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赤い糸にむすばれて  作者: 登夢
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解けた呪い

紗耶香が女の喜びを知ってから、身体に生気がみなぎるようになった。食欲が出て、食べる量も増えたが、太りたくないと言って、毎日、朝晩に腹筋と腕立て伏せ、それも100回ぐらいはしているとか。また、午前と午後にジョギングとスポーツ選手のようなトレーニングをするようになった。


それで、身体は一回り大きくなったように見えるが、体形は締まっていて健康的で輝くような美しさがある。ジョギング中にすれ違った男に振りむかれることもしばしあるという。こちらの方がチョット心配になる。


家事も全く問題なくこなしてくれている。多くはない給料のなかでやりくりしてくれる。家に帰ると笑顔で迎えてくれて、おいしい夕食を作っていてくれる。優しい性格もそのまま。幸せな生活が続いている。夜の生活はいろいろ工夫しているが、紗耶香ははずかしがりながらも受け入れてくれている。快感も増しているようだ。


帰宅すると、紗耶香が玄関まで飛んできた。


「おかえりなさい。食事にします?お風呂にします?それとも、紗・耶・香?」


「ただいま。どうしたの」


「テレビで言っていたのを聞いて、私も言ってみたくなって」


「本当は紗耶香だけど、お腹がすいた、夕食でお願いします」


「紗耶香でよかったのに」と残念そうにいう。


「心の準備ができていなかった。明日は紗耶香でお願いします」


他愛のない会話だけど、こんな毎日が続くといいな。


次の日、帰宅すると、また、紗耶香が玄関で、「おかえりなさい。食事にします?お風呂にします?それとも、紗・耶・香?」というので、「今日は、紗・耶・香!」といって、抱きしめて、そのまま愛し合う。


ぐったりしたところをお姫様抱っこしてリビングのソファーまで運ぶ。ぐったりしているをそのままにして、自分は寝室へ着替えにゆく。


リビングに戻ると、「今日は、紗耶香にしてくれて、ありがとう」といって、もう元気になって食事を準備している。結婚したてのころなら、まだぐったりとしているところだが、最近は元気活発、呪いがすっかり解けている。気を付けないとこちらが精気を吸い取られそうだ。


結婚して3か月半ほどした7月9日の紗耶香の21歳の誕生日に、2人で金沢へ帰省した。紗耶香は母親と電話やメールでの連絡はいつもしているので、結婚前よりも元気になった様子は伝わっているのだが、両親が実際に会うと、それが実感できたようで、とても喜んでくれた。


それから、夏休みとお正月にも2人で帰省した。紗耶香が健康で元気にしているのを見るたびに、両親は安心したみたいだったが、紗耶香が席を外したときに、22歳の誕生日までは気を付けてくださいと念を押された。両親には2人同じ夢を見た時の話はしておいた。


思っていたとおり、紗耶香の呪われた21歳は幸せな生活の中で難なく過ぎ去った。やはり2人同じ夢を見たあの時に呪いが解けたみたいだ。無事、22歳の誕生日を迎えた。小さなケーキを買って2人でお祝いをした。そして、22歳の誕生日までは紗耶香に話さないでくれと言われていた、檀那寺の前住職の紗耶香姫の話を聞かせた。


「昌弘さんとはやはり運命の赤い糸で結ばれていたんだわ」


「あの交通事故の時、私はお兄ちゃんの顔を見ていたの。どこか懐かしい気持ちがしたから」


「突然、手を引っ張られて驚いたけど、命拾いした」


「その時から、僕には『さやか』いう名前が胸に残った」


「家庭教師の先生になってくれた時、それがあの時のお兄ちゃんだと分かってとても驚いたけど、すぐにお嫁さんになりたいと思った。そのためには高校に合格しないとだめだと思って一生懸命に勉強した」


「就職して東京に来たけど、紗耶香のことがずっとどこかに残っていた。お父さんから電話をもらったときは、もしやと思った」


「赤い糸が切れなくて本当によかったわ。切れていたら今日の日はなかったと思う」


紗耶香が抱きついてきた。


紗耶香はそれからほどなく妊娠した。紗耶香の希望で避妊はしていなかったのだけど1年以上も妊娠しなかった。きっとひ弱い身体が妊娠を拒んだのだと思う。


翌年の6月に男の子が誕生して、22歳で紗耶香は一児の母となった。臨月に近づくと紗耶香を金沢に帰省させた。実家の近くの病院で生んだが、安産だった。名前は2人で相談して「亮太」とした。男の子が生まれたので、将来は建築士にして、おじいちゃんの会社に就職させてもらうといったら、紗耶香の父親はたいそう喜んだ。


紗耶香の父親が家系図を調べた話をしてくれた。山本家の本家に行って家系図を見せてもらったら、今から500年位前の代に、「紗耶香」という姫がいたことが分かり、またいとこに「昌弘」という男子の名前があったとのことだった。


おそろしい因縁を感じたので、紗耶香と「亮太」と両親と一緒に、檀那寺にある山本家の本家の墓参りに行った。墓参りを済ませると全員ほっとしてからだから力が抜けた感じがした。これで、ずっと家族が幸せでいられるとしみじみ思った。


お話はこれでおしまい。めでたし、めでたし。


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