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バルミアの女王

「……エルゼ、それはどういうことだ。お前の父親はレヴァリスに殺されたんじゃなかったのか? 俺はそんなこと一度も聞いたことがない」


 ロアードとエルゼリーナの関係を言い表すなら、幼馴染という言葉が相応しいだろう。

 幼少期より公国で過ごしたロアードは、幼いながらも亡き父に代わって王位を継いだエルゼリーナを最も近くで見ていた。

 だからこそ、その彼女の父親に対して恨みはあったものの恨みきれないでいた。

 それ故に祖国を滅ぼし、彼女の父親を殺したレヴァリスが憎くあったのだ。


 いつか二人の仇を取ると約束していたのに。

 こともあろうか、エルゼリーナが父を殺したという。


「……詳しくは後で話すわ、ロアード。ここは長話をするには向かないから。リアン様たちも我が国に招待しましょう。付いて来てください」


 そう言って微笑んだエルゼリーナからは、敵対の意思はなさそうだった。


「さて、どうしようか……」

「リアン様のご意志のままに。私としてこれが罠である可能性も捨て切れません」


「……リュシエンってさ、かなり疑い深いよね?」


「慎重と言ってください。可能性としてあり得ることを考えているだけですよ。まぁ例え罠があったとしても、リアン様だけなら大丈夫な気がしますが」


「みんなが危険な目に遭ったらちゃんと助けるから。ファリンはどう思う?」


「……わたしは付いて行っても大丈夫かと思います。なんとなくですがそんなに悪い人には見えないので」


「父を殺したと言った人が悪い人には見えないというのもおかしな話だと思うけど?」

「そうですが……大丈夫だと思うのです」

「がう」


 根拠はないものの、ファリンはそう思ったようだ。

 そしてミレットも。

 リュシエンのように慎重になるなら行かないという選択肢もある。別に行かなくても良いことでもある。


「でもやっぱり気になるんだよなぁ。それに先代に会ったみたいだし、その時の話も聞きたい」


 父親を殺した時に先代と会っていたと話していた。

 その殺しに先代も関わっているのかもしれないと思うと話を聞いてみたいところだ。


「ロアード、大丈夫?」


 ロアードは呆然とした様子で立ち尽くしていた。

 幼馴染が告げた言葉を理解するのに時間がかかっていたようだ。


「あぁ……これ以上、俺を驚かせる事実が出てきてほしくないところだな」


 ちょうど両親を見送った後だからか、ロアードには父親を殺したという彼女の言葉は心をかき乱すほどに刺激が強かったようだ。

 少し疲れた様子でロアードが返事をすると、エルゼリーナの後を追いかけるように歩きだした。


「……まぁ、私たちも行きますか」




 バルミア公国の首都カーディナルはデンダインから西へ行った所にある。

 荒野にぽつんとあったデンダインとは対象的に、こちらはデコボコとした丘陵地帯にあった。

 デンダインと同じ石造り、しかし歴史を感じさせるデンダインと対象的に、こちらの街並みはより近代的な作りのように見えた。

 国の歴史を辿れば、バルミアのほうが短いからだろう。

 そして明確に違うのは住人がいる国であるということ。


(ここ数日は物言わぬ亡骸に囲まれていたからね。なんだか、久々に見た気がする)


 王城へ向かう道すがら、バルミアの首都をリアンは見渡していた。


 サントヴィレも人の多く集まる街であったが、このカーディナルもまた人の多い街だ。

 しかし街歩く人々はサントヴィレであれば商人や冒険者ばかりであったが、ここは親子であったり、学生服を着た若者たちなど、平和にこの地で暮らすしているだろう住人が多い。


 まさしく今も生きる国の光景がそこにあった。


 入国したリアンたちは王城に招待され、そこで一泊過ごした。

 

「さて、どこから話しましょうか」


 集まった面々を前に、エルゼリーナはティーカップを手にして悩むように言う。

 翌朝、朝食後にエルゼリーナから呼びかけがあったのだ。

 案内された王城の談話室で、リアンたちはテーブルを囲でいた。


「エルゼ、なぜお前は自分の父親を殺したんだ」

「まぁ、そこが気になるよね。世間ではレヴァリスが殺したことになっているし。そして君はその時に先代とあっていると言うし……私はその時のことを話して欲しいかな」


「そうね、ではわたくしが父を殺した時から順に話しましょう」


 エルゼリーナが紅茶を飲んでから、話し始めた。


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