6話 好きなタイプ
3限、古典の予定だったのですが。
先生が急用で居なくなってしまったので自習となりました。自習と言いましても、見張りの先生も居ませんので自習せず皆好きにしている。好きな本を読む人、スマホを触っている人、友人と話している人。
ってスマホはだめでしょう。ばれたら没収案件ですよ。
勉強している人が少ないのですが、まぁ気にしないでおきましょう。かく言う私も勉強する気ありませんし。人のことは言えないのですから。これでもこの学校は成績が優秀な子が多いので皮肉なものです。
ふと佐藤くんが気になってちらりと見る。彼は雑誌を読んでいた。
「あら、雑誌持って来てたんですのね。ん?ねぇ、何読んでますの?」
「わ、わ!ちょっ!」
佐藤くんが私が見ようとしたら驚いて机の中に隠した。なんか気になりますね。
というかもう半分見えたのですが。
「ねぇ、なーに読んでたのでーすーかー?」
「漫画雑誌。」
佐藤くんが見え見えの嘘をつく。だってさっきちらりと見えた一部が明らかに違いましたし、だいたい隠す必要ないですし。まぁでも気にする人もいますから、隠すのが常識ではあるとは思いますけどね。気になるので無理やり聞き出しましょうか。
「……。」
「えっと……。」
私が笑顔でじーっと顔を見ると佐藤くんは焦って顔をそらして必死になっている。もう怪しすぎですね。ここまで来たら素直に白状すればいいものですが。
「んー、じゃ、言わなかったら今日1日口を聞いてあげませんよ?」
「わかったよ。」
渋々と机の中から雑誌?を出す。それはグラビア雑誌だった。予想はついていましたけど。
「別に私に対してはその系は隠さなくていいですよ。男の子はそういうものだと思っていますから。」
「お、おう、しかしだな、彩が良くても俺が恥ずかしいんだ。」
佐藤くんが見ているグラビア雑誌の中身を見てみると全体的に髪型がロングストレートとポニーテールが多かった。
「あら?髪型、ポニーテールが好きなんですの?」
「んー、1番好きなのはロングストレートなんだが、2番目はポニーテールかなぁ。」
「そうですか……。」
今度ポニーテールにでもしてあげましょうかしら。佐藤くんがどんな反応するか気になります。
それにしても何故見られたくないのに学校に持ってきてまで見てたのでしょう?
チャイムがなり、3限が終わる。4限は英語ですが……先生が嫌なのですその、何というか。
「おい早乙女、授業に集中しないか。」
「えーと?別に集中してないわけではないのですが?言いがかりやめてくれます?」
何故か極端に私を嫌っている感じがあるのです。大体原因は予想ついているのですが。
森悠斗、彼は努力家で、あまり勉強しなくても成績がいい子が大嫌いだという噂があります。恐らくそれが原因で、私を嫌っているのでしょう。正直面倒なのです。
まぁ私の態度も原因でしょうが。例え教師であろうと私はこの態度を崩すことはない。
先生がこちらへ歩いてくる。私の側に来ようと歩いて来たのですが、何かに引っかかり、私の目の前で盛大に転けました。
教室中が笑いの包まれる。森先生は恥ずかしそうに顔を赤くしながら、静かにしろ!と怒った。教室が静かになった頃、先生が急に転けた原因が佐藤くんの鞄である事に気付いた。
彼をちらりと見ると、目があった。佐藤くんは少し笑って、ウインクした。
どうやら私が嫌な思いをしている事を察して、足で鞄を少し動かし、先生に引っ掛けたようです。少しスッキリしました。でも、気づかれなくてよかったですけど、ばれたらあなたも巻き込まれますよ……。
英語が終わり、今日の授業が終わった後佐藤くんにお礼を言う。
「その、さっきは、ありがと。」
「おう。まぁあまりやると面倒だからなぁ。どうにかしてあげたいが、まぁしばらく様子見るか。」
かなり嬉しかった。それでも学校では凛々しくあれと教育された私が自制心を働かせる。どうしても素直に感情を表せられない。考えてもどうにもならないのでこれ以上考えないことにする。
帰りのホームルームは担任が居ないため代理で教頭先生が来た。結局急用って何だったのでしょう。
考えても仕方ないので、ホームルームが終わると佐藤くんに話しかける。
「ねぇ、佐藤くんって部活所属してる?」
「いや?所属してないが。」
うん、予想通りですわね。偏見で悪いのですが、佐藤君みたいなタイプは部活してるイメージが持てないのです。してないほうが都合がよかったですし、誘ってみる。
「私が所属している部活に来てみない?」
「彩が?文化系?体育系?」
「文化系ですわ。かなり緩い部活なので安心していいですわよ。強制は一切無いですし。」
佐藤くんはしばらく考え込んだ。そして鞄から手帳を取り出し、何かをじっと見つめてしばらく考え込んだ。あの手帳は何なのでしょうか。予定表?だとしたらかなり生真面目ですね。なかなか普段から予定表を書く人はいないものですが。
「うん、大丈夫だ。行こうか。」
大丈夫だと聞いて少し安心する。佐藤君がかなり難しい顔をしていたので、何か用事と被ってたのかと思いました。でも大丈夫ならどうしてあんな顔をしてたのかはわかりませんが、まぁ個人のことですし触れないでおきましょう。
「えぇ、場所は旧校舎1階よ。」
少し佐藤くんと一緒に部活をしている姿を想像して、あのメンバー達に振り回されてるところしか思い浮かばなかって少し笑ってしまった。
「彩?」
「ううん、何でもありません。」
「変な奴だな。」
楽しく、なりそうですね。