13話 一緒に登校
すみません、旅行してまして、少しの間更新を止めていました。
6月5日(金)
今日は朝早く起きてしまいました。流石に早すぎる時間帯なので今から学校へ向かっても、まだ遼くんは来ていないでしょう。居ないと退屈ですし、どうしましょう。
ふと昨日の遼くんの部屋を思い出す。サプライズとして起こしに行ってあげましょうか。もし今から向かうとして。ええ、ちょうどいい感じだわ。
「沙耶〜!」
私は専属メイドを呼び出す。スッと私の側に現れた。どうやって私の部屋の扉を音立てずに入ってきたのかしら。相変わらず謎ですわね。
「はい、お嬢様お呼びでしょうか〜?」
「あの、いつも思うのですがどうやって出てきてるので……?」
「ひ・み・つ・です♪」
沙耶の謎の行動力は主である私でさえ明かしてくれない。何か知られるとまずいことがあるわけでもないでしょうに、なぜか隠しています。まぁそれはそれとして、沙耶に呼び出した理由を話さないといけませんね。
「まぁいいわ。呼びました。紫雲一馬に今日は今から遼くんの家に行くことを伝えてくださいな。今すぐ車を用意するように、と。」
「了解致しました。」
またスッと消える。言い終わって少し別の方向を見た瞬間居ない。沙耶は特殊な訓練でも受けてるのかしら。問いただしたところで意地でも答えないので気にしないほうがよさそうですが。
まぁこれで私が外へ出る頃には車が用意されてるでしょう。着替えて、外へ向かう。途中でお母様に見つかり、じーっとこちらを見られる。また色々言われると思ってさっさと逃げようとしました。
「ちょっと彩!逃げなくてもいいじゃないの。沙耶が紫雲を探していたから聞いたけど佐藤くんの家に行くんですって?」
もうバレていました。既に手遅れなんて、お母様恐るべし。というか沙耶にお母様には内緒でといいわすれた私も悪いですね。次から気を付けましょう。
「え、えぇ……。」
すでにばれているので隠したところで意味がない。素直に答えます。
「ならこれを持って行きなさい。」
袋を渡される。中を見るとお菓子が入っていました。明らかに高級そうな洋菓子。これは、バウムクーヘンかしら。分けやすいようにか切り分けられている。
「これは?」
「佐藤くんの御両親へ渡してね。挨拶代わりよ。何も持たずに行かせるわけにはいかないので。」
「わかりました。」
お母様にしては至極全うな理由だったので少々驚きました。そういえばそうですものね。
今度こそ外へ出る。既に紫雲さんが待っていました。きちんと沙耶が伝えてくれたようです。
「準備は出来ております。」
「はい。では、行きましょうか。」
車の中で着いたら何をしようか考えていました。サプライズ、とはいっても当然チャイムを鳴らさないと家に入れないわけで、遼君が出てきてしまえば驚きはするでしょうが、あまりサプライズ感はないですね……どうしましょうか。
遼くんの家に着く。結局手段はないので大人しくチャイムを鳴らしました。すると、はーいという声が聞こえて、遼くんのお母様が出てきました。ラッキーです。
「あら、早乙女さん。遼ならまだ部屋で寝てるわよ。まだ早いし上がって。」
やはりまだ寝ているようですね。予想通りです。
「はい。あ、これを。私のお母様からです。」
忘れないうちにすぐにお母様から預かったお菓子を渡す。
「あら、ありがとう。」
リビングへ行くとどうやら既に遼くんのお父様はお仕事へ行ったのか居ませんでした。
「わざわざ来てもらったのに遼が寝ててごめんなさいね。あ、そうだわ!早乙女さんが遼を起こしてきてくれない?遼も喜ぶだろうし。」
好都合なことに向こうから勧めてきました。これで公認で起こしにいけますね。
「実はそのつもりで早めに来たのです。」
「あら、そうだったの!さぁさぁどうぞ〜。」
2階へ行き、遼くんの部屋の前に連れて来られる。
覚悟を決めて、えいっと部屋へ入る。スヤスヤと気持ちよさそうに寝ていました。
こそこそと遼くんの側へ行き、じっと寝顔を見る。何故か寝顔を見ているとドキドキします。そうですね……どうやって起こしましょうか。
敢えて遼くんの耳元に口を寄せて、息が吹きかかる距離で艶っぽく呟いてみました。
「遼くん、起きて……。」
「ふぁ!?何だ!?」
遼くんがびっくりして飛び起きました。まるで学校の時に寝てた時起こしたのと同じですわね。
「え、何で彩が俺の部屋にいるんだ……?」
「居たら駄目ですか?」
意図的に目を潤ませ、悲しんでいる感じを出して煽ってみる。
「う、いやいや。嬉しいが!そもそも何で俺の部屋にいるんだ?」
寝起きで思考が回らず焦っているようです。冷静に考えれば私がそんなこれくらいで目を潤ませると思わないはずなのですが。
「起こしに来ましたわ。ふふ、彼女に起こされる朝。嬉しいでしょう?」
さっきの悲しんでる感じはどこへやらの態度をするとからかわれたのがわかったのか悔しそうな顔をする。
「ったく、俺で遊びやがって……。」
遼くんのお母様が部屋に入ってくる足音が後ろから聞こえました。
「早乙女さんそんな起こし方するのは流石にびっくりしたわ〜!意外と大胆!」
そういえば見られていることをすっかり忘れていました!当人のお母様の目の前で私はなんて事を……!今更ながらに後悔が湧き上がってくきました。
「か、母さん見てたのかよ!?」
「一部始終見てたわよ〜!ラブラブで羨ましいわぁ。しかもこんなに美人な子。遼の彼女なのがほんと不思議。」
「だ、か、ら!息子をもう少し評価してくれよ!」
どうやら印象が悪くなるどころか良くなったようです。基準が分かりません。
そして遼くんの何度目か忘れましたがいつもの抗議。いつものお母様のスルー。この家庭では日常茶飯事なのかしら。
「え、と。早く準備してね。待ってますから。」
私は遼くんのお母様と一緒に遼くんが準備し終わるのを待つ。その間、ずっと遼くんのどこに惚れたのか、どこまで関係が進んでいるのかについて根掘り葉掘り聞かれて、答えを持ち合わせていないため凄く疲れました。
遼くんと一緒に登校。そんな状況が意図的の作ったとはいえ、とても嬉しく感じます。
しかし、二人きり、とはいきませんでした。
「おろろー。佐藤くんと彩ちゃんじゃないですか〜!」
「おはよう……ございます……。」
ええ。ゆかたんと結衣ちゃん。せっかくだから二人きりで居たかったので遼君を無理矢理引っ張る。
「おはようございます。今私達は二人になりたいので。ではまた。」
「ちょ、彩!?」
しばらく離れて、もう見えない距離になったことを確認して、ペースを元に戻す。遼くんが何か言いたそうだったので先回りして言う。
「さっきは急に引っ張ってごめんなさい。せっかくだから遼くんと二人きりで登校したかったので。」
「そ、そうか。」
それを聞いて遼くんは嬉しそうな顔に戻る。それだけで納得してくれて良かったです。
「なぁ、手、繋がないか?」
「え、ええ。」
遼くんと手を繋ぐ。遼くんの手はとても温かく、体温をはっきりと感じられました。
うん……これから毎日起こしに行こうかしら。