つまらない僕は素敵な彼女を探す。
長者原駅から電車で10分程かけて香椎駅に向かい、香椎駅駅から約五分間の道のりを歩き高校まで向かう。
駅から近い西門を通り渚月は、靴箱で上履きに履き替え1年生の教室がある4階へと向かう。
「ん?なんだあの人の集まりは。」
階段を上がりきった渚月が教室の方に目をやると、渚月のクラス1年E組の教室に人盛りが出来ていた。
渚月は、気になると同時に面倒だなぁ〜と思いつつ教室へと向かった。
「おはよ、北村。なんなんだ?この人盛りは。」
人盛りの近くまで来た渚月は、クラスメイトの「北村 汰稀」に話しかけ説明を求めた。
「おお、茅間。それはな…今日珍しく、滅多に学校に来ていなかったあの人が!ついに、登校されたのだ。」
汰稀は、大きく身体を動かしかなり大袈裟に説明した。
(って事は、江藤さん…学校に来たのかな。)
昨日の約束事もあったのでそう思った渚月は、少し急いで人混みをかき分け教室へと向かった。
勿論、知りたい事が山ほどあるという事もあったのだが、渚月は知っていた。
江藤 美玖の隣の席が故にしっかりとその目に焼き付いていたのだ。
江藤 美玖が、「学校」や「クラス」…「グループ」や「集団
」を嫌う理由を。
(やっと、入れた。)
渚月は、教室に入ると直ぐに周りを見渡した。
するとそこには、見覚えのない女子生徒とその生徒に集まるクラスメイト達が目に入った。
それを見て渚月は、その生徒を思い出せずに目を細めた。
(誰だ?あの人)
すると、渚月を追いかけて教室に入った汰稀が渚月に知っていて当然だろっと言わんばかりの表情で話しかけてきた。
「お前…あんな有名人を知らないって言うのか?」
「…」
汰稀の表情も相まってか渚月は思わず、下を向いた。
「あの女子生徒は、今芸能界いや、ネットでも活躍中である人気女子高校生歌手!伊瀬 祈里先輩だよ。んで、その伊瀬先輩が何故かこの教室に来てたからこんな人盛りができたって訳。」
「わぁぁぁ!伊瀬先輩!?なんでこの教室に!」
「伊瀬先輩!サインください!サイン!」
確かに耳を傾けるとそんな生徒の声が聞こえてきた。
「なんだそりゃ、てかそんな人が居るなんて知らなかったぞ。」
「マジかよ…。」
(それより、なんで今日、この場所でこのタイミングなんだよ…。)
少し疲れて肩の力を抜いた渚月が席に向かおうとしたのだがよりにもよって渚月の席がある窓際の後ろの席周辺に祈里がおりそこに人が集中しているため席に付けたもんじゃない。
しかし、その状況を見て渚月は思った。
(くそぉ…面倒だな。でも、この人盛りだ江藤さんもしかしたらいるかもしれない。)
渚月の席の隣は美玖なので、渚月の席周辺に人が集まっているなら必然的に、美玖の席も隠れる。
それに気づいた渚月は、居てもたってもいられなくなった。
(せめて今、江藤さんがそこにいるかどうかだけでも知りたい…!)
(もう嫌だ!だから…だから来たくなかったの。
誰か………助けてよ。)
「…!」
渚月には確かに聞こえた。
聞き覚えのある声…そして感じたことのない独特な聞こえ方。
渚月は、目をしっかりと開け人混みを見る。
「んぁ?どうしたんだ?渚月。」
渚月は、汰稀を無視して人混みへと飛び込んだ。
「おい…!どうした渚月!…な……何を血迷ったんだ〜!」
汰稀は、渚月へと届くことの無い手を伸ばしていた