表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

第1話 死因:巨乳


 とうとう童貞のまま高校を卒業してしまった。


 高校生になれば彼女の一人くらいできると思っていた。

 だが現実は非情だった。俺のような何の取り柄もない男子に女子生徒は厳しかった。


 好きになった子もいたし彼女になって欲しいと思った子も何人もいた。

 てか可愛い子を見るとだいたいそう思った。


 ……そう言うとなんか単に俺が見境ないだけみたいに思うかもしれんが、要はそれくらい俺は女の子大好きだし意欲満々なんだ。

 普通だろ? 俺だって一七歳の健康な男子だ。


 でも告白はしたことない。

 断られたら嫌じゃん。

 偏見かもしれんが可愛い子ってなんか性格悪い子多くない?

 告白してキモがられたりしたら立ち直れないじゃん。しかもそっからイジメとかに発展したら、とか思ったらもう怖くて告白とかできねえ。

 むしろ皆はどうやって自分を奮い立たせてんの、ってレベル。心強すぎだろ。スパルタ戦士かよ。


 だから俺は徹底して告白を待った。

 高望みなんてしない。そこそこ可愛い子ならもうどんな子でも即オッケーするつもりで、どーんと間口を広げてさあウェルカムってな具合に待ってた。

 これならノーリスク。俺は賢いから余計なリスクは負わないのだ。


 でも一度も告白なんてされなかった。ノーリスクだがノーリターンだった。

 どうしてこうなった?

 俺の隣の席のイケメン野郎、高橋とかはことあるごとに告白されてんのに。


 鍵をかけずにドア全開で家を出たのに、空き巣にあったのは隣の家だった、くらいの納得できなさ。

 なんなの? ガチガチのオートロックに護られた家の方が空き巣魂がくすぐられるの?

 チャレンジャー精神強すぎる女子多すぎだろこの学校。


 そんなこんなで一年経ち、二年経ち。

 その頃にはもう、当初開けていた間口なんてこれでもかってぐらいにガバガバにしてたよ。

 そこそこ可愛い子なら、とか生意気なことは考えなくなった。

 そこそこブサイクでも、くらいに広く寛容な心で女子を迎え入れるつもりだった。


 なのにこの仕打ち。

 結局一度も告白されないまま高校卒業だと? ふざけんな。許せんわマジで。




 卒業証書を鞄にねじ込んで校門をくぐる。

 賑やかな笑い声やら泣き声やら聞こえてくるが全無視。

 写真? 寄せ書き? いるかそんなもん。彼女どころか友達もほとんどいねえよ。

 唯一オタク話で盛り上がれた、同じクラスの山本君だけが自信をもって友達と言える存在だ。あとは知り合い。


 そんな山本君と最後に話をしようと思って探していたが、なんと彼はもう帰宅したらしい。

 山本くーん(泣)!!

 せめて彼くらいは最後に俺との別れを忍んでくれるだろうと思っていたのに!


 いや、彼はクールな奴なんだ。

 移り気の多いオタクにあって、四年も前のキャラを未だに「俺の嫁」と豪語し続けている一途ないい奴だ。

 しかも男気がある。自分の大切な者を絶対に守り抜くタイプだ。


「こんな貧乳キャラどこがいいんだ?」と俺がそのキャラを貶すと、普段は温厚な彼の、封印されていた表情筋がヤバイ角度で吊り上がって、鬼の形相になったのを今でも覚えてる。

 あれは怖かった。でもすぐ謝ったら許してくれた。心の優しい男だ。


 それに比べてこのリア充どもときたら。

 通学路を歩いている大勢のリア充達を横目で睨み付ける。(正面から睨み付けると万が一目が合ったとき怖いからな)


 俺はリア充が嫌いだ。

 イケメンはそれだけで虫唾が走るほど嫌いだが、フツメンのリア充も嫌いだ。

 なんか勘違いしてるかもしれんが、俺は別に顔は悪くないんだ。イケメンじゃないが、普通だ。ちょっと特徴のない塩顔なのが好きじゃないが、決して不細工じゃない。


 そんな俺がこれだけ寂しい思いをしてるのに、俺より不細工な奴がなんでリア充になれてんだと思うと世の理不尽を嘆くばかりだ。

 嫉妬じゃない。嘆きだ。これ重要。


 今前を歩いてるカップルなんてまさにそれだ。

 男は別にイケメンでもない普通の男子生徒。とりわけスタイルがいいわけでもない。

 なのにその隣を楽しそうに歩いてる女子生徒は結構可愛い。

 しかも巨乳だった。


「うお、すっげえ……」

 思わず声が出てしまった。

 それくらいハッキリ分かる程の巨乳だった。


 あんな冴えない男でもあんな巨乳の彼女が出来るってどういうことだよ!?

 なら俺でもいいじゃねえか。なnで俺には一人の彼女も出来ずにあんな奴に。

 マジ妬ましいわ。

 いや、妬ましくはない。嘆きだ。これ重要。


「いいなあ……」

 また思わず声が出てしまったが、いいなあ、ってのはつまり――嘆きだ。

 俺は嘆いてんだ。


 俺にもあんな彼女がいれば、あのとんでもない巨乳を心ゆくまで揉めるんだろうな。

 あークソ腹立つ。

 俺も一度でいいからおっぱい揉みたい!


「――危ない!」


 こう……ぐわ、っと! ぐお、っと!

 鷲掴みにしてやりた……ん?


 巨乳に気を取られていた俺に大型トラックが迫っていた。

 死んだ。




 しょうがないじゃん。男は誰でもおっぱい好きだろ? そりゃちょっとよそ見くらいするって。

 言ってみればあの巨乳に殺されたようなもんだ。責任とって一揉みくらいさせろやクソが。


 まあそんなわけで。

 俺は童貞のまま高校卒業どころか、人生まで卒業しちゃいましたとさ。


 マジなんなのこの人生!?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ