チョコレートは甘く甘く ―壱―
皆さんはバレンタインにチョコレートをあげたり貰ったりしたことはありますか?そういうのって何かいいですよね、憧れます。バレンタインとは今までも、そしてたぶんこれからも無縁な自分です(悲)
読んで感想などくれたらありがたいです。どんな物でも送ってください。
「ほぉ、そいつが私達を異世界へ連れて行ってくれるわけか」
フロウとあった翌日俺は玲奈や天音と部室で御剣咲に昨日の出来事を話していた。咲はあまり驚いてはいないようでフロウに楽しそうに話しかける。
「おいフロウ、お前みたいな青い猫が街の中にいたら目立つんじゃないのか。黒騎士のサーヴァントとなら目立たずに陰で生きてほしいんだが」
「僕は猫でなければお前のサーヴァントでもないぞ!あと、僕の姿を見られるのは僕を呼び出した魔法陣を見た人間だけだから普通の人に僕の姿を見られることはないよ」
「魔法陣というのは黒板で光っているあれのことか。敦、なんでそんな面白いことをするのに部長である私を呼ばなかったんだ」
「お前が意味の分からない事を言って出て行ったときはなかなか帰って来ないだろ、だから俺達3人で部活してたんだよ」
「3人、か。あいつは来なかったんだな」
「ああ、あいつは俺達と似ていて遠いからな。俺達にとってのここの価値とあいつにとってのここの価値は違うのかもな」
「そうかもな、でもあいつも部員なんだ。敦お前は同じクラスだったよな、声かけてみてくれないか」
「そうだな、明日誘ってみるよ」
「私も一緒に誘うわよ、私も同じクラスだしね」
天音が俺に笑いかける。
「そうか、それじゃあよろしくな」
今日の咲はいつもの中二病の感じではなく部長という感じがして変な感じがする。さらに今日は玲奈も様子がおかしい。静かすぎる、いつもあまり喋らないがそれにしても今日は静かすぎる。何かあったのだろうかと思い、
「なぁ玲奈、お前今日静かだけど何かあったのか。」
「それは、、敦、、、これ。」
玲奈が鞄から丁寧に包装された箱を差し出す。
「明日バレンタインだから、敦とは仲良くしてるし、チョコあげる」
恥ずかしそうに目をそむけながらチョコを渡す玲奈の姿は幾千の美少女キャラを見てきた俺からしても可愛い。俺はチョコを受け取る。
「玲奈、ありがと」
玲奈は黙ってこくりと頷く。それを見ていたフロウがプスッと笑いをこぼす。
「何がおかしいんだよ」
「いやー青春してるなと思ってね。異世界に行きたいなんて言ってるけどやっぱり高校生なんだね」
「なんだそれ、俺達はお前と会ったときから高校生だぞ」
「いやいや、君達みたいな面白い人間はなかなかいないよ」
「それ褒めてないだろ」
フロウは返事をせずにまた笑みをうかべた。俺は顔では不機嫌そうにしたものの心の中では嬉しさが爆発していた。たとえ義理チョコだとしても、俺のような二次元好きだとしても男子なら嬉しいものだろう。ましてや年齢=チョコ貰った事ない歴の俺のような奴がこんな可愛い渡し方をされればその思い出だけで半年ぐらいはどんな事でものりきれる。
「なぁ玲奈、今食べてもいいか?」
「うん、敦にあげたんだし」
「そうか、お前らも食べないか」
俺は箱の包装を丁寧にはがしながら天音と咲をよぶ。
「玲奈ごちそうになるわね」
「私もいただくとしよう」
「僕もいただくよ、甘い物には目がなくてね」
「え、私は敦のために、、」
玲奈が何かを言おうとしたようだったが最後まで言うことはなかった。そして包装を取り終わり箱の蓋を開けたのと同時に俺達全員の口から「おー」という声がでる。中に入っていたのはお店に売っていてもおかしくないほどのクマの人形のようなチョコレートクッキーだった。
「玲奈もしかしてこれって手作り!?」
天音が驚いたように尋ねる。
「うん」
頷く玲奈の姿をみて俺の心はさらに高鳴る。高校生にして初めてもらったチョコが手作りだったのだから当然だ。こうも良い事が続くとこれからの事が心配になってくる、俺はそろそろ死ぬんじゃないだろうか。そんな事を考えているとサクッという音が聞こえてくる。
「これおいしいよ!数々の甘い物を食べてきた僕が言うんだから間違いないね」
「あ、ずるい。私も食べるっ」
「おい、部長である私をさしおいて食べるとは何事だ、私が食べるっ」
「おいお前らそれは俺が玲奈から貰ったんだぞ、俺が先だろうが」
俺達は甘いチョコに舌鼓を打ちながら楽しい一時をあじわうのだった。
部活がいつもより少しだけ遅く終わったのと二月ということもあって俺達の帰る道に夕焼けの姿はなく、明日のバレンタインのせいか浮足立った街の光だけが道を照らす。
「お前らもう暗いし送っていこうか?」
「私は黒騎士だぞ、お前の護衛など必要ない」
「そこの中二病はどうか知らないけど私は大丈夫よ、家近いから。それに空手も黒帯だから敦なんかより私のほうが強いしね」
「ああそうですか。じゃあまた明日な」
「ばいばーい」
「さらばだ」
「また明日」
俺達は別れの言葉を交わした後二手に分かれる。玲奈は電車で通学しており俺の家も駅のほうにあるので2人で帰っている。いや、フロウを入れて2人と一匹である。
「玲奈今日はありがとな」
「急にどうしたの」
「チョコのことだよ、本命じゃなかったとしても俺嬉しかったよ」
「敦本当はあれ、、」
「ん、なんだ?」
「やっぱりやめる」
「なんでだよ」
「なんでも」
玲奈がマフラーに顔をうずめる。そんな玲奈を不思議に思いながら俺は一足早いバレンタインの喜びに浸りながら家へと向かうのだった。
読んでくれてありがとうございました。