つまらない僕は、素敵な夢を見る
孤児院から少し離れたアパートに着いた渚月は、鞄から鍵を取り出し玄関を開け、電気を付けたあとブレザー椅子に掛けてタンスの上に置いてある渚月と渚月の両親の写真を前に話しかける。
「今日、面白い女の子にあったよ。その子がまた、凄いんだ。心の声が聞こえるんだよ。この場合、心が読めるっていうのかな。まぁ、そこはどうでもいいんだけど…俺さ、その子と事故ってキスしちゃったんだけどさ…そうしたら、その子の声が聞こえるようになったんだ。すごいでしょ?」
そうやって、写真に話しかける渚月はどこか楽しそうでまるで親に嬉しそうに自慢話をする子供のようだった。
話を終えると渚月は、風呂に入り寝間着に着替え、布団を引いて直ぐに横になった。
(今日は、疲れたなぁー。しかし、心の声が聞こえるようなったって言われても多分…江藤さんが俺に話したい声だけが聞こえるようなったんじゃないかなぁー。)
渚月がこう思うのも無理はない。
何故なら、春日市からの帰りの電車は人が多く乗車する博多方面である。
そんな人が多い所に心の声が聞こえるようなったばっかりの渚月が居たら、心の声が行き交って頭がおかしくなってしまうのではないだろうか。
しかし、渚月には心の声と思わしき聞こえ方のする声が一切聞こえなかったのだ。
(まぁ、これも明日江藤さんが学校に来ていたら分かる事だ。今日は、もう寝よう。)
そう切り替えた渚月は、ゆっくりと目をつむり眠りにつく。
『渚月、男の子が何で出来てるか知ってる?』
穏やかな陽の光がさす部屋で、優しそうな女性がまだ幼い息子を膝元に問いかける。
『え〜、わかんないよそんなの。何で出来てるの?』
好奇心旺盛な男の子は、笑顔で女性に問い返す。
『男の子はね、カエルにカタツムリ…それとつまらない何かを合わせて出来てるんだよ。だから、男は、みんなつまらない奴ばっかり。』
『じゃあ、僕やお友達はみんなつまらないの?』
『いいや?そうでも無いよ。一つだけ、心がけておくとつまらない奴にならないんだよ。』
『それは何?教えて!』
男の子は、女性の膝元を離れ女性を正面に座りなおす。
『それはね〜。まず、渚月は女の子が何で出来ているか知ってる?』
『ううん、知らない。』
何故そんな事を言われたのか分からず男の子は、少し困った顔で首を横に振る。
『女の子はね、砂糖とスパイス。それと…素敵な何かで出来てるんだよ。だからね、男の子は女の子を大切にしてあげるの。そうすれば男は、つまらない奴から素敵な女の子を大切にする「素敵な男の子」になれるんだよ。分かった?』
優しさが溢れ出る女性の笑みに答えるように男の子も、満面の笑みで頷いた。
『うん、分かった!僕、女の子はみんな大切にするよ!』
カーテンの隙間から差し込む朝日が渚月の顔に当たり、その眩しさで渚月も思わず目を覚ます。
それと同時に枕元に置いていたスマホで時刻を確認する。
「やばい…。急がねーと。」
すると、直ぐに洗面所へと向かい顔洗い歯を磨く、しかし寝癖は直すのが面倒なので無視して制服を着ると朝食は食べずに玄関で靴を履き、家を出る
「行ってきます。」