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ハーフエルフの冒険者なお姫様  作者: はみる
プロローグ
3/9

プロローグ-力の正体-

「ってちょっと待って待って待ってーーー!」

地上に降りれば隕石のようなパンチのラッシュ、空を飛べば溶岩のごとく地上から飛んでくる炎弾の雨。

この状態で街が火の海、地の底にならないように避け続けている私を誰か褒めて欲しい。

「思い通りにならないなら殺して道具にしようってことなの!? そういうアブノーマルは私感心しないなー!」

「だったら大人しく俺様のものになりなァ!!!!!」

炎弾を魔法障壁(マジックキャンセラー)で上空高くに弾き上げる。甲高い音を立てて、炎弾は軌道をそらし、はるか上空で爆発した。

「おお……。今のは綺麗に弾けたなー。こんな感じの競技がどこかであるって聞いたけど、私いい線いけるかも……」

軽口を叩いている場合ではないが、冗談でも言ってないとこの状況は嫌になる。何発弾いたか数えるのも途中で諦めた。

そもそも魔法を打ち消す魔法を自分に掛けながら、その体から魔法を生成するなんてことは不可能なはずだ。

抜け道として障壁は外皮、身体強化は内臓や筋肉といった内側に掛かるので干渉はしないといったことはあるが、炎を打ち出すなんて、魔力が体の外に出た瞬間に自分の障壁に魔力を霧散させられてしまう。

100歩譲って何かしらの方法で抜け道があったとしても、世界のマナと比較的相性の悪い獣人が、あんな高威力の元素魔法を連発できるはずがない。

どこかで必ずマナ酔いを起こして気を失うはずだ。


「グガァ……ッ! もっと……もっと力を……寄越セッ! グガアアアアァァァァッッ!!!!!」

そうこう考えている間に状況は変わっていたようだ。

狼男の様子がおかしい。

マナ酔いや魔力暴走とは何か違う。

たしかにあれだけの魔法を行使し続けていれば、オドが暴走するか、マナに汚染されるかは起こり得ることだ。

だけどこれは何か嫌な感じがする。

「早く決着つけないとダメかもしれないなぁ……」

何か魔法の理に対する抜け道があるとすれば、それを可能にした道具の存在が考えられる。

魔道具は正しく使えば強力な道具になるが、間違えば使用者を狂わす悪魔の道具に成り下がる。

しかし、それらしいものは外には見当たらない。そもそもこの狼男、身体強化で服がはちきれほぼパンツ1枚なのだ。

それなら体内だ、と考えた私は四肢に風の魔法を掛ける。

体内に道具を埋め込まれているなら、道具は無際限に生命力とオドを吸い続け、使用者に命の危険がある。もっとも今回の場合はもう手遅れに近いかもしれないが。

「ごめんね、ちょっとだけ本気出すね」

膝のバネのようにし、空中から狼男に向かって一直線に跳ねる。

風の魔法の勢いを利用して瞬く間に懐に飛び込み、勢いを殺さずに同じく風の魔法を纏わせた掌底を叩きつける。

「ガアアアアァァァァッッ!!!!!」

ゴフッと狼男の口からは大量の血が吹き出る。

ついにやったかと歓声が沸き起こる。


「すげえぜ嬢ちゃん! なんだ今のは!」

「かーっ、魔法ってのはそんなに強えものなのか!」

「おまけにべらぼうに可愛いときたもんだ! こりゃ女神様の降臨だぜ!」


正直相手の狼男には瀕死の怪我を負わせてしまったために、イマイチ喜びに浸れなかった。

「(念のため回復魔法をかけて置こうかな……。死んでないよね?)」

体内に道具があるのなら魔力の供給先を破壊してしまえばそれも叶わない。死なないギリギリの加減が上手くできた、そう考えていたのだが。

「許……さない……許さない許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイッッ!!!!!」

「いやいやウソだと言ってよ……」

内臓を幾つかとオドを生成する器官を確実に破壊したはずだった。

こんな状態でまだまだ元気な様子を見せるなんて実はこの狼男、アンデットなのではないだろうか。

「殺す殺スコロスコロス!!!!!」

もう間違いなくこの狼男は正気を失っている。

魔力を暴走させると似たような状態になるが、体内のオドを断ち、道具もない状況でこうなることなんて滅多なことではない。

「……2、3日前までは魔法も使えない普通の狼野郎だったのに、一体何が起きてるんだ……」

あまりの狼男の変貌ぶりに驚きを隠せないのか、顔見知りらしい警備隊員の一人がそう呟いていたのが聞こえた。

「ちょっと待って、あの狼男、魔法使えないの!?」

「あ、ああ……。2、3日前までもしょっちゅう暴れてたんだが、身体強化すら使わなかったんだ。だからてっきり使えないんじゃないかと……」

元々は魔法も使えず、道具も使っていない。

じゃああの無際限に沸いている魔力の放流は一体なんだというのだ。

肌で感じられるほどの周囲のマナの枯渇に気づいた私は、その答えにたどり着く。


「…………そう。食べちゃったんだね――――」

それはこの世界の禁忌。

星を死へと近づける、侵してはならない一線。


「――――精霊を」


ルビありの魔法と名前もない魔法の違いは、例えるなら名無しの魔法は四則演算のような定義で、ルビありの名前付き魔法はピタゴラスの定理のような定理という意識で分けてます。

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