17話 久々の再会
ゆらゆら揺れる街灯。時折聞こえる酔った人の声。
私は気分を晴らしに中央街を歩いていました。
「夜殆ど外出しないのでたまにはこういうのも、いいですね……。」
特に行く先もないのでふらふらと歩く。ふと、見覚えのある子が前に見えた気がした。
「あら……?」
向こうもこちらに気づいたようでこちらへ向かって走ってくる。
「あ~や~ちゃん♪」
私の親友、渡辺愛奈ちゃんでした。
「あいちゃん……!?」
「あやちゃんほどのお嬢様がこんな夜の街を出歩いているなんて珍しいね~?どうしたの~?」
まぁ珍しいと思われますよね。実際こんなことするの本当に珍しいですし。
「その、気分が悪いことがあったので気晴らしに。」
「ふーん?」
じーっと私の顔を覗き込んでくる。不思議に思っているのか首を傾げた後。
「ま、わかんないけど良かったら一緒に遊ぶ?」
「う、うん。」
目的もなかったので丁度良く、彼女の誘いに乗ることにしました。
連れていかれたところは……。
「あ、あの、やっぱり遠慮していいです?」
「何をいまさら~♪だーめっ。ほらいくよ~。」
手を引っ張られながら向かう先。そこは大量の女の子がいるプリクラコーナー。
私は写真をとることに価値を見出せず、プリクラコーナーなんて向かったことが実はありませんでした。
「あの、私こういうのは……。」
「ほらほらいくよ~!」
断ろうとしましたが抵抗虚しく中へ連れていかれました。
プリクラの機械の中へ連れ込まれる。こうなってはもう逃げられないので覚悟を決めて二人で分けてお金を払うことにしました。
「はぁ……まさかこうなるなんて……。」
「ほら!せっかく撮るんだからもっと笑顔に!明るく!」
言われて慌てて笑顔を作ろうとしますが、少しぎこちなくなってる気がしました。
「ん~ほらほら~ぎこちないよ~!こちょこちょ~♪」
あいちゃんが私を笑わせようとくすぐってくる。
「ひゃ、や、やめてくすぐっ……!」
パシャ!と音がしました。どうやらカウントが気づいたら終わってしまっていたようです。くすぐられている状態のまま……。
「あは、変な写真が撮れちゃったね♪ここに、これ乗せて、ほら♪」
あいちゃんは別段気にすることなく何か写真をノリノリで弄っていました。
「全くもう……。突然くすぐらないでください……。」
「ごめんごめん、何か暗い気持ちを抑えてる感じが出てたからさ。無理やりにでも笑顔にさせようかなって思って。」
「そう……そんなに雰囲気でてた……?」
無自覚だったのですが、あいちゃんには伝わってしまっていたようです。
「うん。何があったのか知らないけど、やっぱりあやちゃんには笑顔が似合うよ。良ければ相談に乗るよ?」
「……。」
* * *
相談するにしても流石に場所が場所だったので、夜遅くまで開いているカフェへ入りました。相談する側なのであいちゃんの分は奢ることにしました。
「そっか……やっとあやちゃんも恋愛するようになったんだね。」
うんうん、と納得したのか何度も頷いていた。
「それね、よくあるケースとして、本当に誤解の場合が多いの。ただ、もちろんなんだけど許される行為じゃない。だから、罰を与えるべきだと思う。それで本当に反省をしているなら受け入れるはず。あなたのことをどうでもいいと思ってるなら……浮気をしていたりするのなら……そこでの態度に注目していれば薄っすらとはわかると思うよ。」
なるほど。確かに浮気をしていたりするのなら罰を与えられた時の態度に違いは出るはずですよね。
「ま、完全にわかるわけでもないから、後は信用できるかどうかかな。そこで信用できないのなら、正直もうその人と付き合いをやめたほうがいいとは思うよ。疑わなければいけない関係の時点でもうだめだからね。」
「それも、そうですね……。」
「アドバイス、役に立てばいいけど。」
「十分な収穫ですよ。ありがとうございます。」
実際本当に収穫はあった。アドバイスもそうですし、プリクラでも実は騒いで大分気が晴れた。
「プリクラ、楽しかったですよ。また今度しっかり撮りましょう。」
「そうだね!今度はその彼氏さんも連れてきてよ!」
そうくるとは思いましたが……。うーん。
「また機会があればですよ?」
「うん、じゃ、もう夜遅いしそろそろ帰らないと!またね!」
「では。おやすみなさい。」
伝票は私が持って会計のところへ向かう。あいちゃんの分もしっかりと払っておきました。
さて、思わぬ出会いで私もだいぶ気が晴れたことですし、そろそろ帰らなくてはお父様とお母様が心配してしまいますね。紫雲さんに迎えに来てもらいましょう……。