子の部屋に入るときは必ずノックをして確認を取ること。いいわね!!」

「は、はいぃぃ!」

返事だけはいいわね。ああ、何をこんなにイライラしているのだろうか。今までこんなに人に対して感情をむき出しにして話をしてきたことがあったのだろうか。エル君だからということはあるのかもしれない。でも、彼だから逆にイライラが収まらないのかもしれない。

そこからはいろいろとエル君に感情をぶつけたようだが、もうあんまり何を言ったかを思い出せなかった。はっと気が付いた時にはエル君が呪文のように「1つ、勝手に単騎の依頼を受けないこと。2つ、お金が手に入ったからと言って調子に乗って使いすぎないこと。3つ、女の子の部屋に入るときはノックの返事を確認してから入ること…」とつぶやいていた。なんか怖いけど、まぁ、守ってほしいことを覚えてくれるならそれに越したことはないわね。

呪文のようにさっきの言葉を唱え続けていたエル君が急にはっと意識を取り戻したようにこっちを見てきた。

「ごめんなさい。反省はしています。僕のためにこんなに怒ってくれてありがとうございます。そこでなのですが、先ほどの熊のお金が入っているはずなので、お詫びのしるしとしてお茶でもいかがでしょうか」

へぇ~。私のことをよくわかってきているじゃない。でも、ケーキさえ奢れば私の機嫌が取れると思ったら大間違いなんですけどね。

「そう。反省はしているのね。じゃあ、連れて行ってもらいましょうか」

何かエル君は私におびえているような感じだったけど、どうしたのかしらね。私はそんなに怖い人じゃないはずなんですけどね。

甘味処に着くと椅子を引いてくれたりといろんなことをしてくれているんだけどなんかちょっと気持ち悪いわね。

ほどなくして店員さんがやってきたので注文をすることに。

「私はこのティーセットの至福をお願いします」

ここのケーキセットにはいくつか種類があって値段が違う。今回注文した至福は上から二番目の値段の物だった。本当は一番上の極みを頼んであげても良かったんだけど、至福を頼んだ時のエル君の顔はかなりこわばっていたので、いいお薬になったのではということで良しとしましょう。さて、でもまだ私は満足しきっていないのです。さて、どんないたずらをしてあげましょうか…そうだ!

「エル君は何かいる?」

まさか自分も注文するように催促されるとは思っていなかったんでしょうねおどおどしていますね。

「えっとこのお茶お願いします」

あら、珍しい。ここでエル君は注文したことが無かったのに。ここのお茶って結構するわよ?あ、今値段見たわね。

「前から思ってたんだけど、この店って結構な高級店じゃないかな?」

「あら?知らなかったの?ここのお店は王都の姉妹店で王都の本店は王宮にもケーキを出したことがあって有名なのよ?」

知らないで来てたのかしら…あら、本当に初耳って顔してるわね。

少しお話していたらケーキセットが届いた。

「私たちは二人でチームを組んでるんだから片方が居なくなるだけでも大変なの。わかってるかしら?」

とは口では言いつつ、今日のケーキを見る。今日はフルーツタルトなのね。色とりどりの果物が所狭しと乗っている。

「そしたらまた僕みたいなやつが現れるよきっと」

何を急に言い出すのかしら。

「…そんな人いないわよ」

私の周りに居たのは私のために近寄ってくる人ではなくて私を利用しようとしている人たちだけ。私を私としてみてくれる人なんていないわ。

「そんなことないよ。エーシェかわいいから」

何を急に言い出すんでしょうか…。動揺して思いっきりフォークを刺してしまったじゃない。落ち着きなさい私。エル君はそういう子よ。特に意味なんて持たせずに私に対してこういうことを言ってくる人なの。

「なんでそんな流れになったのかしら?」

「いや、なんとなく?」

ほら、やっぱりそんなものなのよこの子は。こっちが無駄に気にしすぎても私が疲れるだけなんだから困っちゃうわね。

「急に何言いだすかと思ったら…はぁ。それに誰よ…どんな相手だろうと私のことを守ってくれるって言ったのは…」

あ、これ話聞いてなかったやつね。それにしても後半は口から出すつもりなかったのに考え事していると言葉が勝手に口から出てきてしまうわね。これは今後も気を付けなくてはいけないわね。

「それと、今日見たことは全部忘れることわかったわね」

どうせ一瞬しか見られていないでしょうから…大丈夫でしょうけど…。

「はい。柄のことは忘れます」

「エル君あの一瞬でそこまで見てたの…」

男の子の動体視力をなめていたわ。こういう状況での男の子には気を付けなくてはいけないわね。でも、正直に言ってちょっと引くわね…。

「サイテー。忘れてって言ってるのに。サイテー」

あら、さっきまで耳を赤くして若干照れていたのに急に顔を青くしておびえているわね。ほんとに百面相をしていて見ていて飽きないわねー。あ、わかった。この子しゃべらなければかわいいんじゃないかしら?急にお茶をすすり始めたわね。おいしいって顔に書いてある。

「そういえば、エル君が熊を抱えてくる前にエドガーさんに会ったんだけど、二人で時間を合わせてきてほしいって言ってたの今思い出したわ。なんで今まで忘れていたのかしらね?」

「そうなんだ。じゃあ、この後行こうか」

あら、私の嫌味は無視なのね。じゃ、もういいわ。お茶も飲み終わったから店を出ることにしましょうか。

「さ、じゃあ行きましょうか」

エル君に伝票を押し付けて店を出ることにする。入り口のところで待っていたんだけど、どうやらお金が足りないようでワタワタしている。ふふっ。そーだ。エル君は女の子になれていないということは近づかれるのも慣れていないでしょうから…。

エル君の耳元意外と位置が高いわね。ちょっと背伸びしないと届かないわね。

「ごちそーさまでした」

それだけ言って外に出る。きょとんとしているエル君の顔と言ったらとってもよかったわ。この遊び今後も続けることにしましょう。

「ほら、行くわよエル君」

どうやら私たちがお店に入っている間に雨が降っていたらしい。石畳が濡れていたり屋根から水滴が垂れてくる。こういうのもまたいいわね。

「あ、虹出てるじゃん」

空を見上げてみるとうっすらと虹がかかっていた。虹は何かの門出の時に出ていると演技がいいと聞いたことがある。もしかしたら何かいいことが起きる前兆かもしれないわね。

「ほんとだ。ちょうど冒険者組合のほうに出てるからどっちが先に虹に追いつくか競争ね」

体調も戻ってきたみたいだからちょっとやってみたくなったのよ。一日に一回は運動しないとね。

「えー滑って危ないよ?」

「だいじょーぶよ」

そういって私は走り出した。それを追ってエル君も走り始める。

「ほら早く早く。遅くなっちゃうわよ?」

私の笑い声が噴水広場のところに響いているのがわかる。ちょっと恥ずかしいけど、こういうのもいいわね。さっきまでの私のイライラの原因も私が今笑っている原因を作ったのもエル君っていうのがちょっと納得はいかないけれど、私はやっぱりエル君と一緒に居れて楽しいみたいね。

さて、エドガーさんはこの後どんなことを言ってくるのかしら?それでもエル君と一緒なら何でもできそうな気がしてしまうというのがまた不思議なのよね。私は彼に可能性を感じている。その可能性がまだまだ発展途上であることも。どんなことが起きても彼は私を守ってくれると言ってくれた。それを信じて私は一歩を踏み出すのだった。

「幕間②~エーシェの休日~」を最後までお読みいただきましてありがとうございました。

プロットを書いていた時にふと思いついたのが始まりです。実はプロットの方は一つ一つの話が3000文字程度の物を混ぜたり増やしたりしてなろうに投稿しているのですが、この話はもともと7000文字くらいありました。最近気が付いたんですけど、僕がエーシェの話書くときペースが速いんですよね。エーシェ推しってことですね(笑)。

ちなみにエーシェがぶち切れたときのセリフですが約1000文字あります。自分で書いておきながら若干引きました。そんなときもあるよね!

【次回予告】

武道祭までの間にあった修業期間が3か月。武道祭の最中エーシェは何をしていたのか?そんなお話をかけたらと持っています。まずはちゃんと武道祭を開くところまでもっていかないと…。頑張れ自分!

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