心の声
「えーと、ここら辺のはずなんだけどな~。」
放課後、不登校の江藤さんの家に話をしに行ってほしいと頼まれた渚月はあまり来ない場所に戸惑っていた。
(第一家庭訪問てのは先生の仕事じゃないのか?ほかにも隣の席だから僕に頼むってのも理不尽だ。女子の委員長とかもっといただろ。)
(?)
そうやって過去のことをねちねち考えていると、直線の歩道に、うちの制服を着た女子が見えた。
(そういえば。)
そのとき先生が言っていたことを渚月は、思い出した。
『そのあたりの地域は、学校から遠いから江藤ぐらいしか生徒がいなねぇ~んだよ。』
そうだった、だから隣の席だからという無理やりな理由を突き付けられて俺はここにいるんだった。
思い出すとなんか無性に腹が立ってきた気がする…。
って、そうじゃなくて!うちの制服を着てるってことはワンチャンあるかもしれない。
早く終わらせるためにも勇気を出してみるか。
「おーい!江藤美玖さんですよねー!」
そう大声で声をかけると。
「!」
(あ、ピクッてした。)
女子の反応の仕方を見て、渚月は確信した。
「江藤さんでしょ!隣の席の茅間なんだけど!」
そう言った途端に美玖は、その場から走って逃げた。
「おい!ちょっと待て!」
すかさず、渚月は美玖を追いかけた。
(?)
渚月が全力で走ると美玖のすぐに後ろに追いついた。
渚月が追いついていることも知らず、美玖は目をつぶり必死に走っている。
(めんどくさいと思ったら……この人すごく遅い!あと、息切れてるし。)
そう思った瞬間、疲れてバランスを崩したのか美玖はその場で転けそうになった。
「危ない!」
渚月はすかさず、転ける寸前の美玖の手を掴み引き寄せた。
「「っん!!!!!」」
思いのほか渚月は、強く引っ張ってしまったらしく二人の顔が近くなり美玖が後ろに振り向くようなかたちになり、二人の唇が重なり合った後、そのまま後ろに倒れた。
「「〜〜////〜〜」」
渚月が、お互いが意識し合い気まず状況になっていることに気付いた時
(っへ!変態!)
とゆう声が聞こえたのと同時に、美玖が走り始めた。
「待て!僕は、変態なんかじゃ ー 」
と言いつつ、渚月が美玖を追いかけようとした途端、美玖がその場で立ち止まった。
と思ったら、こちらに振り向き早歩きで近寄ってきた。
その時
(わ、私の声聞こえるの⁉︎)
という声が、聞こえてきた。
「意味がわからない、聞こえるに決まってる。」
(ほ、本当に⁉︎)
美玖は、驚いた勢いで顔を近づけた。
渚月は、あまりにも近いので意識してほおを赤く染めた。
(本当の本当に⁉︎)
「しつこいなぁ。当たり前だろ?僕は、障害者とかじゃ無いんだし。」
(し、知らなかった……。私以外に心の声を聞くことができる人がいるなんて……。)
そう言って美玖は唖然とした顔で渚月を見た。
「こ、心の声って……な、なんだ?」