プロローグ 出会い
私、早乙女彩は恋する乙女。自分でも自覚はある。ただ恋をしたいだけだと。
恋人は過去の人を含めて何人いるのか分からないわね。恐らく10人は超えてると思うけど……。その男に飽きたらポイ。1ヶ月も関係が持てばいいほうね。
それでも私に男は寄ってくる。何故かって?それは、自他共に認める完璧美少女だからよ……。
「ごめんなさいね。貴方にはもう飽きましたの。毎回毎回同じことの繰り返し。そんなのじゃ楽しくありませんわ。だからさよなら。」
「ちょ、ちょっと待てよ!いきなりどういうことだよ!飽きたって……っ!」
あー、またいつものパターンですか。相変わらず別れるとき相手は煩いですわ。さっさと家に帰りましょう。
「では。ごきげんよう。」
今の男にもいい加減飽きたので別れることにした。だって毎日のように好きだ好きだを言って、デートで行く先も同じ、ただ私と居たいだけ。そんな繰り返しなんて楽しくないわ。誰か私を飽きさせないような男は居ないの……。
「見て、あの女まーた彼氏と別れ話よ。」
「あー、またかぁ。男たちも何であんな女に言い寄るんだろうね。」
「自分が美少女だからって調子に乗りすぎよね。」
「あーうざいうざい。いい加減あんな女じゃなくて私に来ないかな~。」
そしてこの周囲のクラスメイトである女の子たちのの僻みの言葉もいつも通り。私はこの性格上どうしても女の子に嫌われる。
別に気にしてないし、仲良くしようとも思わない。だってそんな陰口ばかりいって自分に自信のない女と一緒に居たら私まで感化されかねないもの。
女の子は恋をすればするほど可愛くなる。これは私が信じている言葉です。
私立桜ヶ丘学園。
この学校は超がつくほどお金持ちな家庭の子と普通の家庭の子が入り混じる学校である。
お金持ちの家の親が実質学園のお金を払っており、権力はそのまま子どもたちにも反映される。
早乙女彩はこのお金持ちの家庭の中でもさらに抜けてお金持ちの家の子だ。彼女の一声でクラスメイトは動く。だから陰口しかいえない。普通起きそうないじめは起きない。彼女をいじめたならこの学校から追い出されかねないから。
容姿端麗スポーツ万能、しかし性格は悪い。何事も強気で周囲を振り回す、そんな特徴が多すぎる女の子が早乙女彩である。
「はぁ~、あーもう!退屈です!皆同じことばかりです!」
私、早乙女彩はいま大変退屈です。仕方ないから屋上に行きましょう。誰か相手は……。
何となく屋上へ向かうとさっきの男が居ました。
「彩……!」
「あら、氷川さん。ごきげんよう。」
別に別れたからって邪険するようなことはしない。普通に挨拶をするのが私の主義だ。
「なぁ!飽きたってどういうことだよ!?突然すぎやしないか!?」
どうやら向こうはまだ気にしているようです。全く。面倒ですね。
「別に。言葉通りですが。同じ場所、同じことを繰り返されても皆飽きるに決まってるじゃないですか。そんな男と付き合ってたなんてがっかりです。」
「はぁ……!?いい加減に……!」
氷川さんが私のほうへ迫ってくる。嫌な予感がした。じりじりと迫ってくる。言い過ぎたかもしれない。いくら権力があったとしても暴走は止められない。氷川さんが私を捕まえたとき、ふっと影が差した。
「おい、何をしている?明らかに怖がってるじゃないか。男性が女性に対して何をしている。手を出したら冗談じゃすまないぞ。」
見覚えのある顔だった。たぶん、クラスメイト。名前、聞いた気がするけど覚えてない。私は気になった人の名前しか覚えないのだ。
「だって彩が調子に乗るから」「だってじゃない。言い訳するな。」
氷川さんの言葉を途中で遮る。有無を言わせぬ威圧がそこにはあった。
「ちっ、わかったよ。」
そう言い残して氷川さんは去っていった。
「ありがとうございます。えーと。」
「佐藤遼だ。クラスメイトの名前くらい覚えておいてくれないか?」
「佐藤遼?えーっと。あ、思い出しましたわ!」
一瞬思考して思い出す。確かクラス分け後の最初に私が声をかけた子でした。
「で、天下の早乙女さんがあんな怯えてる顔するなんてどうしたんだ?」
む、何だか嫌味な言い方ね。まぁいいわ。私にこんな嫌味を返すような子初めてですし。皆形だけでにこにこ私に言い寄ってくる。権力しか見えてないのがわかる態度で。でも、不思議と彼にはそんな感じはなかった。それに、確かに怖かった。男の人にはどうしても力では勝てない。それはよく知っている。そういう体験をしたことがあるから……。
「ねぇ。私と……。」
「ん?」
「いえ、何でもありません。」
「なんだ?珍しいな。」
言おうとして、やめた。私がそんなことをするなんて自身でも珍しいと思う。
何故かを考えていると、どうやら結構な時間が経ってたらしい。
佐藤くんはくるっと私に背を向けて屋上のフェンスに手をかけて空をしばらく眺めていた。
しばらくして、いい加減私も暇なので話しかける。
「ねぇ、どうしましたの?」
それでも何も言わない。もう嫌になってきたので、帰ろうと背を向けて歩こうとした時、
「なぁ。勝負しないか?」
ぽつりと佐藤くんが言った。勝負……?突然どうしたのでしょう。
「勝負?何をするので?」
「俺が早乙女と1ヶ月以上付き合ったら俺の勝ち、早乙女が嫌になって俺を振ったら早乙女の勝ち」
「勝ったら何があるんですの?」
「勝ったほうは負けたほうに一度だけ言うことを聞かせる権利でどうだ?」
いったい何がしたいのかはわからなかった。でも、さっき助けてくれた恩もあることですし、受けましょうか。それに……さっきの佐藤くん…………だったですし。
「えぇ、受けましょう。今日から1ヶ月、今は6月1日だから期限は7月ね。今日から私たちは彼氏と彼女よ仮だけどね?」
「仮じゃなくて本当のだったらよかったんだけどな……。」
「ん?何かいいました?」
「いや、何でもない」
ここから早乙女彩と佐藤遼の少し可笑しな恋人生活が始まった。
実は一度消えちゃった小説の再投稿です。(旧題:男を弄ぶ美少女が一人の男に本気で恋をした。)
過去に書いたメモが見つかったのでしばらくそれを少しずつ修正しながら投稿しようと思います。