14話 嫉妬への報復
学校に着いても私達は手を繋いだまま教室に入りました。途中すれ違う方に2度見されたりしますが、私だと言うことに気づくと、納得した感じでスルーします。私は何故か学校中で有名なので、恐らく彼氏が過去に何人もいることを知られているのでしょう。
(そしてすぐ捨てていることも……。)
最も、今のところは遼くんを捨てるなんてないと思うのですが。だって遼くん……その、あの……あう。私は何を考えてますの!自分で妄想して恥ずかしがるって可笑しいじゃないですか!
(遼くんと出会ってから私、変な妄想してばかりです!しっかりしなさい彩!)
自分で自分を制御する。最近頭の中で暴走しがちですし、この間だって勝手に手が動いて……。
でも、正直これを抑えるべきなのかどうかが判別つかないのです。遼くんが嫌がっているわけではないですし、このままでいい気もします。
チラッと横を見ると、遼くんがじぃっとこちらを見ていました。少し意地悪してあげようかしら。
「あら遼くん。私をそんなに見てどうしましたの?ひょっとして可愛いなぁなんて見惚れてた?」
「おう。可愛いなぁって思ってたんだ。凄えな、彩は思考が読めるのか?」
「んなっ!いつも思うのですけど直球で恥ずかしいことを言わないでくださいな!」
遼くんの無意識の反撃?に私はびっくりして怒る。遼くん相手だと意地悪……になっていませんでしたね。
そう素直なところもいいとは思いますが。私と違って……ね。
「そんなこと言われてもなぁ。だって事実だし。」
「も、もう。」
遼くんと話していると、ふとクラスメイトの女子からの声が聞こえてきました。
「なぁにあれ。うちらへの当てつけ?あんなに露骨にイチャイチャしちゃってさ。」
「感じ悪いよね〜。まぁいつものことだけどさ〜最近特にうざい。」
「美少女美少女〜って男から持て囃されて調子に乗ってんじゃないの〜。男に媚びてまじでキモい。」
「だよね。如何にも私モテます〜って感じでさ。」
「あんなの性格がブスよ。外見だけ取り繕っただけの。はー。何で男はあんな女がいいんだろうねー。」
むしろそちらが露骨で感じ悪いと思うのですが。周りに聞こえるように悪口を言ってますし。
皮肉なことにそういう人たちにはそもそも友人でさえ限られているのですが。
私は、限られてはいるかもしれませんが、別にこんな性格していても仲良くしてくれる子はいますし。彼女たちは同じグループ以外の子と一緒にいるところを見たことがありません。
まぁ、反論もいちいちしてられませんので無視をします。
ただ、遼くんはこれほど露骨な悪意を私みたいに受けたことなかったので仕方ないのですが。凄く怒っていました。
「おい、お前ら。影でコソコソ悪口言うのは勝手だが。表でしかも真横に近いレベルで聞こえるように、大きな声で悪口言うってことは喧嘩売ってるって事でいいんだよな?」
遼君がにじり寄っていく。威圧をかけているようです。彼女たちは少し怯えていました実際、女子としては男子に本気で威圧されるとかなり怖いとは思います。
「うっわサイテー。女子に力で威圧かけてきてる。」
「ひどー。男子が女子に力で黙らせようとするなんて。」
怯えるも、強がってか露骨に遼君を煽る。
私からすればむしろ自身の性格の方が醜い性格の方たちの言うことなんて無視しておけばいいのですが。所詮私の家柄を怖がって陰口しか言えないレベルなのに。でも遼くんが怒っていました。
「はっ、てめーらが女として見て欲しいんならもっと彩ちゃんみたいに女らしくしてこい。最初男かと勘違いしたぞ?出直してこい!」
周りの男子たちが男と勘違いしたという言葉に大笑いしてました。
どうしたどうしたと段々と野次馬が集まってくる。何故かわかりませんが野次馬は全員男でした。
「んなっ!こいつ、サイテーすぎる!」
「そーよ。この男サイテーよ!」
「ああ?どうした?言い返せなくてサイテーしか言えない壊れたおもちゃにでもなったのか?」
はははは!と周りで聞いていた野次馬の男子達が笑い出す。多勢に無勢。しかも多いのが男子と、かなり酷い状況になっています。大勢に囲まれて馬鹿にされるのが余程辛かったのか半泣きになっています。
「ぅ……く。」
「はっ、性格だけじゃなくて脳内まで酷いな。だから相手にされねぇんだよこの脳内御花畑。」
「う、うるさい!」
所詮何も考えずにただ悪口を言っているだけなので、遼くんの正直適当過ぎると私が思ってしまうようなレベルの煽りでも言い返せなくなっている。見ていて滑稽です。更に周りの野次馬男子達も一緒に煽り出しました。流石に可哀想に思えてきたので、遼くんの服の裾を2回ほど軽く引っ張る。
「ん?彩。どうした?」
「そろそろやめてあげた方が……。私のことで怒ってくれるのは嬉しいですけど、お相手が半泣きですわ。」
「お、おう。」
私の悪口を言われ、キレていて意識していなかったのか、最初に悪口を言った子が半泣きになっていることに気づいていなかったようです。私に指摘されて気づき、気まずくなったのか、スッと離れました。遼くんがやめると、野次馬男子達もやめて退散しました。
あの男子達、一人じゃ何も言えないのに群れるとうるさくなるみたいですね。まるでさっきの女の子。ああいう男子は嫌いです。
「今回はこれで終わりにするが、次彩の悪口言ったら容赦しねぇからな。」
「……。」
遼くんが睨むとビクっと震え、目を逸らしました。恐らくこれで二度と私の悪口言わないでしょう。
騒動も収まり静かになった所で一応私を庇ってくれた遼くんにお礼を言いました。
「あの、その、私の為に怒ってくれてありがとう。か、か、カッコ良かったです。」
「お、おう!そうか!」
遼くんの機嫌がさっきまで悪かったのに私の一言で一転して嬉しそうな顔になりました。ここまで変わられると私が恥ずかしいのですが……。
「なぁ彩!もう一回言ってくれ!」
「ふぇ!?えっと。か、カッコよかった。」
「ありがとう!」
もう、どうしたのでしょうか。二度も言わせて。しかも私の手を握って振り回して。で、でも遼くんが喜んでくれてますし、いいとしましょうか。私も遼くんが私の為に怒ってくれたことが嬉しかったですし。そう、遼くんが……。
しばらくぼーっとしていると、予鈴がなり、担任が入ってくる音で現実に戻された。