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汗かきオタクの恋愛のしかた  作者: 立花海加世
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マイエンジェルとの出会い

しょうもないギャグが入ってます。気分を悪くさせてしまったらすみません。

ワい、米国大輔よねこだいすけは四十五歳フリーターいや、正直に言おう無職だ。


 ワいは今カビの生えたベッドである女性のとこを考えている。


その人の名を椎葉市鈴音しいばしすずねという。


 彼女は中学校の教師であり、ワいの唯一無二の理解者だ。


 先日、ワいは勇気を振り絞って椎葉市さんに告白をした。


 結果から言うと思いっきり振られた。まぁ、無理もない。だってワいは無職のオタクだからな。でも、ワいは椎葉市さんのことをどうしても諦めることが出来なかった。諦めたくないし、諦めるつもりも微塵もない。


 だからワいは就職をして椎葉市さんを振り向かせる。そして結婚してみせる。そう固く決心した。

 といってもそんな簡単に就職できるならカビの生えたベッドなんかで生活するわけがない。


 ワいが就職できないのには二つ理由がある。


 一つは、ワいが生まれつきの()()()()()であるということだ。文字通り多汗、つまり大量に汗をかくということだ。どれくらいの症状なのか簡単に説明すると、朝起きるとベッドがバケツの水を被ったような状態になっているくらいだ。その水がワいの汗であることは言うまでもないだろう。昔働いていたコンビニバイトもそれが原因でクビになったことがある。その時はとても悲哀な気持ちになった。


 一つは単純にワいのメンタルが弱いということだ。多汗症候群でバイトをクビになったときは自殺を考えたほどだ。


 バイトをクビになった日の晩、ワいは思った。


 何故自分だけが多汗症候群なのだろう。世界には億を超える人工がいる中で、何故ワいが選ばれてしまったのだろう。何故ワいはこんなにも不幸な思いをしながら生きていかねばならないのだろう。


 考えて、考えて、考えて、何年も考え続けた。そうすればいつか答えが分かるそう思っていた。だがそれは間違っていて、答えが出ないまま時間だけが浪費されていった。


 勿論今までに病院には何度も行ったが、治療方法がないと断られてしまう。時には両脇に保冷剤を挟んで寝たこともあるが効果は全くと言っていいほどなかった。


もう、ワいに生きる意味なんてあるのか。いつの日かふいに思ったことがあった。いくら藻掻もがいたところで多汗症候群という事実からは逃れられない。ワいは米国大輔じふんが大嫌いだ。


そうして人生を諦めかけたとき、ついに()()()()()()()()のだ。


 そしてそれは椎葉市さんに()()()()()()()()()()()


 ()()()を語るには遡ること一年。



 ある日、ワいは晩飯を買いにコンビニへ足を運んでいた。


 そして透明の自動ドアの前に立ったところでドア越しに男性の怒声が聞こえた。驚いて声に視線を向けると、透明の硝子ガラス越しに二人の男女が言い争いをしていた。他の利用客や店員もじっと眺めているだけしか出来ないくらいの覇気のある言い争いで、男性の方は今にも相手の女性に手を上げてしまうのではないかというくらいの形相で睨みつけている。

 うわ、こりゃ無理だわ。


 ワいは店内の張り詰めた空気に負けて回れ右をして他のコンビニを当たろうと一歩踏み出したその時。女性の叫声きょうせいのような悲鳴混じりの声が上がった。


 「あなたは自分自身を認めれてないッ!もういい加減にしてよッ」


そう言い放った直後、今度は震えた声でこう続ける。


 「自分を受け入れない人に他人を受け入れられるはずがない。……ごめんなさい。あなたとはもうやっていけません。」


 それだけ残してその場から逃げるように走り去っていってしまった。


 その時ワいの心は稲妻に曝されているような気分になっていた。ポトポトと頬を滴るものが涙だということに遅れて気づく。涙が収まることはなく、気付けば拭いきれないほどの涙が目下から溢れていた。


「……やっと答えが分かった。ワイはなんで今まで気づけなかったんだ……」


 袖で涙を拭いつつ、晩飯のことなど忘れて家に帰った。


 コンビニからの帰路と家についてからしばらく、女性の言葉が頭を離れなかった。


 そして思うことは一つ、あの女性にもう一度会いたい。


 その一心でワいは全力を尽くし、翌朝には女性の名前(椎葉市鈴音)公務員(海原うなはら中学校の教師)ということが分かった。



 翌夜、海原中校門前。午後八時過ぎ。


 ワいは昨日調べた情報を元に椎葉市鈴音さん。いや、マイエンジェルの偵察に来た。


 しばらく待ってみると椎葉市さんが職員玄関から出てきたのだが……何故か隣に男がいるうぅぅぅぅぅぅぅう!


 は?ま、まさか、か、か、かれ、彼氏なのか?いや絶対にない。


 あんな男マイエンジェルに釣り合うわけがない。


 まぁ、ワいよりは釣り合うと思うが。


 ワいが顔をしかめている内にマイエンジェルが車に乗ってしまった。しかも男と二人きりで。


 そんなこと許せるわけないだろぉぉぉぉぉぉぉぉお!!


おっと危ない、ワいとしたことが、ここで取り乱したらマイエンジェルではなく警察と付き合うことになってしまう。


 ひとまずここは引こう。


 そして翌夜。今日もワいは昨日と同じ場所でマイエンジェルを待ち伏せていた。三時間待ってやっとマイエンジェルが出て来た。幸いにも今日はあの忌々しい男がいないみたいだ。きっとマイエンジェルに振られたのだろう。無様だな。


 ワいは背丈の高いし雑草に身体を潜めてマイエンジェルを覗っているのだが様子がおかしい気がする。今現在、午後十一時過ぎだ。こんな時間に女性一人だなんて危険すぎる。そりゃ様子もおかしくなるわな。そう結論づけて、マイエンジェルの背中を追うことにした。


 え? いやいや、ストーカーじゃないから!ワいはこんな夜分遅くにマイエンジェルを一人で歩かせる訳にはいかない。


 これは純粋な良心であって断じてやましいことなど考えてはないぞ!


 マイエンジェルの家の場所が分かる。そんな悲哀なことは考えてないからな、本当だぞ!


 つまりワいは護衛だ。護衛ならば家に着くまでの間見張るのは当然のことだ。家まで着いていけば嫌でも家の場所が分かってしまう。そう、仕方がないのだ。


 「ぐへへ、それにしてもマイエンジェルの家は楽しみじゃのお。」


 え? 地の文と言ってることが違うって?


 そんなことはどうだっていい。そんなこと気にしてるようじゃいつまでたっても童貞は卒業できんぞ。


 まぁ、ワいも童貞なんだがな。学生の時女子と話したことなんかなかった。今となっちゃ悲しい思い出だけに過ぎないが、一度くらいは話してみたかったものだ。一転、ワいは学校一の有名人だったらしい。何故有名だったかは分からないが、気分は悪くないな。とあれこれ考えていると前を歩くマイエンジェルが三人の男に絡まれていた。


 「おい兄貴!こんなとこに若い姉ちゃんがいますぜ!」


 「よぉし、家に連れて帰ってドブに突っ込むか!」


 「へへへっ 兄貴冗談キツイっすよ へへへっ」


 明らかに聞かせるような声音でマイエンジェルに罵詈雑言を浴びせている。これは護衛として動かざるおえんな。


 「おい!貴様ら!ワいのマイエンジェルに何か用か!」


 「なんだよ!てめぇ、潰されたくなけりゃぁとっとと失せなぁ!」


 「マイエンジェル?ハハは、バッカじゃねえの?気持ちわりいからどっか行け!このマウンテンゴリラ!」


 子分の一人が煽るような口調でわいを煽ると続けて二人目も煽り始める。どうやら殺るしかないようだな。二人の子分の後ろに立つ親分らしき人物を視線で射抜くとその意図が伝わったらしく、だらしなく羽織ったパーカーの裾を捲り上げながらのそのそ歩み寄ってくる。


「おい!お前らはここで見てろ!俺様がこいつを二度と喋れねえようにしてやる!」


 「いいぞ!兄貴!」


 「やっちゃえ!兄貴!」


全くこの三馬鹿は分かっとらんな、ワいの戦闘能力がどれほどなのか。


 「まぁいい、たまには汚れて学べ。」


 「あぁん?小中校と柔道部の部長だった俺に勝てるとでも思っ……おま、ちょ、やめっ……」


「秘技!手汗散乱弾てあせさんらんだん!」


 そう。これこそがワい特有の秘技、手汗散乱弾!多汗症候群だからこそ成せる技だ。どんな技なのか簡単に説明すると、手の平いっぱいに溜まった手汗を銃弾のようにして周囲にぶちまけて相手を退ける。単純だが最悪な気分になるだろ?今のところ手汗散乱弾を使って負けたことは一度もない。


 まぁ、使ったこともないがな。


「ぐぁッ、お前今何をかけた……」


 「おや、ワいの秘技に興味を持ったか、それなら教えてやろう!だがその前にわいの秘技を明かすかわりにマイエンジェルには二度と近づくな。良いな?」


 「……あぁ」


 「うむ、よろしい。」


 コホン、とわざと咳払いしてから満面の笑みでこう言ってやった。


「これはワいの熟成した手汗じゃ!」


 「貴様ぁぁぁあ!ぶっ潰してやる!おいお前ら!こいつを殺っちまえ!」


 どうやらワいの秘技が三馬鹿の逆鱗に触れてしまったようだな。わいの眼前には怒り狂った親分が懐からナイフを取り出してワいに突き刺そうとしている。


 残りの二人も同じようにナイフを取り出しているのだが……流石に三対一じゃ勝ち目が無いかもな。

 「ぐはははは、こうなったら仕方ない。わいの究極大技スウィートスプラッシュを使うしかないようだな。」


「知るかァァァァ!シネぇぇぇぇ!」


 親分の手元のナイフがワいの腹に突き刺さる。


「ぐッ!がァッ!ァァァァ!」


 わいは路上に転がり腹を両手で抑えながら喘ぐ。


 ふっふっふ、ははははは。


 これで勝負は決まったな。この愚か者め。所詮馬鹿は馬鹿ということか。


 ワいはこの時点で勝利を確信していた。


 確かに親分のナイフはわいの腹部に刺さった。普通に考えれば致命傷は免れない。


 だがワいは致命傷どころか痛みすら感じていないのだ。何故なら刺さったのは汗・で・作・り・出・し・た・壁・だからだ。


 きっと何を言ってるのかさっぱりという人が大半だろうからワいがしたことを説明すると、腹部に身体中の汗を集中させて、集まった汗で障壁を作り出し防御した。どうだすごいだろう。この世に多汗症候群の人は沢山いるが、その汗を利用して攻撃を防ぐなど普通できないだろう。


 こっそ〜〜り片目だけ開けると親分が汗の壁を本物の腹を刺したと勘違いしたようで、勝ち誇ったような表情でわいを見下ろしてた。何度も言うが刺されたのは汗の壁。本物の腹には一切干渉してない。だからこの喘ぎも攻撃を受けたのも全・て・演・技・だ・|。


 何故そんな真似をしたのかって?


それは準備をするためだ。あ、準備という言葉にピンと来てる人も少ないだろうから一応言っておくが究極大技スウィートスプラッシュの準備だ。


 スウィートスプラッシュはな、身体中全ての汗をか○は○波のようにして、両の掌に凝縮させ一気に放つのだ。


 ワいの使える技の中では一番優れた威力を誇るのだが、それにはデメリットもあってだな、それは汗を溜めるのに少しばかり時間が必要なのだ。そして重要なかかる時間なのだが、大体三十秒もあれば十分だ。


 「そろそろ頃合いだな」


 「ッッ! ………お前まだ喋れんのかよ。」


 親分は驚愕で少しの間硬直するもすぐに我に返る。


 ワいは驚く親分とその子分どもをよそに、悠然と立ち上がると眼前の三馬鹿へ向けてこう言い放つ。


 「さっきも言っただろ? 汚れて学べと。そして今その準備が完了したところだ。」


そう溢した刹那、掌に溜めた身体中の汗を三馬鹿へとうち放つ。


 「ぐぉおおああ〜〜!」


 「ぎゃああああ!!」


 「ききききぃい!」


 先程の手汗散乱弾の影響で何を浴びたのか察したらしく、反撃の言葉一つ発さずに遁走とんそうしていった。


 「最初からそうして欲しかったな。」


 これまで一度も使ったことがなかった汗の技を、三度も使うことができたことは素直に感謝せねばな。


 そう心の中で呟くと、


 「ッッッ!」


 大事な事を思い出した。


 「マ、マイエンジェルは何処に行ったのだ!」


 先程まで姿があったはずの場所にはもうマイエンジェルの姿はない。


 無事であることを祈るが………これでは……これではぁぁ……マイエンジェルの家の場所が分からないではないかぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!


 「悔しいが、仕方ない。今日のところはここで諦めるとしよう。だがワいは諦めないぞぉぉぉ!必ずマイエンジェルと付き合ってみせる!」

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