最近のよくあるジャンル そのいち
最近は追放系が多いですよね。
私の名前はレオンハルト・ウェルズ。
大国であるウェルズ王国の第二王子にして、当代の勇者に選ばれた者だ。
私がリーダーを務める魔王討伐パーティーには聖騎士レノ、魔導士アニタ、聖女ミレイユを主軸にサポーターとして従魔士ルナリアがいる。
ウェルズ王国を旅立つ際に乳兄妹であったルナリアを従者とし、学園都市でアニタを、そして聖皇国にてレノとミレイユを仲間に加えた。
旅は順調に進み、魔王配下の八獣魔の殲滅を終え、四魔天の三人目をつい先日撃破した後の休息をしている街の酒場にて、事件が起きたのだ。
四魔天の一人、風のパズズを倒した私達は傷を負った身体を引きずって街に戻り療養をした。
パズズの風の魔法に狙われたルナリアを庇った私の傷は全身を切り刻まれた形として、顔などの服に隠れない箇所にも目立つように残ることに……ミレイユの回復魔法ではパズズの呪詛混じりの風魔法を治しきれなかったというわけだ。
神殿の看護室で世話になっていた私のところにきたルナリアは大きなマリンブルーの瞳に涙を浮かべながら謝罪してきたのだが、私にとっては彼女に傷痕が残る方が問題だったのだから気になどしていないので、子供の頃を思い出しながら笑って頭を撫でてやった。
傷も癒えて、祝勝会をする事になったのだが酒場についてもルナリアは現れなかった。
不思議に思った私はレノに尋ねたが苦い顔をして口を開かない。
レノの態度を不審に思った私はアニタとミレイユにルナリアの事を訊くと、ミレイユがあの子にはパーティーから去ってもらったと言う。
意味がわからなかった私が困惑しているとアニタが口を開き、戦闘で勇者様の足を引っ張り、普段からパーティーとして貢献できていない者に居場所などない、ということらしい。
二人の目は私に対しての思慕の念が浮かんでいた。
……予兆はあったのかもしれない、自画自賛になってしまうが一般的に見て見目麗しい若い男と女が同じパーティーの仲間として生死を賭けた戦いを続けてきたのだから、ある意味では必然だったのだろう。
彼女達が私に対してそういった感情を寄せてアプローチをかけていたのは理解していたし、王国立の学園に通っていた時はこういった事はよくあったのだ。
だがまさか何の相談もせずに、ルナリアをパーティーから追放するとは思わなかった。
ルナリアからは何も相談されなかったし、そんな素振りに気づけなかった自分に腹が立った。
だが魔王に近づくにつれ戦闘が激化しているのは事実であり、今回のパズズ戦で彼女を守れたのは本当に危うく、残る四魔天最強である氷のグラキエールと魔王デスハウザーを相手に、私にはルナリアを……愛する彼女を守り切れる自信がなくて反論が出来なかった。
情けない自分への怒りで身体を震わす私に気づかずにレノ、アニタとミレイユは言葉を選んではいたが、ルナリアは役に立たない、私には相応しくないなどと笑いながら話している。
聞くに堪えなかった私は、身体の調子が悪いと伝えて席から立ち上がり、酒場を後にした。
目立たぬようにフード被り、行くあてもなくフラフラと街を散策していると不可思議なモノが視界に入る。
路地裏の突き当たりに不自然な黒い扉が浮かんでいるのだ。
扉は建物についているわけではなく、空間のど真ん中にある。
不思議に思いながら扉に近づくと、扉には金の長四角いプレートに【異世界相談室】と書かれている。
異世界については城内の書庫で見た古文書に記載されていたのだったはず……確かウェルズ王家の祖先が邪神を封印する為に勇者召喚を行い、異世界から召喚したのだとか。
先程の酒場の件で自棄になっていた私は躊躇いながらもその扉を開いたのだった。