出会い1
「こら、陽子!!起きなさい!!学校遅れるわよ!!」
「うわ、やばい!!どうして早く起こしてくれないの!?」
「・・何回も起こしたわよ」
いつもの風景
私、佐々木陽子。
どこにでもいる女子高生
私立に通う高校2年生。なったばかりです!
兄、姉と長期単身赴任中の父と5人家族。
「今日は晴れ。そして今日の運勢2位からの発表は・・」
いつも朝見ているテレビから星座の運勢が流れている。
今日は何位だろう?昨日が確か・・
「こら!!何のんびりテレビ見ているの!遅刻するわよ!」
「え、だって・・」
「だってじゃない!行きなさい!!」
「もう・・・」
「まったく、気を付けていってらっしゃい。」
恐いお母さんだけど、玄関まで送ってくれるのは優しい方なのかな。
「いってきまーす!!」
やばっ、バス!!あ、星座!!蟹座は今日何位だったんだろう!!
「そして12位。今日は蟹座のあなた!
運命を変える出会いがあるでしょう。でもその運命はあなたにとっていいのではないので、
今日はおとなしくしているのがおススメでしょう。」
ピッ。
「もう、17年。早いわね・・。」
「ささちゃんー!!」
「おはよう!かなちゃん!!」
私の親友の穂高可南子ちゃん。
私の通う学校は私立の共学。
幼稚部から、大学までの一貫校。
だから、結構遠くから通っている子もいる。
私の家族はお父さんの関係もあって、中学からの編入生。
なので、中学からの友達が多いけど、いろんなところから通う子がいるので、地元が遠い子がほとんど。
その中、かなちゃんは違うクラスだったけど、自宅が近いということでとても仲がいい。
「ねえ、さっきさ中学部の方にすっごい車が入っていくの見たんだけど!」
「車??」
「そう!!ってか、あれほとんど高級車だよ!!しかも1台とかじゃなく、3、4台?」
「へえ、中学部に!だれか有名人とか来るのかな?」
「うちの学園結構いるしね。」
私の通っている風川学園は私立のある意味お嬢様、お坊ちゃん学校だ。
芸能人の子供も多いらしい。まあ私は芸能人とかさっぱりだから本当に有名人しかわからないけど・・。
幼稚部から大学までの一貫校はすべて同じ敷地内。
その中に、体育館、プール、運動場とあらゆる施設がある。なので、正面玄関の前には守衛室があり、
一般人などは入れないようになっている。
最初編入してきたとき、体育館行くのに迷子になったこともある。
特に数年前まで毎日通った中学部の建物はきれいで有名な人が建築したらしい。
「えー、では本日の全学年朝礼は・・」
そして毎週決まった曜日には全学年朝礼があったり、毎月一回は幼稚部から大学部までの全体朝礼などもある。私はこれがとてもめんどくさくて好きじゃないんだよなー・・。
眠い・・。
「最後に、本日中学部の資料室に橘財閥の方が来られるので用のない人は近づかないように。
中学部の周りには警備員が数名いらっしゃいます。」
橘財閥??
高等部長、校長先生の一言に全体がざわついた。
「橘財閥って、あの!?」
「すげー!!」
「さすが風川!!」
「この間、長座ランキングに出てなかった!?」
「私、日本経済テレビで見たかも!!」
え?そんな有名なの??
「ささちゃん!すごいね、会いたいなー!!」
「え?!かなちゃん知ってるの?!」
「え、知らないの?!橘財閥だよ!!??」
「うっそ、佐々木知らないの!?」
私の知らない発言に周りの友達も驚いている。
「う、うん・・。」
「マジ?!」
「天然ささちゃんだもんなー」
うるさい。どうせ、自他共認める天然だよ!!
「橘財閥って、建物で有名な橘建築の大元だよ。主に不動産関係だけど、有名な庭、公園とか建築してるんじゃない?ほら、あそこ!京都の有名なお寺とかも設計してるらしいよー」
「へえー・・。」
確かに橘建築って聞いた事あるな。
「知ってる?橘建築の関係者の人って皆名前が、お花や、草木の名前をつけるんだって!!」
「え?そうなの?!」
かなちゃんもそれは知らなかったらしい。
「この間テレビで、紹介された橘関係の人が言ってた。それこそ昭和、明治から
ずっとそうなんだって!」
「お花、草木って?」
「菫とか、撫子とか、季節に関係する名前なんだって。男性には樹の名前つけるらしいよ!!」
「へえー、そうなんだ!!」
それは、面白いな!
「しかも超お金持ちだしね!!」
「そんな人がうちの中学部に来てるんだ!すごいね!!」
「あれ、橘関係者っていえば栗原もそうじゃない??」
かなちゃんが思い出したように言った。
「え?栗原も?だって、あいつ名前違うじゃん。」
「確か親戚関係じゃない?あたし聞いた事ある気がする。ほら、栗原って下の名前、棗でしょ??
棗って確か木の実の名前じゃない?」
「そうなんだ、よく知ってるね。」
「ささちゃんが知らなすぎなんだよ・・」
「だって、恋愛今興味ないし。栗原なんて論外だし。」
私は編入生当時、少しいじめに合っていた。
風川は私立の中でも少し変わった私立。だから最初上手く馴染めなかった。
そんな中、栗原と同じクラスになったのがダメだった。
栗原棗。イケメンか知らないが男子の中ではだいぶ派手なタイプ。
風川の男子の中心的人物はほとんどがサッカーか、バスケ部。
栗原はそのサッカー部の中心的存在らしい。そして、いじめの中心的存在の女子の当時の彼氏。
(今は違うみたいだけど)
だから、栗原は男子の中でも特に嫌いな方。全く漫画じゃあるまいし本当にやめてほしい・・。
という事は、栗原の家はお金持ちの方なんだ。しかも、関係者がテレビに出るくらい。
風川は学年10クラス。半分に分けて赤、白と分類される。
その中、私は赤、栗原は確か知っている友達と同じクラスだから白。
まあ、ほとんど関係ない。
それに、財閥と無縁の私にとってこの話も全く無関係だ。
いくら風川学園に通っていても私は一般家庭。私はSIMPLE IS 女子高生!
それが、私にとっては当たり前の話。
それがまさか、こんな事になるなんて思いもよらなかった。
「そういえば、ささちゃん今日って日直じゃなかった??」
「え??・・げ!!」
日直はその日一日、男子一人、女子一人クラス代表としてこなす。
風川の日直は朝礼があった日は、クラスの代表として先生と一緒に前にでる風習がある。
そして、今うちのクラスの代表の今日の日直男子の隣がぽっかり空いていた。
声かけてほしい!!
「ったく、佐々木は・・」
「すみません・・」
そして、私は今日の事を担任に叱られ中。
朝の事は、相方の男子には即座誤って「気にしてないよー」と許してくれたけど、担任の先生は数学の先生でしかも、ハイクラス担当。なので、「朝は忙しいから、放課後またな」と言われた。
うう、引っ張らないでほしい。
「昨日は遅刻で、今日は忘れと・・。罰として今日は先生のお手伝いな」
「え?!」
「何だ?」
「いや、友達と約束が・・」
「穂高には先に帰ってもらいなさい」
ひどいっ!
「ってことで、ごめんね!!」
「もう、しょうがないなー」
「明日付き合うから!!」
「絶対だよ?」
「うん!!」
「って、先生もう夜だよ!!?」
「夜って、まだ5時半だろ・・。」
「先生ー、勘弁してよ。私6時から見たいテレビあったのに・・」
「全く、佐々木は・・。分かった、分かった。明日は遅刻するなよ?」
「はーい!」
「気を付けて帰れよ?」
「さようなら!」
はあー、テレビは今日は無理だよね・・。
「お母さん、録画してないよね・・。」
部活をしてない私にとって、この時間に帰るのはあまりない。
終わったらさっさと帰るかまたは、友達と寄り道していくか。
「ああー・・。って、花びら??」
少し風がきついなーっと思ったら、ピンク色の花びらが落ちてきた。
「これって、桜??」
私は辺りを見たが桜の季節はこの間終わったはず。
お母さんが、桜散って、お花見行きたかったと行っていたし。
「どこから・・、って、あ!」
風川学園は広い。緑が多い学園でも有名だ。
辺りをよく見ると奥に一本のもうほぼ散ってはいるが、まだ少し花が残っているのがあった。
私は誘われるように桜の木に近づいた。
「まだ咲いてる!」
花の中で一番桜が好きな私にとっても今年お花見行けなかったから少しうれしい。
「・・なんでだろう。桜の花ってやっぱり切なくて、綺麗ですきだな」
毎年思う。
咲くのをずっと待っていたのに、散るのはあっという間。
それになんだかすごく会いたかった。という気分になる。
すごく儚くて、頼りなさそうに見える桜。でも、うちのお母さんは違うらしい。
「何言ってるの。桜が一番強いのよ?」と。
「変なの。桜なんて儚いの代表じゃん。」
「桜・・?」
「え!?」
急に聞こえた人の声にびっくりして振り向くと、一人の女性が立っていた。
見た目は30-40代?黒いスーツを着ている。
「・・桜?」
「?」
桜って、樹の事だよね?でも、その人の目に私は少し怯えた。
なぜなら、その人の目は私を見ていたから。
まるで、信じられないような幽霊を見たような眼をしていた。
「あ、あの??」
「そっくり・・。」
そっくり?
ゆっくり近づいてくるその人に私はだんだん怖くなってきた。
「桜・・」
桜?そっくり?
「わ、私!帰ります!!」
「え?は!ちょ、ちょっと待って!!」
あの人何?
桜?そっくり?
あの人の知っている人に私がそっくりって事?
でも、あの瞳は何?
「あんな目で見られた事ない・・」
いじめられていたから、そういう目は知っている。
でも、まるであの人自体が何かにとりつかれていたんじゃないかそんな目。
「なんか怖かった。・・忘れよう。もう、会う事ないだろうし。」
その時はそう思った。
だって、私は一般家庭の子。お母さんとお父さんの子。
信じる以外、それが当たり前と思っていた。