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プロローグ
「なあ、春斗」
そう呼んでくれるだけで良いんだ。だけど。
友達は居ない。誰も話し掛けてこないし、俺も話し掛けない。
別に苛められてはいない。ただ浮いているだけだ。
このクラスに、俺の居場所は無い。
それを、『この世界に居場所が無い』と思ってしまうのが、まだ社会に出ていない高校生の幼稚で浅はかな考え方だ。
だけどどうすれば良いのかまでは考えられない。
勉強も運動も何も、自分に自信が無いんだ。
……【異世界に転移でもしてチートを貰えれば】俺の人生も変わるのに。
あり得ない。だけど期待している自分がいる。自分でも可哀想だと思う。
あるいはそんな馬鹿らしい心の隙が、『そのトラックを避ける判断』を遅くした原因かもしれない。