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榊さんの不躾でシャイなお願い

前より明らかに手抜いてます。

まあ、ここは紫苑ちゃんに免じて許して下さいな、てへぺr___。

「この件が終わったら、私達から離れて」

硬直すると思うか?


そんな訳無い。


だいたい予想の範疇はんちゅうだったからな。


「優梨乃に免じて、今回は許すけど、私は…アンタの事まだ認めてないから」


誰が了承すると思う?

もしそれを認めてしまったら、俺の贖罪は叶わないんだよ。


だからそれを認める訳には行かない。


「…それは、俺が人殺しだからか?」


「当たり前じゃない…アンタみたいな危険分子、優梨乃や莢斗の傍に置いておきたくないのよ」


「俺が人殺しだって言う根拠は?」


聞いても無駄な質問のように思えた。

返答が予測しやすい質問だったから。


「決まってるじゃない。姫城明日香がそう言ってたからよ」


ほら見ろ。

権力者は違うねぇ。

権力者は…。


って言うよりは名高い娘ってなだけなんだが、それでもヒエラルキーにすれば上に位置するのは確かだ。

俺程の底辺が相手にして良い奴じゃない。


だが、その解釈には一つ間違いがある。

それはヒエラルキーではない。

ただのカルマの差だ。


___ドンッ!


「キャッ!」


「じゃあお前は、優梨乃でなく、姫城を信じたって事で良いんだな?」


圧力をかけるように勉強机に手をついて柚音に迫っていた。


無意識下。

こうなった今の俺は確かに人っ子一人くらい殺せそうだ。


あくまで比喩表現だが。


それくらいに俺は殺気立っていた。


柚音は目を見開いて、暗く、闇に堕ちた漆黒の眼を涙ながらに見つめていた。


「…そ、それは…」


「優梨乃に免じて許したって事は、優梨乃がああ言ったから許したと、そういう事だな?」


僅かながらに保っていた自我が告げた。


___ああ、俺って最低だ。


「答えろ」


柚音はそれを聞いて俯いてしまった。


だが、変化はすぐ訪れた。


「…さい」


「…あ?」


「煩い!うるっさいんだよ!!」


鬼の様な形相で、しかし涙を浮かべつつ、俺に罵声に近い大声を浴びせた。

それを聞いて俺はついに我に帰った。


「…え?」


「アンタの所為で!優梨乃は歩けなくなったんだッ!!アンタの記憶なんか知らない!全部お前が悪いんだ!」


「お、落ち着け」


声は脆かった。

片方は泣き崩れながらそう訴える少女。

もう片方は動揺しまくって舌が回らない鬼。


どちらにせよ、これ以上の言い合いは無駄だと察せたのは良かった。


榊は最早心ここに在らずと言う状態で狂乱している。


「もう…誰も傷つけたく無いんだよォ!!」


「わ、分かった。分かったから。関わるのはやめる。だから落ち着け!」


これ以上騒がれると親も来そうだし…。

なんて言うか、完全に不利だった。


不可抗力の末、俺の意思は悉く崩された。


もう少し状況が整ってから説得に走ろう。


それが意味ある事なのかどうかは知らんが。


「分かったら帰れ!とっとと帰れ!」


「言われんでも帰るわ!…ったぁ!」


帰るわと言った直後に最初に正座していた小さなテーブルの足の角に脚の小指をぶつけて跳ねながら榊の部屋を後にした。


…なんて破天荒な奴だ(三回目)。


それを言う為にわざわざ家に誘ったというのかと思うとしょうもないなあとでも思えてしまえるくらいに腑に落ちない結末だが、俺も俺で熱くなりすぎた。


バタンと扉を閉めた瞬間に脚の痛みを気にすると同時に安堵感で壁にもたれてしまった。


本当にすぐ帰れるし、安堵するでしょそりゃ。


「ハァ…ってぇなぁ…」


しかし、緊張感は治まる事を知らなかった。


「やっ!ボーイフレンド君!」


「わあぁっ!?」


ドアを開けた先にはおやつらしき物をお盆に乗せた榊の母親らしき人物がいた。

まあ、さっき榊がママって言ってたから間違いないでしょ。


「…って榊の…。もしかして煩かったですか?」


今度ばかりは何を言われるか想像できたものでは無い。


俺は少し身構えた。


が、そんな微動すらもこの人には分かっていた様だ。


「そんな身構えなくても良いのっ。どうせあの子が取り乱したんでしょ?」


本当だ、身構えなくても良かったと内心少し驚いてしまった。


「…よく分かってるんですね」


「お母さんだもの」


親ってのはそんなもんなんだろうか。

うちは幼くして両親共々勝手に消えて行ったからそれが良く分からなかった。


「ッハハ…親ってのは怖いですね」


「そんな事ないわ。それより、ゴメンね、うちの子が…」


「あっ!あぁいいえ、そんな謝る事じゃないですよ」


あろう事か相手方を謝らせてしまった。

それだけ俺の注意力は散漫になっている様だ。


しかし、俺にはここでおチャラてけいる時間など無い。


とりあえず、現状の問題を解決出来る様に努めなくてはならない。

ひとまず落ち着こう。


今現在、はっきりしている問題、疑問は恐らく三つだ。


一つ、俺が優梨乃と榊、柳澤莢斗なる人物にしてあげられる事が何かと言う事。


二つ、榊が取り乱す程に俺が恨まれている事。


三つ、これら含め細かな問題の解決が叶った後のアフターケア。


大体こんなもんだろうか?

ならば、少しだけ、榊の母親に訊かなくてはならない

事がある。


「あの、おば…お姉さん?」


「…へ?」


「あっ!す、すいません、人と話すの慣れてなくて…」


訂正、四つ、俺が人とまともに話せない事。

何でキョドてんだよ俺…。


「…アッハハハハハハハハハハ!お世辞なんていいのよ。おばさんって呼んで、ッハハハハ!」


盛大に笑うおばさん。

めっちゃ優しいじゃん…。


「えっと…訊きたい事が…」


半分頰がつり上がって半笑いみたいな顔で俺はおばさんに問う事にした。

これからの事、そして今の事を。


「いいよ、おばさん何でも答えちゃうから!」


よく考えるとこれがあの柚音の母親なんだよな。

何だこの雲泥の差は。


まるで柚音を連想させない明るい人だな…。

いやまあ声だけは明るいって意味では一緒か。

逆に少し怖いわ。


「榊って…どうしてあんなに性格キツイんですか?…凄い失礼ですけど」


未だに動揺して倒置法になっちまったじゃねえか。

どうやら一番の問題は俺が人とまともに話せない事らしい。


どうすれば解決出来る?

いや、きっと出来ない。

もうそれでいい。


「あっはぁ、ゆーちゃんねぇ…あの子、何したの?」

「いや、なんて言うか…少し俺に当たりが強いって言うか…」


母親には娘の事が何でも解る様だ。


俺は親じゃないから解らんが、そう言うところがデリケートゾーンだったりする事も知らずに気安くイケナイ事を訊いてしまった気がした。


その証拠におばさんは何だかしんみりしてしまった。


「…あの子ね、昔、虐められてる男の子を庇った所為で、男の子に虐められるようになった時があったのよ」


「虐め?あんな気が強そうなのに、男がしつこく寄り付いて虐めなんてするんですか?」


「ッハハハ、時々酷いこと言うんだね!」


ほんっと明るいなこの人…。

確かに今デリカシーの無い発言を無意識にした気がする。


俺も言った後で、やっちまったって思ったけど、一歩間違ったら気まずかっただろう。


なのにこの明るさな。


何Lxあんだよこの人。


「そうだよ。だからあの子が男の子連れて来た時吃驚しちゃった。あの時以来、あの子は男の子の友達を作らなくなったんだもの」


「そ、そうっすか…」


そりゃそうだよな。

そんな事があったら男が嫌いにもなる。


やっぱり、さっきの俺は、酷く彼女に当たってしまったのだろうか。

そう考えると、罪悪感は増すばかりだった。


「…あの、俺は…」


しまった、こっからなんて切り出そうか。

これ以上話す事なんて考えてなかった…。

失態だったな。


「…えっと」


「ゆーちゃんに莢君(さやくん)を助けてくれって言われた?」


「っ!?」


図星っ!

なんで解るんだよ…。

身の毛が逆立つくらいに怖い。


いや、やっぱりこの人部屋の外で俺と榊の会話聞いてたに違いない。

そうだと言ってくれ!


「どうして…」


「おばさん、エスパーだから!」


「エ、エス…え?」


あーもうダメだ。

Lxどころじゃなかった。

熱を帯びている程の明るさだ。

℃で測れる。


しかもそのネタどっかで聞いた事あるんだが。

イケナくないですか?


「アッハハ、冗談だよ!ねぇそれよりさ、君はこれからどうするの?」


「ど、どうって…どう言う事ですか?」


この人もう分からねぇなぁ…。

何やら俺がこの件に関してどう関与すべきか、向こうからヒントを出している、と読んだ。


ってか実際問題、榊を助けなくてはいけないのは絶対なのだ。

ただ、俺は今の現状にビクついてしまっている。


それこそ、般若の様な形相で榊に罵倒されて、このままアイツを救っていいのか、悩んでいる。


第一に、俺が考えるべきは優梨乃の事だ。

このまま事を済ませれば、優梨乃への迷惑なり得る行為として、見舞いには行けなくなるだろう。

少し、いや、かなり突飛な話だと思う。


見舞いなんてバレない様にすればいいだけの話だし、何より、榊が俺を恨んでいるからと言って、俺が贖罪を止める理由にはならない。


でも、俺の本能はそんな生半可な結論を出そうとはしなかった。


失った記憶の中の俺が、それを食い止めているのだ。

理由は知らない。

だが、優梨乃は俺を頼ってくれた。


だから、そんな理由などなくとも、少なくとも俺は優梨乃の為に動いても良い筈だ。


何より、さっきの榊の発言が許せない。


まるで俺を頼る優梨乃を悪いとは思えないから俺に当たっているだけで、その口実の為に姫城明日香を信用し切っているそれが、俺にとっては優梨乃の友達にふさわしくない行為だと思った。


勝手な話だが、俺はそんな榊を救いたいとは思わない。


しかし、優梨乃のお願いとあらばやるしかない。

それが俺の贖罪。

そうする為に俺がする事…。


___榊の事を理解する事。


「俺は…この状況をどうにかしたい…でも、どうすれば良いか解らない」


「ゆーちゃんと上手くやっていく方法なんて一つしかないよ」


「え…?」


案外あっさりと帰って来た望ましい返答だった。

そう、一番欲しいのは榊を解る方法。

エスパーでもなんでも良い。

それが知りたい。


「ど、どうすれば…」


「あの子の事を好きになってあげればいいのよ」


「す、好きぃ…?!え…あの…」


真剣に聞き入ってただけあって、ハッキリと聞こえた返答に疑う余地など無かった。

でも、ゾッとする答えだった。

たどたどしく聞き返すも、やっぱり鸚鵡おうむ返しだった。


「そう、あの子の事好きになってあげて。貴方なら出来る」


「い、いや…でも…俺さっき…」


無理に等しい。

あっちは最早生理的に受け付けないみたいな反応だったもん。

いやぁ、絶対無理無理。


「怖気付いた?」


「…おばさんって、意地悪いんっスね」


「あら、意地悪なんかじゃないわよ。だって、あの子

が何も考えず、男の子を家にあげるなんてあり得ないもの」


そ、それは一理あるな…。

いやでも、だからって…好きになってあげるって…。

そんな事って…。


「あの子はツンデレだからね、自分で壁を作っちゃう子なのよ。だからボーイフレンド君、あの子の壁、壊してあげてね」


「…ボーイフレンドじゃないです」


その会話を最後に、俺は榊家を去った。

もう行っちゃうの?とお菓子のケーキを持ったまま呆然とするその姿に、ありがとうございますと一言述べて。


おばさんに見届けられながら階段を降りると、玄関のドアを引き、外へ出た。

その時、俺には一種も決意が芽生えていた。


決めなくてはならない。

俺はこれからどうするべきか。


しかし、この状況の解決、と言う意味ではおばさんも優梨乃も柚音も____三者の願いは一つである。

ならば俺がやる事は一つだ。


___俺が終止符を打つ。


柚音の男嫌いにも、柚音のお願いにも、優梨乃のお願いにも、おばさんのお願いにも。

全部、終わらせてやる。


「…大きくなったね、青君せいくん…」


余談。

その独り言を、惜しくも俺は聞き逃した。

文才に限界が来てますと言うのを言い訳に半スランプ状態で4000字。

とても手抜きです。

すいませんでした。

いや、本当にすいません。

次回は真面目にやりますんで…。


追記:ルビの振り方、最近知った…。


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