3話 早乙女宅 1
しばらく無駄に広い庭が続き、いい加減飽きたくらいで家に着く。佐藤君は初めて見る庭に興味津々だったようで飽きてないようですが。私は毎日通る道なのでもういい加減飽きました。
これもまた無駄に広い家の入口につきまして、メイドたちに迎えられる。
「おかえりなさいませ。」
「ただいま。客人連れてきたからお父様とお母様に挨拶に行きます。どこにいますか?」
「はい。ではご案内いたします。」
メイドに連れられて、奥へ向かう。扉を開くとお父様とお母様がいた。
さて、無事家に到着して今はお父様とお母様に挨拶してるのですが……。
「あらあらあらあら、よかったわぁ。遂に彩にも気になる方が出来た様で。」
ニコニコ笑顔のお母様。その横に座っているのは……。
「おい、彩に手出してないだろうな?」
「は、はい。勿論です!」
ムスッとした顔のお父様。私の横で反応が逆すぎて困っている佐藤くん。
「何を言ってますか!彼見た目いいですし、折角の初めて彩が殿方を連れて来たのですよ!もっと歓迎してあげましょうよ!」
「む、むぅ。しかし手を出すのは……。」
「あら、私は全然構いませんわよ?ただ佐藤くんと言いましたっけ?には責任取ってもらいはしますけどね。」
私が男の子を連れて来たのがそんなに嬉しいのかいつもより気合の入っているお母様。お父様が少し押されている。
しばらく私を置いてけぼりで佐藤君に質問をし続けていた。いい加減卑猥な質問も混ざってきたので止めに入る。
「手を出す手を出すって、お父様とお母様が言っている手を出すってあれですわよね……そ、その、愛し合う男女が夜に交わす……!」
「あらあらあらあら、照れてますわ!可愛いですね。勿論そうですよ?コウノトリが運んできませんよ?」
「分かってますわよ!」
お母様が私の顔を見て面白がる。何だか悔しいです……。
お父様は気まずそうに咳をした。
「で、家へ招待したはいいが、二人ともどうするつもりなんだ?」
お父様もこの話題は嫌なのか話を戻してくる。私も嫌なのでそれに乗ることにしました。
「えっと、とりあえずは私の部屋にでも案内しようかと。」
「そうか。来客をまぁ追い出しはしないが、くれぐれもうちの彩に手を出すなよ?出したら締め上げるからな?」
「は、はい!」
またお父様が念を押してくる。それに対してかなり怖いのか佐藤くんが怖がりながら答える。お父様も心配症ね。いつまでも私が小さな子どもに見えるのかしら。もう16歳なのに。
「そろそろ私の部屋に行きましょうか。」
「あー、すまん。トイレ行きたいんだが……。何処に行けばいい?」
「それなら、そうですわね。 沙耶。居る?」
「はいここに居ますよお嬢様。」
私は家の中の専属メイドを呼ぶ。
「佐藤くんをトイレに案内してあげて。その後私の部屋に案内してくれる?」
「わかりました。では佐藤様。こちらへ。」
「はい。」
私はそのまま部屋に戻った。部屋着へ着替えながらぼーっと考える。
(どうせ男の子を部屋に呼ぶなら可愛い服がいいと思いますけど。ここまで男の子の受けを私が考えることが今までなかったので少し悩む。こんな事初めてですし。だってそんな事しなくても大丈夫だったもの……。)
コンコンコン
「お嬢様〜?入りますよ〜?」
丁度下着だけになった時扉が開かれる。
「え、あ、ちょ、ちょっと待って!?」
気づいたときには時すでに遅し。すでに扉は開かれていた。慌てて身を隠そうとするが間に合わず、思い切り下着姿を佐藤君にさらしてしまった。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」
とりあえず手に持っていた服を投げつける。
「し、失礼しました。」
二人が直ぐに出て行く。ぅぅ、絶対見られたわよね……。は、恥ずかしい……。
もう見られてしまったものは仕方ないのでさっさと着替える。
「は、入って来ていいわよ。」
「はい」
二人が部屋に入ってくる。沙耶さんはそのまま、すっと部屋を出て行き、お菓子をお持ちしますねと言って行った。
部屋で二人きりになる。何故か凄く恥ずかしい。実は趣味がばれるのがいやで今まで招待しなかったのです。外での私の態度とあまりにも似合わないと自覚しているので。
「ぁ、私の部屋、どうかな?」
「うん、凄く可愛らしい部屋だなって感じかな」
部屋には沢山の縫いぐるみが置いてある。少女趣味って言われそうなものばかりですけど。
「何だか少し意外だなって。家の中では大人しくて少女趣味の普通のお嬢様って感じだな。」
「気にしてるのよ。言わないで。」
「隠さなくてもいいと思うんだけどな。大人しい早乙女も結構可愛いし。」
「ん……。」
そんな事言われると思ってなかったので少し恥ずかしくて俯く。意外だとは言われると思っていたけどまさか可愛いなんて言われるとは思っていなかった。
可愛いというより美人だと言われることが多いのです。特に残念系美人と。って失礼ですね。誰が残念ですか。
思考がおかしくなってる気がしたので別の話題をふる。
ただ、ふる話題を間違えてしまった。
「そ、その。あの、さっき、わ、私の下着姿、見たでしょう!」
何余計に恥ずかしい話題をふってるのよ!私はおバカさんですか!
しばらくして、気まずそうに佐藤君は答えた。
「いや、み、見えてない。」
「本当に?」
じーっと佐藤くんの顔を見る。しばらく見ていると佐藤くんは観念したのか、
「その、ちょっとだけ……。」
白状した。ぼーっとしててノックに気づかなかった私も悪いのであまり責めることはしないことにする。
「まぁ、私も悪いですし、許しますわ。」
「お、おう。」
そういえば見られた時の叫び声、お父様に聞かれてなければいいのですけどね。
「ところでさ、何でこういう可愛いところ隠してるんだ?もっと素直になればいいのに。」
佐藤君がある意味当然な質問を投げてくる。それは、そうなんですけど、ね。
「ええ、別にそれでもいいかもしれませんが、その、一応私お嬢なのですから、そういうのは似合わないし恥ずかしいので隠しているのです。」
「むぅ、まぁいいか。そういう可愛い面があって安心したよ。」
ぅぅ、さっきから可愛い可愛いって……。
「す、すこし部屋から離れます!待っててください!」
顔が赤くなってるのが自分でもわかったので一旦部屋の外に逃げることにした。