14.5話 姉妹
少し短めの間話です。
あたしの妹の結衣は同性の私から見ても可愛らしいと思う。姉という立場だから贔屓目で見てしまうのかもしれないのだけど、それ抜きでも十分だと思う。少しドジっ子なのと稀に毒舌なのを除けば。
「結衣〜そろそろ学校行こ〜!」
「う、うん。」
可愛くて健気なのだけど、無口過ぎて少し心配ではある。佐藤くんのことは前から聞いていた。気になる先輩がいると。まさかそれが我が部員の彼氏になってしまうとは想定していなかったんだけどね。
「結衣は大人しいのがいいところなんだけど、想いは伝えないと。例え部員同士だとしても関係ないじゃない。それに、実際結衣の方が先に出会ってるし、好意を持ったのも先。」
「でも……。」
うちの妹が中々異性に好意を持たないのに悩んでいたのだけど。それが何処かのナンパ野郎に絡まれている時に助けてくれたので好意を持ったみたい。姉としては無理やりでも実らせてあげたい。でもあたしだって部員同士で争うのは嫌。最悪崩壊しかねないし。それでも。
「あーもう!好きなものは好きでいいじゃん!とりあえず伝えてみなよ!」
「お姉ちゃんは……なんでそこまでして……私を手伝ってくれるの?」
「そんなの姉だからに決まってるよ!妹の初恋、しかも今まで全く関心がなかった子がだよ!」
「……。」
全力で答えられると思っていなかったのか結衣がびっくりしていた。当然の理由だと思うんだけどなぁ。むしろそれ以外に理由が必要だと思わない。
「と、言うわけで姉は全力でサポートするよ〜!結衣の初恋、ライバルは彩ちゃんと言う強敵だけど、勝負だ〜!」
「……。」
結衣があたしが突然叫んだことに困惑している。ノリ悪いなぁ〜。
「ほら、おー!って。ほら!」
「ぉ、ぉー!」
うーん。恥ずかしがりながら言う我が妹も可愛いけど、もう少し元気に言って欲しいなぁ。
っと。あれはあれは。ターゲットの佐藤くんとライバルの彩ちゃんじゃないですか〜!
近づいていって話しかける。もちろん結衣も一緒についてこさせる。
「おろろー佐藤くんと彩ちゃんじゃないですか〜!」
「おはよう……ございます。」
絶対邪魔しているのはわかっているけどそんなの気にせずに話しかける。でも、ここで露骨な行動に出るとは思わなかった。
「おはようございます。今私達は二人になりたいので。ではまた。」
「ちょ、彩!?」
佐藤くんが驚いているところを見るに、「私達」ではなく「私」だと言うことが明確だった。
「どうしたものかなぁ。」
あっという間にあたし達から見えなくなってしまった。横で結衣が寂しそうな顔をしている。困った。避けられると対策しようもないし。お昼と部活が狙い所かな。
よし、お昼はいいとして、部活には来させるようにしましょう。