つまらない僕は、素敵な彼女のお家へお邪魔することなく家へと帰る。
今俺は、江藤未玖という女の子に『心の声』が聞こえるという異常事態を解決するために何処かへ連れて行かれている。
聞こえるようになってしまったからには、その『心の声』というものについて詳しく知る必要がある。
その前に、これまでから分かる情報をまとめよう。
第一に、この子とキスして聞こえるようになった事。
次に、この子は俺にあって一言も喋っていない。
最後に、この子は以前から『心の声』を聞いていた。
つまり……
俺は、被害者なんじゃないか?
(聞こえてるんだけど!)
「あ、すみません。」
(君が被害者なわけないじゃん。私に、キスを迫ってきたくせに……)
「ちょっと待て、いつ俺がキスを迫ったって言うんだ?」
(誤魔化しても無駄!私の手を掴んで強引に引き寄せたじゃない!)
「何が強引に引き寄せたっだ…俺は、コケそうになった君を助けんだぞ?」
(私は、転けそうになんかなってない!)
「何を今更 ー 」
『プルルルルル、プルルルルル』
まるでわざと、今までの渚月と美玖の口喧嘩を邪魔するかのように渚月のスマホの着信音が鳴る。
渚月がポケットからスマホを取ると、画面下側には『応答』と『拒否』のマーク、それと画面上側には『茅間 愛彩』と表示されている。
「ちょっと、すまん。」
と、渚月は美玖に一言かけて画面下側に表示じされている『応答』のマークをタッチした。
「もしもし?」
「もしもし、渚月?こんな時間までどこほっつき歩いてるの?早く帰って来て!せっかく作った夕食が悪くなっちゃう。」
「ああ〜、今担任の先生から頼まれた仕事で春日市の方に来ててさぁ。」
「ええ〜?そんな遠くまで?」
「とりあえず、もう帰ってきて。渚月も、お腹空いたでしょ?」
「あぁ〜っと、えぇ〜っと……。」
随分前から感じていた空腹を思い出した渚月は、(済まないが今日は、帰らせてくれないか?)と思いながら、美玖の顔を見た。
(仕方ないなぁ、分かった。この件は、明日に回すから今日は解散。)
流石に心の声で訴えられたため、未玖は素直に折れた。
(ありがとう、江藤さん。)
「愛彩さん、今から帰る。」
「分かった、待ってるからね。」
お互いに、それじゃと言うと渚月は、通話終了のマークが表示されている画面下側をタッチする。
「すまん、江藤さん。これ、休んでた分のプリント。」
(ありがとう。それじゃ、また明日。)
「ああ、また明日。」
そう言ってお互い反対方向へと歩いた。
しばらく経って、渚月が美玖の姿見えなくなた時、渚月はふと思った。
(また明日…なんて言ったけど、俺は江藤さんが入学式からずっと不登校だったからここまで来たんじゃなかったっけ……そういやぁ、また明日とは言っていたが学校でとは言ってなかった。連絡取ろうと思っても、連絡先交換してない……やべぇ、ちょー不安になってきた。大丈夫かなぁ…明日。)
不安を募らせながら、渚月は駅に到着し帰りの電車に乗るのだった。