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鬼の刻印  作者: 出口響
1/3

1 奈月の見る日常に

私は、物心ついたころから見えている。


空にふよふよと浮いている背中に羽の生えた人?や、足元をすり抜けていく小人?…いわゆる、あやかしと言われる者を。


(…そのせいで、小さい頃は嘘つき呼ばわりされたっけ)


昔からよく見えて、人間との違いも分からなくなるほどだった。

本当の事を言っても嘘つきとからかわれ、クラス中から無視もされた。

いつからか、私はその見えているという、本当の事を周りに言わなくなった。

言って人間関係が崩れるなら、と私は見えている事を隠している。








「…なーつーきー?奈月?まぁーた、ぼーっとしちゃって。…まぁ、そこが可愛いんだけど」

「…綾。ごめん、ぼうっとしてた」

「もう、あや寂しかったんだからぁ。って、冗談はおいといて今度の土曜日の夏祭り、浴衣着て孝と一緒に三人で行かない?」



綾は私にウインクしながら言った。

綾は私と中学からの友達だ。今流行りの男性アイドルをおっかけたり、タピオカミルクティにハマったりミーハーなところもあるがこんな私にも付き合ってくれる優しい友達だ。



(土曜の夏祭り…、あ、火倉神社であるお祭りか)


「…いいよ、綾と孝くんで行ってきなよ」

「ええ!?なんで?寂しいじゃない」


(私、孝くん苦手なんだよね…そんなこと、綾に言えないけど)


孝くんは、私や綾と高校からの同級生だ。2年になった今年の春から綾と付き合いはじめた。彼は、背も高く顔も整っている。優しくてクラスの誰からも好かれている。また、真面目で成績も良いからか先生からも好かれている。私からみても、いい人だと思う。でも、あの瞳に見つめられると、私の心の奥を探られているような気になるのだ。あやかしに見つめられたときみたいに。






これ以上、関わってはいけないと頭の警報音がなるのだ。







「奈月、家から出ないつもりでしょ。駄目だからね今年は、奈月と行けるって楽しみにしてたんだから」

「そういう訳じゃないよ、孝くんとの2人の時間を邪魔しちゃ悪いかなって思って」

「良いの、いいの。孝くんも奈月ちゃんと3人で行こう、って言ってたし」

「…孝くんもそう言ってたの?」

「うん、だから一緒に行こ」

「…うん、わかった。行くよ」

「やった!浴衣着て行こうね!」


(…3人で行くならいいかな)


私は苦笑し、そっとため息をついた。









綾と駅の改札口で別れ、高台にある閑静な住宅街の一軒の平屋建ての家屋に入る。



「ただいま」



返事のない玄関から、台所に向かうと白髪の女性がコンロに向かって立っていた。


「…おばあちゃん、ただいま。」

「あら、お帰り奈月ちゃん。晩ごはんもうすぐ出来るからね。」


ニコニコしながら、グツグツ煮込んでいる鍋を見つめている。今日の晩ごはんはロールキャベツみたいだ。




ふとテーブルに置かれた新聞に目をやると、火倉地区の10年前の神隠し事件が一面を飾っていた。






「…この神隠し事件って、まだ女の子は見つかってないの?」

「ああ、火倉女子高生失踪事件のことかい?…そうだね、女の子の鞄は見つかってるけど他は何にも見つかってないねぇ。目撃者もいないし、ほんとに神隠しだよ。」








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